キャスト:トノヤ・月見・ファング
NPC:ワッチ
場所:ヴァルカン/古い屋敷上空(馬車の中)~古い屋敷敷地内
―――――――――――――――
「俺たちさぁ、壊れた杖なおしに行くのにガラス職人のトコに向うんだったよーな」
「今さらそんなこと確認したって意味ないぞファング」
そんなのんきな会話もつかの間に。
眼下に広がるありえない風景に馬車の中は一気にパニックになった。
今まで固まっていた者たちまで自分の中で何があったんだかバタバタと動き出す。
追い込まれた人間はなにをしでかすかわからないものだ。
そうなればあとに起ることは誰だって大体そうぞうがつく。
「う、うわっ落ちるーーーー!」
がくん、と数度かたむき、乗客が片側へなだれこんだ。
馬車のそとで喉のイカレた鳥の甲高い掠れた声とともに軽い木でも折れたような音が
した。
重心がいった側を支えていた骨でできた鳥が、重みに耐えきれずボロボロと脱落して
行く様をトノヤは見た。
更に馬車は傾き沈んでゆく。
「おいおい、何羽か折れて落ちてッたぞ。危なくね?」
「どどどどーしてそんなに冷静でいられるんだお前は!危ないよ!あー危ないさ!うっ
わ」
「運転手どのー!安全運転でおねがいしますぞってあーーーーーーーれーーーーー」
「あひひひひひひひひ」
落ち始めれば事は早かった。
普段味わうことのないほどの浮遊感と恐怖に意識が朦朧とする中、ファングは見た、
気がした。
右も左も、天地さえもわからなくなっているこの状態で、むくりと立ち上がる人影。
白いワイシャツに襞の入った短いスカート。眼鏡をかけた黒い髪の少女。
その人影がこちらを向いた。
月見、に見えたがファングはすぐに人違いだと思った。
この状況の中微笑をうかべたその顔、目は笑っていない。
ファングと目があうと口の端をさらに上げた。
理由のわからない悪寒が走る。
そこでやっとファングの意識は飛んだ。
馬車は山々に消えて行った。
「っつ………」
「あ、気付いた」
月見はどこかに横たわっていた。
酷く冷えた固い土の上だとしばらくして気付いた。
目を開けたが薄暗くて何も見えなかった。
眼鏡がずれているのに気付き、なおして改めて周りを確認した。
「あれ、ここはどこで……」
「黄泉の国へよーこそー」
「あぎゃーーー!!!!」
振返るとそこには、ランタンで下から顔を照らした白目のトノヤ。
期待通りのリアクションにひっひっひと笑う。
「やめろよなートノヤ」
「はぁ、ガキだな少年」
「ひっひっひ、見たかよ今の月見の顔!あひゃひゃひゃ」
「聞いちゃいないし。つか笑い方汚ねーよ」
何がなんだかという顔で月見はぽかーんと三人の顔を見る。
周りは相変わらず薄暗く、背の低い木がぽつんぽつんと生えている。
薄暗いのは日が落ちたとかいうわけでもなく霧が濃いためだと気付いた。
遠くにいかにも出そうな古い洋館が見える。
周辺で一番背が高い木の下に馬車が横たわっていた。
他の乗客は見当たらない。馬車の中に居るのだろうか。
「な、無事なんですかぃ!?なんでぇ!?だって馬車……ええっ!?」
「俺もついさっき起きたからよーわからんけど、根暗なんとかさんが助けてくれたん
じゃないの?」
「ネクロマンサー」
「そうそう………って、まさか、またっ」
どこかで遭った展開にファングは背筋がぞっとしてあたりを見回した。
「いや、普通にオイラだけどね」
「なんだよ、ワッチんか」
声の主が想像した異常者ではないと知ってファングは胸を撫で下ろす。
確かに周りは未だに自分達4人だけしか確認出来なかった。
「ビビリーだな」
「なっ……!」
「まあまあ、それよりこれからどうするか、だろ」
ワッチに言われ、皆ため息まじりに黙り込む。
どうするといわれても皆あまりの展開についていけていなかった。
しばらくの沈黙の後、
「うう、何か空腹な予感はいたしませんか皆の衆……」
月見のめずらしく控え目なセリフに
『ぐぅううう~~~~』
裏合わせでもしていたかのように腹の音大合唱。
4人とも力なくその場に座り込む。
「言ってはいけないことを……」
辺りの霧で昼なのか夜なのか定かではないが、少なくともランチの時間は過ぎている
ことは確かそうだ。
「そこで提案でありますっ。ダッシュであの素敵な雰囲気を放っておるお宅に突撃と
なりの晩御飯!!」
「古っ」
とてもお世辞にも素敵とは言えない館を指をさして月見はそのまま倒れこんだ。
「何だって?」
この世界の者がデカいしゃもじネタを想像出来るわけもなく、月見のセリフに理解出
来ずワッチとファングは顔を見合わせた。
「あー……とりあえずあのカビ臭そうな洋館でメシでもたからねーかって話」
「ええ、明らかに誰も居なそうだけど」
「居たとしてもオイラはちょっとかんべんだなぁ」
と、言いつつワッチは月見を背負い、一行は館へ向った。
三人とも、他の乗客は、と言おうとしては呑み込んだ。
すでにいっぱいいっぱいの頭は、もうコレ以上問題ごとを持ってこられても処理でき
るわけがなかった。
余計なことは気付くな。という暗黙の了解。
ガラス職人のもとにはいつになったらたどり着けるのだろうか。
三人同時に出たため息がそれを語っていた。
NPC:ワッチ
場所:ヴァルカン/古い屋敷上空(馬車の中)~古い屋敷敷地内
―――――――――――――――
「俺たちさぁ、壊れた杖なおしに行くのにガラス職人のトコに向うんだったよーな」
「今さらそんなこと確認したって意味ないぞファング」
そんなのんきな会話もつかの間に。
眼下に広がるありえない風景に馬車の中は一気にパニックになった。
今まで固まっていた者たちまで自分の中で何があったんだかバタバタと動き出す。
追い込まれた人間はなにをしでかすかわからないものだ。
そうなればあとに起ることは誰だって大体そうぞうがつく。
「う、うわっ落ちるーーーー!」
がくん、と数度かたむき、乗客が片側へなだれこんだ。
馬車のそとで喉のイカレた鳥の甲高い掠れた声とともに軽い木でも折れたような音が
した。
重心がいった側を支えていた骨でできた鳥が、重みに耐えきれずボロボロと脱落して
行く様をトノヤは見た。
更に馬車は傾き沈んでゆく。
「おいおい、何羽か折れて落ちてッたぞ。危なくね?」
「どどどどーしてそんなに冷静でいられるんだお前は!危ないよ!あー危ないさ!うっ
わ」
「運転手どのー!安全運転でおねがいしますぞってあーーーーーーーれーーーーー」
「あひひひひひひひひ」
落ち始めれば事は早かった。
普段味わうことのないほどの浮遊感と恐怖に意識が朦朧とする中、ファングは見た、
気がした。
右も左も、天地さえもわからなくなっているこの状態で、むくりと立ち上がる人影。
白いワイシャツに襞の入った短いスカート。眼鏡をかけた黒い髪の少女。
その人影がこちらを向いた。
月見、に見えたがファングはすぐに人違いだと思った。
この状況の中微笑をうかべたその顔、目は笑っていない。
ファングと目があうと口の端をさらに上げた。
理由のわからない悪寒が走る。
そこでやっとファングの意識は飛んだ。
馬車は山々に消えて行った。
「っつ………」
「あ、気付いた」
月見はどこかに横たわっていた。
酷く冷えた固い土の上だとしばらくして気付いた。
目を開けたが薄暗くて何も見えなかった。
眼鏡がずれているのに気付き、なおして改めて周りを確認した。
「あれ、ここはどこで……」
「黄泉の国へよーこそー」
「あぎゃーーー!!!!」
振返るとそこには、ランタンで下から顔を照らした白目のトノヤ。
期待通りのリアクションにひっひっひと笑う。
「やめろよなートノヤ」
「はぁ、ガキだな少年」
「ひっひっひ、見たかよ今の月見の顔!あひゃひゃひゃ」
「聞いちゃいないし。つか笑い方汚ねーよ」
何がなんだかという顔で月見はぽかーんと三人の顔を見る。
周りは相変わらず薄暗く、背の低い木がぽつんぽつんと生えている。
薄暗いのは日が落ちたとかいうわけでもなく霧が濃いためだと気付いた。
遠くにいかにも出そうな古い洋館が見える。
周辺で一番背が高い木の下に馬車が横たわっていた。
他の乗客は見当たらない。馬車の中に居るのだろうか。
「な、無事なんですかぃ!?なんでぇ!?だって馬車……ええっ!?」
「俺もついさっき起きたからよーわからんけど、根暗なんとかさんが助けてくれたん
じゃないの?」
「ネクロマンサー」
「そうそう………って、まさか、またっ」
どこかで遭った展開にファングは背筋がぞっとしてあたりを見回した。
「いや、普通にオイラだけどね」
「なんだよ、ワッチんか」
声の主が想像した異常者ではないと知ってファングは胸を撫で下ろす。
確かに周りは未だに自分達4人だけしか確認出来なかった。
「ビビリーだな」
「なっ……!」
「まあまあ、それよりこれからどうするか、だろ」
ワッチに言われ、皆ため息まじりに黙り込む。
どうするといわれても皆あまりの展開についていけていなかった。
しばらくの沈黙の後、
「うう、何か空腹な予感はいたしませんか皆の衆……」
月見のめずらしく控え目なセリフに
『ぐぅううう~~~~』
裏合わせでもしていたかのように腹の音大合唱。
4人とも力なくその場に座り込む。
「言ってはいけないことを……」
辺りの霧で昼なのか夜なのか定かではないが、少なくともランチの時間は過ぎている
ことは確かそうだ。
「そこで提案でありますっ。ダッシュであの素敵な雰囲気を放っておるお宅に突撃と
なりの晩御飯!!」
「古っ」
とてもお世辞にも素敵とは言えない館を指をさして月見はそのまま倒れこんだ。
「何だって?」
この世界の者がデカいしゃもじネタを想像出来るわけもなく、月見のセリフに理解出
来ずワッチとファングは顔を見合わせた。
「あー……とりあえずあのカビ臭そうな洋館でメシでもたからねーかって話」
「ええ、明らかに誰も居なそうだけど」
「居たとしてもオイラはちょっとかんべんだなぁ」
と、言いつつワッチは月見を背負い、一行は館へ向った。
三人とも、他の乗客は、と言おうとしては呑み込んだ。
すでにいっぱいいっぱいの頭は、もうコレ以上問題ごとを持ってこられても処理でき
るわけがなかった。
余計なことは気付くな。という暗黙の了解。
ガラス職人のもとにはいつになったらたどり着けるのだろうか。
三人同時に出たため息がそれを語っていた。
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