キャスト:トノヤ・ファング
NPC:ワッチ・月見・リア・セバス
場所:ヴァルカン/リア邸内
___________________
幽霊屋敷に滞在して今日で一週間が経った。
働かざるもの食うべからず。その言葉通り屋敷の掃除、雑用、家事、その他諸々散々こき使われた。
今日ももちろん例外ではない。
「ちょっと、良いかしら」
今日のノルマ、だだっ広い廊下の窓を磨いていたら、後ろから声をかけられた。
トノヤは手に持っていた雑巾を足下のバケツに放り投げ、のろのろと振り返った。
くわえ煙草のリアが顔を見て驚いたそぶりを見せる。
「なんだ」
「あら、あなたが掃除してるなんてめずらしいわね」
「……親父殿の殺人デコピンはもうくらいたくねぇからな」
何か思い出すように苦い顔をして頭をおさえるトノヤ。
長い前髪の隙間からガーゼがちらりとのぞく。
血がにじんでいたように見えたのは気のせいだろうか。
リアは煙を吐き出し、気にせず続けた。
「バンダナのあの子、ファング君はどこに?話があるんだけど」
「さーな、さっき月見に追っかけられて墓地の方に逃げてったのがこっから見えたけどな。そのあとは知らん」
「まったく、毎日毎日飽きずによくやるわ。まあ、いいわ。サイン、あなたしてくれる?」
「………」
ポケットからぐちゃぐちゃになった羊皮紙とペンを出し、トノヤの目の前に突き出した。
「……出来たのか」
「ええ、完璧よ。だから、ここにサイン。あ、フルネームでね」
「普通ブツを確認してからじゃねぇのかよ」
「なに、あたしの腕を疑うわけ?はじめの契約書にも書いてあったようにここじゃそんな面倒なことはしてないの。文句があるんならもう一度契約して」
「なんだそれ…まあ、なんでもいいけどよ」
リアの手から紙をひったくる。
ペンを持ち、一文字目を書こうとしたところで手を止めた。
「そういや、ここの文字かけねーんだけど。おれの国の字でも良いか」
「別に構わないけど。めずらしいわね今時共通文字使ってない国がまだあったなんて。あなたどこ出身なの」
「……どこだって良いだろ」
壁に紙を押さえつけ、みみずの屍骸のようなバランスの悪い文字を綴る。
「良くわかんないけど、きったない字ねぇ~」
「るせぇな、知らねぇくせにごちゃごちゃ言うな。こういうもんなんだよ」
リアは書類を受け取り、少し不満そうな顔をしながら見慣れない文字のサインを眺めていたが、すぐに丸めてポケットに突っ込んだ。
「あとはセバスが準備してくれてるはずだから。帰るなり住み込みでここで働くなり好きにすると良いわ」
「こんなわけわかんねー幽霊屋敷で誰が働くかよ」
「残念ね。一週間もここにいれたのはあなた達が初めてだったから、惜しいわ。まともな生身の人間のお手伝いさんも欲しかったんだけど」
「………」
短くなった煙草をトノヤの足下にあるバケツにほうりこみ、リアは自室へと戻って行った。
トノヤは吸い殻とぞうきんの入ったバケツをちらりと横目で見たが、結局そのままにして廊下を歩き出した。
あてがわれていた部屋へ行く途中、遠くでファングの悲鳴のような声が聞こえた気がしたが、無視することにした。
部屋に戻ると、ノルマを終えたらしいワッチが首にタオルを巻き大汗をかきながら窓辺で水を飲んでいた。また相当な力仕事をまかされていたようだ。
「お、少年も終わったのか?今日はちゃんとやったんだろうなぁ~」
疑いの目とデコピンの手でトノヤににじりよるワッチ。
「や、や、やったっつーの!窓ふき!あの女主人に聞きゃわかる!」
両手でデコを守り、物凄い勢いで後ずさるトノヤ。
ドン、と背中にぶつかったのは壁、かと思いきや……ひょろ長い執事セバスだった。
「うおあっ、音も無く入るなボケ!」
「失礼いたしました。準備が整いましたのでお知らせに参りました。お揃いになりましたら応接室へいらしてくださいませ」
「お、おう」
浅く一礼するとセバスは部屋を出て行った。
「準備って何だ?」
「終わったらしいぜ、修理」
「おお!意外と早かったなぁ~」
「おれ的にはやっと解放される、って感じだけどな」
「そうか?オイラはあっという間な気がしたけど。毎日色々やることあったし」
「じゃあ、ここで働けよ。人足りてねぇらしいぜ」
「いや、別にそこまでなわけじゃ……っと、」
持っていたコップを置き、ワッチは扉に手をかけた。
「オイラ二人呼んでくるよ。どの辺にいるか知ってるか?」
「さあな、ココ来るとき結構遠くからファングの悲鳴っぽいのは聞こえたけどな。ありゃ外からじゃねぇか」
「うーん、墓地周りから探してみるか…いや、正門あたりからぐるっと…」
「いってら~」
ワッチはぶつぶつと何か言いながら部屋を出て行った。
全開になっている窓から生暖かい風を受け、トノヤはベッドへ倒れ込んだ。
集合に時間がかかると踏み、昼寝をすることにしたらしい。
その読みは正しく、結局ワッチが二人を見つけることが出来たのは日も完全に落ちきった後だった。
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NPC:ワッチ・月見・リア・セバス
場所:ヴァルカン/リア邸内
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幽霊屋敷に滞在して今日で一週間が経った。
働かざるもの食うべからず。その言葉通り屋敷の掃除、雑用、家事、その他諸々散々こき使われた。
今日ももちろん例外ではない。
「ちょっと、良いかしら」
今日のノルマ、だだっ広い廊下の窓を磨いていたら、後ろから声をかけられた。
トノヤは手に持っていた雑巾を足下のバケツに放り投げ、のろのろと振り返った。
くわえ煙草のリアが顔を見て驚いたそぶりを見せる。
「なんだ」
「あら、あなたが掃除してるなんてめずらしいわね」
「……親父殿の殺人デコピンはもうくらいたくねぇからな」
何か思い出すように苦い顔をして頭をおさえるトノヤ。
長い前髪の隙間からガーゼがちらりとのぞく。
血がにじんでいたように見えたのは気のせいだろうか。
リアは煙を吐き出し、気にせず続けた。
「バンダナのあの子、ファング君はどこに?話があるんだけど」
「さーな、さっき月見に追っかけられて墓地の方に逃げてったのがこっから見えたけどな。そのあとは知らん」
「まったく、毎日毎日飽きずによくやるわ。まあ、いいわ。サイン、あなたしてくれる?」
「………」
ポケットからぐちゃぐちゃになった羊皮紙とペンを出し、トノヤの目の前に突き出した。
「……出来たのか」
「ええ、完璧よ。だから、ここにサイン。あ、フルネームでね」
「普通ブツを確認してからじゃねぇのかよ」
「なに、あたしの腕を疑うわけ?はじめの契約書にも書いてあったようにここじゃそんな面倒なことはしてないの。文句があるんならもう一度契約して」
「なんだそれ…まあ、なんでもいいけどよ」
リアの手から紙をひったくる。
ペンを持ち、一文字目を書こうとしたところで手を止めた。
「そういや、ここの文字かけねーんだけど。おれの国の字でも良いか」
「別に構わないけど。めずらしいわね今時共通文字使ってない国がまだあったなんて。あなたどこ出身なの」
「……どこだって良いだろ」
壁に紙を押さえつけ、みみずの屍骸のようなバランスの悪い文字を綴る。
「良くわかんないけど、きったない字ねぇ~」
「るせぇな、知らねぇくせにごちゃごちゃ言うな。こういうもんなんだよ」
リアは書類を受け取り、少し不満そうな顔をしながら見慣れない文字のサインを眺めていたが、すぐに丸めてポケットに突っ込んだ。
「あとはセバスが準備してくれてるはずだから。帰るなり住み込みでここで働くなり好きにすると良いわ」
「こんなわけわかんねー幽霊屋敷で誰が働くかよ」
「残念ね。一週間もここにいれたのはあなた達が初めてだったから、惜しいわ。まともな生身の人間のお手伝いさんも欲しかったんだけど」
「………」
短くなった煙草をトノヤの足下にあるバケツにほうりこみ、リアは自室へと戻って行った。
トノヤは吸い殻とぞうきんの入ったバケツをちらりと横目で見たが、結局そのままにして廊下を歩き出した。
あてがわれていた部屋へ行く途中、遠くでファングの悲鳴のような声が聞こえた気がしたが、無視することにした。
部屋に戻ると、ノルマを終えたらしいワッチが首にタオルを巻き大汗をかきながら窓辺で水を飲んでいた。また相当な力仕事をまかされていたようだ。
「お、少年も終わったのか?今日はちゃんとやったんだろうなぁ~」
疑いの目とデコピンの手でトノヤににじりよるワッチ。
「や、や、やったっつーの!窓ふき!あの女主人に聞きゃわかる!」
両手でデコを守り、物凄い勢いで後ずさるトノヤ。
ドン、と背中にぶつかったのは壁、かと思いきや……ひょろ長い執事セバスだった。
「うおあっ、音も無く入るなボケ!」
「失礼いたしました。準備が整いましたのでお知らせに参りました。お揃いになりましたら応接室へいらしてくださいませ」
「お、おう」
浅く一礼するとセバスは部屋を出て行った。
「準備って何だ?」
「終わったらしいぜ、修理」
「おお!意外と早かったなぁ~」
「おれ的にはやっと解放される、って感じだけどな」
「そうか?オイラはあっという間な気がしたけど。毎日色々やることあったし」
「じゃあ、ここで働けよ。人足りてねぇらしいぜ」
「いや、別にそこまでなわけじゃ……っと、」
持っていたコップを置き、ワッチは扉に手をかけた。
「オイラ二人呼んでくるよ。どの辺にいるか知ってるか?」
「さあな、ココ来るとき結構遠くからファングの悲鳴っぽいのは聞こえたけどな。ありゃ外からじゃねぇか」
「うーん、墓地周りから探してみるか…いや、正門あたりからぐるっと…」
「いってら~」
ワッチはぶつぶつと何か言いながら部屋を出て行った。
全開になっている窓から生暖かい風を受け、トノヤはベッドへ倒れ込んだ。
集合に時間がかかると踏み、昼寝をすることにしたらしい。
その読みは正しく、結局ワッチが二人を見つけることが出来たのは日も完全に落ちきった後だった。
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