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2024/11/07 12:30 |
パラノイア 第五章「天才と天災」/ベアトリーチェ(熊猫)
キャスト:オルレアン・ルフト・ベアトリーチェ
NPC:盗賊・ブルフ
場所:スズシロ山脈中腹~盗賊の砦
――――――――――――――――

「あんたら『邪魔』よっ!」

ベアトリーチェは肩に砲を担いで、そこから放たれるどす黒い感情を
余すことなく解き放ち続けていた。
着弾した火炎と爆風が、岩壁を紙のように崩してゆく。

無論、作戦などない。あの『芸術品』が無事であればそれでいい。


ソウルシューター、という大層な名前をつけたのは武器職人だった。


メンテナンスや扱いに知識がいる銃、重い剣、命中率が必要な弓など、
そういう類の武器を好まないベアトリーチェのために、武器職人が
マキーナの工房で3年かけて製作したものだ。

もちろん個人で製作したものなのでまだ世には広まっていないが、
ベアトリーチェはそれを誇りに思っている。


――あたしだけの武器なのよ。


だから、愚鈍で端的でしかも美的センスのない賊にそれが奪われたとなれば、
いかなる手段をもってしても奪還しなければならない。

「ベア!賞金首になりてーのか!?お前は『狩る』側だろーが!?ぁいてっ」

ごしゃ、と飛んできた瓦礫に直撃されて、喋る鷹が落下する。
ベアトリーチェはそちらに一瞥すら投げずに、砂塵で乾いた唇をなめた。

「かぁえええせぇェエエ…あたしのかえぇせー」

完全に据わった目で、歩みを進める。そして人影が見えたら撃つ。
見えなくても撃つ。

「ひぃいいいいいいっ」

逃げ遅れたのか、無傷だというのに手だけでずりずり這いずって逃げようとする
賊の一人が、思わず悲鳴をあげる――その眼前に、ベアトリーチェは迷うことなく
がつ!とソウルシューターをさえぎるように突き立てた。

「ぅをおお!」
「あのねー、ベアねー、聞きたいこと、あるんだぁ」
「くっ…!これは呪文か!?俺を魔王の生贄にしようとでも!?」

歳相応の幼い言い回しをしただけなのだが、賊はなにやら独り言を言って
一人でおびえている。震えている後姿を半眼で睨みながら、へたった腰の上に
片足を乗せる。ぐげぇ、とそこでようやく男が振り向いて、眼前の少女の笑顔の前に
沈黙した。

「『はい・いいえ』で答えなさい。あんたら、昨日隊商を襲撃したわね?」

がっしと男の額を掴む。指の間からはみ出た黒髪を引きちぎらんばかりの勢いで、
力をこめてゆく。
男はもはや首をとられたかのような絶望的な表情で、しかし正直な返事をすれば
この得体の知れない侵入者から解放されるかもしれないという、霞のような希望を
もちながら、首を縦に振った。

「あ…あぁ…」
「そう」

あっさりとした声音で、しかし乱暴に男を解放する。ばたばたとやはり手だけで逃げる

男の後姿に、ベアトリーチェは呼びかけていた。

「最後にひとつ」
「な、なんだよぅ!」

情けない格好でまた振り返る男に銃口を向けながら、にっこり笑う。

「『はい・いいえ』で答えろっつったのに、それをしなかったわよね?」

ひゅううううう…と、風が吹き抜ける音がする。真っ黒な銃口の奥底に、青白い点が
出現して、大きくなってゆく。みるみる男の顔が蒼白になって――



「とりあえずカウントするから、死にたくなかったらその間に逃げなさい。いくわよ」




ひぃっ!と、やっと男が立ち上がる。肩に担いだ筒にぴったり頬をあてて、
ベアトリーチェは叫んでいた。

「ゼロォ――――――――――――――ッ!」






森に野鳥がいなかったのは、救いだったのかもしれない。






・・・★・・・

「誰も10から始めるなんて言ってないわ。合法よ。そうでしょ」

瓦礫の隅から這い出して、ベアトリーチェはひとつ咳きをしてから立ち上がった。
空が広い。しかし彼女は一歩も動いていない。

周囲の壁が吹っ飛んだのだ。

ズボンについた埃を叩いて払うと、完全に沈黙した賊の体を踏み越えて、
さきほどまで床だった部分を覗き込む。
下の階が穴と同じ形の光を受けて、しかし瓦礫に埋もれながらそこにあった。

よくよく目をこらせば階段も見える。彼女は一人ごちていた。

「まぁ、動物ってのは大抵、穴掘った中に宝物を隠すわよね。イヌみたいに」
「待てコラァアアアアア!!!」

がらがらがら!

突然、近場の瓦礫がいきなり盛り上がり、そこから尊大そうな男が
ヌンチャクを持って立ち上がった。

「なんかいきなり俺の砦が爆発してビックリしたぞ!てめぇは天災か!」
「確かにあたしは天才だけど」
「言葉遊びをするつもりはねぇ!覚悟しろィ!」

じゃらっ、と男の持つヌンチャクの鎖が鳴る。

「覚悟すんのはそっちじゃなくて?」

ベアトリーチェは特に表情を変えずに、ただソウルシューターの柄を強く握り返した。


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2007/02/10 17:32 | Comments(0) | TrackBack() | ●パラノイア

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