PC:ギゼー、リング
NPC:水の鍵、影の男(声のみ)
場所:白の遺跡
--------------------------------------------------------------
水の鍵が既(すんで)の所で飛び移ったその地面は、インターバルだった。
「どうやら、装置と装置の間には、必ず一息つける場所が用意されているようだ
な」
「インターバル、というやつですね。某アスレチック大会で有名な」
「某アスレチック大会?」
「え?知らないんですか?地上の何所かに、“アスレチック村”というのが有っ
て、其処で毎年行われる恒例行事だそうですよ。本に載っていました」
得意満面の笑顔で言うリングがその時読んだ本は、“面白本”だった。
――う、嘘くせぇ~。
ギゼーが口に出せない言葉を思惟の奔流に流しながらも水の鍵の方を見遣る
と、既に水の鍵は次の仕掛けに取り掛かる所だった。
水の鍵の目前には、今までに無かった鉄の柱―一地域では土管と呼ばれる物が
聳え立っていた。
「にゅー!」
水の鍵は、何やら得体の知れない掛け声を上げると、自分の身長よりも遥かに
高い土管を抱えるように徐に両手を付き、体を上方向に伸ばした。水の鍵の身体
は水そのもので来ている。水がジェル状に固まった物に意志の片鱗が芽生えた物
が、水の鍵の今の状態なのだ。詰まる所、水の鍵が身体を伸ばすとどうなるか。
たった今ギゼーとリングが目の当たりにしている光景が、その答えである。
即ち、水の鍵の身体の胴体に当る部分―“もう一つの鍵”が封入されている部
分が棒状に伸び上がったのだ。中身の“鍵”の長さは変わらないが、水の鍵の身
体は今や土管の天辺に手が届くほどの高さになっていた。
身体を棒状に伸ばし天辺に手が届くようになった水の鍵は、今度は身体を土管
の縁に擦り付けるように横に伸ばし、同時に足の部分を頭部に引き付け縮めた。
そして―水の鍵は、見事に土管の上に昇る事が出来たのだった。
「べっ、便利な奴だなぁ~」
ギゼーが感心し、妙な感想を述べる。
隣でリングがにこにこ顔で、水の鍵の動きを観察していた。その顔は、何時か
自分もやってやろうと言う思いがいっぱい詰まっていた…。
◆◇◆
土管の下は、空洞になっていた。
空洞といっても、足を降ろすべき地面は確かにあるようだ。時たま奥の方から
響いてくる地鳴りの様な音が、不気味さを強調していたが。
「はい!以上、水の鍵さんの視点で御送りしましたぁ!」
「?リングちゃん、誰に言ってるんだ??」
リングの言うように、土管の中身はリングやギゼーからは見えない構造になっ
ていた。土管の中に入ってしまえば、水の鍵の判断だけが頼り、という趣向のよ
うだ。彼を信じるしかない、とギゼーは思った。手には汗を握り、喉は唾を嚥下
する。そうは思っても、自分でも信じ切れない部分というものがあるのだ。
『でも、信じなくては。信じるんだ。君達には、それしか出来ないんだからね』
何処からとも無く響いて来た、影の男の声に一瞬びっくりして、周囲を見回す
ギゼー。だが、影の男は何処にも見当たらなかった。
影の男はなぜか、ギゼーやリングの心の動揺を察知して、的確に指摘してく
る。それがなぜかは解らないが、先程の言葉―信じることしか出来ない―も的を
射ていた。
(?なぜだ?)
ギゼーが疑問を胸に仕舞い込んでいる時、水の鍵もまた胸に決意を抱いてい
た。
土管の下に飛び込む決意を―。
NPC:水の鍵、影の男(声のみ)
場所:白の遺跡
--------------------------------------------------------------
水の鍵が既(すんで)の所で飛び移ったその地面は、インターバルだった。
「どうやら、装置と装置の間には、必ず一息つける場所が用意されているようだ
な」
「インターバル、というやつですね。某アスレチック大会で有名な」
「某アスレチック大会?」
「え?知らないんですか?地上の何所かに、“アスレチック村”というのが有っ
て、其処で毎年行われる恒例行事だそうですよ。本に載っていました」
得意満面の笑顔で言うリングがその時読んだ本は、“面白本”だった。
――う、嘘くせぇ~。
ギゼーが口に出せない言葉を思惟の奔流に流しながらも水の鍵の方を見遣る
と、既に水の鍵は次の仕掛けに取り掛かる所だった。
水の鍵の目前には、今までに無かった鉄の柱―一地域では土管と呼ばれる物が
聳え立っていた。
「にゅー!」
水の鍵は、何やら得体の知れない掛け声を上げると、自分の身長よりも遥かに
高い土管を抱えるように徐に両手を付き、体を上方向に伸ばした。水の鍵の身体
は水そのもので来ている。水がジェル状に固まった物に意志の片鱗が芽生えた物
が、水の鍵の今の状態なのだ。詰まる所、水の鍵が身体を伸ばすとどうなるか。
たった今ギゼーとリングが目の当たりにしている光景が、その答えである。
即ち、水の鍵の身体の胴体に当る部分―“もう一つの鍵”が封入されている部
分が棒状に伸び上がったのだ。中身の“鍵”の長さは変わらないが、水の鍵の身
体は今や土管の天辺に手が届くほどの高さになっていた。
身体を棒状に伸ばし天辺に手が届くようになった水の鍵は、今度は身体を土管
の縁に擦り付けるように横に伸ばし、同時に足の部分を頭部に引き付け縮めた。
そして―水の鍵は、見事に土管の上に昇る事が出来たのだった。
「べっ、便利な奴だなぁ~」
ギゼーが感心し、妙な感想を述べる。
隣でリングがにこにこ顔で、水の鍵の動きを観察していた。その顔は、何時か
自分もやってやろうと言う思いがいっぱい詰まっていた…。
◆◇◆
土管の下は、空洞になっていた。
空洞といっても、足を降ろすべき地面は確かにあるようだ。時たま奥の方から
響いてくる地鳴りの様な音が、不気味さを強調していたが。
「はい!以上、水の鍵さんの視点で御送りしましたぁ!」
「?リングちゃん、誰に言ってるんだ??」
リングの言うように、土管の中身はリングやギゼーからは見えない構造になっ
ていた。土管の中に入ってしまえば、水の鍵の判断だけが頼り、という趣向のよ
うだ。彼を信じるしかない、とギゼーは思った。手には汗を握り、喉は唾を嚥下
する。そうは思っても、自分でも信じ切れない部分というものがあるのだ。
『でも、信じなくては。信じるんだ。君達には、それしか出来ないんだからね』
何処からとも無く響いて来た、影の男の声に一瞬びっくりして、周囲を見回す
ギゼー。だが、影の男は何処にも見当たらなかった。
影の男はなぜか、ギゼーやリングの心の動揺を察知して、的確に指摘してく
る。それがなぜかは解らないが、先程の言葉―信じることしか出来ない―も的を
射ていた。
(?なぜだ?)
ギゼーが疑問を胸に仕舞い込んでいる時、水の鍵もまた胸に決意を抱いてい
た。
土管の下に飛び込む決意を―。
PR
トラックバック
トラックバックURL: