PC ギゼー リング
場所 白の遺跡
NPC メデッタ 影の男
___________________________________
『――王を選出する為に。ただ、ソレだけの為に』
含み笑いで、男がリングに詰め寄る。
『そのためだけに、私はココにいる』
そしてリングのその首に手をかけた。
『さようなら、竜族の娘よ』
「くっ…は…っ…」
非情な力がリングの首にかかる。
扉の向こうには、王冠が鎮座していた。こうこうと輝く金の王冠は、その名
の通りそそり立つ竜の爪を模っている。
「こ、これが……竜の爪……」
もう一度、空唾を嚥下するギゼー。
この王冠を守るため、いくつものトラップが仕掛けられている理由がギゼー
には今解った気がした。たしかに<コレ>はただの王冠とは違う。
王冠からはただの王冠とは明らかに違う高尚な気配が漂ってくる。そう、まる
で元の竜の尊厳が伝わってくるような。王冠の中央にはひとつだけ、血のよう
に真っ赤なルビーが嵌め込まれていた。そのルビーは、まるで真っ赤な竜の瞳
のようにきらきらと輝いている。
「すげぇよ…、このルビーだけでも、いったいいくらするんだ…」
そう呟き、吸い込まれるように王冠に近づいていくギゼー。王の誕生はも
う、間近だった――。
『ふふふ、もう少しで新たな王が誕生しマス。そうすれば、また破壊と殺戮の
時代が始まるのデス―』
「うぇ…っ…」
男にギリギリと首を締め付けられながらも、リングははっとして目を見開い
た。
「馬鹿な…っ…!ギゼーさんがっ…そんな人になるわけ…っ…」
『なるのデスよ…。それが<王>デスから。…いや、<王>の人格でしょうか
ね?』
「!」
驚くリングに、男は哂いながら告げる。
『なぜなら、そう…、この遺跡を創った者の意思は<自分の保存>デスよ。王
の体が朽ちても永遠に自分の存在を保存するための装置なんデス。すなわち、
あの王冠を手に入れた瞬間からあの少年の人格は消えて、あの少年の人格は<
王>になりマス。そのための<体と心を選ぶ>遺跡なのデスよ、ココは、
ね…』
男に告げられ、真実を見つけた少女は愕然とした。
「そ…んな…っ…」
それではギゼーさんがあまりに可哀想すぎる…!少女は思った。触れた瞬間
から自分を失ってしまう、王の人格保存装置。あんなに手に入れたがっていた
宝が<コンナモノ>だったなんて…!
(触れちゃダメです!<王>になっちゃダメ!ギゼーさんっ…!)
心の中で大きくリングは叫んだ。しかし、その意識も苦しさで薄れようとし
ている――。
そっと金色の輝きに手を伸ばし、おそるおそるその指先を近づける。
―オメデトウ、コレを手に入れたらキミこそ晴れて<王>だネ。
どこからか真実の鍵の声が聞こえる。
―サア、ハヤクソノオウカンニ触レテ…。
ギゼーはそっと、王冠のルビーに手を触れた…。
どくんっ
その時、なにか紫色のものが心臓に入り込んだような感触がして、頭が割れ
るように痛くなった。とたんに目の前が真っ暗になる。なんとなくだけども、
自分が今、『侵蝕』されているのが解る。
(ああッ!何だこの感触は…ッ!)
その時、
ぶわっ、とリングの皮膚一面に何かの「文字」が浮かび上がった。ソレはま
るで体全体に彫られた刺青のように。くっきりと文字を映し出す。
『なんデスか…!コレは…!』
思わず男が驚いて手の力を緩める。
『まるで…、聖書の文句のようなモジ…』
そう、それは「聖書」を守る者が生命の危機に陥ると作動する装置…聖書の
中に封じ込められているすべての魔力が一気に開放される仕組みになっている
のだ。
リングの体の文字がギラン、と一瞬で閃いた!そしてそれは光の柱になっ
て、男の支配する空間を縦に貫く。
『うわぁぁぁぁぁっ…!!』
男の悲鳴が広がった。
メデッタを誘惑していたリングの体が突然、パキッ、と縦に割れた。
『あ…』
リングが「あっ」という表情を貼り付けたまま半分に分かれる。
「なっ…!」
我に返り、驚くメデッタ。
「一体、何が…!」
『ナンテコト…、遺跡が…崩壊、す…ル…』
その瞬間、空間が二つに裂けた。
場所 白の遺跡
NPC メデッタ 影の男
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『――王を選出する為に。ただ、ソレだけの為に』
含み笑いで、男がリングに詰め寄る。
『そのためだけに、私はココにいる』
そしてリングのその首に手をかけた。
『さようなら、竜族の娘よ』
「くっ…は…っ…」
非情な力がリングの首にかかる。
扉の向こうには、王冠が鎮座していた。こうこうと輝く金の王冠は、その名
の通りそそり立つ竜の爪を模っている。
「こ、これが……竜の爪……」
もう一度、空唾を嚥下するギゼー。
この王冠を守るため、いくつものトラップが仕掛けられている理由がギゼー
には今解った気がした。たしかに<コレ>はただの王冠とは違う。
王冠からはただの王冠とは明らかに違う高尚な気配が漂ってくる。そう、まる
で元の竜の尊厳が伝わってくるような。王冠の中央にはひとつだけ、血のよう
に真っ赤なルビーが嵌め込まれていた。そのルビーは、まるで真っ赤な竜の瞳
のようにきらきらと輝いている。
「すげぇよ…、このルビーだけでも、いったいいくらするんだ…」
そう呟き、吸い込まれるように王冠に近づいていくギゼー。王の誕生はも
う、間近だった――。
『ふふふ、もう少しで新たな王が誕生しマス。そうすれば、また破壊と殺戮の
時代が始まるのデス―』
「うぇ…っ…」
男にギリギリと首を締め付けられながらも、リングははっとして目を見開い
た。
「馬鹿な…っ…!ギゼーさんがっ…そんな人になるわけ…っ…」
『なるのデスよ…。それが<王>デスから。…いや、<王>の人格でしょうか
ね?』
「!」
驚くリングに、男は哂いながら告げる。
『なぜなら、そう…、この遺跡を創った者の意思は<自分の保存>デスよ。王
の体が朽ちても永遠に自分の存在を保存するための装置なんデス。すなわち、
あの王冠を手に入れた瞬間からあの少年の人格は消えて、あの少年の人格は<
王>になりマス。そのための<体と心を選ぶ>遺跡なのデスよ、ココは、
ね…』
男に告げられ、真実を見つけた少女は愕然とした。
「そ…んな…っ…」
それではギゼーさんがあまりに可哀想すぎる…!少女は思った。触れた瞬間
から自分を失ってしまう、王の人格保存装置。あんなに手に入れたがっていた
宝が<コンナモノ>だったなんて…!
(触れちゃダメです!<王>になっちゃダメ!ギゼーさんっ…!)
心の中で大きくリングは叫んだ。しかし、その意識も苦しさで薄れようとし
ている――。
そっと金色の輝きに手を伸ばし、おそるおそるその指先を近づける。
―オメデトウ、コレを手に入れたらキミこそ晴れて<王>だネ。
どこからか真実の鍵の声が聞こえる。
―サア、ハヤクソノオウカンニ触レテ…。
ギゼーはそっと、王冠のルビーに手を触れた…。
どくんっ
その時、なにか紫色のものが心臓に入り込んだような感触がして、頭が割れ
るように痛くなった。とたんに目の前が真っ暗になる。なんとなくだけども、
自分が今、『侵蝕』されているのが解る。
(ああッ!何だこの感触は…ッ!)
その時、
ぶわっ、とリングの皮膚一面に何かの「文字」が浮かび上がった。ソレはま
るで体全体に彫られた刺青のように。くっきりと文字を映し出す。
『なんデスか…!コレは…!』
思わず男が驚いて手の力を緩める。
『まるで…、聖書の文句のようなモジ…』
そう、それは「聖書」を守る者が生命の危機に陥ると作動する装置…聖書の
中に封じ込められているすべての魔力が一気に開放される仕組みになっている
のだ。
リングの体の文字がギラン、と一瞬で閃いた!そしてそれは光の柱になっ
て、男の支配する空間を縦に貫く。
『うわぁぁぁぁぁっ…!!』
男の悲鳴が広がった。
メデッタを誘惑していたリングの体が突然、パキッ、と縦に割れた。
『あ…』
リングが「あっ」という表情を貼り付けたまま半分に分かれる。
「なっ…!」
我に返り、驚くメデッタ。
「一体、何が…!」
『ナンテコト…、遺跡が…崩壊、す…ル…』
その瞬間、空間が二つに裂けた。
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