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2024/11/01 08:21 |
ファブリーズ  23/アーサー(千鳥)
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PC:ジュリア アーサー
NPC:自称騎士(ヴァン・ジョルジュ・エテツィオ)
  エンプティ  バルメ
場所:モルフ地方東部 ― ダウニーの森

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 「竜が月明かりのした水浴び?そういうものは美しい乙女がするものだろう!」
 
 肉体的な疲労と、寝不足と、精神的な疲労と・・・もろもろの因子が重なって――
 思わず怒気を含んだ声で本音をもらし、人々の視線が集まった。
 失礼、と謝罪の言葉を口にすると、俺は魔女の方に顔を向けた。

「この騎士殿が竜退治を引き受けてくださるそうです」
「えぇ!?」
「魔女殿もご協力くださいますか?」

 突如押し付けられた重責に自称騎士が声を上げたが、隣にいたジュリアが「観念し
ろ」だの「騎士道に献身はつきものだ」などと追い討ちをかけて大人しくさせた。

 魔女はあいも変わらずほのかな笑みをたたえていて、感情を読み取りにくい。
 そもそも、竜退治は魔女の使命であって俺達は無関係なのだ。
 もっと乗り気になってもいいはずだ。
 しかし、老木の魔女も使い魔たちもふわふわと夢の中にでもいるような様子でわれ
われ人間を見ていた。

 ほかの生き物に姿を変えるということは、その人外の能力を受け継ぐと同時に、人
間としての何かを捨てるということではないだろうか?
 それは、自分を捨てるということ以上に冗談じゃない行為で、俺が彼らを見るたび
に感じる嫌悪感はそこにあるのではないかと思った。

 そんな彼らと対照的に、エンプティだけが暗く沈んだ眼孔で、魔女の後ろに控えて
いた。
 この男の目的がいまいち分からないが、もしかしたら二人はかつて恋人同士だった
のではないだろうか。

「わかったわ、協力しましょう」

 沈黙の後、応えた声が誰のものなのか一瞬分からなかった。
 その声にはいままでの老婆のものとは違う力が宿っていた。
 
 ざざざ。
 ずわんずわん。
 
 木々が葉を揺らす音と、地面が脈打つ音があたりを揺らした。
 何かが懸命に移動しようとする音だった。 

「今となってはこの森は全て私の身体の一部。私はこうして動けないけれど、私の手
を貸してあげることはできるわ」

 俺達を囲んでいた木々が、湖へと導くように道をあけた。
 人一人通れるかという細い道の向こうに、月光にきらめく湖が見えた。
 それほど大きい湖ではない。
 先ほどの話が本当ならば数滴で、酒の湖が出来るだろう。
  
「今夜はまだ竜は水浴びをしていないの。さぁ、いそいで」

 相変わらずの口調だったが、魔女の声には期待がこめられていた。

「バルメの魔女の物語には確かに偽りがございました。しかし、今宵はそれを真実に
するチャンスでございます。では、道中お気をつけて」

 エンプティが薄く笑って頭を下げ、自称騎士がごくりと喉を鳴らした。

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2007/09/24 00:28 | Comments(0) | TrackBack() | ●ファブリーズ

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