――――――――――――――――――――――――――
人物:カイ クレイ
場所:王都イスカーナ
NPC:クレア
----------------------------------------------------------------
日が暮れ、星が瞬きはじめて兵舎に戻ると、クレイは再び頭を抱える。
「……このお嬢様は、女だって自覚あんのか?」
ココはカイの部屋。目の前には簡素なベッド。
ほったらかしにしておいたクレア嬢は、驚いたことにすやすや寝息を立てていた。
「ココにはいい歳した男しかいないんだぞ」
ぶつぶつと文句を言いながらも、子猫のように丸くなり、ぐっすりと眠っている彼女に、クレイは毛布を掛けてあげた。
「……なんか、拍子抜けだな」
それなりに覚悟を決めての帰還だけに、ホッとしたような言葉が漏れる。
カイは入り口のドアに寄りかかるように立ち、脱力するクレイに声をかけた。
「今日はこのまま寝かせておくのか」
「んー……どうするかなぁ」
髪をくしゃっと掻きながら、クレイは椅子に腰掛ける。
「ココの連中に見つかるのも面倒だし、朝、皆が出払ってから動いた方がイイかも」
「そうだな」
実は彼女が帰ると言っても帰らないとゴネても、面倒なことには変わりないのだ。
が、どこかに宿を用意するというワケにもいかない。
「誰も来ないとは思うが、交代で見張りに立とう」
結局のところ、この辺で落ち着くのが無難、という判断だった。
彼女の眠りを妨げるのもいい気はしない、というのは全くの余談だ。
「で、どうする」
扉に寄りかかったままのカイはクレイに訊ねる。
クレイは椅子の背に寄りかかり目を閉じてはいるモノの、眠ってはいなかった。
休んでいるフリも通じないらしい相手に、クレイは肩をすくめて応じる。
「ま、こうなったら知らないフリもできないでしょ」
それはそうだ。
「例の部族について調べる手段はあるのか」
「すこしはね」
意味ありげに笑みを浮かべるクレイ。人差し指を立て、一言付け加えた。
「ただ、人見知りするヤツだから単独行動をとることになる」
カイが付いていったところで助けにならないのならば、情報収集は分かれた方が早いかもしれない。カイに土地勘と人脈がないことを除けば。
「なにかやれることは?」
「彼女のお守り」
にっこり。してやったりという風な満面の笑みが浮かんでいる。
それは確かに重要な仕事ではあるのだが……。
「単独行動はその所為か」
「あー、違う違う、コレは本当。カイには彼女の隠してる情報を探って欲しい」
そういわれると断る理由もなく。
「了解」
「じゃ、そういうことで」
再び目を閉じるクレイの表情は、妙に晴れ晴れとしていた。
PR
トラックバック
トラックバックURL: