そうして、儀式の時はきた。
巫女の役を務める私は、祈祷から踊りからここ数日間大急ぎで詰め込んだ儀式の手順をなんとか消化していく。
もとより夢の中にでてくる聖霊様とのコンタクトには成功しているから、後は降雨の契約を結ぶだけでよくて、実はこれでもかなり省略されて楽になっているんですよ、と私の補佐をしてくれている次期巫女のブランジェちゃんは言っていた。
見た目に麗しいとは決して言いかねる舞をなんとか最後までやりきって、私は動きを止めた。後はいよいよ最後の段階、聖霊様に呼びかけて降雨の契約を結ぶだけ。
呼びかけようとして、空を見上げて、そこで私は固まった。
「何、あれ……」
ブランジェちゃんの呟きが私の心情をも的確に代弁してくれている。
私達の視線の先には、黒くてモヤモヤっとしたモノがふよふよと浮いていた。
「ぼはははははははははははははは!!」
辺り一面に大きな声が響き渡る。黒いモヤモヤは徐々に大きさを増し、大きな人のような形を作っていく。次の瞬間、ぼふんと音を立てて煙が一気に立ち昇る!
「ぼはははははははははははははは!!」
煙が少しずつ晴れて行くのにつれて、黒い影だった魔王の姿が少しずつ明らかになっていく。視界を妨げる煙幕が無くなったとき、そこに立っていたのは後ろ足で立つ普通のカモノハシの姿だった。
「ぼはははははははっげふっがはっげふぉっ」
外見に似合った可愛い声で高笑いを続ける魔王(カモノハシ)。途中で何かが気道に入ってしまったらしく、ケホケホとオーバーアクションで咽ているのがまた可愛い。
「というわけでこの地に雨を降らせるわけにはいかん。邪魔をさせてもらうぞ、巫女よ」
「えーっと……」
巫女よ、と言うのに合わせて右手?をびしっとこっちに向ける。顔をちょっと横にしてこちらに向けている円らな瞳と目が合った。ああ、もうだめだ。我慢できない……!!
「な、なんだ!?」
ふらふらふら、と自称魔王の元に歩み寄る。私の視界にはもはやカモノハシの姿、それ以外のモノは入っていない。何かを感じ取ったのか、じりっと下がろうとするカモノハシ。しかし、もともとが直立に向いている体じゃないし、当然後ずされるようにも出来ていない魔王はバランスを崩し、後ろ向きにゆっくりと倒れていく。
好機到来、私は一気に踏み切ってそのままカモノハシ大魔王に体当たりを掛ける……!!
「ぐぇっ!」
膝を折り、かものはしを抱きかかえるようにしてずざーっとスライディング。幸い祭壇はわりと石が綺麗に磨かれていて、すりむいたりとかはしなかった。
そして、膝の上には捕獲したカモノハシ。状況についてこれてないのか目をきょときょとさせているのがもう破壊的。とっくに限界なんか通り越した私の要求が行動に直結した。もう遠慮なんかしないで、思いっきり全力手加減なしで抱きしめるっ!
もふもふとしたなんとも言えない手ざわり抱き心地が、どこまでも私の理性を溶かしていく。あ~、幸せ~。
どろどろに溶けて液状になった理性がこれが魔王の力かー、すごいなーとか呟いているけど、もうすっかり虜になってしまった私の心にはまったく意味を成さなかった。
嗚呼、この至福がずっと続けばいいのに……そう思いながら、私はいっそう腕に力を込めるのだった。
巫女の役を務める私は、祈祷から踊りからここ数日間大急ぎで詰め込んだ儀式の手順をなんとか消化していく。
もとより夢の中にでてくる聖霊様とのコンタクトには成功しているから、後は降雨の契約を結ぶだけでよくて、実はこれでもかなり省略されて楽になっているんですよ、と私の補佐をしてくれている次期巫女のブランジェちゃんは言っていた。
見た目に麗しいとは決して言いかねる舞をなんとか最後までやりきって、私は動きを止めた。後はいよいよ最後の段階、聖霊様に呼びかけて降雨の契約を結ぶだけ。
呼びかけようとして、空を見上げて、そこで私は固まった。
「何、あれ……」
ブランジェちゃんの呟きが私の心情をも的確に代弁してくれている。
私達の視線の先には、黒くてモヤモヤっとしたモノがふよふよと浮いていた。
「ぼはははははははははははははは!!」
辺り一面に大きな声が響き渡る。黒いモヤモヤは徐々に大きさを増し、大きな人のような形を作っていく。次の瞬間、ぼふんと音を立てて煙が一気に立ち昇る!
「ぼはははははははははははははは!!」
煙が少しずつ晴れて行くのにつれて、黒い影だった魔王の姿が少しずつ明らかになっていく。視界を妨げる煙幕が無くなったとき、そこに立っていたのは後ろ足で立つ普通のカモノハシの姿だった。
「ぼはははははははっげふっがはっげふぉっ」
外見に似合った可愛い声で高笑いを続ける魔王(カモノハシ)。途中で何かが気道に入ってしまったらしく、ケホケホとオーバーアクションで咽ているのがまた可愛い。
「というわけでこの地に雨を降らせるわけにはいかん。邪魔をさせてもらうぞ、巫女よ」
「えーっと……」
巫女よ、と言うのに合わせて右手?をびしっとこっちに向ける。顔をちょっと横にしてこちらに向けている円らな瞳と目が合った。ああ、もうだめだ。我慢できない……!!
「な、なんだ!?」
ふらふらふら、と自称魔王の元に歩み寄る。私の視界にはもはやカモノハシの姿、それ以外のモノは入っていない。何かを感じ取ったのか、じりっと下がろうとするカモノハシ。しかし、もともとが直立に向いている体じゃないし、当然後ずされるようにも出来ていない魔王はバランスを崩し、後ろ向きにゆっくりと倒れていく。
好機到来、私は一気に踏み切ってそのままカモノハシ大魔王に体当たりを掛ける……!!
「ぐぇっ!」
膝を折り、かものはしを抱きかかえるようにしてずざーっとスライディング。幸い祭壇はわりと石が綺麗に磨かれていて、すりむいたりとかはしなかった。
そして、膝の上には捕獲したカモノハシ。状況についてこれてないのか目をきょときょとさせているのがもう破壊的。とっくに限界なんか通り越した私の要求が行動に直結した。もう遠慮なんかしないで、思いっきり全力手加減なしで抱きしめるっ!
もふもふとしたなんとも言えない手ざわり抱き心地が、どこまでも私の理性を溶かしていく。あ~、幸せ~。
どろどろに溶けて液状になった理性がこれが魔王の力かー、すごいなーとか呟いているけど、もうすっかり虜になってしまった私の心にはまったく意味を成さなかった。
嗚呼、この至福がずっと続けばいいのに……そう思いながら、私はいっそう腕に力を込めるのだった。
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