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PC:ジュリア アーサー
NPC:自称騎士(ヴァン・ジョルジュ・エテツィオ)
場所:モルフ地方東部 ― ダウニーの森
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あの時、ジュリアの言葉どおりヴァンが剣を振り下ろしていれば、事態は違っ て
いたのだろか?
いや、たいして変わりはしないだろう。
俺たちが魔女の住処に足を踏み入れ、その眠りを妨げようとしていることには 変
わりはない。
「彼らは・・・ファブリー家の者たちは大丈夫でしょうか」
「そんな事より自分の心配をしろ」
来た道を塞がれ、不安げに後ろを振り返ったヴァンに、ジュリアがそっけない 言
葉を返した。
「しかし…お嬢さん。あれはファブリー家の娘同様、魔女に魔法をかけられた子 供
なのでしょう?」
「かもな」
「ぼくは、女子供を斬る剣など持っていません」
先ほど躊躇した理由はそこなのだ。と、ヴァンは殊更に主張するように言った 。
しかし、今までの狼狽ぶりを見る限り、単に怖じけづいたとしか思えない。
ジュリアも馬鹿にするような口調で尋ねる。
「ならばバルメも斬れないというのか?女で、しかも老人だ」
「魔女は邪悪な存在です」
なるほど。と小さくジュリアは呟くと、暗闇の向こうを見据えた。
彼女の視線を追って俺もその先を見つめる。
巨大な翼をもった二つの『何か』が、こちらに目掛けて突進してきた。
「ようこそ魔女の森へ」
「ようこそバルメの森へ」
それは幼い少女と少年の顔を持った二羽の梟だった。
双子なのだろうか、同じ赤い髪と鼻のそばかすをもった怪物は急かすように俺 た
ちの頭上を旋回した。
「落としましょうか?」
未だ剣を抜く決心のつかないヴァンを尻目に、俺はジュリアに尋ねた。
この異様な森の中で、アテになるのは今となってはこの女だけだ。
「わっ」
「騎士殿!?」
ジュリアが答えるより早く、後ろでヴァンが声を上げた。
その足に太い木の根が巻きついている。
「ほらほら急いで」
「道が閉じてしまうよ!」
俺はヴァンの剣を引き抜くと、彼の足の下に振り下ろした。
切れ味だけはやたらいい剣は、まるで人の腕のようにヴァンに絡みついた根を
あっさりと切断した。
その剣を再び持ち主に押し付けると誰ともなしに駆け出す。
道は一つだ。
迷うことは無い。
途中、何度も頭の上を飛び回り邪魔をする梟たちに、ジュリアが何かを投げつ け
た。
ボンっ!
破裂音と共に、少年梟が墜落した。
「今のは?」
「クッキーだ」
「なるほど・・・」
――もしもまた、魔女の使い魔が現れたら、それで難を逃れてください。
そういって渡されたクッキーが、俺の懐の中にもあった。
▽ ▽ ▽
細い、細い道をひたすらに走った。
幾度か木の根や使い魔たちの妨害にあったが、命を奪おうとするほどの殺意は無
かった。
どうやら魔女は今ここで俺たちを殺すつもりは無いようだ。
森に駆り立てられた俺たちの足が、疲労で鈍くなる頃に、ようやく終わりが見 え
た。
それは、森の中のほんの小さな平地だった。
そこで俺たちを出迎えたのは幼い子供たちの歌声。
「深い深い森の奥 村人に追われたバルメ婆さん」
「話し相手は 黒い猫」
「灰色の鼠に」
「双子の梟」
その中にはチャーミィの姿も在った。
彼女は、横たわるレノアと従者の姿を呆然と見下ろしていた。
恐らく彼らはバルメの使い魔になるには成長しすぎていたのだろう。
「ようこそお客人」
子供たちの甲高い声に、たった一つしわがれた声が混じる。
他の森の木々を避けるように、孤独に生えた一本の老木。
木の表面が深い皺を刻み、老婆の顔を作った。
PC:ジュリア アーサー
NPC:自称騎士(ヴァン・ジョルジュ・エテツィオ)
場所:モルフ地方東部 ― ダウニーの森
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あの時、ジュリアの言葉どおりヴァンが剣を振り下ろしていれば、事態は違っ て
いたのだろか?
いや、たいして変わりはしないだろう。
俺たちが魔女の住処に足を踏み入れ、その眠りを妨げようとしていることには 変
わりはない。
「彼らは・・・ファブリー家の者たちは大丈夫でしょうか」
「そんな事より自分の心配をしろ」
来た道を塞がれ、不安げに後ろを振り返ったヴァンに、ジュリアがそっけない 言
葉を返した。
「しかし…お嬢さん。あれはファブリー家の娘同様、魔女に魔法をかけられた子 供
なのでしょう?」
「かもな」
「ぼくは、女子供を斬る剣など持っていません」
先ほど躊躇した理由はそこなのだ。と、ヴァンは殊更に主張するように言った 。
しかし、今までの狼狽ぶりを見る限り、単に怖じけづいたとしか思えない。
ジュリアも馬鹿にするような口調で尋ねる。
「ならばバルメも斬れないというのか?女で、しかも老人だ」
「魔女は邪悪な存在です」
なるほど。と小さくジュリアは呟くと、暗闇の向こうを見据えた。
彼女の視線を追って俺もその先を見つめる。
巨大な翼をもった二つの『何か』が、こちらに目掛けて突進してきた。
「ようこそ魔女の森へ」
「ようこそバルメの森へ」
それは幼い少女と少年の顔を持った二羽の梟だった。
双子なのだろうか、同じ赤い髪と鼻のそばかすをもった怪物は急かすように俺 た
ちの頭上を旋回した。
「落としましょうか?」
未だ剣を抜く決心のつかないヴァンを尻目に、俺はジュリアに尋ねた。
この異様な森の中で、アテになるのは今となってはこの女だけだ。
「わっ」
「騎士殿!?」
ジュリアが答えるより早く、後ろでヴァンが声を上げた。
その足に太い木の根が巻きついている。
「ほらほら急いで」
「道が閉じてしまうよ!」
俺はヴァンの剣を引き抜くと、彼の足の下に振り下ろした。
切れ味だけはやたらいい剣は、まるで人の腕のようにヴァンに絡みついた根を
あっさりと切断した。
その剣を再び持ち主に押し付けると誰ともなしに駆け出す。
道は一つだ。
迷うことは無い。
途中、何度も頭の上を飛び回り邪魔をする梟たちに、ジュリアが何かを投げつ け
た。
ボンっ!
破裂音と共に、少年梟が墜落した。
「今のは?」
「クッキーだ」
「なるほど・・・」
――もしもまた、魔女の使い魔が現れたら、それで難を逃れてください。
そういって渡されたクッキーが、俺の懐の中にもあった。
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細い、細い道をひたすらに走った。
幾度か木の根や使い魔たちの妨害にあったが、命を奪おうとするほどの殺意は無
かった。
どうやら魔女は今ここで俺たちを殺すつもりは無いようだ。
森に駆り立てられた俺たちの足が、疲労で鈍くなる頃に、ようやく終わりが見 え
た。
それは、森の中のほんの小さな平地だった。
そこで俺たちを出迎えたのは幼い子供たちの歌声。
「深い深い森の奥 村人に追われたバルメ婆さん」
「話し相手は 黒い猫」
「灰色の鼠に」
「双子の梟」
その中にはチャーミィの姿も在った。
彼女は、横たわるレノアと従者の姿を呆然と見下ろしていた。
恐らく彼らはバルメの使い魔になるには成長しすぎていたのだろう。
「ようこそお客人」
子供たちの甲高い声に、たった一つしわがれた声が混じる。
他の森の木々を避けるように、孤独に生えた一本の老木。
木の表面が深い皺を刻み、老婆の顔を作った。
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