PC:ギゼー リング
NPC:メデッタ=オーシャン、影の男
場所:白の遺跡(ソフィニア北)
+++++++++++++++++++++++++++++++++++
☆あらすじ☆
ソフィニアの酒場で歌っていた吟遊詩人の詩の導きで、白の遺跡に挑戦する事
になったギゼー、リング、ジュヴィア、メデッタの四人。
白の遺跡には、『竜の爪』と呼ばれる宝が眠っているのだとギゼーは言う。
結界を潜り抜け門扉の前まで辿り着くが、門番であるゴーレムに阻まれてしま
う。
メデッタの機転のお陰で何とか中に潜り込んだ三人。
だが、最初の詩にあった三つの道でジュヴィアとはぐれてしまう。
ジュヴィアを失った悲しみを抱く暇もなく、第一の試練を乗り越えた二人は第
二の試練に挑む。
メデッタと無事合流し、第二の試練をもクリアしたギゼーとリング。
だが、“第五の季節”と名乗る謎の少女の作り出した暗黒の穴にギゼーのみが
吸い込まれてしまうのだった。
――そのもの七つの光を抱き
――七つの日を数え
――七つの王国にて眠らん
――七つ目の王国の主
――七つの言葉を残し
――七つ目の竜の背びれに
――神殿を築かん
――七人目の王
――そこに七つの魔法を掛け
――七つの扉の向うに
――竜の爪を隠さん
――一つとなりたる二つの鍵
――三つ目の道指し示さん
――道は四つに分かたれて
――第五の部屋へと誘わん
――部屋が神秘の光に満ち溢れしとき
――六の印し鏡に映せ
――さすれば第七の道現われ出でん
――そは即ち天上への階段なり
+++++++++++++++++++++++++++++++++++
その黒い穴は、躊躇うことなくギゼーを吸引した。
漆黒の円陣を抜けるとそこは、回廊だった。回廊とはいえ、闇中の只中に沈
み込み、そこが「通路であろう」という不確かな認識しかなかった。
闇に沈む回路の真ん中に放り込まれたギゼーは、霞がかった自分の記憶を弄
った。ギゼーが漆黒の円陣に放り込まれる寸前、最後に耳にした言葉はメデッ
タの「行って来い」だった。瞬時に振り向くと、そこにリングの力強い微笑が
重なった。
二人の事を思い出した途端、ギゼーは孤独感を覚え、寂しさに急き立てられ
るようにもう一度後ろを振り向いた。
漆黒の円陣は、その直径こそ狭まっているがまだ消えた訳ではない。あと、
どれ位の時が経てば二人と合流出来るのかは定かではないが、少なくとも希望
が消失した訳ではない事をギゼーは悟った。と、同時に安堵の吐息が漏れる。
『まだ、安堵するのは早いと思うよ。ギゼー君』
何処からとも無く聞えて来た、“影の男”の声にギゼーは思わず心臓を跳ね
上がらせた。
「……!? なっ、この声は、“影の男”!? 何処だっ!」
『しかし、嬉しいねぇ。最初に通り抜けて来たのが君で。この試練を受けるに
値する正当なる者は、厳密に言えば、人間である君だけだからねぇ。ギゼー
君』
恐怖を漲らせて喚き四方に視線を這わせるギゼーに反して、“影の男”はさ
も楽しそうにマントとシルクハットのみを周囲に浮遊させて謳う様にのたまっ
た。ギゼーが少しでも恐怖を感じると、それが快感となって前身を駆け巡り、
堪らなく嬉しくなるのだ。人間の負の感情を糧としている、魔族特有の楽しみ
の一つである。例外もあるにはあるようだが、大部分の魔族が彼の如き存在な
のだ。
「俺が、試練を受けるに値する者……? どういう事だか説明してもらおう
か。姿を現しやがれっ!」
『これはこれは、失礼をば』
ギゼーの叱責に応えるかのように、哄笑と共に現れた“影の男”の姿は今ま
でと違って、真っ白だった。顔から、つま先まで全てが白で統一していた。そ
こだけが、白く抜き取られてでも居るようだった。ただ、口だけが笑みの形に
歪に掘り込まれている事だけは今までと同じだった。
「……っ!?」
“影の男”の容姿を目の当たりにしたギゼーは、息を呑んだ。
人間ならば当然するべきであろう行動。常識をわきまえた人間ならば、当然
発狂してもおかしくは無い姿で現れたのだ。
そのギゼーの吃驚の様子を見て取って、“影の男”は肩を竦ませておどけて
見せた。
『おやおや、これは心外ですな。実は私の本当の姿は、この様な姿でして。此
処は魔界と地上世界との狭間に当たる空間ですから、私も本当の姿で居られる
のですよ。もっと厳密に言ってしまいますと――』
そう言って、“影の男”は身体を一回宙返りさせると今度は大きな顔だけの
姿――ゆで卵に黒いシルクハットと黒いマント、そして大きな口唇と鼻だけの
容姿に早変わりした。
『この様な姿こそが、私の真実の姿でして』
“影の男”らしき卵は、早口で捲くし立ててシルクハットを掲げると、唇だ
けでにこやかに笑った。目がない分不気味なことこの上ない。
「で? さっきの俺の質問に対する答えがまだだけど?」
幾分か落ち着いて来たのか、ギゼーはさして驚きもまた恐怖を露にする事も
無く平静を装い先を促した。
『……ああ、そうでしたね。しかし、流石はこれまでの試練を乗り越えて来た
だけの事はある。さして驚かないのですねぇ。私の本当の姿を見ても。……つ
まらん』
「ああ、いろんな摩訶不思議を目の当たりにして来たからな。もう、慣れちま
った」
“影の男”の最後に付け加えた小さな呟きは流す事にして、ギゼーが大真面
目に答えた。リングと行動を共にするようになってからというもの、数々の不
思議や恐怖の対象を目の当たりにして来た。その事実を踏まえての自信だ。少
しぐらいの揺さぶりでは、びくともしない。それが、慣れというものだ。
『……。まあ、良いでしょう。特別に教えて差し上げます。此処に封じられて
いる“竜の爪”の持ち主は、人間でした。人の世は、人の手によって治められ
るべきである、と考えた当時の持ち主がある制約を掛けたのです。…不届きな
…。いや、失礼。ともかく、その制約とは、私も含めた魔族等の人以外の生物
がそれを手にすれば、恐ろしい災厄が当人に降りかかると言うものでした。封
印そのものにその制約が掛けられている。ならば、その封印を解いた後なら…
…?
私はここの守護の為に召喚させられてから今日まで、長い年月を費やして考
えて来ました。そして、待っていたのですよ。貴方のような人間を――』
「――っ!?」
“影の男”の本音を聞かされたギゼーは、怒りよりも寧ろ恐怖の方が先走っ
ていた。一歩後退ってから、慄呻(りっしん)する。
「この、俺に、その封印を、解け、と?」
“影の男”の語った真実は、理致的ではあるが、ギゼーにとってそれは納得
しかねる提案でもあった。だが、“影の男”はそんなギゼーの慄きぶりを目の
当たりにし、ますますもって楽しくなって来たとでも言いたげに宙返りすると
白い人型に戻って笑言した。
『ご名答! 私はねギゼー君、力が欲しいのだよ。“支配の力”が』
“影の男”は大仰に両手を天に翳すと、大義を振り翳すように演説ぶって言
った。ギゼーは舌打ちする。哀しいかな、今はこの男と事を構える訳には行か
ない。そんな暇はないし、戦力的に見ても地の利から見ても、圧倒的にあちら
側が有利に決まっている。それに、ギゼーの目的も宝冠を手にする事だから
だ。
「そんな事より、後の二人は無事なんだろうな……」
事を構える訳には行かないが“影の男”の思惑に嵌りたくも無い、ギゼーが
取った最善の道は話の筋道を逸らす事だった。
“影の男”は思い出したように反応を返す。
『おっと! そうでした。忘れる所でした。貴方を最後の試練の間に誘って差
し上げましょう。お二人がお待ちですよ』
「二人が!? どういう……」
ギゼーが疑問を皆まで言い終わる前に、“影の男”は片手を一振りして両開
きの扉を宙に現出させる。これまでに見慣れてきた、さして装飾の施されてい
ない簡素な両開きの扉だ。
その扉がギゼーの目の前で、ゆっくりと開いて行く。
その向こうには――。
*――――― ◆ ◇ ◆ ―――――*
「ギゼーさん、遅かったじゃないですか。どうしたんです? 顔色が悪いよう
ですけど……」
扉の開いたその向こうには、“影の男”の言うとおりリングとメデッタの二
人が待ち構えていた。
「い、いや、先に飛び込んだはずだったんだが……変な場所に飛ばされ
て……」
どうやら、今まで居た場所とこの場所とは時間の流れが違うようである。
ギゼーは語尾を濁らせて曖昧にし、先程の“影の男”との会話を二人に伝え
ないように努力した。メデッタはそんなギゼーの様子から何かを感じ取ったら
しく、問い質そうとするリングを手で制し二人を見渡しながら言った。
「さて、いよいよ最後の試練の時のようだよ。二人とも、覚悟は良いね」
今までと同じ様に、白く輝く部屋。六角形のその部屋の中央に等身大の鏡が
宙に浮いてこちら側――扉の方に鏡面を向けている。壁には六つの方角にそれ
ぞれ一つずつ何かの印の様な物が描かれている。古代文字とも少し違うそれを
見て、ギゼーはピンと来た。これが、例の詩に出て来た“六つの印”なのでは
ないか、と。
「さてと、ギゼー君。詩の続きは何だったかな?」
背後に存在していた筈の扉は、何時の間にやら消失していた。
変わりに何かの台座が現れていた。上部に、何かを嵌められる様な凹みが刻
み込まれている。
「詩の続き? 確か……」
ギゼーは、懐からメモ紙を取り出し朗々と謳うように読み上げた。
*――――― ◆ ◇ ◆ ―――――*
――部屋が神秘の光に満ち溢れしとき
――六の印し鏡に映せ
――さすれば第七の道現われ出でん
――そは即ち天上への階段なり
NPC:メデッタ=オーシャン、影の男
場所:白の遺跡(ソフィニア北)
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☆あらすじ☆
ソフィニアの酒場で歌っていた吟遊詩人の詩の導きで、白の遺跡に挑戦する事
になったギゼー、リング、ジュヴィア、メデッタの四人。
白の遺跡には、『竜の爪』と呼ばれる宝が眠っているのだとギゼーは言う。
結界を潜り抜け門扉の前まで辿り着くが、門番であるゴーレムに阻まれてしま
う。
メデッタの機転のお陰で何とか中に潜り込んだ三人。
だが、最初の詩にあった三つの道でジュヴィアとはぐれてしまう。
ジュヴィアを失った悲しみを抱く暇もなく、第一の試練を乗り越えた二人は第
二の試練に挑む。
メデッタと無事合流し、第二の試練をもクリアしたギゼーとリング。
だが、“第五の季節”と名乗る謎の少女の作り出した暗黒の穴にギゼーのみが
吸い込まれてしまうのだった。
――そのもの七つの光を抱き
――七つの日を数え
――七つの王国にて眠らん
――七つ目の王国の主
――七つの言葉を残し
――七つ目の竜の背びれに
――神殿を築かん
――七人目の王
――そこに七つの魔法を掛け
――七つの扉の向うに
――竜の爪を隠さん
――一つとなりたる二つの鍵
――三つ目の道指し示さん
――道は四つに分かたれて
――第五の部屋へと誘わん
――部屋が神秘の光に満ち溢れしとき
――六の印し鏡に映せ
――さすれば第七の道現われ出でん
――そは即ち天上への階段なり
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その黒い穴は、躊躇うことなくギゼーを吸引した。
漆黒の円陣を抜けるとそこは、回廊だった。回廊とはいえ、闇中の只中に沈
み込み、そこが「通路であろう」という不確かな認識しかなかった。
闇に沈む回路の真ん中に放り込まれたギゼーは、霞がかった自分の記憶を弄
った。ギゼーが漆黒の円陣に放り込まれる寸前、最後に耳にした言葉はメデッ
タの「行って来い」だった。瞬時に振り向くと、そこにリングの力強い微笑が
重なった。
二人の事を思い出した途端、ギゼーは孤独感を覚え、寂しさに急き立てられ
るようにもう一度後ろを振り向いた。
漆黒の円陣は、その直径こそ狭まっているがまだ消えた訳ではない。あと、
どれ位の時が経てば二人と合流出来るのかは定かではないが、少なくとも希望
が消失した訳ではない事をギゼーは悟った。と、同時に安堵の吐息が漏れる。
『まだ、安堵するのは早いと思うよ。ギゼー君』
何処からとも無く聞えて来た、“影の男”の声にギゼーは思わず心臓を跳ね
上がらせた。
「……!? なっ、この声は、“影の男”!? 何処だっ!」
『しかし、嬉しいねぇ。最初に通り抜けて来たのが君で。この試練を受けるに
値する正当なる者は、厳密に言えば、人間である君だけだからねぇ。ギゼー
君』
恐怖を漲らせて喚き四方に視線を這わせるギゼーに反して、“影の男”はさ
も楽しそうにマントとシルクハットのみを周囲に浮遊させて謳う様にのたまっ
た。ギゼーが少しでも恐怖を感じると、それが快感となって前身を駆け巡り、
堪らなく嬉しくなるのだ。人間の負の感情を糧としている、魔族特有の楽しみ
の一つである。例外もあるにはあるようだが、大部分の魔族が彼の如き存在な
のだ。
「俺が、試練を受けるに値する者……? どういう事だか説明してもらおう
か。姿を現しやがれっ!」
『これはこれは、失礼をば』
ギゼーの叱責に応えるかのように、哄笑と共に現れた“影の男”の姿は今ま
でと違って、真っ白だった。顔から、つま先まで全てが白で統一していた。そ
こだけが、白く抜き取られてでも居るようだった。ただ、口だけが笑みの形に
歪に掘り込まれている事だけは今までと同じだった。
「……っ!?」
“影の男”の容姿を目の当たりにしたギゼーは、息を呑んだ。
人間ならば当然するべきであろう行動。常識をわきまえた人間ならば、当然
発狂してもおかしくは無い姿で現れたのだ。
そのギゼーの吃驚の様子を見て取って、“影の男”は肩を竦ませておどけて
見せた。
『おやおや、これは心外ですな。実は私の本当の姿は、この様な姿でして。此
処は魔界と地上世界との狭間に当たる空間ですから、私も本当の姿で居られる
のですよ。もっと厳密に言ってしまいますと――』
そう言って、“影の男”は身体を一回宙返りさせると今度は大きな顔だけの
姿――ゆで卵に黒いシルクハットと黒いマント、そして大きな口唇と鼻だけの
容姿に早変わりした。
『この様な姿こそが、私の真実の姿でして』
“影の男”らしき卵は、早口で捲くし立ててシルクハットを掲げると、唇だ
けでにこやかに笑った。目がない分不気味なことこの上ない。
「で? さっきの俺の質問に対する答えがまだだけど?」
幾分か落ち着いて来たのか、ギゼーはさして驚きもまた恐怖を露にする事も
無く平静を装い先を促した。
『……ああ、そうでしたね。しかし、流石はこれまでの試練を乗り越えて来た
だけの事はある。さして驚かないのですねぇ。私の本当の姿を見ても。……つ
まらん』
「ああ、いろんな摩訶不思議を目の当たりにして来たからな。もう、慣れちま
った」
“影の男”の最後に付け加えた小さな呟きは流す事にして、ギゼーが大真面
目に答えた。リングと行動を共にするようになってからというもの、数々の不
思議や恐怖の対象を目の当たりにして来た。その事実を踏まえての自信だ。少
しぐらいの揺さぶりでは、びくともしない。それが、慣れというものだ。
『……。まあ、良いでしょう。特別に教えて差し上げます。此処に封じられて
いる“竜の爪”の持ち主は、人間でした。人の世は、人の手によって治められ
るべきである、と考えた当時の持ち主がある制約を掛けたのです。…不届きな
…。いや、失礼。ともかく、その制約とは、私も含めた魔族等の人以外の生物
がそれを手にすれば、恐ろしい災厄が当人に降りかかると言うものでした。封
印そのものにその制約が掛けられている。ならば、その封印を解いた後なら…
…?
私はここの守護の為に召喚させられてから今日まで、長い年月を費やして考
えて来ました。そして、待っていたのですよ。貴方のような人間を――』
「――っ!?」
“影の男”の本音を聞かされたギゼーは、怒りよりも寧ろ恐怖の方が先走っ
ていた。一歩後退ってから、慄呻(りっしん)する。
「この、俺に、その封印を、解け、と?」
“影の男”の語った真実は、理致的ではあるが、ギゼーにとってそれは納得
しかねる提案でもあった。だが、“影の男”はそんなギゼーの慄きぶりを目の
当たりにし、ますますもって楽しくなって来たとでも言いたげに宙返りすると
白い人型に戻って笑言した。
『ご名答! 私はねギゼー君、力が欲しいのだよ。“支配の力”が』
“影の男”は大仰に両手を天に翳すと、大義を振り翳すように演説ぶって言
った。ギゼーは舌打ちする。哀しいかな、今はこの男と事を構える訳には行か
ない。そんな暇はないし、戦力的に見ても地の利から見ても、圧倒的にあちら
側が有利に決まっている。それに、ギゼーの目的も宝冠を手にする事だから
だ。
「そんな事より、後の二人は無事なんだろうな……」
事を構える訳には行かないが“影の男”の思惑に嵌りたくも無い、ギゼーが
取った最善の道は話の筋道を逸らす事だった。
“影の男”は思い出したように反応を返す。
『おっと! そうでした。忘れる所でした。貴方を最後の試練の間に誘って差
し上げましょう。お二人がお待ちですよ』
「二人が!? どういう……」
ギゼーが疑問を皆まで言い終わる前に、“影の男”は片手を一振りして両開
きの扉を宙に現出させる。これまでに見慣れてきた、さして装飾の施されてい
ない簡素な両開きの扉だ。
その扉がギゼーの目の前で、ゆっくりと開いて行く。
その向こうには――。
*――――― ◆ ◇ ◆ ―――――*
「ギゼーさん、遅かったじゃないですか。どうしたんです? 顔色が悪いよう
ですけど……」
扉の開いたその向こうには、“影の男”の言うとおりリングとメデッタの二
人が待ち構えていた。
「い、いや、先に飛び込んだはずだったんだが……変な場所に飛ばされ
て……」
どうやら、今まで居た場所とこの場所とは時間の流れが違うようである。
ギゼーは語尾を濁らせて曖昧にし、先程の“影の男”との会話を二人に伝え
ないように努力した。メデッタはそんなギゼーの様子から何かを感じ取ったら
しく、問い質そうとするリングを手で制し二人を見渡しながら言った。
「さて、いよいよ最後の試練の時のようだよ。二人とも、覚悟は良いね」
今までと同じ様に、白く輝く部屋。六角形のその部屋の中央に等身大の鏡が
宙に浮いてこちら側――扉の方に鏡面を向けている。壁には六つの方角にそれ
ぞれ一つずつ何かの印の様な物が描かれている。古代文字とも少し違うそれを
見て、ギゼーはピンと来た。これが、例の詩に出て来た“六つの印”なのでは
ないか、と。
「さてと、ギゼー君。詩の続きは何だったかな?」
背後に存在していた筈の扉は、何時の間にやら消失していた。
変わりに何かの台座が現れていた。上部に、何かを嵌められる様な凹みが刻
み込まれている。
「詩の続き? 確か……」
ギゼーは、懐からメモ紙を取り出し朗々と謳うように読み上げた。
*――――― ◆ ◇ ◆ ―――――*
――部屋が神秘の光に満ち溢れしとき
――六の印し鏡に映せ
――さすれば第七の道現われ出でん
――そは即ち天上への階段なり
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