PT:ギゼー、リング
NPC:(メデッタ=オーシャン)、春姫(ハルキ)、冬姫(ユキ)
場所:白の遺跡
++++++++++++++++++++++++++++++++
リングが激怒した。
これは忌々しき事態である。
「もう怒っちゃいました。……今度こそ、本気で行かせて頂きます」
そう静かにのたまって、青く燃え滾った双眸で二人の姫君に非難の眼差しを
向けるリングの意志を受け、ギゼーは自分も本気で観戦する事を決意した。
*――――― ◆ ◇ ◆ ―――――*
その真っ白き空間に、渦が巻いていた。
白銀と薄紅と、水色からなる三色の渦。
その三色に分かたれた渦柱が、激突しては離れ、離れては激突するを繰り返
していた。
ギゼーは当然の如く、例の戦闘区域より離れた所で巻き込まれない様に配慮
しながら観戦を決め込んでいる。だが、その表情にはいつもの様な、半分茶化
したものは無く、真剣な面持ちで見守っていた。彼にしてみれば相争っている
三人の心情が何と無くだが理解(わか)るのだ。リングの半ば呆れた怒りも、
冬姫のやや歪んだ愛情も、春姫の血縁を想う心も……。
一進一退の攻防を繰り広げている、手に汗握る戦闘(バトル)を文字通り、
手に汗握って見詰めていた。
リングは半ば焦っていた。
力が均衡しているからか、戦闘は膠着状態からめっきり抜け出せないでい
る。このままでは消耗戦になりかねない。否、もう既に消耗戦に片足を突っ込
んでいる状態なのだ。このままでは、あの二人はともかく、自分の方が持たな
いだろう。精神的にも、肉体的にも。地の利を得ていないから余計に、その心
配が募る。
そう悟ったリングは、一つの決断を下した。
それは、この下らない戦いを逸早く終結させる為の止むを得ない手段だっ
た。
(こうなれば、“聖書”を使うしかないようですね……)
あれは、余り使いたくは無いのだが。
やや焦燥気味の顔で、春姫と冬姫の二人を睨むリング。その一睨みで、決意
の固さの度合いが窺える。
「水の舞、竜の牙!」
リングの、叫びというよりは絶叫に近い掛け声と共に扇子から供給され続け
ている水流が勢いを増す。それはまるで、水底で眠っていた竜の如く咆哮を上
げるように口を開くと、二人の姫に襲い掛かっていった。
「!?」
これは攻撃では無い、牽制だ。本命は、後から来る。何か、大きな力
が……。
そう咄嗟の内に判断を下した春姫は、妹の冬姫に一声掛けると避ける事を捨
て、受け流す事に専念する。
吹雪の渦と、桜吹雪の渦が、水竜の進路を阻むように激突する。薄紅色と、
白銀色と、水色の三色の帯が互いに絡まりあって、まるで三色の反物の如くう
ねり、蠢く。それはさも、幻想的で美麗な戦いだった。
春姫の推理は正しかった。
リングは、自分が放った攻撃を二人が受け流すのを見届けるよりも前に、自
身の腹部から“聖書”を取り出すと頁を繰っていった。
「!? 第二波が来るぞっ! 気を付けろ、冬姫っ!!」
緊迫した声音を張上げる、春姫。
「はいっ、お姉さまっ!!」
それに対し、同じく緊迫した声音で答える、冬姫。
二人の防衛の陣が交錯して ――。
「汝、その最も欲するを望む事なかれ。貪欲は、原罪なり。罪を償うべき最も
最たるものであり、拭い去れ得ぬものと知れ。貪欲は即ち愛なり。愛情であ
り、愛憎である。愛を望むもの全て、己が自身によりて身を滅ぼすであろう」
―― Key of the Pain.
リングが“聖書”を朗々と読むのと、春姫と冬姫が声を掛け合うのとは、殆
ど同時だった。しかし、その力の波動は余りにも大き過ぎて気を付ける術が無
かった。
春姫と冬姫の身体は螺旋を描く光の筋に包まれて、分子レベルで分解されて
いった。俗に言う、“消滅”と言うやつだ。“聖書”の力は、絶大だった。抵
抗する術も、逃れる術も無く二人を飲み込んだのだ ――。
NPC:(メデッタ=オーシャン)、春姫(ハルキ)、冬姫(ユキ)
場所:白の遺跡
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リングが激怒した。
これは忌々しき事態である。
「もう怒っちゃいました。……今度こそ、本気で行かせて頂きます」
そう静かにのたまって、青く燃え滾った双眸で二人の姫君に非難の眼差しを
向けるリングの意志を受け、ギゼーは自分も本気で観戦する事を決意した。
*――――― ◆ ◇ ◆ ―――――*
その真っ白き空間に、渦が巻いていた。
白銀と薄紅と、水色からなる三色の渦。
その三色に分かたれた渦柱が、激突しては離れ、離れては激突するを繰り返
していた。
ギゼーは当然の如く、例の戦闘区域より離れた所で巻き込まれない様に配慮
しながら観戦を決め込んでいる。だが、その表情にはいつもの様な、半分茶化
したものは無く、真剣な面持ちで見守っていた。彼にしてみれば相争っている
三人の心情が何と無くだが理解(わか)るのだ。リングの半ば呆れた怒りも、
冬姫のやや歪んだ愛情も、春姫の血縁を想う心も……。
一進一退の攻防を繰り広げている、手に汗握る戦闘(バトル)を文字通り、
手に汗握って見詰めていた。
リングは半ば焦っていた。
力が均衡しているからか、戦闘は膠着状態からめっきり抜け出せないでい
る。このままでは消耗戦になりかねない。否、もう既に消耗戦に片足を突っ込
んでいる状態なのだ。このままでは、あの二人はともかく、自分の方が持たな
いだろう。精神的にも、肉体的にも。地の利を得ていないから余計に、その心
配が募る。
そう悟ったリングは、一つの決断を下した。
それは、この下らない戦いを逸早く終結させる為の止むを得ない手段だっ
た。
(こうなれば、“聖書”を使うしかないようですね……)
あれは、余り使いたくは無いのだが。
やや焦燥気味の顔で、春姫と冬姫の二人を睨むリング。その一睨みで、決意
の固さの度合いが窺える。
「水の舞、竜の牙!」
リングの、叫びというよりは絶叫に近い掛け声と共に扇子から供給され続け
ている水流が勢いを増す。それはまるで、水底で眠っていた竜の如く咆哮を上
げるように口を開くと、二人の姫に襲い掛かっていった。
「!?」
これは攻撃では無い、牽制だ。本命は、後から来る。何か、大きな力
が……。
そう咄嗟の内に判断を下した春姫は、妹の冬姫に一声掛けると避ける事を捨
て、受け流す事に専念する。
吹雪の渦と、桜吹雪の渦が、水竜の進路を阻むように激突する。薄紅色と、
白銀色と、水色の三色の帯が互いに絡まりあって、まるで三色の反物の如くう
ねり、蠢く。それはさも、幻想的で美麗な戦いだった。
春姫の推理は正しかった。
リングは、自分が放った攻撃を二人が受け流すのを見届けるよりも前に、自
身の腹部から“聖書”を取り出すと頁を繰っていった。
「!? 第二波が来るぞっ! 気を付けろ、冬姫っ!!」
緊迫した声音を張上げる、春姫。
「はいっ、お姉さまっ!!」
それに対し、同じく緊迫した声音で答える、冬姫。
二人の防衛の陣が交錯して ――。
「汝、その最も欲するを望む事なかれ。貪欲は、原罪なり。罪を償うべき最も
最たるものであり、拭い去れ得ぬものと知れ。貪欲は即ち愛なり。愛情であ
り、愛憎である。愛を望むもの全て、己が自身によりて身を滅ぼすであろう」
―― Key of the Pain.
リングが“聖書”を朗々と読むのと、春姫と冬姫が声を掛け合うのとは、殆
ど同時だった。しかし、その力の波動は余りにも大き過ぎて気を付ける術が無
かった。
春姫と冬姫の身体は螺旋を描く光の筋に包まれて、分子レベルで分解されて
いった。俗に言う、“消滅”と言うやつだ。“聖書”の力は、絶大だった。抵
抗する術も、逃れる術も無く二人を飲み込んだのだ ――。
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