キャスト:トノヤ・月見・ファング
NPC:ワッチ
場所:ヴァルカン/街道(馬車の中)
―――――――――――――――
本当にいい天気。
まっさらな青空、清清しい風。
だというのに、だというのに、何故こんなにも。
――澱んだ目をしているのだろう。
まるで絵の具を流したかのように、印を切る指を伝う赤ははっきりと見えて思
わずその光景が幻想だと勘違いしてしまう。
しかし、老人が纏う死臭がその幻想をぶち壊す。
「勘弁してくんねぇー?いや、マジ勘弁。」
ファングの隣でトノヤが両手を顔を覆いうめく。
先ほどの戦闘で上着が被害にあった彼にとって、これ以上の被害は御免こうむ
りたい。
トノヤが着ている服は特殊な服でファングはあのようなデザインの服を見たこ
とがない。
ハンドメイドのものだろうか……ならばトノヤの焦燥も頷ける。
周囲の乗客も老人に奇行に気づき、ざわめきをひそめる。
数秒もたつと乗客は皆、老人から離れた位置へと退避していた。
それほどまでに、老人のまとう雰囲気は常人のものとはかけ離れたものだっ
た。
乗客が一方面へと集まったため、馬車が前方向にギシギシと沈む。
馬の苦しげな嘶きが静寂の中に響いた。
それでもなお、馬車は動きを止めない。
岩道に入ったのだろうか、ガタガタと大きく揺れる、
「ひひひ……ネクロマンサー……そう、それだ……それだよ!」
何がうれしいのか、まるで笑いが止まらないとでもいうように小刻みに肩を震
わせながら言葉をつむぐ。
引きつったその声は不思議と苦痛に満ちていた。
印を切るスピードが段々と加速していく。
「ややややややややばい感じじゃないっすかー?!運転手さーん!」
大声で呼びかけるが、馬車の走る音にかき消されているのか返答はない。
無駄に混乱しているの高い月見が運転席へと詰め寄る。
「どうしようか。」
どうしようもないこの状況、ただただ印をきる不気味な老人。
まだこの老人がネクロマンサーと確定したわけではないが、先ほどのアンデッ
ドと何らかの関係があることは確かだ。
警戒は解けないが、だからといってどうすることもできない。
「とかいいつつなんでオイラを盾にするかなファング。」
「……いや、だって俺って非戦闘要員だし。」
それにこの狭い場所では自分の武器は不利だ、とつけくわえる。
ファングの武器、チャクラムはドーナツ型の薄い刃物だ。
敵に投擲して使用する武器のため、広い場所や遠い敵を対象とする場合に力を
発揮するため馬車のような狭い場所には向かないのだ。
(オイラの剣も狭い場所で使うには向かないんだけどなぁ)
ワッチの武器は使用者が大柄なため、通常の剣よりもサイズが大きいのだ。
ゆえに小回りがきかない。
もちろん、月見のフンドシは論外だ。さまざまな意味で。
となるとこの場所で一番有効な武器を持っているのは……。
「………うっわ、スッゲェ。」
この場所で一番有効な武器の持ち主――トノヤは微かにドアを開けて外を見て
いる。
この場の状況などお構いなしにただただ外の風景にはしゃいでいる。
まるで子供のような無邪気な態度に毒気を抜かれる。
しかし。
「空飛んでら。」
その言葉に、乗客全員の視線が一気にドアの外へと注がれる。
そこにはファング達が再度馬車に乗り込むときに見た雲ひとつない青空が広が
っている。
ただ、それだけ。
そこにあるのは透き通るような蒼穹のみ。
――そういえば、馬車の振動はいつのまにかなくなっていた。
「お前達……ひひひ……『アレ』を持ってるんだろう……ひひひひ」
その時、運転席へと詰め寄った月見は呆然とその風景を見ていた。
大きな鳥の足が馬車を掴み、大空を舞っている。
その鳥の向かう先の荒涼ろした更地に、古い屋敷のようなものが立っていた。
周囲には、大小様々な土の山が無数に存在している。
馬車と舞うその鳥は、骨で出来ていた。
NPC:ワッチ
場所:ヴァルカン/街道(馬車の中)
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本当にいい天気。
まっさらな青空、清清しい風。
だというのに、だというのに、何故こんなにも。
――澱んだ目をしているのだろう。
まるで絵の具を流したかのように、印を切る指を伝う赤ははっきりと見えて思
わずその光景が幻想だと勘違いしてしまう。
しかし、老人が纏う死臭がその幻想をぶち壊す。
「勘弁してくんねぇー?いや、マジ勘弁。」
ファングの隣でトノヤが両手を顔を覆いうめく。
先ほどの戦闘で上着が被害にあった彼にとって、これ以上の被害は御免こうむ
りたい。
トノヤが着ている服は特殊な服でファングはあのようなデザインの服を見たこ
とがない。
ハンドメイドのものだろうか……ならばトノヤの焦燥も頷ける。
周囲の乗客も老人に奇行に気づき、ざわめきをひそめる。
数秒もたつと乗客は皆、老人から離れた位置へと退避していた。
それほどまでに、老人のまとう雰囲気は常人のものとはかけ離れたものだっ
た。
乗客が一方面へと集まったため、馬車が前方向にギシギシと沈む。
馬の苦しげな嘶きが静寂の中に響いた。
それでもなお、馬車は動きを止めない。
岩道に入ったのだろうか、ガタガタと大きく揺れる、
「ひひひ……ネクロマンサー……そう、それだ……それだよ!」
何がうれしいのか、まるで笑いが止まらないとでもいうように小刻みに肩を震
わせながら言葉をつむぐ。
引きつったその声は不思議と苦痛に満ちていた。
印を切るスピードが段々と加速していく。
「ややややややややばい感じじゃないっすかー?!運転手さーん!」
大声で呼びかけるが、馬車の走る音にかき消されているのか返答はない。
無駄に混乱しているの高い月見が運転席へと詰め寄る。
「どうしようか。」
どうしようもないこの状況、ただただ印をきる不気味な老人。
まだこの老人がネクロマンサーと確定したわけではないが、先ほどのアンデッ
ドと何らかの関係があることは確かだ。
警戒は解けないが、だからといってどうすることもできない。
「とかいいつつなんでオイラを盾にするかなファング。」
「……いや、だって俺って非戦闘要員だし。」
それにこの狭い場所では自分の武器は不利だ、とつけくわえる。
ファングの武器、チャクラムはドーナツ型の薄い刃物だ。
敵に投擲して使用する武器のため、広い場所や遠い敵を対象とする場合に力を
発揮するため馬車のような狭い場所には向かないのだ。
(オイラの剣も狭い場所で使うには向かないんだけどなぁ)
ワッチの武器は使用者が大柄なため、通常の剣よりもサイズが大きいのだ。
ゆえに小回りがきかない。
もちろん、月見のフンドシは論外だ。さまざまな意味で。
となるとこの場所で一番有効な武器を持っているのは……。
「………うっわ、スッゲェ。」
この場所で一番有効な武器の持ち主――トノヤは微かにドアを開けて外を見て
いる。
この場の状況などお構いなしにただただ外の風景にはしゃいでいる。
まるで子供のような無邪気な態度に毒気を抜かれる。
しかし。
「空飛んでら。」
その言葉に、乗客全員の視線が一気にドアの外へと注がれる。
そこにはファング達が再度馬車に乗り込むときに見た雲ひとつない青空が広が
っている。
ただ、それだけ。
そこにあるのは透き通るような蒼穹のみ。
――そういえば、馬車の振動はいつのまにかなくなっていた。
「お前達……ひひひ……『アレ』を持ってるんだろう……ひひひひ」
その時、運転席へと詰め寄った月見は呆然とその風景を見ていた。
大きな鳥の足が馬車を掴み、大空を舞っている。
その鳥の向かう先の荒涼ろした更地に、古い屋敷のようなものが立っていた。
周囲には、大小様々な土の山が無数に存在している。
馬車と舞うその鳥は、骨で出来ていた。
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