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2024/11/07 16:30 |
天使と空と優しい雨~第七話~/シエル(マリムラ)
PC:エンジュ シエル レイン
NPC:ユークリッド(情報屋)
場所:宿屋の食堂
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 シエルは呆れた目でエンジュの食事風景を眺めていた。
 なんというか、口を出す気さえ失せるほどの豪快な食べっぷり。ユークリッドにと
っては当たり前なのかもしれないが、レインに至っては自分の食事をとる手が止まる
くらいに気をとられているようだった。

 レインは私達に付いてきた。ということは、協力して取り返すという気持ちはある
のだろうか。いや、ただ押しが弱いだけだったらどうしよう。彼女は巻き込むべきで
はないのかもしれない。エンジュの魔力を行使できる以上、タダの泥棒とは桁違いに
危険な相手なのは明白だ。しかし、一人でも戦力が欲しいのは確か。私は風に頼りす
ぎると昏睡状態に陥ってしまうワケだし、エンジュだって今までのように魔法を行使
できないのだから。

 紅茶の入ったカップを傾けながら、シエルはレインを見ていた。仮面のせいで何を
見ているか大抵は分かりづらいのだが、見られている本人は視線を感じるのだろう。
レインと視線がぶつかる。緊張しているのが見て取れるが……いつまでもお客様のま
までは埒がかない。初対面のこんな怪しい格好の人とうち解けろと言うのも難しいの
は分かっているのだ。しかし、ソレを抜きにしても……

「昔から人見知りするほう?」

「え、いや、そうでもないですよ?結構誰でも仲良くなれちゃったりとか、あ、でも
やっぱり綺麗な人がいると緊張しちゃいますよね」

 ……大丈夫なんだろうか。とりあえずユークリッドくんに色目を使わないだけでヨ
シとするべきかな。イイ子そうなんだけど、気を使われると気を使ってしまう。

 カップに残った紅茶は半分、その間にエンジュは8割方食べ終えている。ようやく
半分くらい食したらしいレインは、ユークリッドくんになにやら吹き込まれているよ
うだった。

「入れ知恵するなら見えないトコでやんなさい」

「そんなんじゃないよ姉さん」

 何を言ったかまでは聞いていなかった。聴こうと思えば聞けたけど、わざわざ風を
使ってまで内緒話を聴こうとは思わないし。ただ、レインの表情が軟らかくなったの
で少し気が楽になった。ありがとうユークリッドくん、ここでは何故か一番普通の人
に見えるから不思議よね。

「ねぇエンジュ」

「なに?」

「急いだ方が良さそう、とか思わない?」

「まぁね。でも“腹が減っては戦は出来ない”って言うでしょ?」

 戦が無くても食べるでしょ?……とは、言わないでおくことにした。

  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇

「んー!じゃいこっか!」

「あんなに怒ってたのに、食べると機嫌いいんだから」

「あら、ちゃんと怒ってるわよ?」

 顔はしっかり笑顔で答えるエンジュに、レインが笑いかける。最初の頃の緊張感も
薄らいで、なんだか空気になじんできたような気もする。親友が増えるか知り合いで
止まるか、シエルはまだ計りかねていた。

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2007/02/10 21:07 | Comments(0) | TrackBack() | ●天使と空と優しい雨

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