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2024/05/16 18:01 |
第零章 「両性軍人」 /オルレアン(Caku)
PC@オルレアン(作中・若い騎士)
NPC@ 国王、魔女、娘
場所@ 正統エディウス帝國(過去~現在)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ある国に、とても立派な王様がいました。
王様には立派な弟と、立派な息子もいました。
やがて、王様が死んで立派な弟と立派な息子だけが残りました。
どっちもとっても立派だったので、二人は立派な王様の玉座に座るのは自分が
相応しいと喧嘩をしました。

他の人々も、自分がそれぞれ立派だと思うほうについて、違う人々と対立して
しまいました。

国は2つの立派な2人の王様によって、ぱっくり分かれてしまいました。



立派な息子は、とても悩んでいました。
彼には、王様の弟のような人脈も力もありませんでした。
なので、どうしても色々なものが苦しかったり、足りなかったりしました。

そんな時、国の外から魔女がやってきました。
魔女は、王様の息子にこういいました。

「私は追われている魔女です。
私を匿って下さるなら、お礼にとってもすごい使い魔を差し上げましょう」

王様の息子は、喜んでその取引に応じました。



王様の息子はとても強い、とても恐ろしい兵器を作って欲しいと頼みました。
魔女は、そうして子宮も肉も使わずに、何もないところから不思議な何かを作
り上げました。

不思議な何かは、「人造精霊」と名付けられました。



魔女はこういいました。

「私の魔法はとても完璧です」

王様の息子は喜びました。

「これで王様の弟にも負けないぞ!」




王様の息子はとても強い、とても恐ろしい兵器を作って欲しいと頼みました。
魔女はこういいました「私の魔法はとても完璧です」
魔法は成功して、とても強くてとても恐ろしいものが出来ました。



それからわずか三年後、魔女は火炙りにかけられました。

最後に魔女はいいます、私の魔法は、貴方の願いその通りだったでしょう?
と。





兵器として作られ「人造精霊」はとても人を殺すのに優れていました。
兵器として生まれた「人造精霊」は殺す相手の区別なんてつきませんでした。
兵器として呼吸する「人造精霊」は王様の弟の軍勢だろうは王様の息子の軍勢
だろうが関係なく、たくさんの人を殺していったのです。



墓場に並ぶ碑銘、風にそよぐ悲鳴。

「人造精霊」によって殺された人々は両手では数え切れないほどの人数になり
ました。
巷に響く怒り、街路樹に吸われる血潮。
とうとう、王様の息子は「人造精霊」を扱え切れないと、軍隊に殲滅命令を出
しました。



ある日。
「人造精霊」達のいるお城が突然、炎に包まれました。

王様の息子が差し向けた軍隊はとても沢山で、とてもいっぱいで、殺しきれま
せん。

ある時。
初めて「人造精霊」はコワイと思いました。初めて「人造精霊」はシニタクナ
イと思いました。初めて「彼ら」はイキタイと思いました。



王様の息子は安心しました。
怖い怖い化け物もいなくなったし、魔女も燃えてしまいました。
これで、もうあんな目にはあわないと思いました。



……◆
ところが。

ある日、王様の息子の部下の騎士達が風邪を引きました。高熱が出て、とても
苦しそうです。
高熱は何日も続きます、次第に風邪に倒れる騎士が多くなっていきます。
王様の息子は心配になりました。これは魔女の呪いだろうか?それとも、人造
精霊という悪魔の仕業だろうかと?

しいていえば、倒れていく騎士はミンナ、あの悪魔のお城の戦いで先陣を切っ
た者ばかりです。人々は恐れました、呪いだ呪いだ、それはまごうことなく呪
いだと。


高熱が下がると、騎士達はなんだが酷く暗くなりました。
家に閉じこもり、あるいは部屋にこもりっきり、あるいは行方をくらますもの
まで。王様の息子が理由を聞いても答えてくれません。ある者は自殺までして
しまいました。

とうとう、騎士の一人が王様の息子に話しました。



「魔女の呪いに感染してしまったのです」




人造精霊は初めて自我が芽生えた時、あるはずのなかった生存本能にも目覚め
ました。
そうして、最後の力で彼らは自分達を殺そうとした人間にウイルスとなって寄
生すること成功しました。



……◆
正統エディウス帝国・第?派閥「指導者(ハロルド)」

面沙汰には魔法研究部門と軍議会の2%の席を占める派閥。
その正体は、兵器「人造精霊」に寄生・感染された異能集団である。

別名「死導者」、体液感染を主流とする人造精霊故に、その集団は殆どが
なんらかの血縁・親しい者達だけで構成されているという。

火炙りにされた魔女の使い魔達は、まだ生き残っていたのだ。




あるところに、若い騎士がおります。
彼には、とっても愛しい妻がおりました。
若い騎士は、王様の息子にも信頼されていたので、幾つの戦場にも出撃してい
ました。

ある日、高熱が出ました。
死ぬかな、死ぬんだろうと思いました。それぐらいその風邪は酷いものでし
た。
妻は必死に看護いたしました。神にも祈りました。
その必死な思いを神様は聞き届けたのか、やがて騎士の熱は下がりました。
妻は喜びました、若い騎士も嬉しいです。またこれで一緒に仲良く暮らせるの
ですから。

やがて、妻のお腹に子供がいることがわかりました。
二人は喜んで、生まれてくる子供の名前を考えたり、お腹の子に歌を歌ってあ
げました。

そんな時です。
若い騎士が魔女の呪いに感染していたことが発覚しました。
騎士の妻も、騎士から呪いを受け取っていたことがわかりました。
お腹の赤ちゃんにも、呪いは伝わってしまいました。
それでも、二人は大丈夫でした。生まれてくる子供さえいれば、愛する人がい
れば魔女の呪いなど大したものでもなかったのです。

しかし、魔女の呪いは残酷でした。
お腹の赤ちゃんの呪いと、母親の呪いが、互いに互いを異物だと認識して戦い
始めたのです。
そして、魔女の呪いは残忍でした。
母親の体を戦場にして、繰り広げられた戦争によって、妻の体は食い破られて
ぼろぼろになってしまったのです。

かくして、魔女の呪いは成立しました。
残ったのは泣くことも出来なくなった首だけの母親と、泣き叫ぶ幼い赤子と、
泣き崩れた若い騎士だけでした。
呪いはシニタクナイ、生きていたいと叫ぶので、騎士は愛する人の元にすらい
けません。また、残された我が子を思うと身が張り裂けそうなほどに苦しいの
です。

ある日、そんな若い騎士の下に同胞が訪れます。
同じ呪いにかかった仲間達は、騎士に誘いを持ってきます。
私達の仲間にならないか?呪いを解くため、呪いをこれ以上広げない為、これ
以上悲しみを増やさない為。仲間達の差し伸べた手に、若い騎士は手を握り返
しました。


騎士は剣を捨てました。
代わりに手にあるものは、黒い黒い呪いの力です。魔女の残した忌わしいもの
です。
騎士は誇りを捨てました。
愛らしい娘が言います、ママでもパパでも貴方がいてくれれば世界は美しい
と。
死にかけた騎士を救ったのは剣でも火でもなく、何も理解できていない娘の、
なんでもない笑顔でした。






今年で8歳になるオードリーは、施設の白い階段で本を読んでいた。
“ママ”譲りの青い髪を綺麗に編み上げて纏めている。リボンがいっぱいつい
ているのは“ママ”の趣味である。
見かけによらず…というと“ママ”は物凄く怒るのだが、“ママ”は可愛いも
のが大好きで、フリルのお洋服だとかリボンのシューズとか、とにかくどこの
妖精さんが着る服ですかと尋ねたいぐらいのレベルのものを持ってくる。

軍服を着た“ママ”が去年の誕生日に真っ白い巨大ウサギ人形を抱えてやって
きた時の衝撃は、七歳になったばかりのオードリーでさえものすごく感じた。
施設の警備員はいつも、“ママ”を見ると、あやうく持っていた警棒を無意識
に握り締める。関係者以外立ち入り厳禁だから不審者なんてもってのほかだけ
ど、“ママ”はどう見ても不審っていうか激烈に怪しいから、関係者だってわ
かってても身構えるらしい。

警備員さんは、今回で3人目。
以前の警備員さんは“ママ”の抱擁に耐え切れずに辞職したそうだ。
抱きしめられるのはすごい嬉しいのに、どうやら他の人にとっては“ママ”の
抱擁は物凄く攻撃力があるそうだ。

時々、“ママ”と一緒に遊びに来る“ママの恋人”さんに「ママって強い
の?」って聞くと苦笑いされた。隣で“ママ”が笑顔で“ママの恋人”さんに
擦り寄ってたけど。
また聞いてみようと思うけれど、多分無理。
だって”ママの恋人”さん達はいつも違う人達ばっかり。ママはそれを恋多き
人生とか言ってたけど、多分違うと思う。なんとなく。


“ママ”をパパと呼ぶと注意される。
本当はパパって呼ぶのが普通の気がしてならないんだけど、どうやら“ママ”
は他のママとは違うらしい。まず背丈があるし体がおっきしい胸はぺったりだ
し。それでも、中身は他のお友達のママとあんまり変わらない気がする。
“ママ”は友達のママ達には大人気だけど、どうしてか男の人には恐怖の対象
にされている。もちろん、なぜか友達の男の子にさえ恐怖されている。



本を読み終わって、一息つく。
白い階段に座ったまま、少し離れた正門を見つめる。
“ママ”はもうそろそろ来る時間。決まって正門から、答えは簡単。
そこしかこの施設の入り口は存在しないから。頑健に作られたこの施設は、中
の者を逃がさないように出来ている。逃げる気などないからどうでもいいけれ
ど。

逃げるのは、そこが不満だったり嫌だったりするからで。
オードリーは絶対に逃げない、もし逃げたりなどすれば“ママ”が訪れた時に
自分がいないということになる、“ママ”に会う事が出来ないのは、オードリ
ーにとって死活問題だ。

と、一際哀れな悲鳴が聞こえた。
警備員さんの悲鳴だ、これがオードリーの合図。玄関でベルを鳴らすことに近
い。
そんな絶叫が聞こえるや否や、最高の笑顔でオードリーは正門に駆け寄る。
警備員の絶叫は大好きな“ママ”との面接時間の合図なのである。


「ママ!!」


傍目には締め上げているとしか見えないが、本人はどうやら抱擁しているらし
い。
相手はまだ20代前半で、泡を吹きかねないまでに気絶してる。
多分精神的なショックだろう。哀れ警備員、ちなみに彼はこの後一週間で辞表
を出す運命となっていることは誰も知らない。辞表をいつ出すかで周囲が賭け
ていることは知っているが。

気絶した警備員など張っ倒して軍服姿の“ママ”…男は娘を見るや否や満面の
笑顔を浮かべた。

「やぁーん、オードリー!!会いたかったわーー!!」

「ママ待ってたんだよ。ねえ、今日は何を持ってきてくれたの?」

男は娘を抱えて抱きしめた。
ちなみに、どうみても“ママ”は男である。髪は長く、それなりに女っぽく見
える顔立ちだが、どこをどう見ても男性である。
軍服は威嚇色にして、見る者を暗鬱にさせる禁忌の緑色。侮蔑をこめて「魔女
の森色」と呼ばれる正エディウスの象徴。しかし何故か“ママ”の服には白い
フリルがついていた。
台無しである、おもに制服のデザインと威嚇の意が。



「今日はね、夏物のお洋服買ってきたわよぉ。有名店のケーキだって買ってき
ちゃったんだから!!」

「ママ大好きーー!!」




オードリーはそんな“ママ”が大好きである。

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2007/02/10 17:29 | Comments(0) | TrackBack() | ●パラノイア

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