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PC :アーサー ジュリア
NPC:レノア 自称騎士 エンプティ
場所:モルフ地方東部 ― ダウニーの森
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夜空は晴れ渡り、月光が大地を明るく照らしていたが、その光もけして森の中まで
は届きはしなかった。
レノアとジュリアが作り出した魔法の光と、従者の持つランタンが闇へと続く道を
照らし、このダウニーの森の光と闇をわけていた。
なるほど、確かに魔女の住む家の一つや二つ見つけられそうだ。
俺はこれまで魔女――魔法を使う人間と殆ど関わったことが無かった。
仮に魔女を見つけたとしてどうチャーミーを取り戻せばいいのか見当もつかなかっ
たが、こちらにはレノアとジュリアという魔法使いが二人もいるのだ。その辺りは心
配ないだろう。
ふとジュリアの視線に気がつき、俺は尋ねた。
「ジュリアさん、夜歩きは慣れていますか?」
「近眼のせいか鳥目でね」
ジュリアは軽くあしらう様に答えると、上着のポケットを探り出した。
どうも扱い辛い女だ、俺はそう思った。
格好こそ高級品を身に纏い、慣れた仕草でドレスの裾をさばいていたが、口調と態
度は男のようだった。
何より男に全く興味がなさそうなのがいけない。
「やっぱり無駄足だったかな…」
ぼそりと呟いて彼らのあとを追う。
☆ ・ ☆ ・ ☆ ・ ☆
10分ほど歩いただろうか、ダウニーの森はそれほど大きくは無いと聞いたが、森
は暗さを増すばかりで目的の場所も、出口も未だ見つかりはしなかった。
暗闇の中では耳ばかりが敏感になるのか、梟の鳴き声や小枝を踏みしめる音がする
たびに誰かしらの身体が飛び上がった。
「ご安心ください!獣も魔物も我が剣の露としてくれましょう!」
一人話し続ける騎士の声も震えていたが、言葉だけは勇ましかった。
この数時間で我々は彼の事について数年来の友人のように詳しくなっていた。
ヴァン・ジョルジュ・エテツィオ―――29歳。
とある王家に使える騎士だという。
しかし、肝心の国の名前を言わないのは彼が国王から特命を受け、その任務の最中
だかららしい。
単なる狂言回しとも考えられたが、腰に下げた剣だけは本物だった。
何故ファブリー氏はこの男をパーティなどに呼んだのだろうか。
ざっ。
その時、茂みの影から小さな黒い影が躍り出た。
人々に緊張が走り、ヴァンが剣に手を伸ばしたが、震えた手は剣をつかむ事無く泳
いでいた。
「ニャーーーーーォ」
なんだ、猫か。
闇夜に光る二つの目に、ほっと安堵の息を吐き、レノアが光源で猫をかざしその姿
を照らす。
「ひっ!」
小さく悲鳴をあげたのが誰だったのかは分からない。
黒い猫の肢体の上に乗った頭は、金髪にふっくらした頬の愛らしい少年の顔だっ
た。
もう一声鳴いて、少年の顔をした猫は使用人の足元にまとわりついた。
「うわぁあああ!!」
「何処に行くんだ!?ジャック!?」
使用人――ジャックが恐怖のあまり駆け出した。
レノアが慌てて後を追う。
猫は可愛らしい男の子の声でたずねた。
「おじさんたち、だあれ?何しにきたの?」
「おのれ、化け物めっ。魔女の使いだな!」
「落ち着いてください、騎士どの。相手は子供じゃないか」
俺はヴァンを制しながら後ろを振り返った。
ジャックとレノアの姿は見えなかった。
「子供もなにも、この姿では関係無いでしょう!!」
唾が飛ぶほど近くで怒鳴り散らすヴァンから顔をそらし、ジュリアを見たが、彼女
はお手並み拝見とばかりに手を後ろで組んでにやにやしていた。
「オーケー。…いいでしょう。まずは私に任せてください」
俺は膝をついて猫に尋ねた。
ジュリアの光のお陰で、その異様な姿がはっきりと見えた。
「私たちはバルメ婆さんに会いに来たんだ。君は彼女が何処にいるか知っているかね
?」
「知ってるよ」
「そこにはチャーミーという女の子もいるのかい?」
「いるよ。最近やってきた子だよ」
素直に答える猫
「じゃあ」
「ねぇ。そのおじさんは騎士さまなの?」
「む、おじさんとは失礼な。私の名はヴァン・ジョルジュ・エテツィオ…」
「おいっ!やめろ」
ジュリアが慌てて止めようとしたが遅かった。
「国王陛下に仕えるれっきとした騎士だ」
高らかにヴァンが名乗ると同時に、木々のざわめきが一層激しくなった。
魔女は騎士に殺され老木に姿を変えた――――。
魔女が我々を歓迎するはずなどなかった。
PC :アーサー ジュリア
NPC:レノア 自称騎士 エンプティ
場所:モルフ地方東部 ― ダウニーの森
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夜空は晴れ渡り、月光が大地を明るく照らしていたが、その光もけして森の中まで
は届きはしなかった。
レノアとジュリアが作り出した魔法の光と、従者の持つランタンが闇へと続く道を
照らし、このダウニーの森の光と闇をわけていた。
なるほど、確かに魔女の住む家の一つや二つ見つけられそうだ。
俺はこれまで魔女――魔法を使う人間と殆ど関わったことが無かった。
仮に魔女を見つけたとしてどうチャーミーを取り戻せばいいのか見当もつかなかっ
たが、こちらにはレノアとジュリアという魔法使いが二人もいるのだ。その辺りは心
配ないだろう。
ふとジュリアの視線に気がつき、俺は尋ねた。
「ジュリアさん、夜歩きは慣れていますか?」
「近眼のせいか鳥目でね」
ジュリアは軽くあしらう様に答えると、上着のポケットを探り出した。
どうも扱い辛い女だ、俺はそう思った。
格好こそ高級品を身に纏い、慣れた仕草でドレスの裾をさばいていたが、口調と態
度は男のようだった。
何より男に全く興味がなさそうなのがいけない。
「やっぱり無駄足だったかな…」
ぼそりと呟いて彼らのあとを追う。
☆ ・ ☆ ・ ☆ ・ ☆
10分ほど歩いただろうか、ダウニーの森はそれほど大きくは無いと聞いたが、森
は暗さを増すばかりで目的の場所も、出口も未だ見つかりはしなかった。
暗闇の中では耳ばかりが敏感になるのか、梟の鳴き声や小枝を踏みしめる音がする
たびに誰かしらの身体が飛び上がった。
「ご安心ください!獣も魔物も我が剣の露としてくれましょう!」
一人話し続ける騎士の声も震えていたが、言葉だけは勇ましかった。
この数時間で我々は彼の事について数年来の友人のように詳しくなっていた。
ヴァン・ジョルジュ・エテツィオ―――29歳。
とある王家に使える騎士だという。
しかし、肝心の国の名前を言わないのは彼が国王から特命を受け、その任務の最中
だかららしい。
単なる狂言回しとも考えられたが、腰に下げた剣だけは本物だった。
何故ファブリー氏はこの男をパーティなどに呼んだのだろうか。
ざっ。
その時、茂みの影から小さな黒い影が躍り出た。
人々に緊張が走り、ヴァンが剣に手を伸ばしたが、震えた手は剣をつかむ事無く泳
いでいた。
「ニャーーーーーォ」
なんだ、猫か。
闇夜に光る二つの目に、ほっと安堵の息を吐き、レノアが光源で猫をかざしその姿
を照らす。
「ひっ!」
小さく悲鳴をあげたのが誰だったのかは分からない。
黒い猫の肢体の上に乗った頭は、金髪にふっくらした頬の愛らしい少年の顔だっ
た。
もう一声鳴いて、少年の顔をした猫は使用人の足元にまとわりついた。
「うわぁあああ!!」
「何処に行くんだ!?ジャック!?」
使用人――ジャックが恐怖のあまり駆け出した。
レノアが慌てて後を追う。
猫は可愛らしい男の子の声でたずねた。
「おじさんたち、だあれ?何しにきたの?」
「おのれ、化け物めっ。魔女の使いだな!」
「落ち着いてください、騎士どの。相手は子供じゃないか」
俺はヴァンを制しながら後ろを振り返った。
ジャックとレノアの姿は見えなかった。
「子供もなにも、この姿では関係無いでしょう!!」
唾が飛ぶほど近くで怒鳴り散らすヴァンから顔をそらし、ジュリアを見たが、彼女
はお手並み拝見とばかりに手を後ろで組んでにやにやしていた。
「オーケー。…いいでしょう。まずは私に任せてください」
俺は膝をついて猫に尋ねた。
ジュリアの光のお陰で、その異様な姿がはっきりと見えた。
「私たちはバルメ婆さんに会いに来たんだ。君は彼女が何処にいるか知っているかね
?」
「知ってるよ」
「そこにはチャーミーという女の子もいるのかい?」
「いるよ。最近やってきた子だよ」
素直に答える猫
「じゃあ」
「ねぇ。そのおじさんは騎士さまなの?」
「む、おじさんとは失礼な。私の名はヴァン・ジョルジュ・エテツィオ…」
「おいっ!やめろ」
ジュリアが慌てて止めようとしたが遅かった。
「国王陛下に仕えるれっきとした騎士だ」
高らかにヴァンが名乗ると同時に、木々のざわめきが一層激しくなった。
魔女は騎士に殺され老木に姿を変えた――――。
魔女が我々を歓迎するはずなどなかった。
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