・・・いままでのあらすじ・・・
怪力の剣闘士ワッチ、出所不明のテンション右肩上がり少女、月見と、
父の残した『遺産』を探しているトレジャーハンター、ファングは、
ひょんな事から出会い、共に『遺産』を探すことになった。
今回のお宝は『浅葱の杖』。
【月も太陽も星もいらぬ。欲望は闇に埋まる――闇を食らう浅葱の杖】
という詩のみを頼りに、勢いで炭鉱まできた3人。
正体不明でしかもヤル気ゼロのトノヤを加え、さらに進む一行。
だが、なぜか炭鉱内はトラップだらけ!
それでもなんとかそこを突破した一行は、ファングの父、ウィルドから
『浅葱の杖』を守護するようにと命(めい)を受けたという、
アイボリーという女に出会う。
なんと、この炭鉱こそが『浅葱の杖』の在り処だったのだ!
そして彼女は、『浅葱の杖』を前に戸惑うファング達に、最後の謎を投げかける。
―この杖に喰らわれないうちに、この杖をここから運び出してください―
浅葱の杖とは、心の闇を喰うアイテム。
だが、『心の闇を喰う』というのは、穢れた心を持つ者を
ガラスにしてしまうという事だった。
助かる方法はただ一つ。
アイボリーが『ウィルド聖書』を読み終わるまでに、外に出ることだった――
既にファングの左腕はガラスになってしまっている。急げ一行!
・・・★・・・
キャスト:トノヤ・ファング
NPC:ワッチ・月見
場所:ヴァルカン/炭鉱の中
―――――――――――――――
「んなぁっ!もしさっ!このガラっ!スが!壊れたら!どーすんだよ!?」
「やっぱ!今後は片腕で過ごすしかねぇだろっ!」
「えー!」
走りながら喋るのは容易ではない。ましてや、片腕が固定されているため
バランスが取りにくい。
四人は全力疾走して、今来た道を引き返していた。
もう、あと数メートルで炭鉱から出ることができる。さきほどトノヤが倒したという賊の姿はなかった。
だが、ファングは違和感を感じて立ち止まった。
見れば、『浅葱の杖』を掴んだままの手から、肩、わき腹、
太ももまでガラスの波が滲出していた。
こうなってしまうと、歩くのも難しい。
「やっべー…」
「ファング!」
ランタンを持った月見を背中に背負ったまま、ワッチが走り戻ってくる。
もう灯りは必要ないだろうが、消すのを忘れているらしい。
トノヤも足を止めて、遠巻きにこちらの様子を伺っているようだった。
「…」
空いている右手で肩をさすってみるが、温度も鼓動もない。
血液も通っていないらしいが、肩が動かないだけであって、ほかの部位も
壊死した様子がないのが幸いだった。
出口まではそう距離はないが、それは走ったらの話だ。
頭(こうべ)を垂れるファングに向けて、黙っていたトノヤが決心したように
声を発した。
「オヤジ殿!こうなったら最後の手段だ!」
「え?オイラ?」
意外そうに、ワッチが自分を指差してトノヤを見る。
「要は外にでりゃーいいんだろ。だったら…」
トノヤが、こちらを見ながらにぃっと口の端を吊り上げた。
「え。いや待てお前。なんか俺スゲー心配」
ふつふつと、冷たい汗がファングの背中をつたう。
半身はほぼガラスになってしまっているせいで、後退ることもできない。
と、ワッチの背中に張り付いている月見が、ピンと来たようににっこりした。
「出口に投げるんですな☆」
「あったりー!」
「やっぱりー!」
背中に月見を張りつけたまま、片腕でファングの襟首を掴む。
「行くぞ!」
「行くなー!」
「ありがとうさよならファング君!」
「礼かと思えば別れの挨拶かよ!?」
左半身が、完全にガラスになった。
「あ…」
喉さえ動かない。視線を動かして横を見ると、トノヤが一心不乱に
走っていた。
「オヤジ殿、俺が先に行って向こうで受け止める!」
「おう!」
視界が回った。ワッチが自分を掴んでいる手を後ろに振ったらしい。
「おおおおおお――!」
・・・★・・・
「・・・」
アイボリー=ドルーウィは、静かに聖書の最後のページをめくり、
ぱたんと本を閉じた。
「ティーザでも、パールでもなく…なぜあなたがあの子を選んだのか、
わかったような気がしますよ」
本を脇に抱えて立ち上がり、彼女は今はもう誰もいない暗闇の
向こうを、そっと微笑しながら見つめた。
「あの子は、あなたにそっくりです」
・・・★・・・
気がついたら、宙に浮いていた。
目を見開いて、自分の身体が回転しているのを感じる。
だが、一瞬後には、もう落ちている――
どさぁっ!
「いって!」
「つ…」
自分の上げた声に驚いて、はっと顔を上げる。
下敷きになったトノヤは無視して、まだ『杖』を握ったままの
左手を開いて、握る。
握れた。動いた。
「戻ったァ――――――!!!」
諸手を上げて、跳ね上がる。ひとしきり騒いでから、
ふと背中で乾いた音を聞いた。
ぱりん。
最初は、その音がなんなのかわからなかった――
怪力の剣闘士ワッチ、出所不明のテンション右肩上がり少女、月見と、
父の残した『遺産』を探しているトレジャーハンター、ファングは、
ひょんな事から出会い、共に『遺産』を探すことになった。
今回のお宝は『浅葱の杖』。
【月も太陽も星もいらぬ。欲望は闇に埋まる――闇を食らう浅葱の杖】
という詩のみを頼りに、勢いで炭鉱まできた3人。
正体不明でしかもヤル気ゼロのトノヤを加え、さらに進む一行。
だが、なぜか炭鉱内はトラップだらけ!
それでもなんとかそこを突破した一行は、ファングの父、ウィルドから
『浅葱の杖』を守護するようにと命(めい)を受けたという、
アイボリーという女に出会う。
なんと、この炭鉱こそが『浅葱の杖』の在り処だったのだ!
そして彼女は、『浅葱の杖』を前に戸惑うファング達に、最後の謎を投げかける。
―この杖に喰らわれないうちに、この杖をここから運び出してください―
浅葱の杖とは、心の闇を喰うアイテム。
だが、『心の闇を喰う』というのは、穢れた心を持つ者を
ガラスにしてしまうという事だった。
助かる方法はただ一つ。
アイボリーが『ウィルド聖書』を読み終わるまでに、外に出ることだった――
既にファングの左腕はガラスになってしまっている。急げ一行!
・・・★・・・
キャスト:トノヤ・ファング
NPC:ワッチ・月見
場所:ヴァルカン/炭鉱の中
―――――――――――――――
「んなぁっ!もしさっ!このガラっ!スが!壊れたら!どーすんだよ!?」
「やっぱ!今後は片腕で過ごすしかねぇだろっ!」
「えー!」
走りながら喋るのは容易ではない。ましてや、片腕が固定されているため
バランスが取りにくい。
四人は全力疾走して、今来た道を引き返していた。
もう、あと数メートルで炭鉱から出ることができる。さきほどトノヤが倒したという賊の姿はなかった。
だが、ファングは違和感を感じて立ち止まった。
見れば、『浅葱の杖』を掴んだままの手から、肩、わき腹、
太ももまでガラスの波が滲出していた。
こうなってしまうと、歩くのも難しい。
「やっべー…」
「ファング!」
ランタンを持った月見を背中に背負ったまま、ワッチが走り戻ってくる。
もう灯りは必要ないだろうが、消すのを忘れているらしい。
トノヤも足を止めて、遠巻きにこちらの様子を伺っているようだった。
「…」
空いている右手で肩をさすってみるが、温度も鼓動もない。
血液も通っていないらしいが、肩が動かないだけであって、ほかの部位も
壊死した様子がないのが幸いだった。
出口まではそう距離はないが、それは走ったらの話だ。
頭(こうべ)を垂れるファングに向けて、黙っていたトノヤが決心したように
声を発した。
「オヤジ殿!こうなったら最後の手段だ!」
「え?オイラ?」
意外そうに、ワッチが自分を指差してトノヤを見る。
「要は外にでりゃーいいんだろ。だったら…」
トノヤが、こちらを見ながらにぃっと口の端を吊り上げた。
「え。いや待てお前。なんか俺スゲー心配」
ふつふつと、冷たい汗がファングの背中をつたう。
半身はほぼガラスになってしまっているせいで、後退ることもできない。
と、ワッチの背中に張り付いている月見が、ピンと来たようににっこりした。
「出口に投げるんですな☆」
「あったりー!」
「やっぱりー!」
背中に月見を張りつけたまま、片腕でファングの襟首を掴む。
「行くぞ!」
「行くなー!」
「ありがとうさよならファング君!」
「礼かと思えば別れの挨拶かよ!?」
左半身が、完全にガラスになった。
「あ…」
喉さえ動かない。視線を動かして横を見ると、トノヤが一心不乱に
走っていた。
「オヤジ殿、俺が先に行って向こうで受け止める!」
「おう!」
視界が回った。ワッチが自分を掴んでいる手を後ろに振ったらしい。
「おおおおおお――!」
・・・★・・・
「・・・」
アイボリー=ドルーウィは、静かに聖書の最後のページをめくり、
ぱたんと本を閉じた。
「ティーザでも、パールでもなく…なぜあなたがあの子を選んだのか、
わかったような気がしますよ」
本を脇に抱えて立ち上がり、彼女は今はもう誰もいない暗闇の
向こうを、そっと微笑しながら見つめた。
「あの子は、あなたにそっくりです」
・・・★・・・
気がついたら、宙に浮いていた。
目を見開いて、自分の身体が回転しているのを感じる。
だが、一瞬後には、もう落ちている――
どさぁっ!
「いって!」
「つ…」
自分の上げた声に驚いて、はっと顔を上げる。
下敷きになったトノヤは無視して、まだ『杖』を握ったままの
左手を開いて、握る。
握れた。動いた。
「戻ったァ――――――!!!」
諸手を上げて、跳ね上がる。ひとしきり騒いでから、
ふと背中で乾いた音を聞いた。
ぱりん。
最初は、その音がなんなのかわからなかった――
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