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2024/05/17 05:25 |
パラノイア 序章「出撃」 /オルレアン(Caku)
PC@オルレアン
NPC@隊商、旅賊、アイス・クラウン中佐、人造騎士騎馬隊
場所 パウラ連合国境付近~正統エディウス国首都軍部

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北の果てライラン~リードリース国アンガス~ムーラン経由でクーロンを目指
した商隊(キャラバン)は、ムーランが現在砂嵐によって事実上交通不可であ
る事を受けて、急遽進路を変更。リードリースよりパウラ連邦~正統エディウ
ス国を通過することに決定した。

新生エディウスよりも、正統エディウスは事実上隊商や異国人の通過や人権を
許容してくれることが、正統エディウス経由にした理由もあったが、じつは別
の理由もあった。
北の果てライランで、彼ら隊商は奇妙な荷物を請け負った。
本来なら扱わない品物だが、予想を超える金額と追加報酬もあり通行ルートの
途中で引き渡せる正統エディウス国への荷物、ということで軽い気持ちで引き
受けた。

その荷物は奇妙ではあったが、富豪や貴族が似たような品物を頼むことを知っ
ていた隊商のリーダーはさして気にせず荷物の運搬の支持を出した。
その荷物は宛名に、正統エディウスの軍人の名前が書かれていたことも知って
いたので、軍人貴族の酔狂な遊びだと思ったのだ。

その他にも、今回は奇妙な荷物が多かった。
後々にすれば、彼らも“奴ら”もほとほと運が悪かったとしかいいようがない
のである…




パウラ連合国境付近。
隊商が深夜、夜盗集団に襲われた。隣国エディウスに対抗するためだけに打ち
立てられたパウラ連合は非常に治安がよろしくない。
おざなりな傭兵集団では太刀打ちできず、組織化された盗賊達はあっという間
の見事な戦術で荷物を奪い去った。
幸いなことに、キャラバンのメンバーに命に別状のあるものはいなかった。

その知らせは、翌日正統エディウスのギルドに知らされた。
そして、ギルドはイヤイヤながらも軍のとある人物に荷物の紛失を連絡した。
ギルドと軍は元々犬猿の仲なのだ。それでも軍よりも仕事に筋を通すギルド職
員はきちんと相手にそれを伝えてしまった。





悲劇の幕開けであった。主にとある三人と盗賊達の。





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正統エディウスの軍人は正直、遠慮したい。
常に近隣国と、お隣の新生エディウス国の常套句である。
答えは悲しい正統派の人材不足にぶち当たる。前国王の弟は、やはり長年生き
ていただけあって人脈も資金も心得ていたが、まだ少年の域の前国王の後継者
にはまったくそのようなスキルがなかったのである。
かろうじて、前国王の忠実な臣下にして懐刀・アルデリックフィーン卿という
人格的にも政界人としても立派な人物が少年王に傅いたのであるが、一羽の鷹
だけでは国を治められない。
また同胞にして、今や宿敵である隣国新生エディウスを打倒し、本当の「エデ
ィウス」国を作るにしても、だ。

おわかりだろうか。
正統エディウスはその正統さ故に紛い者、つまり流れの異国者やエディウス人
以外の人種を集めるはめになった。
ほとんどのエディウス貴族が新生エディウスの旗本に奪われた現在、正統エデ
ィウスの軍人はほぼ過半数が異国人という異例の事態であるのだ。




そんな中で、星と音楽の都市スピカ出身の彼アイス・クラウン中佐も立派な異
国人である。
音楽に才能があった彼がなぜ軍人を努めているのか…それはもしかしたら彼が
国を離れなければならない事情に関係していたのかもしれない。
とりあえず、議会席が常に2パーセントしかない「指導者」派閥は常に財政難
で喘いでいる。
魔法研究など、これほどに資金が必要な部署も存在しないだろうに、悲しいか
な大多数の横暴によって常に彼の頭はいかに資金をやりくりするかで占められ
ている。

いつもの気難しい顔で、研究部の廊下を早足に歩いていたアイス・クラウン中
佐に、後方から哀れなる悲鳴が一直線に聞こえていた。

「たたっ、大変ですクラウン中佐!!」

それでもクラウン中佐は足を止めるどころかわずかにも速度を落とさない。
叫びの主は全速力で廊下を突っ切り、クラウン中佐にすがりつく。まだ若い士
官の必死の形相をようやく気がついたクラウン中佐は歩みを止めた。

「ああ、すまない。やはり今回の研究部の機材拡充は難しいみたいだ」

「そそそ、そんなもの後でいいんです!とりあえずどうにかしてください!!」

はて、若い士官の顔を見てクラウン中佐が不思議そうに首をかしげた。
士官達が自分に声をかけるときは常に研究部の機材をもっと充実させて欲しい
としか言わないので、士官の声の音を聞き分けると彼の意識は自動的に声をか
けられた記憶を改竄する。
愛想笑いで逃げようとしたのだが、どうも何か逼迫した状況なのか、若い士官
はしきりに窓をちらりちらりと横目で見ては中佐を逃がすものかとその軍服を
離さない。

「……って何事、」

彼は士官と同じように窓を眺めて、喉から出そうとした言葉の続きを失った。




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嘶く黒い馬の群れ、またがるのは十字の兜で顔を隠した兵士の集団。
金と黒を基調にデザインされたいかめしい鎧は少しでも動くたびにがちゃがち
ゃと重々しい金属音を立てる。全員が、無機質なまでの赤い二つの瞳を兜の奥
から底光らせる。

指導者直属騎馬隊・通称「荒猟師(ワイルド・ハント)」と呼ばれる人造騎士
兵団。
その語源は旅人の命を奪い去る黒い妖精からとられたもの。全員が意志の無い
人形のようなものである属性を持った上位の存在にしか彼らは制御できない。
人の姿を模してはいるが、元は黒い不定形の泥とも水とも言い難い魔法生物
だ。


「一体何があった!?」

クラウン中佐が息を切って走ってきた。
廊下の窓辺の、陽光躍る夏の風景を埋め尽くしていたのは、この禍々しい集団
である。
普段、というか滅多に彼らが駆り出される事などない。あまりにも戦闘力があ
り、また「指導者」にしか制御できない彼らは一旦制御を解き放たれると、も
はや魔法式の命令どおりに敵を殲滅し尽くす。これほど危険な玩具を保持する
のはそれが少年王の意向だからだ。

『…………』

「答えろ!」

本来喋る機能はない彼らだが、このように人型となっている際だけ、ある程度
の意志相通が可能である。それに、アイス・クラウン中佐は「指導者」だっ
た。
彼の水色の氷のような瞳に、うっすらと紋章が浮かんだ。足元が氷結しはじ
め、周囲の気温が唐突にぐんと冷えた。アイス・クラウン……“氷の王”を宿
す指導者の名前のままに。

『ご命令がございましたので、我らが呼ばれました』

「誰の命令だ!!」

三十人近くの黒い騎士達は不吉な赤い瞳をそれぞれに瞬かせた。
集団の中から、十字の兜の額に金の識別紋章を輝かせる大きな騎士が馬にのっ
たまま前に出た。
その識別紋章は、その彼が集団の司令塔である記号だ。
司令塔の役目の人造騎士から、上位者「指導者」の命令が全体に発せられる。
つまりはこの集団のリーダー役である。リーダー役の人造騎士は周囲の命令を
いっさい受けない。
一時契約した主以外の命令は全て遮断するのだ。

『残念ながら、今回は貴方が我らの主ではありませぬ』

「お前らなど誰が呼ぶか!仲間の誰が起動させたんだ!!」

「あら、クラウンじゃないの。相変わらず不幸そうな顔ねぇ」

割り込んだ第三者の声。
その声を認識するや否や、全ての「荒猟師」は馬を向けて頭を垂れた。
アイス・クラウン中佐は不気味な予感に振り返るとーーー……

「やーねぇ、今日も陽射しが強くって。紫外線ってお肌の仇敵なのよ」

別名「エディウスの毒蛾」と渾名される長身の軍人が、黒い馬を引いて笑って
いた。
クラウン中佐の頭によぎったのは諦めか、あるいは絶望だったのかもしれな
い。




オカマであるとか、まあそういうのも苦手の理解を形成する一つである。
だが、異国人のクラウン中佐は、この生粋のエディウス人というものに遠慮を
感じてしまうのも無理は無い。この正統エディウス国では国民の47パーセン
トしか生来のエディウス国民でしかないのに、その47パーセントは生まれな
がらにして国から特権を幾つか与えられているのだ。
異国人がエディウス国民を殴った場合、ほぼ予断なく禁固刑5年は下らない。
だがエディウス国民が異国人を殴っても、せいぜい罰金程度なものだ。
昔、国が新生エディウスに流れる貴族や騎士を引き止めようとした名残の支配
特権が今だ強くこの国を覆っている。もちろん、軍人であろうがそれは変わら
ない。

だから、クラウン中佐は同い年に近い青年に一歩引きながら、それでも必死に
訴えた。

「ノード卿……一体これはどういうことだ」

「や★だ、オルレアンでいいのに」

お茶目なウインク、だが男がやってもキモイ。
一気に呼吸が止まりそうだが、ここで死ぬな私には果たさねばらぬ誓いがとか
そんなような精神的な柱を支えに踏み止まる。耐えろ自分、相手はエディウス
人でオカマだが、耐えるんだ私。

「卿よ、真面目にお聞きしたい。
こいつらを動かすほどの大事件は私の元に報告されていないぞ…何が、何が起
こった!?」

「ああぁ、それか。もう報告しただろ」

がらりと、口調が変わった。
さらに一歩足が引くのを押さえられない。警告警報発令、至急退避せよ。
オカマが男に、いや漢に戻る時。それすなわちそこには世界の破滅を呼び込む
のだ。
昔は少年王に寵愛されていたという気高い騎士。オカマ化して格下げされたら
しいが。
そう、かつてはエディウスの剣として名高い栄誉と誇りをもった男が今ここに
蘇っていた。
そういえば、いつもは周囲を舞っている蝶が見当たらない。どうやら彼が手綱
を握っている黒馬……昔は、人造精霊ソルデスもあのように凛々しい美しい馬
の姿だった。
懐かしさのあまり、気を遠くなる。

「あのクソ忌々しい旅賊を皆殺しにして来る。クラウンは大人しく生首でも待
ってるんだな」

「待て、件の国境付近のアレか?しかしなぜ我らが…」

国境付近は派閥の違う軍の管轄だ。管轄外の派閥がしゃしゃり出たら後々また
軍議会にかけられて予算が削られる。心配事は尽きないままに問い尋ねる。

「よりにもよって…そう、よりにもよってあの人間の屑どもは、ああ…可愛い
可愛いオードリーの誕生日プレゼントを奪いやがったんだよ!!」

娘の名を口にした時は、一瞬母親っぽい慈愛満ち溢れる顔になったが、再び光
臨したのは、世の男を破滅せんと滅びを謳うオカマ破壊神の無慈悲な表情。


「全員容赦はするな!!骨肉血管筋肉細胞臓器すべて切り刻んで磨り潰しても構
わん!!
脳味噌を踏み潰し、眼球を抉り出してでも誕生日プレゼントの居場所を突き止
めよ!!
どんな手段でも構わない、あらゆる卑怯卑劣非道外道悪辣辛辣な全ての考える
限りの方法を使い、アタシの可愛いオードリーのプレゼントを奪還せよ!!」


「………」


人造騎士達は、歓喜と狂気の雄たけびを上げた。
お前ら絶対理解してないだろ、とはクラウン中佐は突っ込めなかった。
午後2時。正統エディウス第七派閥より人造騎馬隊「荒猟師」30人と同じく
第七派閥少佐・オルレアン・アルヴァ・ノード卿が出撃。目的地はパウラ連合
国とエディウス国境地帯。
目標は先日の隊商襲撃事件容疑者の旅賊。目的は愛する娘の貢物。



一人残された広場に中佐はいた。
爽やかな夏の日差しが眩しいなぁと、アイス・クラウン中佐は思った。


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2007/02/10 17:29 | Comments(0) | TrackBack() | ●パラノイア

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