忍者ブログ
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


2024/05/16 22:26 |
パラノイア 第二章「導火線」/ベアトリーチェ(熊猫)
キャスト:ベアトリーチェ
NPC:武器職人・ブルフ
場所:正エディウス国境近くの宿
――――――――――――――――――――――――――――――――

【パラノイア】

外見的には正常さを保ちながら、徐々に妄想世界を自己の中に築きあげていく疾患。

――――――――――――――――――――――――――――――――

そう、全取っ替えよ。確かに今のはいいやつ。そう思ってあたしも買ったんだもの。
だけど仕事のパートナーとしてはちょっとヤワすぎるわ。接近戦にも対応したいし。
あとね、読み込みも遅いの。

本当にパーツに印呪した魔術師は信用していいの?
…まぁ、そこまで言うなら期待してもいいか。

分かった、今小切手書くわ。

あたしは仕事でもう発つから、直接受け取れないのよ。
だから品物は向こうの宿に発送して?住所はこれ。あんまり遅いのはやーよ。
3日待つから、それ以上かかりそうなら伝書ね。方法は任せるから。



あ、だけど梱包はしっかりね。あんたの命より大事に扱いなさい。



・・・★・・・

馬鹿か聡明か。

ベアトリーチェ・ガレットにとって、この世界にはその2種類の人間しかいない。
もちろん彼女は間違いなく後者の人間であり、それ以外は全て前者だと思っている。

「命より大事に扱いなさいって言ったでしょうがぁあああっ!」

どかん、と土足の片足をテーブルの上に置いて、ベアトリーチェは目の前にいる
武器職人の胸倉を掴んだ。

鮮やかな赤毛を短い三つあみでまとめた、10歳前後の少女である。
だがそこには年相応の可愛さや無邪気さはなく、ましてや優しさもない。
右目には黒い眼帯をしており、それがさらに剣呑さを深めていた。

普段でも吊目なくせに、今は怒りでその度合いが増して凶悪になっている。

衝撃で、部屋の壁にかかっている金色の額縁に飾られた絵画が
ごとんと揺れた。

「どういうことよ!なんであたしの武器盗まれてんのよ!?」
「俺ァ関係ねーよ。悪ぃのはアッタマの悪い傭兵か、知能指数の低い旅賊だろ」

しかし当の武器職人の男――彼女の親の代から付き合いがある、初老の男である。
歳はわからないが、ベアトリーチェはおそらく50歳はくだらないだろうと
検討をつけていた――は、のらりくらりとそう返してきた。

「なによその言い草!」
「お、親方ァっ」

後ろで様子を見ていた、彼に師事している若い弟子が、ベアトリーチェの
剣幕に青い顔を見せている。武器職人は適当にそっちをドアの外に追い払うと、
やんわりとベアトリーチェの手から首を解放した。

「ちょっと――」
「あんな、ベア嬢よ」

勢いをそがれて、空いた両手で拳を作る彼女に、今度は武器職人が諭すように
身を乗り出してきた。

「俺は武器職人だ。武器職人は武器を作る職人のことさ。わかるだろ?
 俺は最高の材料、経験、そしてちょっとしたアイデアで『アレ』を造ったんだ。
 そして最高のクライアントに渡す――これが俺の仕事なんだよ。
 だが、あんたに渡すのは違う仕事をしている奴の役目だ。
 そいつがしくじったんだから、俺に嬢が怒るのはお門違いじゃねぇのか?」

なんであたし説教されてるのよ――

むっとして言い返そうとしたその時、素っ頓狂な声と共に、開いている
窓から一羽の鷹が舞い込んできた。

「あら鳥。今日の夕飯獲れた?」

いったいどういう仕組みなのか、姿は普通の鷹のくせに喋りまくる性質を持つそれは、


名をウィンドブルフという。
本来ならば話題に上っている狼男の肩が定位置なのだが、今は所在無さげに
ばたばたと部屋の中を飛び回っている。

「それどころじゃねぇ!ベア!大変だ!あのな、よく聞けよ。
 ――ルフトがさらわれた!」
「まぁ大変」

眉ひとつ動かさずに、ベアトリーチェは鷹の訴えを一蹴した。

「ぜんっぜん大変そうじゃねーじゃねーか!お前どんな神経してんだよ!」
「あんたこそどんな生物形態してんのよ。今あたし忙しいのよ!」
「さらわれたって?あのルフトがか?オイ」

ベアトリーチェとは反対に、武器職人はまともに顔色を変えて立ち上がった。

「どんな奴らだったんだ。あいつが敵わなかったってのか?ンな馬鹿な!」
「たぶんありゃー盗賊だ。国境の南あたりにでけぇ砦があってよぅ、いきなり
 向こうから仕掛けてきやがったんだ」

真鍮のベッド枠にとまり、羽を広げるウィンドブルフ。武器職人はううむと
したり顔であごに手をあて、愕然と独り言をつぶやく。

「国境…盗賊……!間違いねぇ!」
「おっさん知ってるのか!」
「おそらく、隊商を狙って嬢の武器を奪ったのはそいつらだ!」

そこまで言ってから、武器職人と鷹が同時にこちらを振り向く。

『ていうか聞けよ話!!』
「あん?」

二人が盛り上がっている間に注文した、ルームサービスのアップルパイを頬張りつつ、

ベアトリーチェは半眼で二人を見返した。

PR

2007/02/10 17:30 | Comments(0) | TrackBack() | ●パラノイア

トラックバック

トラックバックURL:

コメント

コメントを投稿する






Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字 (絵文字)



<<パラノイア 第一章「HELP!! HELP!!」/ルフト(魅流) | HOME | パラノイア 第三章「役者集合にて迅速な開幕」/オルレアン(Caku)>>
忍者ブログ[PR]