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人物:カイ クレイ
場所:王都イスカーナ
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【長男死亡に伴い直系断絶】
衝撃的な一文に、クレイの反応が止まる。
カイは一拍置いてから、確認するようにサキに訊ねた。
「直系断絶の場合、ロイヤー家はどうなる?」
ふむ、と一度首を傾げ、サキは事も無げに答える。
「普通なら爵位取り上げでしょうね」
クレイとカイはお互いの顔を見た。
「動機としては十分か」
「だな」
クレイが頷いて、サキに向き直る。
サキはあははははといつものように笑い、クレイもつられて笑った。
「助かったよ、その……複雑だけど」
言いながら、表情が曇る。
貴族としての立場というものは、なかなか棚に上げることは出来ないのだ。
「わかってますよ、クレイさんだからお見せしたんですからね」
サキは資料を元のように仕舞いながら、当然のように言った。
「……しかし」
なにやら考えていたカイが口を開く。
「生命の石は人為的に特異能力者を作る実験に使われていたはずだ」
「ああ、それがどうした?」
「石の力が上手く制御できずに試作体を廃棄した……その段階で甦りというのは可能
だろうか」
カイが眉間に皺を寄せる。
「まあ、その段階では無理でしょうね」
意外なことに、答えたのはクレイではなくサキだった。
「でも生命の石というくらいです、正しく使えば可能かもしれませんよ?」
別の一画にある本の山の中から一冊を引き出しながら、事も無げに言ってのける。
「そんな、いくらなんでも……」
「はい、クレイさん」
クレイの言葉に重ねるように、サキが手渡したのは表紙に何も書かれていないファ
イル。開くと生命の石、という小さな記述があった。
「なっ!?」
「一族の名前どころか、存在まで歴史から消されてしまったというのに面白いですよ
ね。石の評判は残っているんです」
コレだから止められない、といった風に、とても楽しげなサキが言う。
「この前聞いたときには出さなかったじゃないか!」
思わず声が大きくなったクレイに、二人は人差し指を口の前に立てるような仕草で
抗議した。
「この生命の石の記述には石がどういう材質かもどういう由来なのかも書いてないん
ですよ」
なるほど、その為に証拠隠滅の為の資料廃棄もすり抜けたということか。
クレイは頭を抱えて座り込んだ。
最近こんなのばっかりだ。考えることが多すぎる。
機嫌がいいのか楽しそうに資料を広げるサキと、その資料を覗き込むカイ。
人見知りが激しいサキが妙にカイと馴染んで見えて、なんか珍しい光景を見てるよ
なぁ、と、ついぼんやり現実逃避してしまうクレイだった。
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