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人物:カイ クレイ
場所:王都イスカーナ
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「さて、そろそろ役割分担でもしましょうか」
頃合いを見計らって、ルキアが若干楽しげに言った。
「いつまでもココに篭もっているというわけにはいかないからな」
カイも頷きながら同意する。
「では、誰をどう使うかだが……」
宵闇男爵ことカシューを中心に意見が飛び交う。
誰が残って誰が外へ出るのか。
その選択肢の中にはクレアとデュランの名はなかった。
「おじいちゃーん、私達邪魔者~?」
「ほっほっほ、そういう面もあるやもしれんなぁ」
さっきの引き締まった顔はどこへいったのか、のほほーんと答えるデュラン。
クレアは退屈そうに頬を膨らませると、クレイの裾を引っ張った。
「……あーもう、今忙しいの!」
「けち」
「そういう問題じゃないだろう?!」
拳を震わせるクレイは、必死に怒りを収める。
彼女は自分でも何がなんだか分からないウチに今回の最重要になっているのだ。
「クレア、きっと守るから、おとなしくしろよな」
「なんで?私にも関係あるんでしょ?……よく分からないけど」
俯く彼女の意見はもっともで。
(ちっ……余計なこと話しすぎなんだよ)
クレイがおっさん等を睨み付ける。
デュランも反省はしているようで、肩をすくませ、小さくなった。
「お嬢さん、悪いが足手まといにならないでくれ」
カシューがクレアの肩に手を置く。
「少なくともあんたら二人を守らなきゃならん、勝手に動くとリスクが高くなるんだ
よ……それくらいは分かるだろう?」
ゆっくりと、諭すような口調。
クレアは何か言いかけて、目を伏せると押し黙った。
「あら、解決?」
ルキアの問いに、全員が無言で答える。
「では、護衛班と実働班に分けます」
静かに、ウルザが言った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「つまんなーい」
クレアが愚痴を洩らす。
「あきらめなさい、お嬢さん」
カシューが白い歯を見せて笑う。
「何でクレイが残ってくれないのー?」
「ワシだっておっさんよりおねえちゃんの方がイイわい!」
『ねー!!』
声を揃えて不満を言うクレアとデュランにカシューは苦笑する。
(こりゃ大変だ)
引退して、後は悠々自適なハズだったのに。
「信頼できる護衛となるべく多くの実行班って分け方、本当に大丈夫なの?」
「さあな、どう転ぶかはまだワカランよ」
宙を見つめ、若者達の無事を願うカシューであった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「おい、本当に良かったのかな?」
クレア達と別れて、一度だけクレイが振り返る。
「護衛に彼以上信頼できるモノはいないし、こちらの人数を削るリスクは犯せないか
らな」
「そんなこと、分かってるけどさ」
カイの指摘にクレイは頭を掻きむしる。
「ま、こちらは最善を尽くしましょ?」
ウルザはそういうと、先導するように走るルキアの後を追った。
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