PC ギゼー リング
場所 白の遺跡
NPC 夏姫 秋姫 メデッタ
___________________________________
ボウッ!
夏姫の放つ向日葵の花は、秋姫の放つ枯葉に触れると高熱を発し、紅蓮の炎
を吐く炎の嵐となって、リングを襲った。
「うわわっ!」
炎の嵐を間一髪のところで避けるリング。しかし、リングに休む隙を与え
ず、炎の嵐がリングを襲う。
「うわわわわっ!!」
『そりゃそりゃそりゃっ!!』
夏姫と秋姫のコンビネーションは憎らしいぐらいピッタリだった。秋姫の木
の葉に必ず引火するように夏姫は向日葵の花を降らし、秋姫はリングの居場所
に狙い違わず木の葉を降らす。初めのうちはただ、攻撃を避けていただけのリ
ングだったが、次第にその動きに疲労が現れ始めた。
『ふふふ、我らの攻撃、いつまで避けきれるかな?』
「う、煩いですっ!本当は、貴方たちの攻撃を避けるのは簡単なんですから
っ!」
「しかし、動きが鈍くなっておるぞ?」
「ホホホ、口では何とでも言えるがの」
「う…っ」
リングは苦しそうに顔をしかめた。が、間髪いれず炎の嵐が襲ってくる。リ
ングは間一髪でその攻撃を避けた。
はあっ はあっ
リングの体からはダラダラと、尋常じゃない量の汗が流れ出ていた。体から
流れ出る汗が、地面に触れてじゅわっ、と蒸発する。
呼吸が苦しい。脳天が、ぐらぐらする…。
(あ…つい…っ…‥)
「ちょっと、リングちゃん大丈夫か?」
ギゼーが尋常じゃないリングの様子に気づいて腰を浮かした。
「なんか…、めずらしく、負けそうになってるんだけど…」
「まあ…」
メデッタは腕を組むと一人、納得して頷いた。
「我々の、弱点だからな。うむ」
「はぁ?」
ギゼーの頭にハテナマークが浮かぶ。
「どういう事ですか?」
「どういう事って、ほら…、私たちは海流族だろ?私たちは水の恩恵で生かさ
れている生き物なんだ。だから、まあ、割と寒さには耐えられるんだが、暑さ
にはめっぽう弱いんだな。まあ、当然といえば当然だが」
「えええっ!それじゃあ、リングちゃんピンチじゃないですか!…‥助けに、
行かないんですか?」
「ギゼー君、君はこんなことを知ってるかい?」
メデッタが人差し指をピンと立てて言う。
「親ペンギンは、子ペンギンを氷山の上から突き落として、這い上がってきた
子だけを自分の子として育てるそうだよ」
(…)
ギゼーの顔に疑い深そうな表情が浮かぶ。
「…メデッタさん、それ、微妙に違うような気がするんですが。…ペンギンの
話でしたっけ?」
「うっ、それは…、ゲフッ、ゲフン、まあ…、しかし」
「あの…」
ギゼーの言葉を完全に無視し、メデッタは話を進める。
「このままでは少しかわいそうな気もするな。私も鬼じゃない。お助けアイテ
ムぐらい、出してやろう」
そしてふいにメデッタは、ひょいっと、ギゼーの手から“水芸扇子”を奪い
取った。
「あっ!」とギゼーが言ったときにはもう、メデッタはそれをピンチのリン
グに向かって放り投げていた。
「リング!これを使え!」
パシィィィっ!
メデッタの声に気がついたリングは、見事水芸扇子を片手でキャッチした。
「う…え…?伯父様??」
「伯父様じゃない!その扇子からはどんな液体でも出るんだ。お前にうってつ
けの道具だろう」
「そ、そうですね!有り難う御座います!伯父様!」
「<伯父様>と呼ぶな!!」
『そんな扇子一つで状況は崩れないわ!!』
ぼわっ、と炎の嵐がリングを襲った。しかし、それを避けたリングの顔には
余裕の笑みが。
「大丈夫です」
夏姫と秋姫に向かってリングはにっ、と笑う。
「<水>さえあれば、負けません」
ばさっ、と扇子を広げると、リングは大声で叫んだ。
「大量の水!」
言葉どおり、扇子からは洪水のように水が流れ、それは蛇のようにリングの
体に絡み付いて、その体を包み込んだ。まるでリングは渦潮の中心にいるよう
だ。
『そんなもの!』
怒った夏姫と秋姫が、炎の蛇のような、火炎の嵐を繰り出してくる。
『蒸発させてやる!!』
炎の蛇は怒り、紅蓮の牙をむき出しながら、うねって、渦潮に噛み付いた。
じゅううう…‥
「げっ、やばいですよ、メデッタさん!」
ギゼーがメデッタのわき腹を小突いた。夏姫と秋の起こした熱風で、ギゼー
の赤茶色の髪がふわりと逆立っている。今、目の前は水蒸気で真っ白になって
いた。
「ホントに蒸発してるぜ!」
夏姫と秋姫の火炎はリングの渦潮に食い込み、その渦潮の水を徐々に蒸発さ
せつつあった。しかし、同じようにその黒い髪の毛を逆立て、腕を組み、前を
見据えるメデッタは冷静だった。
「ギゼー君、これはエンドじゃない」
メデッタの顔をさらりと熱風が撫でる。
「フィニッシュ、だよ」
『聖アルヴァンス伝より…。神は言われる。咎人には死を、死人には永久の安
らぎを、死体には花を』
どこからか朗々としたリングの声が響く。
「この声の感じ…」
何故か、ギゼーの体に鳥肌が立った。メデッタが呟く。
「<聖書>、か…」
『死体に顔は無く、顔のある死体は闇に返さん。我、咎人を闇に返さんとする
者なり』
言葉が終わると同時に、黄色い閃光が空中を走った。
ギゼーとメデッタ、二人の顔を撫でていた熱風が、少しずつやんできた。そ
れと同時に、霞が少しずつ晴れてくる。その霞の中からリングが現れた。その
手には一冊の本。
「終わりました」
彼女はまるで、手術でもしてきたかのように、言った。
場所 白の遺跡
NPC 夏姫 秋姫 メデッタ
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ボウッ!
夏姫の放つ向日葵の花は、秋姫の放つ枯葉に触れると高熱を発し、紅蓮の炎
を吐く炎の嵐となって、リングを襲った。
「うわわっ!」
炎の嵐を間一髪のところで避けるリング。しかし、リングに休む隙を与え
ず、炎の嵐がリングを襲う。
「うわわわわっ!!」
『そりゃそりゃそりゃっ!!』
夏姫と秋姫のコンビネーションは憎らしいぐらいピッタリだった。秋姫の木
の葉に必ず引火するように夏姫は向日葵の花を降らし、秋姫はリングの居場所
に狙い違わず木の葉を降らす。初めのうちはただ、攻撃を避けていただけのリ
ングだったが、次第にその動きに疲労が現れ始めた。
『ふふふ、我らの攻撃、いつまで避けきれるかな?』
「う、煩いですっ!本当は、貴方たちの攻撃を避けるのは簡単なんですから
っ!」
「しかし、動きが鈍くなっておるぞ?」
「ホホホ、口では何とでも言えるがの」
「う…っ」
リングは苦しそうに顔をしかめた。が、間髪いれず炎の嵐が襲ってくる。リ
ングは間一髪でその攻撃を避けた。
はあっ はあっ
リングの体からはダラダラと、尋常じゃない量の汗が流れ出ていた。体から
流れ出る汗が、地面に触れてじゅわっ、と蒸発する。
呼吸が苦しい。脳天が、ぐらぐらする…。
(あ…つい…っ…‥)
「ちょっと、リングちゃん大丈夫か?」
ギゼーが尋常じゃないリングの様子に気づいて腰を浮かした。
「なんか…、めずらしく、負けそうになってるんだけど…」
「まあ…」
メデッタは腕を組むと一人、納得して頷いた。
「我々の、弱点だからな。うむ」
「はぁ?」
ギゼーの頭にハテナマークが浮かぶ。
「どういう事ですか?」
「どういう事って、ほら…、私たちは海流族だろ?私たちは水の恩恵で生かさ
れている生き物なんだ。だから、まあ、割と寒さには耐えられるんだが、暑さ
にはめっぽう弱いんだな。まあ、当然といえば当然だが」
「えええっ!それじゃあ、リングちゃんピンチじゃないですか!…‥助けに、
行かないんですか?」
「ギゼー君、君はこんなことを知ってるかい?」
メデッタが人差し指をピンと立てて言う。
「親ペンギンは、子ペンギンを氷山の上から突き落として、這い上がってきた
子だけを自分の子として育てるそうだよ」
(…)
ギゼーの顔に疑い深そうな表情が浮かぶ。
「…メデッタさん、それ、微妙に違うような気がするんですが。…ペンギンの
話でしたっけ?」
「うっ、それは…、ゲフッ、ゲフン、まあ…、しかし」
「あの…」
ギゼーの言葉を完全に無視し、メデッタは話を進める。
「このままでは少しかわいそうな気もするな。私も鬼じゃない。お助けアイテ
ムぐらい、出してやろう」
そしてふいにメデッタは、ひょいっと、ギゼーの手から“水芸扇子”を奪い
取った。
「あっ!」とギゼーが言ったときにはもう、メデッタはそれをピンチのリン
グに向かって放り投げていた。
「リング!これを使え!」
パシィィィっ!
メデッタの声に気がついたリングは、見事水芸扇子を片手でキャッチした。
「う…え…?伯父様??」
「伯父様じゃない!その扇子からはどんな液体でも出るんだ。お前にうってつ
けの道具だろう」
「そ、そうですね!有り難う御座います!伯父様!」
「<伯父様>と呼ぶな!!」
『そんな扇子一つで状況は崩れないわ!!』
ぼわっ、と炎の嵐がリングを襲った。しかし、それを避けたリングの顔には
余裕の笑みが。
「大丈夫です」
夏姫と秋姫に向かってリングはにっ、と笑う。
「<水>さえあれば、負けません」
ばさっ、と扇子を広げると、リングは大声で叫んだ。
「大量の水!」
言葉どおり、扇子からは洪水のように水が流れ、それは蛇のようにリングの
体に絡み付いて、その体を包み込んだ。まるでリングは渦潮の中心にいるよう
だ。
『そんなもの!』
怒った夏姫と秋姫が、炎の蛇のような、火炎の嵐を繰り出してくる。
『蒸発させてやる!!』
炎の蛇は怒り、紅蓮の牙をむき出しながら、うねって、渦潮に噛み付いた。
じゅううう…‥
「げっ、やばいですよ、メデッタさん!」
ギゼーがメデッタのわき腹を小突いた。夏姫と秋の起こした熱風で、ギゼー
の赤茶色の髪がふわりと逆立っている。今、目の前は水蒸気で真っ白になって
いた。
「ホントに蒸発してるぜ!」
夏姫と秋姫の火炎はリングの渦潮に食い込み、その渦潮の水を徐々に蒸発さ
せつつあった。しかし、同じようにその黒い髪の毛を逆立て、腕を組み、前を
見据えるメデッタは冷静だった。
「ギゼー君、これはエンドじゃない」
メデッタの顔をさらりと熱風が撫でる。
「フィニッシュ、だよ」
『聖アルヴァンス伝より…。神は言われる。咎人には死を、死人には永久の安
らぎを、死体には花を』
どこからか朗々としたリングの声が響く。
「この声の感じ…」
何故か、ギゼーの体に鳥肌が立った。メデッタが呟く。
「<聖書>、か…」
『死体に顔は無く、顔のある死体は闇に返さん。我、咎人を闇に返さんとする
者なり』
言葉が終わると同時に、黄色い閃光が空中を走った。
ギゼーとメデッタ、二人の顔を撫でていた熱風が、少しずつやんできた。そ
れと同時に、霞が少しずつ晴れてくる。その霞の中からリングが現れた。その
手には一冊の本。
「終わりました」
彼女はまるで、手術でもしてきたかのように、言った。
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