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PC :アーサー ジュリア
NPC:ファブリーズ(マイル ジョイ レノア) エンプティ
場所:モルフ地方東部 ― ファブリー邸
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「お任せください。このぼくが必ず、事件の真相を暴いてさしあげましょ
う!」
男の自信に満ち溢れた声が会場にむなしく響いた。
(まぁ。頑張ってくれ。今日一日くらいは付き合ってやるさ)
俺はワイングラスを傾け、中身を一気に飲み干した。
ここでファブリー氏に恩を売っておけば、モルフ東部での仕事もしやすくな
る。
今日だって、そのためだけにわざわざ遠くからやってきたのだ。
「というわけで、次はアリバイです!!皆さん、チャーミー嬢が姿を消す前後
のアリバイを証言してください」
探偵小説のシナリオでも読んでいるような進行状況に人々の空気は更に白け
ていく。
そんなもの不必要だ。
何故なら、全員がその時この場にいたのだから。
「これは私の推測に過ぎやせんが……」
集団の一人が、かの迷探偵と同じ台詞を口に出した時、またふざけた役者が
一人増えたのかとげんなりしたが、新しい発言者のエンプティは意外にまとも
な事を口にした。
「もし、お嬢さんが魔女に攫われたとするならばもうこの屋敷にはいないと思
うのですが」
「いや、犯人はきっとこの中に…」
だって、犯人だからか?
「そ、そうですね。はやり捜索の手を外にも広げましょう」
自信だけは人一倍な探偵がただのほら吹きと気がついたのか、溺れかけてい
るところに差し出された藁が何の役にも立たないものだと気づいたのか、ファ
ブリー氏は執事に捜索隊をだす手配を申し付けた。
「……父さん、昔話だと魔女はダウニーの森に住んでるんですよね?」
「レノア。あれは昔話だ。それに魔女は騎士に殺されて老木に姿を変えてしま
ったんだろう?」
「馬車なら30分あればいける。あの森はそれほど広くないし…。町は捜索隊
に任せるとして、僕らで魔女が本当にいるのか確かめてきます」
どうやらレノア少年は、本当に魔女が妹を攫ったと考え始めたようだ。
確かに、実際にダウニーの森にはまるで人が姿を変えたような老木がある、
と言われている。
この中に犯人がいると考え込むよりは建設的かもしれないが、到底考えられ
ない話だった。
「ジュリアさん!手を貸してはくれませんか?」
「何故、私が…」
名指しで頼まれた黒髪の女――ジュリアが数歩後ずさりした。
しかし、レノアは彼女にすがりつくと奥で交渉をはじめる。
「報酬は…で」
「そんなに私は安くない」
「じゃあ…」
「……」
身振り手振りで行われた話し合いは決着がついたのか、この服が汚れない程
度の働きしかしない、と宣言しつつもジュリアはしぶしぶ頷いた。
しかし、聞こえた単語は「三食昼寝つき」やら「上等な客室で」やらだった
ので、一体この女ハンターにどれだけの報酬が支払われたのかは謎のままだっ
た。
「では、私もお供しましょう!これでも私は騎士の称号をもっていますから
ね。魔女が現れても我が剣の錆びにしてやりましょう」
話を無視され静かだった男がぱっと顔を輝かせ、ジュリアにウインクした。
ジュリアはそれを避けるように顔を横にそらせる。
というか、コイツは誰なんだ。
騎士と名乗るということは他国の人間のはずだが…。
「では、最初に言い出した、わたくしもお供しましょう」
エンプティがそろそろと手を上げる。
パーティーが終わってから、やけにこの男が積極的だ。
「では、私は失礼させて頂きますよ。お役に立てず申し訳ありません。ファブ
リーさん」
「そう思うのならば、お前もこればいいじゃないか?」
逃げる俺を引き止めるようにジュリアが提案してきた。
「おや、嬉しいですね。貴女の様な美しい人に気に入っていただけるとは」
「常識的な人間が少なかったら、非常識が常識になってしまうじゃないか」
ジュリアの顔はしごく真面目だった。
PC :アーサー ジュリア
NPC:ファブリーズ(マイル ジョイ レノア) エンプティ
場所:モルフ地方東部 ― ファブリー邸
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「お任せください。このぼくが必ず、事件の真相を暴いてさしあげましょ
う!」
男の自信に満ち溢れた声が会場にむなしく響いた。
(まぁ。頑張ってくれ。今日一日くらいは付き合ってやるさ)
俺はワイングラスを傾け、中身を一気に飲み干した。
ここでファブリー氏に恩を売っておけば、モルフ東部での仕事もしやすくな
る。
今日だって、そのためだけにわざわざ遠くからやってきたのだ。
「というわけで、次はアリバイです!!皆さん、チャーミー嬢が姿を消す前後
のアリバイを証言してください」
探偵小説のシナリオでも読んでいるような進行状況に人々の空気は更に白け
ていく。
そんなもの不必要だ。
何故なら、全員がその時この場にいたのだから。
「これは私の推測に過ぎやせんが……」
集団の一人が、かの迷探偵と同じ台詞を口に出した時、またふざけた役者が
一人増えたのかとげんなりしたが、新しい発言者のエンプティは意外にまとも
な事を口にした。
「もし、お嬢さんが魔女に攫われたとするならばもうこの屋敷にはいないと思
うのですが」
「いや、犯人はきっとこの中に…」
だって、犯人だからか?
「そ、そうですね。はやり捜索の手を外にも広げましょう」
自信だけは人一倍な探偵がただのほら吹きと気がついたのか、溺れかけてい
るところに差し出された藁が何の役にも立たないものだと気づいたのか、ファ
ブリー氏は執事に捜索隊をだす手配を申し付けた。
「……父さん、昔話だと魔女はダウニーの森に住んでるんですよね?」
「レノア。あれは昔話だ。それに魔女は騎士に殺されて老木に姿を変えてしま
ったんだろう?」
「馬車なら30分あればいける。あの森はそれほど広くないし…。町は捜索隊
に任せるとして、僕らで魔女が本当にいるのか確かめてきます」
どうやらレノア少年は、本当に魔女が妹を攫ったと考え始めたようだ。
確かに、実際にダウニーの森にはまるで人が姿を変えたような老木がある、
と言われている。
この中に犯人がいると考え込むよりは建設的かもしれないが、到底考えられ
ない話だった。
「ジュリアさん!手を貸してはくれませんか?」
「何故、私が…」
名指しで頼まれた黒髪の女――ジュリアが数歩後ずさりした。
しかし、レノアは彼女にすがりつくと奥で交渉をはじめる。
「報酬は…で」
「そんなに私は安くない」
「じゃあ…」
「……」
身振り手振りで行われた話し合いは決着がついたのか、この服が汚れない程
度の働きしかしない、と宣言しつつもジュリアはしぶしぶ頷いた。
しかし、聞こえた単語は「三食昼寝つき」やら「上等な客室で」やらだった
ので、一体この女ハンターにどれだけの報酬が支払われたのかは謎のままだっ
た。
「では、私もお供しましょう!これでも私は騎士の称号をもっていますから
ね。魔女が現れても我が剣の錆びにしてやりましょう」
話を無視され静かだった男がぱっと顔を輝かせ、ジュリアにウインクした。
ジュリアはそれを避けるように顔を横にそらせる。
というか、コイツは誰なんだ。
騎士と名乗るということは他国の人間のはずだが…。
「では、最初に言い出した、わたくしもお供しましょう」
エンプティがそろそろと手を上げる。
パーティーが終わってから、やけにこの男が積極的だ。
「では、私は失礼させて頂きますよ。お役に立てず申し訳ありません。ファブ
リーさん」
「そう思うのならば、お前もこればいいじゃないか?」
逃げる俺を引き止めるようにジュリアが提案してきた。
「おや、嬉しいですね。貴女の様な美しい人に気に入っていただけるとは」
「常識的な人間が少なかったら、非常識が常識になってしまうじゃないか」
ジュリアの顔はしごく真面目だった。
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