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2024/11/11 04:41 |
琥珀のカラス・52/カイ(マリムラ)
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PC:クレイ カイ 

NPC:デュラン ウルザ ルキア

場所:王都イスカーナ

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「正々堂々ですか、それはそれで楽しそうですね」

 デュランの言葉に思わず笑ってしまうクレイとカイに、こんな言葉を投げかけたの

はウルザだった。その横でルキアが頷く。

「折角だしご老人には馬にでも乗ってもらって、二人が従者として馬を先導すれ

ば?」

 ウルザとルキアの声は本気だ。

「ちょ、待ってくれ」

 真剣に考え始めているカイとは対照的に、クレイが止めに入る。

「準備に時間がかかれば、誰かに見つかって余計な争いが増えるかもしれないんだ

ぞ」

「だから正面から堂々と行くのよ……『客』としてね」

 ルキアの目が楽しげに光る。

 デュランはデュランで、馬に乗れないと言いつつも楽しみにしているようだし、カ

イは顎に手を当てて黙り込んでしまった。

 それって正々堂々と言うのか?……という発言を、クレイは控えることにした。







「さ、準備オッケー」

 何処からかルキアが馬を連れてきたのだが、その馬というのがまた凄い。

 毛並みの良い栗毛には質素ながらも上質の馬具が載せられ、大人しくウルザの手か

ら小さな砂糖菓子を食べているのだ。

「で、あんた達はどうするんだよ」

 馬の手綱を渡され、振り返ると既に彼女たちの姿がない。

「私たちは影だもの。影には影らしい入り方があるんじゃない?」

 声がしたと思った木の上の方を見上げるがそこにも姿はなく、クレイとカイは顔を

見合わせると、僅かに肩を竦めた。

「行きますか」

 馬上の人は、心なしか普段よりも姿勢良く、前を見据えている。

「……行こうかの」

 馬が静かに歩き出した。







 で、正門。

 私兵が遠ざけられたとはいえ、当然のように門兵はいたりする。

 それなりの家にはそれなりの使用人が居るのだから、まあ当然と言えば当然なのだ

が。

「申し訳ないが、身分を改めさせていただきたい」

 そう足止めをした男は未だ若く、鎧もどこかぎこちない。

「わしはデュラン・レクストン(元)司祭じゃ。火急にロイヤー殿と話がある故、馬

を飛ばして参った」

 と馬上からのたまうデュランの堂々とした態度に気圧されている。もしかしたら遠

ざけられた私兵の代わりに、新しく暫定的にあてがわれた使用人なのかも知れない。

「で、ではただいま確認して参りますので、こちらの厩の方へひとまず……」

「ならん。火急というのがわからんのか!」

 凄い剣幕で怒鳴りつけると、馬を数歩進めようとして、やはり止められた。

「こ、困ります……お通しするには許可が……」

「このわしが直々に伝えることがあって来ておるのじゃ。

 神殿の者が度々出入りしておろう、その者達では埒があかない故……」

 ブツブツ言い続けるデュランのせいで伝令にも行けず足止めを食らっている哀れな

門兵に、クレイが一言囁いた。

「ココで意地張って通さないでいたらさ、後が怖いと思うなぁ」

 一気に門兵の顔が青ざめる。

「ここの仕事が明日もあると思うか?」

 カイの一言で、青を通り越して蒼白になった門兵はガタガタと震え始めた。

「あ、あの、あの……」

「具合が悪そうじゃの。わしらは構わんから休息をとられよ」

 にっこりと、しかし有無を言わせない圧力。

 結果、門兵はがっくりと肩を下ろし、一行は馬のまま敷地内に入ることに成功した

のである。







 敷地内は外から見た以上に閑散としていた。

 私兵の声、鎧や剣の出す耳障りな金属音、足音すらも聞こえない。

 時折強くなる風で木々が揺れ、葉擦れの音がやたらに大きく聞こえたりする。

「罠……ってことではなさそうだな」

 いったん足を止め、屋敷を窺っていたカイが言う。

「しかしじいさん、さっきみたいに堂々と出来るんじゃないか」

「ひょっひょっひょ、アレは面白かったんじゃがなぁ」

「って、本気で遊んでるだろ」

 そんなやりとりをしつつも、やはり緊迫感が拭えない。

 クレイは滲んだ汗を拭って、屋敷の入り口を見やった。

「さ、最終選択。ここで待ち受ける?それとも乗り込む?」

「……という選択肢は、どうやら無くなったようだな……」

 カイの言葉を受けて、クレイがカイの視線を追う。

 窓を開け放ち、二階のベランダにはロイヤーが立っていた。

「き、貴様ら、ふざけた真似をー!」

 その脇にはマグダネル。

 ベランダから飛び降りようと手すりを蹴ったその時、何かに体を絡め取られ、訳の

分からないまま宙づりになってしまう。

「なっ……」

 暴れれば暴れるほど細い紐は体に食い込み、ますます身動きがとれなくなってい

く。

「ご愁傷様」

「邪魔立ては無用ですよ」

 いつからそこにいたのか。

 ルキアとウルザはロイヤーの両脇に立ち、仕掛けて置いた紐で網の目のように張り

巡らせていたのだ。

「ば、ばかな……」

 抵抗らしき抵抗もできないまま、ロイヤーは膝から崩れ落ちた。

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2006/08/29 00:27 | Comments(0) | TrackBack() | ●琥珀のカラス

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