キャスト:ワッチ・月見・ファング
場所:ヴァルカン―月見亭
―――――――――――――――
「『暴れ山羊』」
ぽつりと、ファングは目の前の店の看板を読み上げた。
足元には、ワッチとファングに蹴り倒され、顔を抑えてうめいている男がふたり。
あとの一人は、ようやく左右にいた自分の仲間が倒れている様子に気づいたらしい。
「てめぇ――」
そして男は遅くも我に返ったのか、怒声の一つでもあびせようと振り返りかけた――
が。
「はーいそこの一万円ぽっきりマッチョさんvvお客様なら目のま」
ごぎ。
わざとやっているにしか見えないタイミングで首を出した月見は、案の定
男が着ている鎧の装飾のひとつに後頭部を思い切り打たれ、ずるずると石畳に沈んだ。
「ふ・・・ふふ・・・もうプレイは始まっているわけね・・・さすがマッチョさん。ただものじゃないッ★」
「お前のnotただ者レベルには負けっぞ。オイ」
顔面を血で真っ赤にして嬉々としてつぶやく月見を見て滝のように汗を流しながら、
ファングはかかとを倒れた男の頬から離さないままうめいた。
隣ではワッチが不思議そうな顔をしてこちらのやりとりを見ているが、
同性の視線を受けるのはあまり気持ちのいいものではない。
とりなすように、あーとか言いながらファングは、自分より頭一つは上背のある男を
遠慮することなく見上げた。
「なぁなぁオッサン達、さっき何やろーとしてたの??」
「あ゛ァ!?」
「・・・うるさいのぅ」
突然会話に割り込んできたしわがれ声に目を向けると、今にも倒壊しそうな店
(というかファングの目には廃材の山に見えた)から、背の小さな老人が
面倒くさそうにその短い足を使って店の中から出てきた。
背はファングの膝までしかないというのにでっぷりと太った体躯で、
鼻と頬が真っ赤である。目など顔の肉でほとんど見えない。
ファングは直感した。
(ドワーフだ)
「さっきからワシの店先でガヤガヤガヤガヤ・・・」
久し振りに日の目を見た、とでもいいたげにしかめ面で晴天を仰いで、
しかし頑ななままに、やぶにらみでこちらに顔を向ける。
――どうやらこの店の鍛冶屋なのだろうが。
「親父・・・」
ワッチが大きな体躯をちぢめるようにしながら、一歩前に出た。
できれば店の中に入っていてもらいたかったと、困った顔が言っている。
すると、あー!という野太い非難の声が背後から上がった。
同時に、両脇で寝ていた二人の男も顔に怒気を含めて立ち上がってきていた。
「おいジジイ!てめぇ、こんなに役に立たねぇ武具売りやがって!金返せ!」
「・・・武具っちゅうもんは、役に立てるもんじゃなかろうに」
やはり小声でぶつぶつと毒づいて、ドワーフはひっく、と酒臭い息を喉から押し出した。
片手に持った酒瓶――人間用のサイズなので彼自身の身長ほどもあるが、中身は
半分もなかった――を両手で傾けて、飲み干してしまう。
一連の動作がひどく緩慢であり、それがさらに男達の怒りを増長させたらしい。
「いやーん!じっさまちっちゃくてカワイイだもーvvvv」
いきなり月見が復活する。
それを見て鍛冶屋に詰め寄ろうと一歩足を踏み出した男は、
そのまま一歩後ろへ下がった。
場所:ヴァルカン―月見亭
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「『暴れ山羊』」
ぽつりと、ファングは目の前の店の看板を読み上げた。
足元には、ワッチとファングに蹴り倒され、顔を抑えてうめいている男がふたり。
あとの一人は、ようやく左右にいた自分の仲間が倒れている様子に気づいたらしい。
「てめぇ――」
そして男は遅くも我に返ったのか、怒声の一つでもあびせようと振り返りかけた――
が。
「はーいそこの一万円ぽっきりマッチョさんvvお客様なら目のま」
ごぎ。
わざとやっているにしか見えないタイミングで首を出した月見は、案の定
男が着ている鎧の装飾のひとつに後頭部を思い切り打たれ、ずるずると石畳に沈んだ。
「ふ・・・ふふ・・・もうプレイは始まっているわけね・・・さすがマッチョさん。ただものじゃないッ★」
「お前のnotただ者レベルには負けっぞ。オイ」
顔面を血で真っ赤にして嬉々としてつぶやく月見を見て滝のように汗を流しながら、
ファングはかかとを倒れた男の頬から離さないままうめいた。
隣ではワッチが不思議そうな顔をしてこちらのやりとりを見ているが、
同性の視線を受けるのはあまり気持ちのいいものではない。
とりなすように、あーとか言いながらファングは、自分より頭一つは上背のある男を
遠慮することなく見上げた。
「なぁなぁオッサン達、さっき何やろーとしてたの??」
「あ゛ァ!?」
「・・・うるさいのぅ」
突然会話に割り込んできたしわがれ声に目を向けると、今にも倒壊しそうな店
(というかファングの目には廃材の山に見えた)から、背の小さな老人が
面倒くさそうにその短い足を使って店の中から出てきた。
背はファングの膝までしかないというのにでっぷりと太った体躯で、
鼻と頬が真っ赤である。目など顔の肉でほとんど見えない。
ファングは直感した。
(ドワーフだ)
「さっきからワシの店先でガヤガヤガヤガヤ・・・」
久し振りに日の目を見た、とでもいいたげにしかめ面で晴天を仰いで、
しかし頑ななままに、やぶにらみでこちらに顔を向ける。
――どうやらこの店の鍛冶屋なのだろうが。
「親父・・・」
ワッチが大きな体躯をちぢめるようにしながら、一歩前に出た。
できれば店の中に入っていてもらいたかったと、困った顔が言っている。
すると、あー!という野太い非難の声が背後から上がった。
同時に、両脇で寝ていた二人の男も顔に怒気を含めて立ち上がってきていた。
「おいジジイ!てめぇ、こんなに役に立たねぇ武具売りやがって!金返せ!」
「・・・武具っちゅうもんは、役に立てるもんじゃなかろうに」
やはり小声でぶつぶつと毒づいて、ドワーフはひっく、と酒臭い息を喉から押し出した。
片手に持った酒瓶――人間用のサイズなので彼自身の身長ほどもあるが、中身は
半分もなかった――を両手で傾けて、飲み干してしまう。
一連の動作がひどく緩慢であり、それがさらに男達の怒りを増長させたらしい。
「いやーん!じっさまちっちゃくてカワイイだもーvvvv」
いきなり月見が復活する。
それを見て鍛冶屋に詰め寄ろうと一歩足を踏み出した男は、
そのまま一歩後ろへ下がった。
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