PC:オルレアン、ベアトリーチェ、ルフト
NPC:盗賊達
場所:スズシロ山脈中腹 盗賊の砦
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「普通に考えると……私、かんっぜんに珍獣扱いされてますね」
いつもこれだけ大雑把なのか、それとも今は何か別にやるべき事があるのか。ルフトは拘束すらされず、荷物と武器を奪われただけの状態で檻の中に閉じ込められていた。錆び付いた鉄檻はそこはかとなく脆そうに見える。とりあえず、両手で鉄棒を握り、全力を篭めて折り取ろうとしてみた。ミシッミシッと音はするが、そう簡単に折れる様子はみせない。
仕方なく自力で鉄格子をどうにかする事を諦め、近くで円らな瞳をコチラに向けている白熊とコンタクトを取ることにした。
『どうも、はじめまして。私は西方より参りました、ルフト・ファングと申します』
獣族は喉より発する音だけに限らず、体の動き全体を含めて言葉とする。だから手足尻尾などの身体的構造がある程度近い物同士ならばかなり楽に意思疎通する事ができるのだ。
『これはどうもご丁寧に。私(わたくし)、アメリアと申します。北の方より参りました』
白熊の淑女――アメリアはまだ若く、夫も子供もいないらしい。『捕まって、別に殺される様子もないのでご飯と住処の保障がされてるんなら別にいいかなって思いましたのよ』なんておほほほほとお上品に笑いながら、抵抗しないで大人しく捕まっている理由を話していた。
――数分後、ルフトは晴れて檻の外にでる事に成功した。抵抗する気のなかったアメリアがちょっと本気になれば、錆び付いた鉄格子など一撃で引き千切られてしまったのだ。自由になったアメリアはその後ルフトの檻も一撃で粉砕、無事自由の身を獲得することができたのだった。
手早く自分の荷物を身につけ、ざっと辺りを見回すと、ふと見慣れた綴りの名前が目に飛び込んできた。ベアトリーチェ・ガレット。今ルフトと一緒に組んで行動している少女の名前だ。
「そういえば、新しいのが届くってここ数日はしゃいでましたね」
呟いて、恐ろしく丁寧に梱包された武器――ソウルシューターを手に取る。梱包を剥がそうかどうしようかしばらく悩む。現在両手武器である棍しかない状況で、これを持って行き、なおかつ戦うのは厳しい。だが、ベアがあれだけ楽しみにしていたモノを本人が使う前に使ってしまうのも些か気がとがめる……というよりも、そのせいでどんな無理難題を吹っかけられるか分からないのが怖かった。
『あの、私はどうしましょう?』
思考の渦にハマっていたルフトを現実に引き戻したのはおずおずと掛けられたアメリアの声だった。ルフトの注意が自分に戻ってきたのを確認して、さらに続ける。
『檻、壊してしまいましたし……このままここにいるといろいろ大変そうですわよね?』
『そうですね……それでは、私と一緒に行きますか?本来の引き取り先の方がいる場所、多分分かりますし』
『あらあら、そうですの?それじゃあ、ご一緒させていただきますわ。よろしくお願いしますね、ルフトさん』
右腕に抱えたベアの宝物を見てもう少しだけ悩んで、梱包剤を剥がす。傷一つないぴかぴかの砲身がルフトの良心を刺激した。左手を腹にあてがいそうになって、首を振る。覚悟を決めろ、大丈夫、派手に傷をつけたりしなきゃそうは怒られない、はずだ。だといいな。
かくて、自ら窮地を打破せんとルフトはさらなる窮地へ足を踏み入れたのだった。
★☆◆◇†★☆◆◇
――ルフトが保管庫より脱出を図っている時、砦上層部では。
「砦南側に生命力感知!動物よりは大きいですが、人間とするとやや小さめです!」
さっそく発見し、リーダーの下へ見張りから報告が飛ぶ。
「またかよ!ええい、今度はほうっておけ!そろそろ毒蛾のヤツが来る頃合だ。各員、気合いれろ!」
「りょ、りょうかっ!うわあああああ!?か、壁が!?」
威勢のいい返事の余韻がまだ消えぬうちに、見張りはパニックを起こした声をあげた。同時にドガァッっという破砕音と衝撃が砦全体に響き渡る。
「どうした、何があった!?」
声を荒らげるが、悲鳴を上げた見張りがいた塔から連絡が帰ってくる様子はない。アドルフは、確実に破滅への道を辿り始めていた。
オルレアンとベアトリーチェ、先に砦に辿り着いたのはベアトリーチェの方だった。
「さて、ここの内部構造なんだが、俺が調べたところによるとだな……?」
ブルフがこれからどうするか相談しようとする間にも、今回でお役御免になるであろうソウルシューターを構えるベアトリーチェは
「お、おい?」
戸惑うブルフを尻目に
「あたしの新パートナー、かえしなさぁぁぁぁぁぁぁぁぁいっ!」
特大の一発を盗賊の砦に向けてぶっぱなした。
「おおおおおおおおおおおおおおい!?」
ソウルシューターから放たれた怒りの火炎弾は砦の外壁を易々と貫通し直径10mほどの風穴を開け、中に着弾して大爆発。そこらじゅうに炎を撒き散らす。
正面から攻められた時に備えて中庭で待機していた第一部隊が巻き込まれて一緒にコゲた。
そして、地上部分の主材料が乾燥している木で構成されている砦において、燃料と酸素を思う存分与えられた炎は激しく燃えさかる。
「り、リーダー、やられました!!南側の壁に大穴が開いちまった上に、辺り一面が火の海です!」
「中庭で待機していた第一部隊、壊滅的状態です!」
「地下保管庫にブチこんでおいた商品が二匹とも逃げやした!」
まだ断線されていない伝声管を通じて次々と寄せられる悲観的情報にアドルフは悲壮な決意を顔に浮かべた。
「第三部隊、砦の鎮火に当たれ!済み次第本丸に詰めて脱出口を確保!第四部隊は南防壁に開いた穴に急行、そっから入ってくる敵を通すな!一人たりともだ!俺もでる!!」
指示を全て出し終わった後、愛用のヌンチャクを小脇に抱えてアドルフは走り出した。ようやくここまで漕ぎ付けた、己の悲願を、部下達と一緒に見てきた夢を、ここで潰させるわけにはいかない……!!
★☆◆◇†★☆◆◇
その頃、白熊の淑女アメリアと共に保管庫を抜け出したルフトは、見張りやら偶然通りかかった盗賊やらを問答無用に殴り飛ばして地上を目指していた。傷をつけずに捕獲すれば高く売れる、という欲目をだした盗賊達はロクに抵抗もできないまま蹴散らされていく。
破竹の快進撃ノルフトだが、ある部屋の前でぴたりと立ち止まった。
『どうなさいましたの?』
ワリと全力で飛ばして突っ走ってるルフトに対して、ついてきているアメリア嬢は完全に余裕の表情、息がきれている様子もまったくないのにルフトは少しメゲかけるが、気を取り直して部屋の中を指差した。
『構造的にこの先が地上だと思うのですが、中には人が沢山いそうでして』
溜息を一つついて、ルフトは覚悟を決めた。主に、ベアに対して平謝りする覚悟を。
ソウルシューターは使い手の感情を弾にして撃ち出す武器だ。その時一番大きい感情を弾に変換して撃つのだが、その感情が大きければ大きいほど威力が増すという仕組みになっている。しかし、ルフトは長老に掛けられた呪いがあるので弾に出来るほどの感情の起伏は、ない。しかし、ソウルシューターのもう一つの機能、体力の1/3を弾に変換して撃ち出すという荒業を使う事ができるのだ。対複数への攻撃はブルフが居ないとできないルフトにとって、ここにソウルシューターがあることは天佑のようなものだった。
ガッ、と扉を蹴破る。中で待機していたのは火消しを終えた魔導師中心の第三部隊。もっとも、、ルフトがそれを知るよしもないのだが。
ソウルシューターを構えたルフトは、撃て、と頭の中で命令をくだした。体から力が抜け、構えた砲身に吸い込まれていく感覚。飛び出した弾はまっすぐ部屋の中央へと飛んでいき、そこにいた人間を一気に薙ぎ払う。ややふらふらと揺れる体に活を入れて、獣人と白熊は地上目掛けて部屋を走り抜けていった。
★☆◆◇†★☆◆◇
外壁に大穴を開けたベア&ブルフペアは、第四部隊が集まってくる前に砦の中に潜入する事に成功していた。さっさと砦の本丸の中へと入り、オニューのパートナーを探している。
そしていよいよ、本命の"エディウスの毒蛾"が人造騎馬隊「荒猟師」を伴って砦へと辿り着いた。
NPC:盗賊達
場所:スズシロ山脈中腹 盗賊の砦
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「普通に考えると……私、かんっぜんに珍獣扱いされてますね」
いつもこれだけ大雑把なのか、それとも今は何か別にやるべき事があるのか。ルフトは拘束すらされず、荷物と武器を奪われただけの状態で檻の中に閉じ込められていた。錆び付いた鉄檻はそこはかとなく脆そうに見える。とりあえず、両手で鉄棒を握り、全力を篭めて折り取ろうとしてみた。ミシッミシッと音はするが、そう簡単に折れる様子はみせない。
仕方なく自力で鉄格子をどうにかする事を諦め、近くで円らな瞳をコチラに向けている白熊とコンタクトを取ることにした。
『どうも、はじめまして。私は西方より参りました、ルフト・ファングと申します』
獣族は喉より発する音だけに限らず、体の動き全体を含めて言葉とする。だから手足尻尾などの身体的構造がある程度近い物同士ならばかなり楽に意思疎通する事ができるのだ。
『これはどうもご丁寧に。私(わたくし)、アメリアと申します。北の方より参りました』
白熊の淑女――アメリアはまだ若く、夫も子供もいないらしい。『捕まって、別に殺される様子もないのでご飯と住処の保障がされてるんなら別にいいかなって思いましたのよ』なんておほほほほとお上品に笑いながら、抵抗しないで大人しく捕まっている理由を話していた。
――数分後、ルフトは晴れて檻の外にでる事に成功した。抵抗する気のなかったアメリアがちょっと本気になれば、錆び付いた鉄格子など一撃で引き千切られてしまったのだ。自由になったアメリアはその後ルフトの檻も一撃で粉砕、無事自由の身を獲得することができたのだった。
手早く自分の荷物を身につけ、ざっと辺りを見回すと、ふと見慣れた綴りの名前が目に飛び込んできた。ベアトリーチェ・ガレット。今ルフトと一緒に組んで行動している少女の名前だ。
「そういえば、新しいのが届くってここ数日はしゃいでましたね」
呟いて、恐ろしく丁寧に梱包された武器――ソウルシューターを手に取る。梱包を剥がそうかどうしようかしばらく悩む。現在両手武器である棍しかない状況で、これを持って行き、なおかつ戦うのは厳しい。だが、ベアがあれだけ楽しみにしていたモノを本人が使う前に使ってしまうのも些か気がとがめる……というよりも、そのせいでどんな無理難題を吹っかけられるか分からないのが怖かった。
『あの、私はどうしましょう?』
思考の渦にハマっていたルフトを現実に引き戻したのはおずおずと掛けられたアメリアの声だった。ルフトの注意が自分に戻ってきたのを確認して、さらに続ける。
『檻、壊してしまいましたし……このままここにいるといろいろ大変そうですわよね?』
『そうですね……それでは、私と一緒に行きますか?本来の引き取り先の方がいる場所、多分分かりますし』
『あらあら、そうですの?それじゃあ、ご一緒させていただきますわ。よろしくお願いしますね、ルフトさん』
右腕に抱えたベアの宝物を見てもう少しだけ悩んで、梱包剤を剥がす。傷一つないぴかぴかの砲身がルフトの良心を刺激した。左手を腹にあてがいそうになって、首を振る。覚悟を決めろ、大丈夫、派手に傷をつけたりしなきゃそうは怒られない、はずだ。だといいな。
かくて、自ら窮地を打破せんとルフトはさらなる窮地へ足を踏み入れたのだった。
★☆◆◇†★☆◆◇
――ルフトが保管庫より脱出を図っている時、砦上層部では。
「砦南側に生命力感知!動物よりは大きいですが、人間とするとやや小さめです!」
さっそく発見し、リーダーの下へ見張りから報告が飛ぶ。
「またかよ!ええい、今度はほうっておけ!そろそろ毒蛾のヤツが来る頃合だ。各員、気合いれろ!」
「りょ、りょうかっ!うわあああああ!?か、壁が!?」
威勢のいい返事の余韻がまだ消えぬうちに、見張りはパニックを起こした声をあげた。同時にドガァッっという破砕音と衝撃が砦全体に響き渡る。
「どうした、何があった!?」
声を荒らげるが、悲鳴を上げた見張りがいた塔から連絡が帰ってくる様子はない。アドルフは、確実に破滅への道を辿り始めていた。
オルレアンとベアトリーチェ、先に砦に辿り着いたのはベアトリーチェの方だった。
「さて、ここの内部構造なんだが、俺が調べたところによるとだな……?」
ブルフがこれからどうするか相談しようとする間にも、今回でお役御免になるであろうソウルシューターを構えるベアトリーチェは
「お、おい?」
戸惑うブルフを尻目に
「あたしの新パートナー、かえしなさぁぁぁぁぁぁぁぁぁいっ!」
特大の一発を盗賊の砦に向けてぶっぱなした。
「おおおおおおおおおおおおおおい!?」
ソウルシューターから放たれた怒りの火炎弾は砦の外壁を易々と貫通し直径10mほどの風穴を開け、中に着弾して大爆発。そこらじゅうに炎を撒き散らす。
正面から攻められた時に備えて中庭で待機していた第一部隊が巻き込まれて一緒にコゲた。
そして、地上部分の主材料が乾燥している木で構成されている砦において、燃料と酸素を思う存分与えられた炎は激しく燃えさかる。
「り、リーダー、やられました!!南側の壁に大穴が開いちまった上に、辺り一面が火の海です!」
「中庭で待機していた第一部隊、壊滅的状態です!」
「地下保管庫にブチこんでおいた商品が二匹とも逃げやした!」
まだ断線されていない伝声管を通じて次々と寄せられる悲観的情報にアドルフは悲壮な決意を顔に浮かべた。
「第三部隊、砦の鎮火に当たれ!済み次第本丸に詰めて脱出口を確保!第四部隊は南防壁に開いた穴に急行、そっから入ってくる敵を通すな!一人たりともだ!俺もでる!!」
指示を全て出し終わった後、愛用のヌンチャクを小脇に抱えてアドルフは走り出した。ようやくここまで漕ぎ付けた、己の悲願を、部下達と一緒に見てきた夢を、ここで潰させるわけにはいかない……!!
★☆◆◇†★☆◆◇
その頃、白熊の淑女アメリアと共に保管庫を抜け出したルフトは、見張りやら偶然通りかかった盗賊やらを問答無用に殴り飛ばして地上を目指していた。傷をつけずに捕獲すれば高く売れる、という欲目をだした盗賊達はロクに抵抗もできないまま蹴散らされていく。
破竹の快進撃ノルフトだが、ある部屋の前でぴたりと立ち止まった。
『どうなさいましたの?』
ワリと全力で飛ばして突っ走ってるルフトに対して、ついてきているアメリア嬢は完全に余裕の表情、息がきれている様子もまったくないのにルフトは少しメゲかけるが、気を取り直して部屋の中を指差した。
『構造的にこの先が地上だと思うのですが、中には人が沢山いそうでして』
溜息を一つついて、ルフトは覚悟を決めた。主に、ベアに対して平謝りする覚悟を。
ソウルシューターは使い手の感情を弾にして撃ち出す武器だ。その時一番大きい感情を弾に変換して撃つのだが、その感情が大きければ大きいほど威力が増すという仕組みになっている。しかし、ルフトは長老に掛けられた呪いがあるので弾に出来るほどの感情の起伏は、ない。しかし、ソウルシューターのもう一つの機能、体力の1/3を弾に変換して撃ち出すという荒業を使う事ができるのだ。対複数への攻撃はブルフが居ないとできないルフトにとって、ここにソウルシューターがあることは天佑のようなものだった。
ガッ、と扉を蹴破る。中で待機していたのは火消しを終えた魔導師中心の第三部隊。もっとも、、ルフトがそれを知るよしもないのだが。
ソウルシューターを構えたルフトは、撃て、と頭の中で命令をくだした。体から力が抜け、構えた砲身に吸い込まれていく感覚。飛び出した弾はまっすぐ部屋の中央へと飛んでいき、そこにいた人間を一気に薙ぎ払う。ややふらふらと揺れる体に活を入れて、獣人と白熊は地上目掛けて部屋を走り抜けていった。
★☆◆◇†★☆◆◇
外壁に大穴を開けたベア&ブルフペアは、第四部隊が集まってくる前に砦の中に潜入する事に成功していた。さっさと砦の本丸の中へと入り、オニューのパートナーを探している。
そしていよいよ、本命の"エディウスの毒蛾"が人造騎馬隊「荒猟師」を伴って砦へと辿り着いた。
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