PC:ギゼー リング
NPC:メデッタ=オーシャン
場所:白の遺跡(ソフィニア北)
+++++++++++++++++++++++++++++++++++
鍵はある。
そして、それがピタリと当て嵌まる様な台座も。
そして、詩。伝承の内容――。
―― 部屋が神秘の光に満ち溢れしとき
―― 六の印し鏡に映せ
―― さすれば第七の道現われ出でん
―― そは即ち天上への階段なり
◆◇◆
周囲は相変わらず、白く輝いていた。張り巡らされた六枚の壁には、壁画ら
しきレリーフが刻まれている。何かの風刺画らしく、中央に竜が天に向かって
吼えている姿が大きく掘り込まれ、その周囲に街が無惨にも瓦礫を晒してい
る。その周囲に張り巡らされた六つの壁画は、どれもが嵌め込み式になってい
た。そして、それぞれの形に刳[く]り抜かれた台座が鏡の前に鎮座している。
台座は回転式になっていて、宝珠が嵌め込まれている方が、ギゼーが今し方入
って来た扉側――既に扉自体は見えなくなっているが――に向いていた。
「ふむ……」
ギゼーは腕を組み、思考の渦中に入り込みながら呟いた。
「台座の凹みと壁画の凸部から推察するに、壁画の一部を嵌め込むのは明らか
だ……問題は、順番だな。…………ん? 台座の下に何か文字が刻まれている
ぞ」
―― かつて一の竜だったものは
―― 天高く吼え猛り
―― そして滅び去った
―― 七人の王は
―― 彼のものを讃え
―― 七つに分けた
―― 一つ目は王冠
―― 爪を切り取り有るべき姿に
―― 二つ目は剣
―― 角を削りだし有るべき姿に
―― 三つ目は玉[ぎょく]
―― 目玉を抉り出し有るべき姿に
―― 四つ目は鎧
―― 鱗を剥ぎ有るべき姿に
―― 五つ目は兜
―― 耳を切り取り有るべき姿に
―― 六つ目は首飾り
―― 牙を抜き取り有るべき姿に
―― 七つ目は竜の持てる力を全て
―― 水晶に閉じ込めて
―― 光の中に
「何て、残酷な詩なんでしょう」
ギゼーが詩を謳う様に読み上げた後、最初に哀れみを持って言葉を発したの
はリングだった。同じ竜族としての同情の念を込め目を細める。竜を殺して一
つ残らず剥ぎ取っていくなんて、と言外に非難めいたものが込められていた。
リングと同じ竜族であるメデッタも、流石に眉を顰めて非難の眼差しを詩に向
けていた。だが、人間であるギゼーにはその詩がどれほど残酷なものなのか、
今一つピンと来るものが無かった。人として、竜は魔物と同格だと無意識の内
にでも感じていたからだ。人間に害を成すもの、それは即ち魔物以外の何者で
もない。だが、リングやメデッタのように良き竜が居るのもまた事実である。
それは、認めざるを得ない。
リングやメデッタの手前、ギゼーは言葉に詰まった。何を口に出してみて
も、言い訳めいているように思えたからだ。やがて思い詰めたように、厳かに
口を開いた。
「……どんなに残酷な詩でも、手掛かりはこれしかないんだ。君達竜族の気持
ちは、何となくだけど……解る。気がする。でも……」
「そうだな。ギゼー君の言う通りだ。今はこの詩を解読し、道を開くべき時
だ。感情的になっては居られない」
ギゼーの言い訳がましい口ぶりに、透かさずメデッタが賛同する。そういう
悟った部分は、流石に齢を重ねているだけの事はある。ある意味リングよりは
少しばかり融通の聞く人だ。
リングはそんな二人のやり取りに、不服そうに頬を膨らませつつも押し黙る
ことで同意を示した。
「俺、思うんだけど……」
暫しの重苦しい沈黙を破ったのは、人間であるギゼーであった。
「あの壁画にはどれにも竜の絵が描かれている。そして、この台座の窪みは、
壁画の一部分が嵌め込めるような形になっている。ということは、この詩の順
番の通りに壁画の一部分を嵌め込んでいけば道が開かれるんじゃないかな」
「うむ。私も同意見だよ、ギゼー君」
壁画を見ると、そのどれもが天高く吼え猛る竜がレリーフとして刻まれてい
た。それを見てギゼーが思いの丈をぶちまけ、メデッタはそれに賛同したの
だ。最早答えは見ていた。それしかない。それしかないのだ。ギゼーの見出し
た答え、たった一つしか。リングもその事に早気付いたからこそ、首を縦に振
る事で賛同の意を表した。たった一つ気掛かりな事、「竜の一部を剥ぎ取る」
という残虐な行為に対する嫌悪感を残して――。
◆◇◆
一つ目は爪。
二つ目は角。
三つ目は目玉。
四つ目は鱗の一部。
五つ目は片耳。
六つ目は一際大きな牙を一つ。
それぞれ六つの各部位を、天空に向かって吼え猛る竜のレリーフから一つ一
つ剥ぎ取っていった。そして、それを順番通りに台座の上に穿たれた穴へと押
し込める。全ての部位がまるで誂[あつら]えたかのようにピタリと嵌って行く
のを見て、ギゼーはほくそ笑んだ。
嵌めこまれたレリーフは、それぞれが淡く光り輝いている。
「よっし! ここで、この台座を回転させて鏡に正面を向けさせれば……」
唇をひと舐めして、ギゼーが口ずさむ。
ギゼーの言う通り、台座の下には円形に溝が刻み込まれており、回転式にな
っている事が窺えた。
「あの、ギゼーさん。私も手伝いましょうか? 一人の力より二人の力の方
が……」
「なあに、リングちゃん大丈夫だって。このくらい。気遣い、ありがとな」
リングの気遣う心に温かみを覚えたのか、ギゼーは優しい笑みを向ける。
ギゼーが笑みを向けながらも力を込めると、台座はいとも簡単に回転した。
半回転した台座に乗ったレリーフは鏡に向けられると同時に輝きを増し、辺り
一面に光が満ちていった。
NPC:メデッタ=オーシャン
場所:白の遺跡(ソフィニア北)
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鍵はある。
そして、それがピタリと当て嵌まる様な台座も。
そして、詩。伝承の内容――。
―― 部屋が神秘の光に満ち溢れしとき
―― 六の印し鏡に映せ
―― さすれば第七の道現われ出でん
―― そは即ち天上への階段なり
◆◇◆
周囲は相変わらず、白く輝いていた。張り巡らされた六枚の壁には、壁画ら
しきレリーフが刻まれている。何かの風刺画らしく、中央に竜が天に向かって
吼えている姿が大きく掘り込まれ、その周囲に街が無惨にも瓦礫を晒してい
る。その周囲に張り巡らされた六つの壁画は、どれもが嵌め込み式になってい
た。そして、それぞれの形に刳[く]り抜かれた台座が鏡の前に鎮座している。
台座は回転式になっていて、宝珠が嵌め込まれている方が、ギゼーが今し方入
って来た扉側――既に扉自体は見えなくなっているが――に向いていた。
「ふむ……」
ギゼーは腕を組み、思考の渦中に入り込みながら呟いた。
「台座の凹みと壁画の凸部から推察するに、壁画の一部を嵌め込むのは明らか
だ……問題は、順番だな。…………ん? 台座の下に何か文字が刻まれている
ぞ」
―― かつて一の竜だったものは
―― 天高く吼え猛り
―― そして滅び去った
―― 七人の王は
―― 彼のものを讃え
―― 七つに分けた
―― 一つ目は王冠
―― 爪を切り取り有るべき姿に
―― 二つ目は剣
―― 角を削りだし有るべき姿に
―― 三つ目は玉[ぎょく]
―― 目玉を抉り出し有るべき姿に
―― 四つ目は鎧
―― 鱗を剥ぎ有るべき姿に
―― 五つ目は兜
―― 耳を切り取り有るべき姿に
―― 六つ目は首飾り
―― 牙を抜き取り有るべき姿に
―― 七つ目は竜の持てる力を全て
―― 水晶に閉じ込めて
―― 光の中に
「何て、残酷な詩なんでしょう」
ギゼーが詩を謳う様に読み上げた後、最初に哀れみを持って言葉を発したの
はリングだった。同じ竜族としての同情の念を込め目を細める。竜を殺して一
つ残らず剥ぎ取っていくなんて、と言外に非難めいたものが込められていた。
リングと同じ竜族であるメデッタも、流石に眉を顰めて非難の眼差しを詩に向
けていた。だが、人間であるギゼーにはその詩がどれほど残酷なものなのか、
今一つピンと来るものが無かった。人として、竜は魔物と同格だと無意識の内
にでも感じていたからだ。人間に害を成すもの、それは即ち魔物以外の何者で
もない。だが、リングやメデッタのように良き竜が居るのもまた事実である。
それは、認めざるを得ない。
リングやメデッタの手前、ギゼーは言葉に詰まった。何を口に出してみて
も、言い訳めいているように思えたからだ。やがて思い詰めたように、厳かに
口を開いた。
「……どんなに残酷な詩でも、手掛かりはこれしかないんだ。君達竜族の気持
ちは、何となくだけど……解る。気がする。でも……」
「そうだな。ギゼー君の言う通りだ。今はこの詩を解読し、道を開くべき時
だ。感情的になっては居られない」
ギゼーの言い訳がましい口ぶりに、透かさずメデッタが賛同する。そういう
悟った部分は、流石に齢を重ねているだけの事はある。ある意味リングよりは
少しばかり融通の聞く人だ。
リングはそんな二人のやり取りに、不服そうに頬を膨らませつつも押し黙る
ことで同意を示した。
「俺、思うんだけど……」
暫しの重苦しい沈黙を破ったのは、人間であるギゼーであった。
「あの壁画にはどれにも竜の絵が描かれている。そして、この台座の窪みは、
壁画の一部分が嵌め込めるような形になっている。ということは、この詩の順
番の通りに壁画の一部分を嵌め込んでいけば道が開かれるんじゃないかな」
「うむ。私も同意見だよ、ギゼー君」
壁画を見ると、そのどれもが天高く吼え猛る竜がレリーフとして刻まれてい
た。それを見てギゼーが思いの丈をぶちまけ、メデッタはそれに賛同したの
だ。最早答えは見ていた。それしかない。それしかないのだ。ギゼーの見出し
た答え、たった一つしか。リングもその事に早気付いたからこそ、首を縦に振
る事で賛同の意を表した。たった一つ気掛かりな事、「竜の一部を剥ぎ取る」
という残虐な行為に対する嫌悪感を残して――。
◆◇◆
一つ目は爪。
二つ目は角。
三つ目は目玉。
四つ目は鱗の一部。
五つ目は片耳。
六つ目は一際大きな牙を一つ。
それぞれ六つの各部位を、天空に向かって吼え猛る竜のレリーフから一つ一
つ剥ぎ取っていった。そして、それを順番通りに台座の上に穿たれた穴へと押
し込める。全ての部位がまるで誂[あつら]えたかのようにピタリと嵌って行く
のを見て、ギゼーはほくそ笑んだ。
嵌めこまれたレリーフは、それぞれが淡く光り輝いている。
「よっし! ここで、この台座を回転させて鏡に正面を向けさせれば……」
唇をひと舐めして、ギゼーが口ずさむ。
ギゼーの言う通り、台座の下には円形に溝が刻み込まれており、回転式にな
っている事が窺えた。
「あの、ギゼーさん。私も手伝いましょうか? 一人の力より二人の力の方
が……」
「なあに、リングちゃん大丈夫だって。このくらい。気遣い、ありがとな」
リングの気遣う心に温かみを覚えたのか、ギゼーは優しい笑みを向ける。
ギゼーが笑みを向けながらも力を込めると、台座はいとも簡単に回転した。
半回転した台座に乗ったレリーフは鏡に向けられると同時に輝きを増し、辺り
一面に光が満ちていった。
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