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PC :アーサー ジュリア
NPC:ファブリーズ(マイル ジョイ レノア) エンプティ
場所:モルフ地方東部 ― ファブリー邸
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騒ぎが収まると、パーティはつつがなく進行した。
最後に、客人には綺麗に包装されたクッキーが土産として配られた。
「もしもまた、魔女の使い魔が現れたら、それで難を逃れてください」
ファブリー氏は、先ほどの騒ぎは余興なのだとユーモアたっぷりに告げた。
しかし、実際は違う。
でなければ、パーティが終了した今、俺がここに残される理由などなかった。
「何故、私まで残らなくてはいけないんだ?」
女が、俺の心中を代弁したかのように隣の男に抗議した。
「だって、貴女は……でしょう?チャーミーを見つけるのに協力してください」
「だ、そうだ」
答えたのは、女が睨む男ではなく、その反対側に立つ少年だった。
その言葉に、男も面倒くさげに付け足す。
二人ともファブリー家特有の暗い赤毛をしていて、少年のほうは先ほど魔法で俺を庇ってくれた人物だ。
女は、言葉の代わりに腕を組んで一度だけ軽く床を踏み鳴らした。
他に興味をひくものも無く、俺は自然とその女を観察していた。
黒い髪に、上質の黒いドレスを身に纏っていた。
夜会に相応しいドレスとは思わなかったが、彼女にはよく似合っている。
歳は二十歳半ば…といったところだろうか、あまり女らしさを感じさせない女だった。
二人に挟まれながらも、両足を広げ大地を踏みしめて立つ姿は、男に頼る様子を微塵も感じさせない。
右の男と夫婦なのかと思ったが、そういった関係ではなさそうだ。
「皆様、お待たせして申し訳ない」
執事を伴ってファブリー家当主が戻ってきた。
先ほどまでの落ち着いた様子とは一変し、額にかく汗を懸命にハンカチでふき取っていた。
しかし、ここに残っている連中といったら、会場の片づけを行う使用人と余興に呼ばれた魔法使いくらいだ。
後は、俺と、女と―――ファブリー家の男二人。
「チャーミーの姿はやはり何処にも見当たりません。乳母の話では、パーティを始まる直前から姿が見えなかったそうです」
やはり、という空気が辺りを包んだ。
あの時の少女の様子は明らかに異常だった。
それに、あの風だ。
「チャーミーの一番近くにいたテイラックさんにも、何か手がかりを頂けないかと残って頂いたのですが……」
そこで初めて俺が周りから視線を浴びる。
「近く…といいましてもね。普段のご令嬢の姿を私も存じませんから。ただ、表情がどこかぼんやりしていたような…」
「獣化、していましたよね?」
少年が俺の前に歩み出ると、じっとこちらを見つめた。
いかにも利発で育ちの良さそうな身のこなしだったが、どこか芝居めいて見えるのは、その大きすぎる魔法のマントのせいだろうか。
「じゅうか…?」
「羽と角が見えませんでしたか?」
「あぁ…そういえば」
強風と直後の停電のせいですっかり忘れていた。
それに、今日は同じような格好をした子供たちを多く目撃していた為、それほど違和感を感じていなかった。
「今日はバルメ祭。魔女の為の祭りです。何が起きても不思議ではない。そこで、魔法使いの皆さんに失踪した末娘のチャーミーを探していただきたいのです」
辺りにざわめきが起きる。
「もちろん、魔法使いの皆様にも向き不向きがございましょう。今日の余興の分はちゃんと報酬をお支払いしますので帰っていただいても結構。しかし、是非力を貸していただきたい」
「私は、残りましょう」
最初に応えたのは意外にもエンプティだった。
驚く俺の視線を感じ取ってニヤリと笑うと「私は目端が利きますからね。人探しは得意なんです」と続けた。
確かに、チャーミーを探すのに必要なのは魔法の力ばかりではない。
「ハンターの方には改めて翌日ギルドを通して依頼いたします」
そこで、ファブリー氏は女を見た。
女はあからさまに嫌そうな顔をしたが、何も言わない。
なるほど、あの女はハンターなのか。
「ご用はこの執事と息子のレノアに申しつけください。息子は趣味で魔法に関するものを収集しておりますのでお役に立つものがあるやもしれません」
「どうか妹をお願いします」
先ほどの少年――レノアは頭を下げた。
静かになった屋敷に、10時を告げる鐘が鳴った。
バルメ祭が終わるまで残り2時間。
それまでにチャーミーが見つからなければ……そんな不吉な予感を感じずにはいられなかった。
PC :アーサー ジュリア
NPC:ファブリーズ(マイル ジョイ レノア) エンプティ
場所:モルフ地方東部 ― ファブリー邸
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騒ぎが収まると、パーティはつつがなく進行した。
最後に、客人には綺麗に包装されたクッキーが土産として配られた。
「もしもまた、魔女の使い魔が現れたら、それで難を逃れてください」
ファブリー氏は、先ほどの騒ぎは余興なのだとユーモアたっぷりに告げた。
しかし、実際は違う。
でなければ、パーティが終了した今、俺がここに残される理由などなかった。
「何故、私まで残らなくてはいけないんだ?」
女が、俺の心中を代弁したかのように隣の男に抗議した。
「だって、貴女は……でしょう?チャーミーを見つけるのに協力してください」
「だ、そうだ」
答えたのは、女が睨む男ではなく、その反対側に立つ少年だった。
その言葉に、男も面倒くさげに付け足す。
二人ともファブリー家特有の暗い赤毛をしていて、少年のほうは先ほど魔法で俺を庇ってくれた人物だ。
女は、言葉の代わりに腕を組んで一度だけ軽く床を踏み鳴らした。
他に興味をひくものも無く、俺は自然とその女を観察していた。
黒い髪に、上質の黒いドレスを身に纏っていた。
夜会に相応しいドレスとは思わなかったが、彼女にはよく似合っている。
歳は二十歳半ば…といったところだろうか、あまり女らしさを感じさせない女だった。
二人に挟まれながらも、両足を広げ大地を踏みしめて立つ姿は、男に頼る様子を微塵も感じさせない。
右の男と夫婦なのかと思ったが、そういった関係ではなさそうだ。
「皆様、お待たせして申し訳ない」
執事を伴ってファブリー家当主が戻ってきた。
先ほどまでの落ち着いた様子とは一変し、額にかく汗を懸命にハンカチでふき取っていた。
しかし、ここに残っている連中といったら、会場の片づけを行う使用人と余興に呼ばれた魔法使いくらいだ。
後は、俺と、女と―――ファブリー家の男二人。
「チャーミーの姿はやはり何処にも見当たりません。乳母の話では、パーティを始まる直前から姿が見えなかったそうです」
やはり、という空気が辺りを包んだ。
あの時の少女の様子は明らかに異常だった。
それに、あの風だ。
「チャーミーの一番近くにいたテイラックさんにも、何か手がかりを頂けないかと残って頂いたのですが……」
そこで初めて俺が周りから視線を浴びる。
「近く…といいましてもね。普段のご令嬢の姿を私も存じませんから。ただ、表情がどこかぼんやりしていたような…」
「獣化、していましたよね?」
少年が俺の前に歩み出ると、じっとこちらを見つめた。
いかにも利発で育ちの良さそうな身のこなしだったが、どこか芝居めいて見えるのは、その大きすぎる魔法のマントのせいだろうか。
「じゅうか…?」
「羽と角が見えませんでしたか?」
「あぁ…そういえば」
強風と直後の停電のせいですっかり忘れていた。
それに、今日は同じような格好をした子供たちを多く目撃していた為、それほど違和感を感じていなかった。
「今日はバルメ祭。魔女の為の祭りです。何が起きても不思議ではない。そこで、魔法使いの皆さんに失踪した末娘のチャーミーを探していただきたいのです」
辺りにざわめきが起きる。
「もちろん、魔法使いの皆様にも向き不向きがございましょう。今日の余興の分はちゃんと報酬をお支払いしますので帰っていただいても結構。しかし、是非力を貸していただきたい」
「私は、残りましょう」
最初に応えたのは意外にもエンプティだった。
驚く俺の視線を感じ取ってニヤリと笑うと「私は目端が利きますからね。人探しは得意なんです」と続けた。
確かに、チャーミーを探すのに必要なのは魔法の力ばかりではない。
「ハンターの方には改めて翌日ギルドを通して依頼いたします」
そこで、ファブリー氏は女を見た。
女はあからさまに嫌そうな顔をしたが、何も言わない。
なるほど、あの女はハンターなのか。
「ご用はこの執事と息子のレノアに申しつけください。息子は趣味で魔法に関するものを収集しておりますのでお役に立つものがあるやもしれません」
「どうか妹をお願いします」
先ほどの少年――レノアは頭を下げた。
静かになった屋敷に、10時を告げる鐘が鳴った。
バルメ祭が終わるまで残り2時間。
それまでにチャーミーが見つからなければ……そんな不吉な予感を感じずにはいられなかった。
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