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2024/05/16 21:55 |
パラノイア 第三章「役者集合にて迅速な開幕」/オルレアン(Caku)
PC@ベアトリーチェ、ルフト、オルレアン
NPC@旅賊、旅賊リーダー・アドルフ・ハイマン、人造騎馬隊「荒猟師」
場所@エディウス~パウラ連合国境付近・スズシロ山脈中腹

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「う………」

視界が徐々に明瞭になってくるにつれ、目の前の鉄格子の群れがひどく錆び付
いていることに気がつき始めた。
しばらく混濁した頭で、ぼんやりとしていたが数時間前までの記憶を取り戻す
とがばっと跳ね起きる。後頭部がじんじんと痛むが、それを無視して目の前の
鉄格子を掴む。

「もしかして、捕まってしまいましたか…」

もしかしてもない。
容赦なく叩かれた後頭部をさすりながら周囲を見渡す。
冷たい雫が背筋に落ちて、ひやっとした。岩窟の中だろうか、最初に見た砦は
木で作られていたがここは山脈地帯だ。おそらく砦の中にも地下を作ってあっ
たのだろう。

「…あれ、ここは奪ったものの保管庫ですか?」

てっきりここは牢屋か何かと思いきや、辺りには包装された大小様々な荷物が
積まれている。
ある種の美術館の倉庫のような密やかで静かな空間に、ふと自分以外の息遣い
が感じた。

「!?」

獣人特有の耳を立てて、ルフトは後ろを振り返った。
同じようにさび付いた別の檻の中で、くんくんと鼻を突き出してこちらを眺め
ている一匹の動物を見てルフトは唖然とした。

「し、白熊……?」

馴染みない巨体に、つぶらな黒い目。
ライラス北極グマ。体長は最大2.6メートルの巨体も発見されているという巨
大な熊である。
しかし性格は温厚、主食は雑食だが好んで狩りや動物は食べない。
額には独特の模様があり、それは真正面からみると花のような可愛らしい形に
見える。
その性格と外見、貴重さも相まって密猟保護リストに名を連ねているライラス
の天然保護動物だ。

「え、えとー…」

白熊の知識はあるものの、初めて出会った動物に戸惑いを隠せない。
ふと、白熊の檻にタグがついているのを見て、何気なく彼はそれを見た。


そのタグは受取人の住所と名前が記載されており、ルフトに分かったことと言
えば。
ー…名前の主は、異国人や旅人のルフトも耳に流れてきたことがある、変態軍
人の名でもあった。

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正統なる王は、三つの毒物を飼っている。
もはや常套句になった一つの文章があった。

一人はエディウスの毒蜘蛛と呼ばれる新生エディウス国対テロ組織のカリスマ
的リーダー兼狂人。
一人はエディウスの毒蝮と呼ばれる辣腕政治家兼少年少女変態愛好家。
最後の一人は、エディウスの毒蛾と呼ばれる元国王専属騎士にして「指導者」
少佐兼……オカマであった。

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「安心なっさいな。
このベアトリーチェ様が嫌々でばってんだから金品強奪して衣服剥いで髪の毛
むしってすっ裸で街でつるし上げするぐらいしてやるわよ。ええルフトの為に
も!!」

「いや、誰もそこまでしろとは言ってねぇ!ついでにそれだと旅賊の仕業より
も極悪だ。
そして嫌々ってヒドイだろうよ」

鳥類に突っ込まれつつも赤毛の少女・ベアトリーチェはぶつくさ言いながら森
を歩いていた。
がっちりと装備しているのは彼女ご自慢の武器である。これからもっとご自慢
なソレやアレやになるはずだったのに、それを目前でかっぱらわれて機嫌は軒
並み急降下中である。

「大体夕飯どうしたのよ?そうか、鳥。アンタを焼き鳥にすればいいんじゃな
い」

「ベア、なあ本気でルフトを助ける気ある?」

ウィンドブルフは、ちょっとだけ本気な目で少女を見た。

「あったりまえじゃない。飼い主に黙って犬ッころ奪おうとはいい度胸じゃな
いの旅賊ども」

「あー…まあ、とりあえずルフト待ってろよ……」

今や囚われのヒロイン・ルフトを夕暮れる空の一番星にかさねつつ、ウィンド
ブルフは涙ぐみながらベアトリーチェの肩で相棒の無事を祈った。


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正統エディウスギルドにて。
ーー…今まさに、軍の横暴が形となって目の前でのさばっている。現在進行
形。


「早くしなさいよ」


ギルドの応接間は騒然と、唖然としていた。
一番大きい机に、軍靴を載せてソファにふんぞり返っている軍人がいる。
青い長髪が、文学少女の基本スタイルである二つの三つ編みになっていて軍人
が顎で人を使いにやる度にひょこひょこと揺れる。先っぽには黒いリボン。レ
ースだった。えーぇ?


「一時間で旅賊どもの場所を特定しろって今何時よ?つくづく無力だとは思っ
てたけど無能だとまでとは思ってなかったわよ」


ギルドの応接間隔てた事務室では現在、必死悲惨の表情のギルド職員達が現地
の捜査員に一秒でも早く情報をよこせと、魔術ギルドから7年も前に買った無
線機で連絡を飛ばしている。
軍人の不機嫌な声が響くたびに、びくりと背筋を凍らせて狂ったように作業に
戻る。ここまでギルドが骨肉惜しんで働いているのは何も軍が怖いからといっ
た内容ではない、ちょっとはそりゃ怖いけど。
なぜなら、哀れなる彼らは人質を取られて、なお下手すれば自分自身が次の犠
牲者になりかねないからである。


「夜まで待たせる気?だったらこいつら部屋に連れ込んでイイコトしてたほう
が早いじゃない。
人間待ち時間が一番不快なのよわかってんの?」


軍人の手袋には正統エディウスの国章と、続いてベルト。ベルト?
軍人の真横には現在、哀れなギルド職員(21)が上半身を脱がされて震えて
いる。哀れ。
現在彼のズボンのベルトは軍人にしてオカマの手の中に握られている。

その他若くて女性社員に受けがいい男性ギルド職員二人、職場のS君と付き合
い始めて一週間の女性の事務員が己が身を抱きしめて恐怖に目を見開かせてい
る。
何故なら、逃げられないように黒い騎士の集団が三人を取り囲んでじっと見つ
めている。そしてギルドの応接間には、人造騎士兵団が18人。外には出入り
口12人。完全包囲である。

ギルドに突如、土足で乗り込んできた軍人は即座に建物を包囲した。
そうしてギルドの現地調査員が未だに件の旅賊の根城すら特定できてないこと
に、何を思ったか軍人…いいやオカマはギルド職員を人質としてとって一時間
の猶予を与えた。
同志にして仲間の中佐が見たら卒倒しそうな場面である。主に中間管理職の彼
が軍の会議に出ているのであるから、もちろん嫌味中傷お小言は彼の担当なの
である。

仲間の魂の危機に必死にオカマのいいなりになって居場所を特定しようとする
職員。
すると、神はやはり善良な人間を救うのか。一つの連絡が入ってきた。

「国境近くの宿で、目撃者がいました!
スズシロ山脈中腹の森で、件の旅賊らしき砦を見かけたという情報が入ったそ
うです」

次の瞬間。
見事にかつての風格を見せるオカマ(元騎士)はすくっと立ち上がって、人質
などはじめっから存在しなかったように無視して早足でギルドの扉を開けた。
無言で続々と続く黒い騎士。まるで馬の軍団のような彼らの去った後には、恐
怖に怯える職員た
ちの無残な姿が取り残されていたのである。



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『情報の真偽はお確かめなさらずとも良いのですか?』

「いい、モノは密猟で手に入れた保護指定の生き物だ。先にギルドにでも押収
されるとのちのち面倒なことになる」

愛馬にして自らの人造精霊の背にぱしんっと鞭を打って手綱を引く。
嘶く声に、こだまのように返す人造騎士の馬達の泣き声をコーラスにオルレア
ンはいつもよりもやや無表情に(眉下に怒りマーク)答えた。

「目的地はスズシロ山脈だ!付いてこれない奴は容赦なくその場で切り殺す!!
死んでも後に続け!!」

おおおおおおおっー…と響く雄叫び。
続いて、けたたましいまでの蹄の交響曲。砂塵を巻き上げて走る黒い騎馬隊が
目指す方向の空には聳えたつ山並みと、暮れ逝く夕暮れの赤い空が見えた。

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「ぶえっくしょい!!」

「親分どうしやしたー?」

すかさずアッパー。部下は中々愛らしい悲鳴を上げながらドアの向こうへ飛ん
でいく。

「俺のことはりぃーだぁー★ と呼べといっただろ!!」

物覚えの悪い部下を叱り付けながら、なにか悪い予感がする旅賊親分・アドル
フ・ハイマンであった。






…往々にして良い予感というはありえない。
常に物事は悪くなる一方なのでから。君よ、こころして待ち構えよ。
悪夢と未来、そして頭痛を予防することは不可能であり、我らにできることと
いえばただ頑ななに身を強張らせてそれを待ち続けるだけなのだ。

どっかの偉人さんがいった言葉。まさに、後の彼らのことを予言しているとし
か、思えない。

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2007/02/10 17:31 | Comments(0) | TrackBack() | ●パラノイア

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