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PC ギゼー リング (ジュヴィア) 場所 旧ラオウ邸ベランダ
NPC メデッタ=オーシャン
-いもうとの にんぎょひめは 海の 上へ むかいました。
海の 上には 大きな ふねが うかんで いました-
今宵は大きな満月が空に浮かんでいた。その光が優しく白亜の豪邸・・・旧
ラオウ邸を照らす。その豪邸のベランダに、リングとギゼーの二人はいた。二
人とも会話もなく、大理石の手すりにもたれかかって月を見上げている。
二人とも考えていることはただ一つ、・・・ジュヴィアのことについてだ。
「あのう・・・」
先に話しかけたのはリングの方だった。長いまつげを伏せ、戸惑いがちに、
リングは尋ねる。
「あの・・・、非常にお聞きしづらいことなのですが・・・、その・・・」
ぱっとギゼーの顔を見つめてリングは言った。
「ギゼーさんは、ジュヴィアさんをどうお思いになりましたか?・・・その、
例えばですよ・・・、恐ろしいとか・・・、お思いになりましたでしょう
か・・・?」
「・・・リングちゃんは?」
「えっ?」
逆に聞き返されて、リングは戸惑った。ギゼーも、リングの顔を見据えて言
う。
「リングちゃんは、ジュヴィアちゃんをどう思った?」
その眼差しは妙に真摯だった。月光にギゼーの瞳が光って見える。
「私は・・・」
リングは少し目線を下にそらした。そして、おもむろに月を見上げる。月光
がリングを神秘的に照らす。
「・・・人間は、自分と質が異なるものを、排除するという傾向があると聞き
ました。ですから、人間はジュヴィアさんのような方をあまり受け入れようと
しませんよね・・・」
しかし、リングは月光の中で柔らかく笑った。
「・・・でも、私は海竜族ですから、関係ありません。ジュヴィアさんがどん
な種族であろうと、お優しいジュヴィアさんであることに変わりはありません
ですし」
それを見て、ギゼーはふっと安堵したように笑った。
「俺も、そう思う」
「えっ!ギゼーさんも海竜族だったのですか!?そうとは知らず私・・・」
「なっ、違うって!そうじゃなくって、俺もリングちゃんと同じ風に考えてた
ってこと!」
「・・・ふふ、冗談ですよ」
そう言って不意に柔らかい笑みを自分に向けたリングに、ギゼーは戸惑っ
た。第一、リングの口から「冗談」という言葉を聞けたのが驚きだ。
「私、ギゼーさんがそう言って下さると信じていました。ギゼーさんは、誰か
を種族で差別するような方ではないですからね」
そう言ってリングは、ふわっとした笑みをギゼーに向けた。夜風に髪の毛が
さらりとなびく。・・・その整った笑みは知性的な人間の笑みだ。優しさを、
仄かに醸し出すような笑み。
(う・・・っ)
その笑みにギゼーはちょっぴりどきっとして、顔をそらした。
(いかんいかん、こんな男か女かわかんないヤツにドキッとしてどうするん
だ、俺!)
「?」
その隣ではリングが不思議そうな顔をしている。・・・相変わらず、天然なリ
ングであった。
「これから、ギゼーさんはどうなされるんですか?」
「ん?」
「トレジャーハンターのお仕事をお受けになられたりはしないのですか?」
「仕事?ああ、そういえばあったな、仕事が」
思い出したようにギゼーはぽんっと手をうった。どうやら、ここしばらくの
忙しさに仕事をすっかり忘れていたようだ。
「実はな、情報屋・・・君も知ってるセルな、あいつから、有力なお宝の情報
を手に入れたんだ」
「わあ、それはすごいです!どのようなお宝ですか?」
「ふふん、それはな・・・<竜の爪>っていうんだ」
得意げなギゼーとは対照的に、それを聞いたリングの表情がすっと変わっ
た。<竜の爪>・・・その名からいってそれが<竜を加工したもの>である可
能性は高い。自分を<レアアイテム>という忌まわしい名で呼んだラオ・コー
ンが、リングの脳裏に浮かんだ。
「ギゼーさんっ!それは一体どのようなお宝ですか!!」
いきなり必死な表情でリングはギゼーの胸倉をつかんだ。
「わっ・・・!わ・・っ!ちょっと、リングちゃん??」
「お願いです!どうか教えてください!!」
「わっ、わかったから・・・!放せよっ!」
はっとして、リングはギゼーの服を放した。
「す・・・すみません・・・」
「全く・・・、いきなりどうしたんだ・・・?」
「すみません・・・」
謝るだけで、リングは訳を話そうとはしない。ギゼーはふうっとため息をつく
と、袋から一枚の紙を取り出した。
「なんでも、竜の爪っていうのは、古の王国の王冠のことだそうだ。その王冠
は美しいだけじゃなく、竜の魔力が眠っているらしいぜ・・。でも、俺がセル
から聞いたのは、その王国が「エキドナ」って名前っていうことぐらいで、あ
とはアイツにこの地図を渡されただけだ」
ギゼーから受け取り、リングはその地図を見た。
「これは・・・、ここ、ソフィニアの地図のようですね」
地図はあるひとつの場所に赤でバツ印がつけられている。
「それ、ある人間の家の場所を示しているらしいけど、なんでも、俺よりソイ
ツのほうがそのことについては詳しいだろうから、俺が紹介しておくからソイ
ツに詳しい情報を聞けって。・・・全く、無責任だよな。何でもソイツ、<竜
のアイテム>についてはかなり詳しいらしく・・・」
「あのう、・・・とても言いづらいのですが」
リングがおどおどした目をギゼーに向けた。
「何だ?」
「この地図が示す場所って・・・、ここなんですけど・・・」
「!」
ギゼーはリングから地図を奪い取るとまじまじと見つめた。指で地図の道のり
をなぞる。
「・・・本当だ」
「・・・本末転倒ですね」
はぁぁぁぁ・・・と、ギゼーは豪快なため息をついた。
「全く、よりによってコイツかよ・・・。ま、今となってはこんなヤツから情
報なんてもらいたくもないけどな」
「でも、これで情報がもらえなくなってしまいましたね。どうするんです
か・・・、ギゼーさん?」
「本っ当、どうしようかな、俺・・・」
そういってギゼーがぼりぼりと頭を掻き毟ったその時、
すわっと、何者かが目の前でジャンプし、目の前の手すりの上にタトン、とい
う音をたてて降り立った。その者の着ている黒いマントがぶわっと、風になび
いて翻る。
「その情報は興味深いねぇ・・・。よければ私がいい情報を教えてあげましょ
うか?」
「!!」
この人物の突然の登場に、二人は後ろに下がると、きっと身構えた。リングは
ファイティングポーズをとり、ギゼーは袋に手を伸ばす。すると、その人物は
おいおいおいといった様子で手をぶんぶんと振った。
「ちょっと、誤解しないでもらいたいな。私はリングに用があってここに来た
だけなんだ。・・・久しぶりだね、リング。会いたかったよ」
しかし、リングはその人物に見覚えがない。
「貴方、何故私の名前を!!何者です!」
その言葉に、相手はちょっとびっくりしたようだった。
「まさか、私が判らないのかい??・・・まあ、この姿では無理ないか。リン
グ、私だよ、・・・メデッタだ」
とたんにリングの目が大きく見開かれた。
「えっ・・・もしかして、メデッタ伯父様ですか!!」
その人物は苦笑した。
「・・・だからその、<伯父様>はやめるように言っているだろう。リング」
PC ギゼー リング (ジュヴィア) 場所 旧ラオウ邸ベランダ
NPC メデッタ=オーシャン
-いもうとの にんぎょひめは 海の 上へ むかいました。
海の 上には 大きな ふねが うかんで いました-
今宵は大きな満月が空に浮かんでいた。その光が優しく白亜の豪邸・・・旧
ラオウ邸を照らす。その豪邸のベランダに、リングとギゼーの二人はいた。二
人とも会話もなく、大理石の手すりにもたれかかって月を見上げている。
二人とも考えていることはただ一つ、・・・ジュヴィアのことについてだ。
「あのう・・・」
先に話しかけたのはリングの方だった。長いまつげを伏せ、戸惑いがちに、
リングは尋ねる。
「あの・・・、非常にお聞きしづらいことなのですが・・・、その・・・」
ぱっとギゼーの顔を見つめてリングは言った。
「ギゼーさんは、ジュヴィアさんをどうお思いになりましたか?・・・その、
例えばですよ・・・、恐ろしいとか・・・、お思いになりましたでしょう
か・・・?」
「・・・リングちゃんは?」
「えっ?」
逆に聞き返されて、リングは戸惑った。ギゼーも、リングの顔を見据えて言
う。
「リングちゃんは、ジュヴィアちゃんをどう思った?」
その眼差しは妙に真摯だった。月光にギゼーの瞳が光って見える。
「私は・・・」
リングは少し目線を下にそらした。そして、おもむろに月を見上げる。月光
がリングを神秘的に照らす。
「・・・人間は、自分と質が異なるものを、排除するという傾向があると聞き
ました。ですから、人間はジュヴィアさんのような方をあまり受け入れようと
しませんよね・・・」
しかし、リングは月光の中で柔らかく笑った。
「・・・でも、私は海竜族ですから、関係ありません。ジュヴィアさんがどん
な種族であろうと、お優しいジュヴィアさんであることに変わりはありません
ですし」
それを見て、ギゼーはふっと安堵したように笑った。
「俺も、そう思う」
「えっ!ギゼーさんも海竜族だったのですか!?そうとは知らず私・・・」
「なっ、違うって!そうじゃなくって、俺もリングちゃんと同じ風に考えてた
ってこと!」
「・・・ふふ、冗談ですよ」
そう言って不意に柔らかい笑みを自分に向けたリングに、ギゼーは戸惑っ
た。第一、リングの口から「冗談」という言葉を聞けたのが驚きだ。
「私、ギゼーさんがそう言って下さると信じていました。ギゼーさんは、誰か
を種族で差別するような方ではないですからね」
そう言ってリングは、ふわっとした笑みをギゼーに向けた。夜風に髪の毛が
さらりとなびく。・・・その整った笑みは知性的な人間の笑みだ。優しさを、
仄かに醸し出すような笑み。
(う・・・っ)
その笑みにギゼーはちょっぴりどきっとして、顔をそらした。
(いかんいかん、こんな男か女かわかんないヤツにドキッとしてどうするん
だ、俺!)
「?」
その隣ではリングが不思議そうな顔をしている。・・・相変わらず、天然なリ
ングであった。
「これから、ギゼーさんはどうなされるんですか?」
「ん?」
「トレジャーハンターのお仕事をお受けになられたりはしないのですか?」
「仕事?ああ、そういえばあったな、仕事が」
思い出したようにギゼーはぽんっと手をうった。どうやら、ここしばらくの
忙しさに仕事をすっかり忘れていたようだ。
「実はな、情報屋・・・君も知ってるセルな、あいつから、有力なお宝の情報
を手に入れたんだ」
「わあ、それはすごいです!どのようなお宝ですか?」
「ふふん、それはな・・・<竜の爪>っていうんだ」
得意げなギゼーとは対照的に、それを聞いたリングの表情がすっと変わっ
た。<竜の爪>・・・その名からいってそれが<竜を加工したもの>である可
能性は高い。自分を<レアアイテム>という忌まわしい名で呼んだラオ・コー
ンが、リングの脳裏に浮かんだ。
「ギゼーさんっ!それは一体どのようなお宝ですか!!」
いきなり必死な表情でリングはギゼーの胸倉をつかんだ。
「わっ・・・!わ・・っ!ちょっと、リングちゃん??」
「お願いです!どうか教えてください!!」
「わっ、わかったから・・・!放せよっ!」
はっとして、リングはギゼーの服を放した。
「す・・・すみません・・・」
「全く・・・、いきなりどうしたんだ・・・?」
「すみません・・・」
謝るだけで、リングは訳を話そうとはしない。ギゼーはふうっとため息をつく
と、袋から一枚の紙を取り出した。
「なんでも、竜の爪っていうのは、古の王国の王冠のことだそうだ。その王冠
は美しいだけじゃなく、竜の魔力が眠っているらしいぜ・・。でも、俺がセル
から聞いたのは、その王国が「エキドナ」って名前っていうことぐらいで、あ
とはアイツにこの地図を渡されただけだ」
ギゼーから受け取り、リングはその地図を見た。
「これは・・・、ここ、ソフィニアの地図のようですね」
地図はあるひとつの場所に赤でバツ印がつけられている。
「それ、ある人間の家の場所を示しているらしいけど、なんでも、俺よりソイ
ツのほうがそのことについては詳しいだろうから、俺が紹介しておくからソイ
ツに詳しい情報を聞けって。・・・全く、無責任だよな。何でもソイツ、<竜
のアイテム>についてはかなり詳しいらしく・・・」
「あのう、・・・とても言いづらいのですが」
リングがおどおどした目をギゼーに向けた。
「何だ?」
「この地図が示す場所って・・・、ここなんですけど・・・」
「!」
ギゼーはリングから地図を奪い取るとまじまじと見つめた。指で地図の道のり
をなぞる。
「・・・本当だ」
「・・・本末転倒ですね」
はぁぁぁぁ・・・と、ギゼーは豪快なため息をついた。
「全く、よりによってコイツかよ・・・。ま、今となってはこんなヤツから情
報なんてもらいたくもないけどな」
「でも、これで情報がもらえなくなってしまいましたね。どうするんです
か・・・、ギゼーさん?」
「本っ当、どうしようかな、俺・・・」
そういってギゼーがぼりぼりと頭を掻き毟ったその時、
すわっと、何者かが目の前でジャンプし、目の前の手すりの上にタトン、とい
う音をたてて降り立った。その者の着ている黒いマントがぶわっと、風になび
いて翻る。
「その情報は興味深いねぇ・・・。よければ私がいい情報を教えてあげましょ
うか?」
「!!」
この人物の突然の登場に、二人は後ろに下がると、きっと身構えた。リングは
ファイティングポーズをとり、ギゼーは袋に手を伸ばす。すると、その人物は
おいおいおいといった様子で手をぶんぶんと振った。
「ちょっと、誤解しないでもらいたいな。私はリングに用があってここに来た
だけなんだ。・・・久しぶりだね、リング。会いたかったよ」
しかし、リングはその人物に見覚えがない。
「貴方、何故私の名前を!!何者です!」
その言葉に、相手はちょっとびっくりしたようだった。
「まさか、私が判らないのかい??・・・まあ、この姿では無理ないか。リン
グ、私だよ、・・・メデッタだ」
とたんにリングの目が大きく見開かれた。
「えっ・・・もしかして、メデッタ伯父様ですか!!」
その人物は苦笑した。
「・・・だからその、<伯父様>はやめるように言っているだろう。リング」
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