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人物:カイ クレイ
場所:王都イスカーナ
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二手に分かれて行動。となったはいいが、結構大変なことになっていた。
「おい!カラスが入った屋敷、主人もカラスも忽然と消えたんだってさ」
「あぁ?オレは爆発がどうとか聞いたぞ?」
「誰か担当者居たろ、担当者」
「そうだよ、護衛の割り当てされてたのに、クレイ達はドコいったんだ」
「昨日の朝から、みてませーん」
あまりの騒ぎっぷりに、職場へ入ることは断念するしかない有様。
情報をあたるなら一旦……と思ったが、そういうワケにはいかないようだ。
見つからないように、これ以上騒ぎにならないようにコッソリと詰め所から離れる
と、クレイはへたりこんだ。
「参ったな~」
「やはりあのまま殺るべきだったか?」
「……だから、ソレは駄目だって」
クシャクシャっと髪を掻き上げ、重い腰を上げる。
「だーっ、もう」
「気が済んだか?」
「済まないけど、動くしかないだろ」
伸びをして深呼吸。
「アイツんトコ、人に会わずに行けっかなぁ」
頭に浮かぶのは一人の友人。しかし、人見知りの激しい友人の所へたどり着くに
は、いつものルートは使えない。顔見知りというか、仕事関係者というか、会わずに
通れる道ではないのだ。
「建物の場所、方角、なんでもいい。その人物がいる場所までの情報を」
カイがなんだか思案している。
「え、ああ、場所は……」
説明しようとして、カイが広げる市街地案内図を指す。
「この中」
「ふむ……」
「って、何でこんなもの持ってるんだ?」
「土地勘がない以上、地理把握には必須だろう」
「あ、そっか、そうだよな……」
「ちなみに、街の入り口で観光客相手に売ってるものだ」
言いながらカイは指を地図に走らせる。
「このルートで向かおう、建物内部に入る方法は何とかする」
「……えぇ?!」
「昔の仕事が役に立つ」
「って、機密施設だぞ?関係者以外入れないんだぞ?」
「やってやれないことはあるまい?」
平然と言ってのけるカイと思わず声が大きくなるクレイ。
クレイの声が聞こえたのか、近づいてくる足音。
カイが頷いて動き出すと、クレイは曖昧に頷いて後を追った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「おーなーかーすーいーたー!」
「ワシもじゃワシもじゃー!」
クレアとデュラン爺さんは地団駄を踏んでいる。
「少しはおとなしくしようとか、考えてくれよ」
サスガにカシューも頭が痛い。
小さな合図に体をずらすと、カシューが塞いでいた扉から、大きな紙袋が差し出さ
れた。二人のカラスだった。
「きゃっ、おいしそう!」
クレアが飛び跳ねる。確かに食欲をそそるいい匂いだ。
カシューは自分の空腹を自覚させられて苦笑いをしながらも、紙袋をクレア達に差
し出し、扉越しに報告を受ける。
「……そうか、わかった」
了解の言葉に、二人のカラスは気配を消す。満足そうに笑顔を浮かべると、カシュ
ーは言った。
「ソレを食べたら、お嬢さんの屋敷へお送りしましょう」
「へ、ほうはほ?」
口一杯にハンバーガーをくわえたまま、クレアが聞き返す。
「但し条件がありますがね。老人の正体を伏せた上で客人として屋敷に匿うこと、勝
手に出歩かないこと、私を見張り兼護衛として同行させること」
はむはむはむ。
口の中身を飲み下してから、クレアは笑った。
「ココよりは窮屈じゃないモンね、うん、そうしよ」
カシューは軽い返事に苦笑する。
「ワシには聞かんのかい!」
老人がわめいたが、イヤそうではなかったので聞き流された。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「で、次は?」
「左」
「って、ココは道じゃないと思うぞ」
「通れれば問題ないだろう」
なんだか凄い経路であっちこっち迂回したクレイ達は、目的地から目と鼻の先まで
来ていた。
「ドコをどう通ったらココに出るんだよ……」
目の前の予想外の風景に呆れるクレイ。
「大体、クレイは顔が知れすぎている」
「あーはいはい、隠密行動には向きませんで悪かったね」
「いや、悪いなどとは思っていない」
カイは涼しい顔でそう言った。
「人脈があるというのは大きな強みだ。入るまではフォローするから、後は頼む」
「……了解、相棒」
クレイは苦笑して、カイの肩を二度叩いた。
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