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2025/03/10 07:55 |
琥珀のカラス・46/カイ(マリムラ)

◆――――――――――――――――――――――――――――――――――

人物:カイ クレイ

場所:王都イスカーナ

―――――――――――――――――――――――――――――――――――



 二手に分かれて行動。となったはいいが、結構大変なことになっていた。

「おい!カラスが入った屋敷、主人もカラスも忽然と消えたんだってさ」

「あぁ?オレは爆発がどうとか聞いたぞ?」

「誰か担当者居たろ、担当者」

「そうだよ、護衛の割り当てされてたのに、クレイ達はドコいったんだ」

「昨日の朝から、みてませーん」

 あまりの騒ぎっぷりに、職場へ入ることは断念するしかない有様。

 情報をあたるなら一旦……と思ったが、そういうワケにはいかないようだ。



 見つからないように、これ以上騒ぎにならないようにコッソリと詰め所から離れる

と、クレイはへたりこんだ。

「参ったな~」

「やはりあのまま殺るべきだったか?」

「……だから、ソレは駄目だって」

 クシャクシャっと髪を掻き上げ、重い腰を上げる。

「だーっ、もう」

「気が済んだか?」

「済まないけど、動くしかないだろ」

 伸びをして深呼吸。

「アイツんトコ、人に会わずに行けっかなぁ」

 頭に浮かぶのは一人の友人。しかし、人見知りの激しい友人の所へたどり着くに

は、いつものルートは使えない。顔見知りというか、仕事関係者というか、会わずに

通れる道ではないのだ。

「建物の場所、方角、なんでもいい。その人物がいる場所までの情報を」

 カイがなんだか思案している。

「え、ああ、場所は……」

 説明しようとして、カイが広げる市街地案内図を指す。

「この中」

「ふむ……」

「って、何でこんなもの持ってるんだ?」

「土地勘がない以上、地理把握には必須だろう」

「あ、そっか、そうだよな……」

「ちなみに、街の入り口で観光客相手に売ってるものだ」

 言いながらカイは指を地図に走らせる。

「このルートで向かおう、建物内部に入る方法は何とかする」

「……えぇ?!」

「昔の仕事が役に立つ」

「って、機密施設だぞ?関係者以外入れないんだぞ?」

「やってやれないことはあるまい?」

 平然と言ってのけるカイと思わず声が大きくなるクレイ。

 クレイの声が聞こえたのか、近づいてくる足音。

 カイが頷いて動き出すと、クレイは曖昧に頷いて後を追った。



  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇



「おーなーかーすーいーたー!」

「ワシもじゃワシもじゃー!」

 クレアとデュラン爺さんは地団駄を踏んでいる。

「少しはおとなしくしようとか、考えてくれよ」

 サスガにカシューも頭が痛い。

 小さな合図に体をずらすと、カシューが塞いでいた扉から、大きな紙袋が差し出さ

れた。二人のカラスだった。

「きゃっ、おいしそう!」

 クレアが飛び跳ねる。確かに食欲をそそるいい匂いだ。

 カシューは自分の空腹を自覚させられて苦笑いをしながらも、紙袋をクレア達に差

し出し、扉越しに報告を受ける。

「……そうか、わかった」

 了解の言葉に、二人のカラスは気配を消す。満足そうに笑顔を浮かべると、カシュ

ーは言った。

「ソレを食べたら、お嬢さんの屋敷へお送りしましょう」

「へ、ほうはほ?」

 口一杯にハンバーガーをくわえたまま、クレアが聞き返す。

「但し条件がありますがね。老人の正体を伏せた上で客人として屋敷に匿うこと、勝

手に出歩かないこと、私を見張り兼護衛として同行させること」

 はむはむはむ。

 口の中身を飲み下してから、クレアは笑った。

「ココよりは窮屈じゃないモンね、うん、そうしよ」

 カシューは軽い返事に苦笑する。

「ワシには聞かんのかい!」

 老人がわめいたが、イヤそうではなかったので聞き流された。



  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇



「で、次は?」

「左」

「って、ココは道じゃないと思うぞ」

「通れれば問題ないだろう」

 なんだか凄い経路であっちこっち迂回したクレイ達は、目的地から目と鼻の先まで

来ていた。

「ドコをどう通ったらココに出るんだよ……」

 目の前の予想外の風景に呆れるクレイ。

「大体、クレイは顔が知れすぎている」

「あーはいはい、隠密行動には向きませんで悪かったね」

「いや、悪いなどとは思っていない」

 カイは涼しい顔でそう言った。

「人脈があるというのは大きな強みだ。入るまではフォローするから、後は頼む」

「……了解、相棒」

 クレイは苦笑して、カイの肩を二度叩いた。
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2006/08/15 00:05 | Comments(0) | TrackBack() | ●琥珀のカラス

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