PC:エンジュ シエル レイン
NPC:ユークリッド(情報屋)
場所:宿屋
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
気がつけば、私は見知らぬ場所で見知らぬ格好をして見知らぬ儀式をしていた。
よくわからないけど、なんとなくどこぞの民族衣装を思わせるような、しかもいかにも儀式用っぽい豪華な仕立ての服を着て、舞台の上で儀式を行う姿が俯瞰図となって私に見える。
少し離れた所にこの間知り合ったばかりの美人な姉さん二人組、別の場所にはド変態の姿もあるのが見て取れる。どうしちゃったんだろう、私の視力……というか、私の目。
ちょっと意識を別のところに飛ばしている間に、私が見下ろす景色はまったく別のものに変わってしまっていた。さっきと違うのは、今度はまるっきりの日常風景だったコト。
今泊まっている宿屋の一階で、私とエンジュさんとシエルさんとユークリッドさんがご飯を食べているところとか、他の人がやっぱり朝ごはんを食べてるところを、また上から眺めている。
仕事がひと段落したらしい親父さんが何かをいいながら窓を開けにいったり、中身は聞こえないけどそれぞれのテーブルについている人たちが談笑しているのがよくわかった。
それは、誰一人として例外もなく。つまり、私もまた普通にご飯を食べ、皆とお話してる。
上の私を意識することもなくて、よくわからないけど話しているような様子があった。
そう、今の私には音が聞こえない。物に触れているという感じもないし、匂いも全然分からない。まるで、世界から一人隔離されて、その映像だけを見せられてるみたいに。
ふと、宿の隅っこの方で親父さんが窓を開けている所が目に入った。……というか、目には入っていたんだけど、唐突にそちらが気になっちゃった。
『それは、やっちゃいけない』心の中で警鐘がなる感じ。はたして、開け放たれた窓からごう、と強い風が吹き込んでくる。次の瞬間、私の視界は光に覆われてしまった。
★☆◆◇†☆★◇◆
がばっと音を立てて私は起き上がった。
辺りを見回すと、そこは私が泊まっている部屋。手の中にはあのド変態に押し付けられた天使像があったりなんかして、じょじょに私の記憶が戻ってきた。
昨日、偶然見つけたド変態を捕まえて私達の宿まで連れてきたのはよかったのだけど、また逃げられちゃったんだ。いつも通り、お試し期間中だからいろいろ試してみなさいみたいな言葉を残して。
それで皆で相談して、幸い後数日な事だしこうなったら時間切れで返してもらえるのを待とうみたいなコトになって、その言葉通りにいろいろ像をいじってる間に寝ちゃったんだ、私。
つまり、さっきのは夢だった、ていうのが正解みたい。そう結論付けて、ベッドから降りて身支度を始める。そろそろ太陽が昇り始めて、朝の露店が並び始める頃合だから。
あんなよくわからない夢の事はさっさと忘れて、今は私の趣味に走らないと――
日課のウィンドウショッピングを終えて戻ってきたら、ちょうど廊下で皆に会うことができた。ご飯を誘いに行くつもりだったからちょっとラッキー。
また一階に下りて、空いてるテーブルに座ったところでちょっと既視感を感じた。なんだろう、この配置にちょっと覚えがあるような?
ちょっとキョロキョロと辺りを見回してたら、偶然目があったシエルさんに「どうかしたの?」って聞かれちゃった。「なんでもないでーす」って返事してから私も自分のご飯に取り掛かる。そろそろ財布の中身も危なかったりするから、今日は健康的にパンとスープがそのメニューだった。
いつも思うんだけど、エンジュさんの食事っぷりは見てて気持ちがいい。
健啖家、て言うのかな。なんか見てて本当にすごいと思えるというかなんというか。
この料理を私が作ったんだとしたらさぞかしいい気分だろうなーって感じ。
と、いうわけで失礼かなーとか思いつつも見とれていたら、急に強い風が吹いてきた。
一陣の、とでもいうべき短い、でも強い風。既視感の正体が夢だ、と気づいた時には再び私の視界は光に覆われていた。
閃光は、一瞬だった。光が消えてしまえば、目がチカチカする以外は特になにもなく。
だというのに、まぜかさっきまでのざわざわした喧騒はこの宿の中からは消えうせて、奇妙な沈黙に包まれてしまう。
ふと足元を見ると、そこには黒い毛の塊。そして、光のでた先を見てみると、そこにはさっきまであったものをなくしてしまった親父さんがいた。
あぁ……つまりはそういうコトなんだ。
心の中で手をポンと打って、足元の毛の塊――鬘とも言うソレを拾って、窓際の親父さんの所へ。
「あの……落ちましたよ?」
といって鬘を差し出した。「あぁ…」と、どこか放心したように受け取る親父さん。
「それにしても……見事ですねー」
手元の鬘を所在なさげにいぢる親父さんがあまりにも可哀想だったから、ちょっと元気付けようとして褒めてみる。事実、親父さんの頭ときたら、まるで鏡にでもなりそうなくらいに綺麗につるっと毛がなくなっていたものだから。
その時、後ろからプッっと噴出す音が聞こえる。
――どんなに小さくても、穴の開いたダムは壊れるしかない――近所のお兄さんの言葉の意味を私が理解したのは、まさにこのときの事だった。
NPC:ユークリッド(情報屋)
場所:宿屋
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
気がつけば、私は見知らぬ場所で見知らぬ格好をして見知らぬ儀式をしていた。
よくわからないけど、なんとなくどこぞの民族衣装を思わせるような、しかもいかにも儀式用っぽい豪華な仕立ての服を着て、舞台の上で儀式を行う姿が俯瞰図となって私に見える。
少し離れた所にこの間知り合ったばかりの美人な姉さん二人組、別の場所にはド変態の姿もあるのが見て取れる。どうしちゃったんだろう、私の視力……というか、私の目。
ちょっと意識を別のところに飛ばしている間に、私が見下ろす景色はまったく別のものに変わってしまっていた。さっきと違うのは、今度はまるっきりの日常風景だったコト。
今泊まっている宿屋の一階で、私とエンジュさんとシエルさんとユークリッドさんがご飯を食べているところとか、他の人がやっぱり朝ごはんを食べてるところを、また上から眺めている。
仕事がひと段落したらしい親父さんが何かをいいながら窓を開けにいったり、中身は聞こえないけどそれぞれのテーブルについている人たちが談笑しているのがよくわかった。
それは、誰一人として例外もなく。つまり、私もまた普通にご飯を食べ、皆とお話してる。
上の私を意識することもなくて、よくわからないけど話しているような様子があった。
そう、今の私には音が聞こえない。物に触れているという感じもないし、匂いも全然分からない。まるで、世界から一人隔離されて、その映像だけを見せられてるみたいに。
ふと、宿の隅っこの方で親父さんが窓を開けている所が目に入った。……というか、目には入っていたんだけど、唐突にそちらが気になっちゃった。
『それは、やっちゃいけない』心の中で警鐘がなる感じ。はたして、開け放たれた窓からごう、と強い風が吹き込んでくる。次の瞬間、私の視界は光に覆われてしまった。
★☆◆◇†☆★◇◆
がばっと音を立てて私は起き上がった。
辺りを見回すと、そこは私が泊まっている部屋。手の中にはあのド変態に押し付けられた天使像があったりなんかして、じょじょに私の記憶が戻ってきた。
昨日、偶然見つけたド変態を捕まえて私達の宿まで連れてきたのはよかったのだけど、また逃げられちゃったんだ。いつも通り、お試し期間中だからいろいろ試してみなさいみたいな言葉を残して。
それで皆で相談して、幸い後数日な事だしこうなったら時間切れで返してもらえるのを待とうみたいなコトになって、その言葉通りにいろいろ像をいじってる間に寝ちゃったんだ、私。
つまり、さっきのは夢だった、ていうのが正解みたい。そう結論付けて、ベッドから降りて身支度を始める。そろそろ太陽が昇り始めて、朝の露店が並び始める頃合だから。
あんなよくわからない夢の事はさっさと忘れて、今は私の趣味に走らないと――
日課のウィンドウショッピングを終えて戻ってきたら、ちょうど廊下で皆に会うことができた。ご飯を誘いに行くつもりだったからちょっとラッキー。
また一階に下りて、空いてるテーブルに座ったところでちょっと既視感を感じた。なんだろう、この配置にちょっと覚えがあるような?
ちょっとキョロキョロと辺りを見回してたら、偶然目があったシエルさんに「どうかしたの?」って聞かれちゃった。「なんでもないでーす」って返事してから私も自分のご飯に取り掛かる。そろそろ財布の中身も危なかったりするから、今日は健康的にパンとスープがそのメニューだった。
いつも思うんだけど、エンジュさんの食事っぷりは見てて気持ちがいい。
健啖家、て言うのかな。なんか見てて本当にすごいと思えるというかなんというか。
この料理を私が作ったんだとしたらさぞかしいい気分だろうなーって感じ。
と、いうわけで失礼かなーとか思いつつも見とれていたら、急に強い風が吹いてきた。
一陣の、とでもいうべき短い、でも強い風。既視感の正体が夢だ、と気づいた時には再び私の視界は光に覆われていた。
閃光は、一瞬だった。光が消えてしまえば、目がチカチカする以外は特になにもなく。
だというのに、まぜかさっきまでのざわざわした喧騒はこの宿の中からは消えうせて、奇妙な沈黙に包まれてしまう。
ふと足元を見ると、そこには黒い毛の塊。そして、光のでた先を見てみると、そこにはさっきまであったものをなくしてしまった親父さんがいた。
あぁ……つまりはそういうコトなんだ。
心の中で手をポンと打って、足元の毛の塊――鬘とも言うソレを拾って、窓際の親父さんの所へ。
「あの……落ちましたよ?」
といって鬘を差し出した。「あぁ…」と、どこか放心したように受け取る親父さん。
「それにしても……見事ですねー」
手元の鬘を所在なさげにいぢる親父さんがあまりにも可哀想だったから、ちょっと元気付けようとして褒めてみる。事実、親父さんの頭ときたら、まるで鏡にでもなりそうなくらいに綺麗につるっと毛がなくなっていたものだから。
その時、後ろからプッっと噴出す音が聞こえる。
――どんなに小さくても、穴の開いたダムは壊れるしかない――近所のお兄さんの言葉の意味を私が理解したのは、まさにこのときの事だった。
PR
トラックバック
トラックバックURL: