「えー……っと、意味が分からないんだけど?」
頭一杯を疑問符で覆われながら、レインがオーガスに訊ねる。
「あと、頭あげて下さい。そんなコトされても困ります」
こんな暴挙に出られたにも関わらず、相手が下手に出ると強く出られないレイン。
それは彼女が見た夢のせいなのか、それとも元々の気質なのか。シエルは後者だろう
なと何となく考えた。
「何なりとお聞き下さい、夢見の巫女よ」
恭しく跪いたまま、顔だけ上げてオーガスが答える。
「夢見の巫女?」
「ええそうです。天使像の力を引き出し、夢を自在に操れる夢見の巫女。私はずっと
あなた様を捜しておりました」
ますます混乱するレインを見かね、ユークリッドがオーガスへいくつか質問を浴び
せた。いろいろ回りくどいその答えを要約するとこうだ。
<昔、この島には夢見の巫女と崇められる女達がいた。
彼女たちは天使像の力を借り、夢の中で聖霊に近づくことによって
雨の降らないこの土地に実りをもたらしたのだった。
しかし時は流れ、その力を受け継ぐ者がいなくなってしまう。
島の人々は最後の望みをオーガスに託し、新たな巫女を捜していたのだ>
「えぇぇ~!」
ユークリッドの解説付き要約でやっと事態が飲み込めたらしいレインが後ずさりな
がら叫ぶ。エンジュはあまりの声の大きさに耳を塞ぎ、シエルは首を竦めた。
「で、私たちは選考漏れ?」
シエルが皮肉っぽくオーガスに問う。
「私もエンジュもそれらしい夢、見てないわ」
「そうよ!関係ないならさっさと魔力返しなさいよ!」
「まあまあ、落ち着いて姉さん」
今にも掴みかかりそうなエンジュをユークリッドが抑ようとするので、エンジュは
身を乗り出して威嚇するに止めた。シエルがエンジュに囁く。
『一つ聞くけど、魔力取り返したら全員を長距離転送出来る?』
『そんな面倒で高度な魔法、使えるワケないじゃない』
『……そうよね、エンジュだものね』
『ど-いう意味よ』
「お嬢さん方、私がお呼びしたのは天使像の力です。天使像はそれぞれが引きつけあ
う特性があるのですから」
なるほど、使い方次第では魔力に相当するモノなのかもしれない。しかし、コレで
は帰ろうにも帰れないではないか。思わず頭を抱える。
でも、あれ?何でユークリッド君まで連れてこられたのかしら。
「コレ、わざと置いていったんだな?オーガス」
ユークリッドの懐から出てきたのは、逃げ出す前に最後に出した天使像。オーガス
が格別と言った、胸の前で両手を交差させる直立の天使像だった。
「ご名答。巫女様に必要と感じますれば」
うやうやしくお辞儀をするオーガスを、半泣きの表情で見下ろすレイン。
「エンジュさん、シエルさん、ユークリッドさぁん~。助けて下さぁぁい」
助けを求めてこちらを向く姿は、底なし沼に足を取られたかのように見えた。
「で、具体的にはどうする必要があるんだ?」
ユークリッドの一言で、そういえば抽象的な話しか聞いてないなぁと振り返る。
「聖霊と契約をするんですよ。100年の恵みの契約を」
ココで精霊なんて見かけただろうか。特別な気配も感じなかったような気がして、
シエルは辺りを探ってみた。……普通に風の精霊はいるみたい。でも、契約をしてど
うこうするような存在は感じられなかった。
「何の精霊?何処にいるのか分からないわ」
「そうでしょうとも。そこが聖霊の聖霊たる所以なのです。普通の精霊ではなく、夢
見の巫女が夢の中だけで近づける存在なのですから」
誇らしげに、半ば陶酔したようなオーガスの表情になんだか疲れを感じる。いよい
よもってやれることはないのかもしれない。だから宗教は苦手だ。理解の範疇を越え
てしまっている。
「しばらく雨も降ってないのね」
レインがしゃがんで足下の枯れかけた草を見る。よく見渡せばそこかしこで枯れた
草が見え、枯れた木までもが今にも倒れそうに踏ん張っていた。
「雨が降るのを止めてもう半年です。コレが最後のチャンスなんです!」
ようやく見つけた夢見の巫女に縋るようにオーガスが訴える。目は涙で潤み、全身
から切羽詰まった様子が感じられ、レインは思わず頷きそうになって思い留まった。
「だから、どーやって聖霊に近づくのよ~」
何一つ具体的なことは聞いていないのだ。レインは思わずオーガスから目を背け、
空を仰いで叫んでいた。
頭一杯を疑問符で覆われながら、レインがオーガスに訊ねる。
「あと、頭あげて下さい。そんなコトされても困ります」
こんな暴挙に出られたにも関わらず、相手が下手に出ると強く出られないレイン。
それは彼女が見た夢のせいなのか、それとも元々の気質なのか。シエルは後者だろう
なと何となく考えた。
「何なりとお聞き下さい、夢見の巫女よ」
恭しく跪いたまま、顔だけ上げてオーガスが答える。
「夢見の巫女?」
「ええそうです。天使像の力を引き出し、夢を自在に操れる夢見の巫女。私はずっと
あなた様を捜しておりました」
ますます混乱するレインを見かね、ユークリッドがオーガスへいくつか質問を浴び
せた。いろいろ回りくどいその答えを要約するとこうだ。
<昔、この島には夢見の巫女と崇められる女達がいた。
彼女たちは天使像の力を借り、夢の中で聖霊に近づくことによって
雨の降らないこの土地に実りをもたらしたのだった。
しかし時は流れ、その力を受け継ぐ者がいなくなってしまう。
島の人々は最後の望みをオーガスに託し、新たな巫女を捜していたのだ>
「えぇぇ~!」
ユークリッドの解説付き要約でやっと事態が飲み込めたらしいレインが後ずさりな
がら叫ぶ。エンジュはあまりの声の大きさに耳を塞ぎ、シエルは首を竦めた。
「で、私たちは選考漏れ?」
シエルが皮肉っぽくオーガスに問う。
「私もエンジュもそれらしい夢、見てないわ」
「そうよ!関係ないならさっさと魔力返しなさいよ!」
「まあまあ、落ち着いて姉さん」
今にも掴みかかりそうなエンジュをユークリッドが抑ようとするので、エンジュは
身を乗り出して威嚇するに止めた。シエルがエンジュに囁く。
『一つ聞くけど、魔力取り返したら全員を長距離転送出来る?』
『そんな面倒で高度な魔法、使えるワケないじゃない』
『……そうよね、エンジュだものね』
『ど-いう意味よ』
「お嬢さん方、私がお呼びしたのは天使像の力です。天使像はそれぞれが引きつけあ
う特性があるのですから」
なるほど、使い方次第では魔力に相当するモノなのかもしれない。しかし、コレで
は帰ろうにも帰れないではないか。思わず頭を抱える。
でも、あれ?何でユークリッド君まで連れてこられたのかしら。
「コレ、わざと置いていったんだな?オーガス」
ユークリッドの懐から出てきたのは、逃げ出す前に最後に出した天使像。オーガス
が格別と言った、胸の前で両手を交差させる直立の天使像だった。
「ご名答。巫女様に必要と感じますれば」
うやうやしくお辞儀をするオーガスを、半泣きの表情で見下ろすレイン。
「エンジュさん、シエルさん、ユークリッドさぁん~。助けて下さぁぁい」
助けを求めてこちらを向く姿は、底なし沼に足を取られたかのように見えた。
「で、具体的にはどうする必要があるんだ?」
ユークリッドの一言で、そういえば抽象的な話しか聞いてないなぁと振り返る。
「聖霊と契約をするんですよ。100年の恵みの契約を」
ココで精霊なんて見かけただろうか。特別な気配も感じなかったような気がして、
シエルは辺りを探ってみた。……普通に風の精霊はいるみたい。でも、契約をしてど
うこうするような存在は感じられなかった。
「何の精霊?何処にいるのか分からないわ」
「そうでしょうとも。そこが聖霊の聖霊たる所以なのです。普通の精霊ではなく、夢
見の巫女が夢の中だけで近づける存在なのですから」
誇らしげに、半ば陶酔したようなオーガスの表情になんだか疲れを感じる。いよい
よもってやれることはないのかもしれない。だから宗教は苦手だ。理解の範疇を越え
てしまっている。
「しばらく雨も降ってないのね」
レインがしゃがんで足下の枯れかけた草を見る。よく見渡せばそこかしこで枯れた
草が見え、枯れた木までもが今にも倒れそうに踏ん張っていた。
「雨が降るのを止めてもう半年です。コレが最後のチャンスなんです!」
ようやく見つけた夢見の巫女に縋るようにオーガスが訴える。目は涙で潤み、全身
から切羽詰まった様子が感じられ、レインは思わず頷きそうになって思い留まった。
「だから、どーやって聖霊に近づくのよ~」
何一つ具体的なことは聞いていないのだ。レインは思わずオーガスから目を背け、
空を仰いで叫んでいた。
PR
トラックバック
トラックバックURL: