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2025/03/10 07:12 |
浅葱の杖――其の三/ファング(熊猫)
キャスト:ワッチ・月見・ファング
場所:ヴァルカン
―――――――――――――――

「手がかり?そっち系の?」
「最低30秒は黙らんと絞めるぞ」
「えーっとだな。今回、聞き込みからは何もヒントがなかったろ?――まぁ、
オヤジが勝手に『宝』って判断したんだから、街の人に聞いてもヒットする確率は
少ないよな」
「そ、そんな事してたとはぐげぇ」

地図を持ったまま、街に顔を向ける。耳の奥に響く鋭い音は、炭鉱を
掘り進んでいる音だ。この街ではどこにいてもそれが聞こえる。

「だから俺なりに調べてみたんだけど、このあたりの炭鉱はほとんど
稼働してるんだな。そうなるとそこはバツだ」
「どーして炭鉱なの?オヤぢ殿・・・ギブ・・・」

とりあえずまだ声は出るらしい月見。

「『月も太陽も星もいらぬ。欲望は闇に埋まる―――闇を食らう浅葱の杖』。
月も太陽も星もいらぬ・・・って事は、閉鎖されて光の届かないところって
いう事だろ?もしかしたら「光がいらないほど明るい」っていう意味かも
しんないけどさ、お宝ってやっぱ暗いところにあるもんじゃん」
「そーゆーもんか?」

月見の首を丸太のような腕でぎちぎち絞めながら――会話はあくまで
晴天の下でするそれと同じで、ワッチが口を挟んでくる。

ワッチは、それこそ月見くらいなら中に入れそうなほど巨大な
バックパックを背負っている。この際だからと、装備を完璧にしたのだ。
もっとも背負っている本人は、その重量ですら気に介していないようだが。

「そーゆーもん。だからこの街で暗いところっつったら炭鉱ぐらいしかないだろ。
街の中の屋敷のクローゼットの中とかだったら俺も困るけど」
「もしかして浅葱の杖ってしたぎぐぇ」

今開いているのはヴァルカンの地図である。既に書き込みでいっぱいのそれを、
ようやくワッチから抜け出した月見によく見えるようにしてやる。

「・・・んで、ここいらで閉鎖されている炭鉱はみっつ。今稼働している所はまず探せないから、
閉鎖されている所から先に探すってハナシ」

すっ、と地図の上で指を滑らせる。

「ひとつは土砂崩れで文字通り閉鎖。掘り出すとしても無理だな。許可とか取らなきゃいけないかもだし。
ひとつは普通に石炭があんまでないからってんで閉鎖だけど、作られたのは3年前だからな。これも違う。
んでもうひとつが――普通に閉鎖。100年前にね」

ワッチはやれやれと座り込んでいる。そちらにとりあえず足元の石を蹴ると、
「だって長話嫌いなんだよオイラ」――同感だったが、ファングはもうひとつ石を蹴った。

「なんでそこ――まぁ、ここなんだけど、が閉鎖されたのはわかんなかった。
もしかして浅葱の杖と関係してるかもしんないわけだ。
・・・ビンゴかもよ?」

みっつめの石で、ようやくワッチが立ち上がった。

「じゃ、行こうか」

三人は一列になって、岩盤がむきだしの森に入っていった。
風が吹き、砂を飛ばす。
横長の四角いシルエットの、錆びた看板が切れた鎖と共に落ちている。

【立入禁止】
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2007/03/09 00:53 | Comments(0) | TrackBack() | ●浅葱の杖

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