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2024/05/17 02:22 |
ランブル: a heartrending sorrow/月見(スケミ)
出演:月見
場所:ソフィニア~ヴァルカン
NPC:青年・女占い師


何だか、不思議な感じだった。
自分ではない誰かが自分の中にいて、気付いたら同化してたり入れ代わっているよう
な。
まぁ、ここはあたしが住んでた世界とはまったく違うファンタジィな世界だし何が起
こってもおかしくはないんだけど…。
それとも健忘症か?!まだまだ現役の女子高生なのに……くッ。
しかし、気付いたらブラジャーつけ忘れてたりノーパンだったりするのは御勘弁して
もらいたい。
いや、マヂな話。
生理の日なんてもっての他だって!



「さーてとっ…そろそろ行ってみよかッ★」

フォーちゃん達と別れてから数分後、あたしも新たな世界(というか温泉)に旅立つ
べく部屋からマイリュックを取りに行った次第である。
愛用の緑のリュックをしょったあたしは未だ慣れない現在の状況にどきどきしつつ、
『一人で』宿屋を出た。
今日の天気はまあまあって感じで、時たま太陽が雲に隠れる晴れのち曇り。
とりあえずあたしの旅の始まりにしてはオッケイな感じで…。

(一人旅…か…。)

見知らぬ世界で見知らぬ人町での一人旅。
今までならフォーちゃんやソフィアちゃんがいたからなんとかこのあたしでも何とか
やってこれたんだけど……。
あたしは今朝、大問題を発見してしまったのだッ。
右手をスカートのポケットに突っ込み、くしゃくしゃのメモ用紙を取り出す。
今朝、旅立つ前にソフィアちゃんが書いてくれたこの世界の有名な温泉のある場所を
書いてもらったものだ。
さすがはソフィアちゃん、可愛いし気がきくし愛らしいし………
……やはしルシードにやったのは間違いだったかッ?!
いやいやいや!
それはどっかに投げ捨てて。
あたしは改めてソフィアちゃん直筆のメモ用紙を読もうと試みた。

「………………………どぅふっ」

読めない。
爆発的に読めない。
よーっく考えてみれば当たり前じゃないか自分!
あたしはこの世界の住人でないのだからこっちの世界の文字が読めないのはッ!!
くそ、お茶目さんな自分め……こんなところでお茶目しても誰も見て無いというか見
ても何も思わないッ。
ということはアレだ。
地図を読めない、標識読めない…旅どころじゃない。
いやいやッ、それよりもだッ。
食べ物屋だと思って入ったところがこう……アレだ、アダルティックアイテムショッ
プだったらどうするんだあたしッ!!!
願ったり叶ったりだわよッ!!!!!

そんなことを悶々と考えて考えて考えまくったりするあたし。
なので、人影があたしの前に立ちはだかったも気付く事はなく…。

「おい、貴様。」
「ぬぉあああッ?!」

あたしはその声に驚いて足を止める。
いきなり話し掛けられたからではない。
文字では分かりにくいとは思っちゃったりしますが……
アレです、田舎産まれのあたしでもかなりアレです旦那。

「やっと見つけたぞ。」

かなり訛ってるッ!!!

折角のまとも気な台詞が台なしだ!!
立ちはだかった青年は年の頃は……私的鑑定眼によるとおおよそ二十代後半かッ?!
ぼさぼさの茶髪をポニーテイルに結んだ青年はまるで侍のような格好で、着流しを着
ていた。
腰には日本刀らしきものまでも。

(ぶ、物騒なモンをッ!)

きっと下着はフンドシだと予想。
いや、その前に見知らぬ人に話し掛けられたこの状況をどうにかしなければッ。
これは…アレか、ついにあたしにもナンパが……。
ん?
気付けば、あたしは刀を突き付けられていた。
なんて…なんて大胆なッ!
ここでこの心意気に答えられねば女の恥ッ

「いやいや青年よッ!そんな刀で脅さなくともお茶なら是非とも付き合……」

あたしは爽やかに刀を押し退けて青年に近付こうとしたが…。

ざくり。

「ぬぉ?」

左手を、少し斬られた。
血がじわじわと溢れてくる。

「な、なんて遠慮ないッ!!」

そう言って青年を睨みながら言う。
しかし青年は口元に嫌な笑みを浮かべ、こう言った。

「充分遠慮してるぜ。……なんだ、本気だしてもいいのか?」

本気だとどうなってしまうのだろう自分…。

「……すみません」

取り敢えず謝るが吉ッ。
しかしながら青年は刀を納めない…どころか徐々に近付いてくる。
どうやら……色んな意味であたしの大勘違いだったらしい。
奴はあたしの命を狙う気か?!
それとも大穴大本命でハードSMをやりたいのかッ?!
それならば考えないこともないがッ

「ちょっと待て…ここは穏便に甘く柔らかく話をば…ッ」
「その姿でごまかせると思うなよ!オレから逃げようったってそうはいかねぇ」
「というか斬るな!!!この油ギッシュな肌を斬るたぁいい度胸だッ」

必死にあとずさりつつ色々と言葉責めをしているあたしだったりしますが青年、全然
耳をかしませんッ。
やっぱり訛ってるから標準語がわからないのか?!
まあ、あたしも多少は訛ってるので人の事は言えないがな!!!

「うあ…行き止まり…ッ★」

背後に手をつく。
どうやらずりずりと後ずさりしていくうちに裏路地に入った挙げ句、行き止まりの道
に来てしまったらしい。
後ろには逃げられない。
目の前には謎のハードSM田舎侍が刀を構えつつ近付いてくる。
とても、あり得ない状況におちいっている。

「死ね!」

刀があたしの頭を狙って一直線に落ちてくる!
ヤヴェ、死ぬ。
そう思った刹那…
あたしは身体が分解したような奇妙な感覚に陥った。



ソフィニアの中心部にそびえたつ時計塔。
女占い師は時計塔の最上階にいた。
その部屋は長い間使われてなかったようでところどころ埃があった。
窓は、無い。
集中を解き、瞳を開ける。
術は、成功した。

「最後だし…ね。」

今頃彼女は遠く離れた地にいるであろう。
これでしばらくは彼等から逃れられるはずだ。
しかし…いつかきっと、対面しなければならない時がくるであろう。
真実と。
どこからか鈴の音が聞こえる。
澄んだ音色だ。
気付くと、女占い師の姿は消えていた。



傷がやけに染みる。
身体がなんだかあったかいものにつつまれていた。
これは…お湯、だろうか……。
でも実際そんなこたぁ、どうでもいい感じやも。
あたたかくて、気持ちよくて、このまま寝てしまいたい。



月見は落ちた地。
そこはヴァルカン。
火山に生き、火山を喰らう街。
彼女はまだ気付いてはいない。
彼女が今漬かっている湯、そこが男湯だということに。


続く
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2007/03/09 00:47 | Comments(0) | TrackBack() | ●浅葱の杖

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