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PC :アーサー (ジュリア)
NPC:エリス女史 チャーミー 少年
場所:モルフ地方東部 ― ファブリー邸
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「モルフの更なる繁栄を祝って!」
そんな台詞と共に、グラスの鳴る音があちこちで聞こえた。
喉を流れる酒はなかなかの上物で、思わず顔が緩む。
商工組合の仲間と談笑を楽しみながら、パーティは緩やかに時間が過ぎていった。
しかし、視界の端々に移る道化師、もとい魔法使いたちの不釣合いな姿が、このパーティが魔女バルメの為に開かれている事を思い出させてくれる。
頭上を強い風が通り抜けた。
見上げると、鱗の生えた巨大な生物の尻尾が視界を横切ってゆく。
「ドラゴン・・・か」
幻だろうか、それとも本当に『召喚』というやつを行ったのだろうか、招待客はその余興に感嘆の声を上げていた。
どこかから、モルフ羊の素焼きの臭いがした。
その不快な香りに、急に煙草が吸いたくなって、俺は庭に続くテラスの方へと足を向けた。
「ねぇ、クッキーを頂戴」
庭に出る一歩手前のところで、俺の服を誰かが引っ張った。
視線を下げると、そこには白いドレスを着た少女が立っている。
年は6つか7つ程、社交界に出るには早すぎる年頃だ。
おそらくファブリー家の子供だろう。
「お嬢さんお名前は?」
「チャーミーよ。チャーミー・G・ファブリー」
この年頃の女の子は、大人びているというが、少女はドレスの端をつまむと可愛く会釈をした。
俺は、苦笑すると少女の調子に合わせて答えた。
子供はあまり好きではないのだが・・・。
「初めまして、レディ。私はアーサー・テイラックと申します。残念ですがクッキーは昼間配り終えてしまいましてね」
既に夜もふけているせいか、俺を見上げる少女の顔は眠たそうな呆け顔である。
もしかしたら、寝ぼけてパーティに紛れ込んだのだろうか。
そのうち少女の存在に家の者が気がつくだろう、と周りを見渡すと、一人の少年と目が合った。
夜会服の上に、魔法使いが着るような濃紺の長衣を着るという変わった格好の少年は、俺と少女を交互に見返すとこちらに足を進めた。
途中、幾度となく客人に挨拶をしながらゆったりとした様子でやってくる。
ただの客人ではなさそうだ。
「チャーミー、もう寝る時間だろう?こんな所で・・・」
「・・・から」
「ん?」
やっと手に余る子供の面倒から解放される。
ほっと安心した俺の横で小さくチャーミーが呟いた。
「クッキーくれないなら、悪戯しちゃうから!!」
癇癪を起こした甲高い少女の声が会場に響いた。
その声に答えるかのように、開け放たれた扉から一斉に突風が飛び込む。
脇に置かれた花瓶が、テーブルの上の料理がひっくり返り、誰かの手放したハンカチがあっという間に天井に舞い上がり、風に巻かれて飛んでいった。
「――風よ!その者を包み守りたまえ!」
少年の言葉が俺に投げかけられて、温かい不思議な何かが俺を守った。
暴れ馬のように室内を蹂躙した風は、そのまま外に逃げていったのかしばらくして治まる。
シャンデリアの光が消え、人々のざわめきだけが聞こえる。
「今のは・・・なんだ?」
最後に見た少女の体には黒い薄膜に覆われた羽と、角。
まさに、子供達が扮する使い魔そのものだった。
暗闇の中で、ぽつぽつと、魔法使いたちの灯りを求める言葉が唱えられ、微かな光がともった。
その光景は、部屋の中の荒れた様子を想像さえしなければ、幻想的でもあった。
それにしても、余興にしては、大仰すぎやしないか?
PC :アーサー (ジュリア)
NPC:エリス女史 チャーミー 少年
場所:モルフ地方東部 ― ファブリー邸
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「モルフの更なる繁栄を祝って!」
そんな台詞と共に、グラスの鳴る音があちこちで聞こえた。
喉を流れる酒はなかなかの上物で、思わず顔が緩む。
商工組合の仲間と談笑を楽しみながら、パーティは緩やかに時間が過ぎていった。
しかし、視界の端々に移る道化師、もとい魔法使いたちの不釣合いな姿が、このパーティが魔女バルメの為に開かれている事を思い出させてくれる。
頭上を強い風が通り抜けた。
見上げると、鱗の生えた巨大な生物の尻尾が視界を横切ってゆく。
「ドラゴン・・・か」
幻だろうか、それとも本当に『召喚』というやつを行ったのだろうか、招待客はその余興に感嘆の声を上げていた。
どこかから、モルフ羊の素焼きの臭いがした。
その不快な香りに、急に煙草が吸いたくなって、俺は庭に続くテラスの方へと足を向けた。
「ねぇ、クッキーを頂戴」
庭に出る一歩手前のところで、俺の服を誰かが引っ張った。
視線を下げると、そこには白いドレスを着た少女が立っている。
年は6つか7つ程、社交界に出るには早すぎる年頃だ。
おそらくファブリー家の子供だろう。
「お嬢さんお名前は?」
「チャーミーよ。チャーミー・G・ファブリー」
この年頃の女の子は、大人びているというが、少女はドレスの端をつまむと可愛く会釈をした。
俺は、苦笑すると少女の調子に合わせて答えた。
子供はあまり好きではないのだが・・・。
「初めまして、レディ。私はアーサー・テイラックと申します。残念ですがクッキーは昼間配り終えてしまいましてね」
既に夜もふけているせいか、俺を見上げる少女の顔は眠たそうな呆け顔である。
もしかしたら、寝ぼけてパーティに紛れ込んだのだろうか。
そのうち少女の存在に家の者が気がつくだろう、と周りを見渡すと、一人の少年と目が合った。
夜会服の上に、魔法使いが着るような濃紺の長衣を着るという変わった格好の少年は、俺と少女を交互に見返すとこちらに足を進めた。
途中、幾度となく客人に挨拶をしながらゆったりとした様子でやってくる。
ただの客人ではなさそうだ。
「チャーミー、もう寝る時間だろう?こんな所で・・・」
「・・・から」
「ん?」
やっと手に余る子供の面倒から解放される。
ほっと安心した俺の横で小さくチャーミーが呟いた。
「クッキーくれないなら、悪戯しちゃうから!!」
癇癪を起こした甲高い少女の声が会場に響いた。
その声に答えるかのように、開け放たれた扉から一斉に突風が飛び込む。
脇に置かれた花瓶が、テーブルの上の料理がひっくり返り、誰かの手放したハンカチがあっという間に天井に舞い上がり、風に巻かれて飛んでいった。
「――風よ!その者を包み守りたまえ!」
少年の言葉が俺に投げかけられて、温かい不思議な何かが俺を守った。
暴れ馬のように室内を蹂躙した風は、そのまま外に逃げていったのかしばらくして治まる。
シャンデリアの光が消え、人々のざわめきだけが聞こえる。
「今のは・・・なんだ?」
最後に見た少女の体には黒い薄膜に覆われた羽と、角。
まさに、子供達が扮する使い魔そのものだった。
暗闇の中で、ぽつぽつと、魔法使いたちの灯りを求める言葉が唱えられ、微かな光がともった。
その光景は、部屋の中の荒れた様子を想像さえしなければ、幻想的でもあった。
それにしても、余興にしては、大仰すぎやしないか?
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