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2025/03/10 07:18 |
57.「お取り込み中。」/リング(果南)
PC ギゼー・リング
場所 白の遺跡(ソフィニア北)
NPC 影の男
___________________________________

 多分これを悪夢というのだろう。

<はぁっ、はあっ、はあっ>
 …息が荒い。呼吸が苦しい。それでもリングはもう何度目かの攻撃を影の男
に放った。
 水が鋭い錐のように、影の男目掛けて放たれる!
 が…。
 
 バシィィィン!

 鉄をも貫く威力を持つはずのリングの水流は、影の男の体に傷ひとつ、つけ
ることが出来なかった。
 影の男がにたあっと、『唇だけの顔』で笑う。
「貴方の攻撃にもだいぶ飽きてきましたね、…もう終わりにしてもいいです
か?」
「…っ!!」
 間髪いれず、水の槍が続けざまに飛ぶ。バシッ、バシッ、バシッ!
 しかし、それは影の男の体に当たってだらりと跳ね返るだけだった。
 影の男が笑う。いや、今は「玉子の男」とでも言うべきか。
「今度はこちらから行きますよ」
 そう男が言うなり、地面から槍のようなものが連続して飛び出す!
 それを体を翻してよけるリング。…しかし、もうこんな戦いを何時間も続け
ているせいだろうか、その一本が足に当たって。
「うああああっ…!!」
 リングは足を押さえてその場に倒れた。跪く様に地面に倒れ、その姿は無様
というしかない。
「もう、終わりにしましょうか?」
 リングに近づき、笑みを浮かべる男。
「私はそれでかまいませんよ。そのほうが貴方も楽でしょう?終わりにしませ
んか、もうこんな勝敗が決まりきっている戦い」
「う…っ」
 男に「私はまだ戦える」と言いたいリングだったが、疲労と痛みでもう、声
が出なかった。追い討ちをかけるように男は片足をゆっくりと宙にあげる
と…。
「うあああああっ!!」
 傷口をぐりぐりと、擦り付けるように踏まれ、リングは声を上げた。
『痛いですか?』
 男は先ほどから残酷そうな笑みを絶やさない。
『貴方はこのままここで死ぬ。…残念でしたね。貴方の望みが叶わなくて』
(私の…望み?)
 意識が飛びそうになっている頭でリングは考える。この遺跡に入ってからず
っと気になっていたこと。何故、どうしてこの遺跡は。
「…どうしてですか」
「ん?」
「答えなさい。どうしてこの遺跡は、『こう』なのですか」
 そういってリングは真摯な眼差しを男に向ける。男はとぼけた口もとで聞き
返す。
「はて?こう、とは?」
「…心、です。どうしてこの遺跡はこうも心の闇を反映するつくりになってい
るのですか」
 そう、それはリングがずっと気になっていたことだった。心の闇。心の一番
奥深くにしまいこんでいるものが、なぜここでは簡単に暴かれ、実体化される
のか。男はふっと口もとを緩める。
「知ってどうするんです?どうせもうすぐ、貴方は死にます」
「質問に答えなさい。どうしてこの遺跡はこんなつくりに…なっているのです
か」
 ぐしゃっ、とまた男が足を踏む。
「うあ…っ!」
「そうそう思い出しました。どうせ貴方は死ぬんです。死ぬのですから、最期
に面白いものを見せてあげましょうね」
 男が思い出したようにそういうと、いきなりリングと男の前の空間がぐに
ゃ、っと捻じ曲がった。
「いいですか、これは別の空間の映像です」
 その言葉に、リングは捻じ曲がった空間に目を凝らす。その空間は最初ぐち
ゃぐちゃの映像が交じり合っていたが、やがて空間の捩れの渦も止まって、あ
る一つの映像が目の前に姿を見せ始めた。
 その映像に写っているのは、なんとメデッタだった。それともう一人。
「え…っ!」
 リングの顔がさあっと真っ赤になる。
 それはどうみても『自分』だった。しかもその自分はなんと、メデッタの顔
に自分の顔を重ねようとしている真っ最中だったのだ。
「え…っ、ちょ…っ、これは…っ!!」
「おやおや、これはまあお取り込み中だったようで」
 男がそういうなり、空間がまたぐんにゃりと捻じ曲がる。
「ちょっ…!待ってください!今の一体…!」
「さて、問題のギゼー君はどうなったかな?」
 無視する男。空間の像が再び結ばれ出す。
 リングは叫んだ。
「ちょっと、待ってください!今の何なんですかー!!」
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2007/02/14 23:41 | Comments(0) | TrackBack() | ●ギゼー&リング

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