PC エンジュ シエル レイン
NPC オーガス ユークリッド
場所 島 船の上
======================================
数時間前まで儀式に使われていた広場はあっという間に祝宴の場に早変わりしていた。音楽やむことがなく、中央に据えられた炎に照らされ、多くの影が踊り続けていた。
「隣、いいかしら」
足下から聞こえた声にエンジュはからかう様に答えた。
「登ってこれるなら。どーぞ」
一番低い枝に腰掛けたエルフは一人分の場所をあけたが、両手に皿を持ったシエルは木の根元に腰を下ろした。
「お皿の料理、もらえる?」
「降りてくるなら、いいわよ」
渋々といった動作で木を降りるとシエルの横に座った。宴とはいえ、皿の上の料理は満足なものではなかった。長きに渡る乾期は島の作物に打撃を与えていた。交わす杯の酒も僅かになった果物を発酵させ、薄めた代物である。
「まぁ、これからね」
雨は、降った。あとは、彼ら次第である。
「それにしても、あのうん臭い聖霊・・・大丈夫なのかしら」
子供達に手をひかれたレインが広場の中央に担ぎ出されていく。そして、一段高くなった台の上で宴を見下ろす島長と聖霊の間に座った。美しい島女に酒をつがせていた聖霊はレインが隣の席に着くと少女の椅子の背に腕を預けながら熱心に話しかけはじめた。レインが膝に乗せたカモノハシは男をクチバシで必死に攻撃していた。
「本当にあのバカそっくりね・・・でも案外、ちゃんと島を守ってくれるかも」
他人への関心の薄いシエルにしては、実に穏やかな口調だった。おや、と不思議そうに彼女を見ると、懐かしそうな視線が聖霊に注がれていた。
「あの顔と態度がそっくりな人を知ってるの」
「どういう関係?」
「昔の相棒よ」
シエルは聖霊に向けたまなざしをそのままエンジュ移した。
「ふーん。・・・妬けるわね」
遠くない未来、同じ台詞を別の相手に向けて口にする時が来るのだろう。願わくば彼女との別れが美しいものでありたい。そう思いながら、エンジュは皿の上の木の実を手づかみで食べた。
*********
役目を終えた4人が島国での生活に飽き始めた頃―――儀式から3日目、大陸からの貿易船がやって来るとの知らせが届いた。慌てて身支度を済ませると一行は海岸に向かった。
途中で耕された畑に芽吹いた作物を目にする。今も、さらさらと優しい雨が島の上に降り注ぎ、島と人々に潤いを与えていた。
「これも巫女様のおかげです」
オーガスの言葉に、レインが照れたようにカモノハシに力を込めた。
夢と天使と聖霊の住まう島は、船に乗るとあっという間にその姿も小さくなっていった。
「行きは、一瞬。帰りは船で2日かぁ」
「・・・帰りも魔法で送ったてくれれば良かったのに、ホントにもう!」
感慨深いユークリッドの言葉に、力の抜けた蛸のようにぐったりしながら愚痴をこぼしたのはエンジュだった。完璧に船酔いだった。
「磯臭いのは当分凝りごりよ・・・。次はもっと緑の深い所にでも行きたいもんだわ」
その言葉にシエルとユークリッドは彼女が曲がりにもエルフだったと言うことを思い出した。
「レインはピアスで降りるんだったな」
「はい。宿屋に残した荷物が少しあって・・・たいしたものじゃないんですけど」
まだ残っているか不安はあったが、エンジュの名でとった宿である。謝礼を期待してギルド等に届けてある可能性もあった。
「今回はレインが島の運命を救ったのよ。自信をもっていいと思うわ」
「いいえ!」
レインはきっとした表情でシエルを見返す。
「確かに、夢見の巫女に選ばれたのは私です。でも、私一人じゃ心細くてとても無理だったと思うんです!それに、私は自分の腕を確かめる為に旅に出たのに、一度も符術を使うことができませんでした。旅に出る前の私は自分の力を過信していたんです」
だから、まだまだ修行です。そういって笑ったレインは、とても希望にみちていてエンジュはまるで自分の若いころを見ているようだった。
黒いツインテールを風になびかせて、ピアスの港町を見つめる少女の背中には、やはり自由へと羽ばたく白い翼が見えた―――
NPC オーガス ユークリッド
場所 島 船の上
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数時間前まで儀式に使われていた広場はあっという間に祝宴の場に早変わりしていた。音楽やむことがなく、中央に据えられた炎に照らされ、多くの影が踊り続けていた。
「隣、いいかしら」
足下から聞こえた声にエンジュはからかう様に答えた。
「登ってこれるなら。どーぞ」
一番低い枝に腰掛けたエルフは一人分の場所をあけたが、両手に皿を持ったシエルは木の根元に腰を下ろした。
「お皿の料理、もらえる?」
「降りてくるなら、いいわよ」
渋々といった動作で木を降りるとシエルの横に座った。宴とはいえ、皿の上の料理は満足なものではなかった。長きに渡る乾期は島の作物に打撃を与えていた。交わす杯の酒も僅かになった果物を発酵させ、薄めた代物である。
「まぁ、これからね」
雨は、降った。あとは、彼ら次第である。
「それにしても、あのうん臭い聖霊・・・大丈夫なのかしら」
子供達に手をひかれたレインが広場の中央に担ぎ出されていく。そして、一段高くなった台の上で宴を見下ろす島長と聖霊の間に座った。美しい島女に酒をつがせていた聖霊はレインが隣の席に着くと少女の椅子の背に腕を預けながら熱心に話しかけはじめた。レインが膝に乗せたカモノハシは男をクチバシで必死に攻撃していた。
「本当にあのバカそっくりね・・・でも案外、ちゃんと島を守ってくれるかも」
他人への関心の薄いシエルにしては、実に穏やかな口調だった。おや、と不思議そうに彼女を見ると、懐かしそうな視線が聖霊に注がれていた。
「あの顔と態度がそっくりな人を知ってるの」
「どういう関係?」
「昔の相棒よ」
シエルは聖霊に向けたまなざしをそのままエンジュ移した。
「ふーん。・・・妬けるわね」
遠くない未来、同じ台詞を別の相手に向けて口にする時が来るのだろう。願わくば彼女との別れが美しいものでありたい。そう思いながら、エンジュは皿の上の木の実を手づかみで食べた。
*********
役目を終えた4人が島国での生活に飽き始めた頃―――儀式から3日目、大陸からの貿易船がやって来るとの知らせが届いた。慌てて身支度を済ませると一行は海岸に向かった。
途中で耕された畑に芽吹いた作物を目にする。今も、さらさらと優しい雨が島の上に降り注ぎ、島と人々に潤いを与えていた。
「これも巫女様のおかげです」
オーガスの言葉に、レインが照れたようにカモノハシに力を込めた。
夢と天使と聖霊の住まう島は、船に乗るとあっという間にその姿も小さくなっていった。
「行きは、一瞬。帰りは船で2日かぁ」
「・・・帰りも魔法で送ったてくれれば良かったのに、ホントにもう!」
感慨深いユークリッドの言葉に、力の抜けた蛸のようにぐったりしながら愚痴をこぼしたのはエンジュだった。完璧に船酔いだった。
「磯臭いのは当分凝りごりよ・・・。次はもっと緑の深い所にでも行きたいもんだわ」
その言葉にシエルとユークリッドは彼女が曲がりにもエルフだったと言うことを思い出した。
「レインはピアスで降りるんだったな」
「はい。宿屋に残した荷物が少しあって・・・たいしたものじゃないんですけど」
まだ残っているか不安はあったが、エンジュの名でとった宿である。謝礼を期待してギルド等に届けてある可能性もあった。
「今回はレインが島の運命を救ったのよ。自信をもっていいと思うわ」
「いいえ!」
レインはきっとした表情でシエルを見返す。
「確かに、夢見の巫女に選ばれたのは私です。でも、私一人じゃ心細くてとても無理だったと思うんです!それに、私は自分の腕を確かめる為に旅に出たのに、一度も符術を使うことができませんでした。旅に出る前の私は自分の力を過信していたんです」
だから、まだまだ修行です。そういって笑ったレインは、とても希望にみちていてエンジュはまるで自分の若いころを見ているようだった。
黒いツインテールを風になびかせて、ピアスの港町を見つめる少女の背中には、やはり自由へと羽ばたく白い翼が見えた―――
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