PC:ギゼー、リング
NPC:メデッタ、春姫(ハルキ)、冬姫(ユキ)、
場所:白の遺跡(ソフィニア北)
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「リングちゃん、今の……」
余裕の笑みを見せ、霞にも似た霧の中から一寸した仕事をやり終えたように
出て来たリングに対し最初に声を掛けたのは、<聖書>の力を目の当たりに
し、衝撃を受けたギゼーだった。
「ええ。今のが私の力の一つ、<聖書>です。……驚かせてしまって、すいま
せんでした」
リングは微笑みの中に微かな悲しみを浮かべ、先程見せた強大な力の説明を
口頭に上らせた。自分の中に聖書が封印されていること。それを取り出し、一
説を朗読することにより聖書の内に秘められた魔法的な力を解放できる事。
その話の始終、リングは声に哀愁を漂わせていた。
「……リングは、その<聖書>の力を余り良くは思っていないのかね?」
「……はい」
リングは己の力に対する想いを伏目がちに打ち明けた。
力などあるから、他人を傷つけてしまうのだと。自分は戦いなど望んでいな
い。もっと平和的な解決方法がきっと、ある筈だと。人間は、言葉を重ねれば
きっと解り合えるとも言っていた。リングの平和主義的な思考が、ひしひしと
伝わってくるようだ。
「だけど、平和的に解決できない問題というのもあるんだよ。リングちゃん」
むしろ其方の方が世界中に蔓延っていたりする。その事を半分でも解っても
らおうと、ギゼーは口を開く。
今まで、数多くの血生臭い事を体験してきた。
自分なりに、数多の不正を目撃しても来た。
世の中の表と裏、全くの正反対だが互いに無くては成らない物達を目の当た
りにして来たのだ。ギゼーは。戦いだって、時として必要になることもある。
まあ、平和的に解決出来るに越したことは無いが……。
「そんなに、悲しそうな顔をしないで欲しい。君の力は、きっと誰かの為にな
っているんだから。その強大な力を、誰かの盾になる為だけに使う……そんな
風に生きられたら……俺……幸せだなって、思うよ」
「……盾ですか。それもいいかもしれませんね」
微かに笑みを浮かべるリング。
その微笑が、自分ではなく自分を通り越した大勢の弱気者達、盾となってリ
ング自身が守るべき者達に向けられていることを、ギゼーは無意識の内に感じ
取っていた。
◆◇◆
「さてと。残るは、春姫(ハルキ)と冬姫(ユキ)だけだな」
「俺、思うんですけど、冬姫(ユキ)は放って置いても良いのではないでしょう
か?」
メデッタの、駆除し切れなかった害虫を始末しようとでもするかのような口
調に、ギゼーは全く相反する様な提案を口にした。メデッタは当然不可思議な
視線をギゼーに向ける。それは、リングも同然だった。
「何故だね?」
メデッタが不審に問うのも当然の話である。
実際、春姫も冬姫もそれから先程リングが倒した二人の姫もギゼー達の前に
現れた時、敵として紹介されたのだ。敵以外の何者であろうというのか。その
彼女達――ギゼーが言っているのは冬姫だけだが――を擁護しようとしてい
る。それはいったい何故なのか、疑問に思わない方がおかしい。
「いいですか? 冬姫の方は俺に惚れています。それはまず間違いないでしょ
う」
「……おひ、自分で言うかフツー……」
メデッタもリングもほぼ同時にギゼーをジト目で見る。二人とも彼の事を、
余程のナルシスだと思ったのだろう。それを察知してか、ギゼーは慌てて否定
する。
「……やっ、俺は、ただ事実を言ったまでですよー。やだなー、もー……」
ギゼーの自己弁護は最後まで言い切れず、冷や汗に流された。
二人のジト目攻撃は尚も続いたが、ギゼーは構わず先を続ける。
「……冬姫が俺に惚れているというのは事実でしょう。だから、彼女は別に放
って置いても、俺達にとって害にはならないと思うんです。いくらなんでも、
惚れた人間に刃を向ける様な真似はしないでしょうから。……逆にそれを利用
してやればいいんですよ。つまり、共同戦線ということですが」
「……刃を向けて来たらどうするんだね?」
「その時はその時です」
「……共同戦線……でもやっぱり戦うしかないんですね。もっと平和的に、話
し合いで解決出来る方法はないんでしょうか?」
珍しくリングが自分の意見を明確に言ってのけている。二人は、彼女の身に
何が起こったのかと彼女を括目する。リングが少し、成長したように見えた。
「やっ、何です? 二人共。私はただ、話し合いで解決出来ないかなーと思っ
て……」
「いや、リングちゃんの言わんとしている事は大体解るよ。話し合いで解決出
来るなら、それに越した事は無いと思う。でも……見ろよ、アレ。あんな状況
で話し合いに持って行けると思うか?」
ギゼーの指差した方向、丁度春姫と冬姫が凄絶なる死闘を繰り広げている辺
りを見遣るリング。戦いの様子を視界に納めると同時に、首を横に往復させる
リングであった。
「……だろ? 共同戦線しかないって」
◆◇◆
三人の背後では、桜吹雪が織り成す桃色の奔流と吹雪が織り成す白色の奔流
とが激突し、白桜色の竜巻と化したものが暴れていた。
NPC:メデッタ、春姫(ハルキ)、冬姫(ユキ)、
場所:白の遺跡(ソフィニア北)
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「リングちゃん、今の……」
余裕の笑みを見せ、霞にも似た霧の中から一寸した仕事をやり終えたように
出て来たリングに対し最初に声を掛けたのは、<聖書>の力を目の当たりに
し、衝撃を受けたギゼーだった。
「ええ。今のが私の力の一つ、<聖書>です。……驚かせてしまって、すいま
せんでした」
リングは微笑みの中に微かな悲しみを浮かべ、先程見せた強大な力の説明を
口頭に上らせた。自分の中に聖書が封印されていること。それを取り出し、一
説を朗読することにより聖書の内に秘められた魔法的な力を解放できる事。
その話の始終、リングは声に哀愁を漂わせていた。
「……リングは、その<聖書>の力を余り良くは思っていないのかね?」
「……はい」
リングは己の力に対する想いを伏目がちに打ち明けた。
力などあるから、他人を傷つけてしまうのだと。自分は戦いなど望んでいな
い。もっと平和的な解決方法がきっと、ある筈だと。人間は、言葉を重ねれば
きっと解り合えるとも言っていた。リングの平和主義的な思考が、ひしひしと
伝わってくるようだ。
「だけど、平和的に解決できない問題というのもあるんだよ。リングちゃん」
むしろ其方の方が世界中に蔓延っていたりする。その事を半分でも解っても
らおうと、ギゼーは口を開く。
今まで、数多くの血生臭い事を体験してきた。
自分なりに、数多の不正を目撃しても来た。
世の中の表と裏、全くの正反対だが互いに無くては成らない物達を目の当た
りにして来たのだ。ギゼーは。戦いだって、時として必要になることもある。
まあ、平和的に解決出来るに越したことは無いが……。
「そんなに、悲しそうな顔をしないで欲しい。君の力は、きっと誰かの為にな
っているんだから。その強大な力を、誰かの盾になる為だけに使う……そんな
風に生きられたら……俺……幸せだなって、思うよ」
「……盾ですか。それもいいかもしれませんね」
微かに笑みを浮かべるリング。
その微笑が、自分ではなく自分を通り越した大勢の弱気者達、盾となってリ
ング自身が守るべき者達に向けられていることを、ギゼーは無意識の内に感じ
取っていた。
◆◇◆
「さてと。残るは、春姫(ハルキ)と冬姫(ユキ)だけだな」
「俺、思うんですけど、冬姫(ユキ)は放って置いても良いのではないでしょう
か?」
メデッタの、駆除し切れなかった害虫を始末しようとでもするかのような口
調に、ギゼーは全く相反する様な提案を口にした。メデッタは当然不可思議な
視線をギゼーに向ける。それは、リングも同然だった。
「何故だね?」
メデッタが不審に問うのも当然の話である。
実際、春姫も冬姫もそれから先程リングが倒した二人の姫もギゼー達の前に
現れた時、敵として紹介されたのだ。敵以外の何者であろうというのか。その
彼女達――ギゼーが言っているのは冬姫だけだが――を擁護しようとしてい
る。それはいったい何故なのか、疑問に思わない方がおかしい。
「いいですか? 冬姫の方は俺に惚れています。それはまず間違いないでしょ
う」
「……おひ、自分で言うかフツー……」
メデッタもリングもほぼ同時にギゼーをジト目で見る。二人とも彼の事を、
余程のナルシスだと思ったのだろう。それを察知してか、ギゼーは慌てて否定
する。
「……やっ、俺は、ただ事実を言ったまでですよー。やだなー、もー……」
ギゼーの自己弁護は最後まで言い切れず、冷や汗に流された。
二人のジト目攻撃は尚も続いたが、ギゼーは構わず先を続ける。
「……冬姫が俺に惚れているというのは事実でしょう。だから、彼女は別に放
って置いても、俺達にとって害にはならないと思うんです。いくらなんでも、
惚れた人間に刃を向ける様な真似はしないでしょうから。……逆にそれを利用
してやればいいんですよ。つまり、共同戦線ということですが」
「……刃を向けて来たらどうするんだね?」
「その時はその時です」
「……共同戦線……でもやっぱり戦うしかないんですね。もっと平和的に、話
し合いで解決出来る方法はないんでしょうか?」
珍しくリングが自分の意見を明確に言ってのけている。二人は、彼女の身に
何が起こったのかと彼女を括目する。リングが少し、成長したように見えた。
「やっ、何です? 二人共。私はただ、話し合いで解決出来ないかなーと思っ
て……」
「いや、リングちゃんの言わんとしている事は大体解るよ。話し合いで解決出
来るなら、それに越した事は無いと思う。でも……見ろよ、アレ。あんな状況
で話し合いに持って行けると思うか?」
ギゼーの指差した方向、丁度春姫と冬姫が凄絶なる死闘を繰り広げている辺
りを見遣るリング。戦いの様子を視界に納めると同時に、首を横に往復させる
リングであった。
「……だろ? 共同戦線しかないって」
◆◇◆
三人の背後では、桜吹雪が織り成す桃色の奔流と吹雪が織り成す白色の奔流
とが激突し、白桜色の竜巻と化したものが暴れていた。
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