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2025/03/10 06:40 |
ファブリーズ  21/アーサー(千鳥)
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PC:ジュリア アーサー
NPC:自称騎士(ヴァン・ジョルジュ・エテツィオ)
  エンプティ  バルメ
場所:モルフ地方東部 ― ダウニーの森

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 強い風が暗い森を揺らし、刹那、月の光が彼らの顔を照らした。
 愛らしい子供の顔と、大地に落ちる異形なシルエット。
 絵本の中に迷い込んだような、可笑しくも恐ろしくも感じるそのアンバランスさ
に、俺は一瞬顔を逸らした。

「確かに・・・ほかの子供たちはそうかもしれません。しかし、その少女は別です。

こに倒れている少年は彼女の兄で、彼女を探しにやって来たのです」

 貧しく身寄りの無い子供たちとは違い、チャーミーは富豪ファブリー氏の娘だ。
 何不自由ない暮らしをしている幸福な子供を何故バルメが招きよせたのか、この誤
解さえ解けばチャーミーを取り戻せるはずだ。
 俺はそう踏んで魔女に説得を始めた。

「彼女を帰してあげてはくれませんか?」
「何故分らないのかしら?子供が大人と同じ尺度を持っているとは限らないわ」 

 しかし、俺の努力は徒労に終わったようだ。
 魔女はまるで異国の言葉を聞いたように小首をかしげた。

「彼女はとっても可愛そうな子供なのよ」
「――そうですか」
 
 眉間に手を当てて、俺は深く考え込む仕草をした。
 指の合間から睨みつけるように後ろを振り返ると、ジュリアも自称騎士も逃げるよ
うに視線をはずした。

 話が通じない。

 こうなったら実力行使でチャーミーを奪還するか、魔女とともに怖い怪物を倒すか
の二つに一つしか手段は無い。

 竜――。

 先ほどのパーティで見たイリュージョンを思い出す。
 ヘビのような長い肢体を持ち、優美に空を飛ぶあの生き物と、バルメの話した竜で
は多少毛色が違うようである。
 多少は腕に心得があったが、それは人を相手にしたときの事。
 竜など、俺の範疇をこえている。
 しかし、必ずしも攻略不可能かといえば、そうでもない。
 『ドラゴンスレイヤー』を称する人間は存在するし、多少金を払えば雇えないこと
も――
 お金で解決しようとする思考をムリヤリ軌道修正する。

「騎士殿、実はその腰の立派な剣が、かつて竜を倒した伝説の名剣って事はないです
よね?」
「・・・無い」
「では、あなた自身が実はかなりの剣の達人でモンスターなど片手でねじ伏せるなん
て事は・・・」
「無い」 
「使えない男だ」
 
 思わず自分の本音が口を出たのかと思ったが、その声は女性のものだった。
 自称騎士はジュリアの言葉に傷ついた顔をしたが、申し訳程度の小さな声である幻
の一品の名を口にした。
 
「ですが、一滴口にすれば竜をも酔わすという酒なら・・・」
 
 その名も銘酒『竜殺し』。


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2007/09/24 00:06 | Comments(0) | TrackBack() | ●ファブリーズ

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