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PC リング ギゼー ジュヴィア 場所 ソフィニア<天界格闘場>
NPC ラオウ(ラオ・コーン) ケン ジン リンダ バッティ
-アンタの「王子様」なんか、一生見つかるわけないじゃない。
-アンタみたいな「怪物」にはねッ!!!アハハハッ!!!
ゴスッ!!!
リングの拳がケンのみぞおちにクリーンヒットした。ケンがぐふっ、ともが
ふっ、とも聞こえる音を出して石畳の上にどっと倒れる。
「・・・だから言ったじゃないですか。貴方はもう死んでいる、と」
リングが冷たい瞳で、倒れた相手を見つめる。・・・と、それは一瞬で。
「すっ、すみません・・・っ、痛かったですよねっ!!」
次の瞬間、リングはケンの前に屈みこみ、ケンを介抱する。
「すみませんっ・・・!これが戦いじゃなければ、私・・・っ・・」
半ば涙目でそう言いながら、リングはケンの額にぬれタオルを当てたりして、
かいがいしくケンを介抱する。自らが今倒した相手なのに、である。その態度
の違いに、周りで見ていた人間は唖然とする。ちなみに、ケンだけが特別な扱
いなワケではなく、さっき倒したジンのときもリングは同じような行動をとっ
ていた。つまり、これで二度目なワケだ。
「・・・リングって変なヤツだな。強いんだか、弱いんだか」
「・・・本当ね」
すでに回復したリンダとバッティがそう言い交わす。
すると、ニヤニヤしながらリングの背後に誰かが近づいた。
「・・・何ですか」
リングは振り返り、不信な表情でその者を見つめる。その視線の先には、気
味が悪いほどの笑みを浮かべながらリングを見下ろす、ラオウがいた。
「さすがだな、リング。さすが<海竜族>なだけはある。君の方からはほとん
ど攻撃せずに二人に勝ったな」
「なぜ今更、私の種族を持ち出すんです?」
その言葉に、リングはきっとした表情でラオウを見つめた。ラオウが魔物だと
いうことにリングは未だ気づいてはいない。しかし、何故だか、今のラオウの
言葉にリングは本能的に「悪意」のようなものを感じ取ったのだ。竜族である
が故の勘というものだろうか。
「何故だって?」
そんなリングに、ラオウは余裕の笑みを見せる。
「君の<身体>が欲しいからだ。リング」
そう言うと、ラオウの身体は突然、むくむくと大きくなり始めた。同時に、
着ていた服がビリビリッと裂け、裂けたところから黒いもしゃもしゃとした毛
が生え始める。頭には角が生え、目が横長に大きくなり赤みを帯びる。
「な・・・っ!!!」
バッティやリンダが驚いて見つめる中、ラオウの身体は巨大な「魔物」と化し
ていた。
「ファッハッハッハッ、驚いただろう?私の正体は魔族・・・」
「・・・魔族ラオ・コーンですね。ランクで言えば中級に属します」
「ぐっ・・・」
自分のセリフをリングに先に言われたラオウことラオ・コーンは、言葉に詰ま
った。
「・・・っ、キサマっ!人のセリフをとるんじゃないっ!!」
「すみませんっ!私、地上はそういうルールだとは知らなくて・・・。私、以
前<地上の魔族達>という本で見たことがあったものですから、つい・・・」
敵の魔族にぺこぺこと謝るリング。つくづくなさけないヤツである。
「・・・まあいい、今頃は、娘のユリアがキサマの仲間の精気を吸い尽くした
頃だろう」
その言葉に、とたんにリングの顔がさあっと青ざめる。
「・・・っギゼーさんとジュヴィアさんに何かなさったのですか!」
「ふふっ、君は知らないだろうが、私たちの種族の好物は<人間の精気>で
ね。・・・今頃、君のお仲間はミイラになってるだろうよ」
「なっ・・・!」
リングの顔が今度は土気色になった。ギゼーの笑顔が、ジュヴィアの静かな横
顔が、リングの脳裏に浮かぶ。二人とも、簡単にやられる人物ではないことは
解っているとはいえ、大切な二人が、今、生命の危機にさらされているなん
て・・・。
「そんな・・・、そんな、ラオ・コーンさん!本当に、そんな酷い事を!」
目に涙を溜めて、リングはラオ・コーンを見つめる。
「ふっ・・・、敵にさんづけられたのは初めてだが・・・、とにかく、今まで
の戦いで、君に<水属性>があることが解った。水属性は、確か<地属性>に
弱いはずだな。そして幸運にも、私の使う魔法は・・・」
言うと、ラオ・コーンは地面に拳を叩きつけた。叩きつけた拳の先から、土柱
がほとばしる。それをリングはとっさに水でガードしたが、
「がぁ・・・っ・・!!」
土柱の攻撃をもろに受けて、リングの肩にざっくりとした切り傷ができた。そ
れを見たラオ・コーンがにやりと笑う。
「ごらんのとおり、地属性だ、君の使う水に強い、な」
「くっ・・・」
リングは唇をかんだ。地属性の魔法に自分が弱いのは事実だ。
(どうしましょう・・・!このままでは、私に勝ち目は・・・!!)
考えている間にも、ラオ・コーンは土柱を撃ってくる。隙がないので、間の長
い「聖書」は、使えない。使っている間に土柱が自分を直撃する。リングは必
死に攻撃をかわすことしか出来なかった。
「何故ですか!ラオ・コーンさん!」
ラオ・コーンの攻撃をかわしながら、リングが叫んだ。
「何故、私の身体を狙うのです!」
「・・・これでも私は<商人>なものでね。君も知っての通り、竜族は高値で
売れる。いわゆる、<レアアイテム>だな。竜族は<金より高い>と言われる
ぐらいのな」
ラオ・コーンはそう言って笑みを浮かべる。・・・その言葉が、あまりの忌ま
わしさに、竜族の中で禁忌とされていることを知っての言葉だ。その言葉でリ
ングの怒りに火がついた。
「竜族に向かって、その言葉を、使わないでくださいっ!!!」
「ふははっ!キサマもすぐに金に換えてやる、リング!」
「誰が貴方などに!!!」
リングがそう言った瞬間、
「あっ!!!」
土柱に一瞬リングは足を取られた。すかさず、土柱がリングを襲う!
そのときだった、
ガッという物音が聞こえ、リングがはっと目を開けると、ジンとケンの二人が
自分の目の前に跪いていた。二人の腹には深い切り傷が、痛々しいほどについ
ている。
「ジンさん!ケンさん!!」
「ふっ、怪我はないみたいだな、リング」
ジンが血を吐きながら、こんな状況でさえキザっぽく言う。
「あんな魔物に君をやらせたりしないさ・・・」
傷をかばい、跪くケン。そんな二人を見て、忌々しそうにラオ・コーンが叫
ぶ。
「ちっ、邪魔しやがって!今度はキサマらも一緒に!」
そのとき、ラオ・コーンの上空にリンダとバッティが浮かぶ。
「風よ!切り裂け!!」
「炎よ!我の手に!!」
二人を見つけたリングの目が点になった。
「駄目です!二人とも!!」
しかし、二人の魔法はラオ・コーンの強靭な肉体にあっけなく跳ね返され、逆
に、ラオ・コーンは二人の腕をつかむと、地面に思いっきり叩きつける。
「がふっ!!」
「あうっ!!」
「リンダさん!バッティさん!!」
リングが泣きそうになって叫ぶ。
(そんな・・・っ、皆さん、私をかばってこんな目に・・・!!)
ラオ・コーンはその様子をめ見て、忌々しさをあらわにして言う。
「どいつもこいつもふざけやがって・・・。こうなったら、ここにいるヤツら
全員殺してやる!・・・まずはキサマだ、<レアアイテム>!」
ブチッ
その時、リングの中で何かが切れた。リングは、すっと立ち上がる。髪と瞳
が・・・、青に変化する。瞳は怒りですうっと細くなり、ラオ・コーンを冷た
く見つめる。
「この・・・、忌々しい、下種が・・・!」
吐き捨てるようにリングは言う。
「貴様の姿を見るのも、不愉快だ。・・・死ね、下等魔族」
その姿に、リングを取り巻く状況が変わっていないにもかかわらず、ラオ・コ
ーンは戦慄を覚えた。何より、リングの口調と態度が180度違う。ラオ・コ
ーンは何故か、直感した。・・・自分はコイツに、勝てない。
息を切らしてかけつけたギゼーとジュヴィアが見たものは、全身に血を浴び
てたたずむリングと、その横にある<肉塊>だった。
「・・・リングちゃん?」
「あ・・・、ジュヴィアさん・・・、ギゼーさん・・・」
二人を視界に捕らえたリングは無理して笑みを作った。色も性格も元に戻って
いる。
「あの・・・、すみません・・・、この方が魔物で、私を襲ってきたもので、
つい、倒してしまいました・・・、二人とも無事だったのですね。よかったで
す・・・」
倒された魔物は、もはや原形をとどめていなかった。
(リングちゃん・・・、いったいどういう倒し方をしたんだ・・・?)
なにより、こんな倒し方は普段のリングからは想像出来ないほど残酷だ。二人
の脳裏に疑問の感情が、残った。
PC リング ギゼー ジュヴィア 場所 ソフィニア<天界格闘場>
NPC ラオウ(ラオ・コーン) ケン ジン リンダ バッティ
-アンタの「王子様」なんか、一生見つかるわけないじゃない。
-アンタみたいな「怪物」にはねッ!!!アハハハッ!!!
ゴスッ!!!
リングの拳がケンのみぞおちにクリーンヒットした。ケンがぐふっ、ともが
ふっ、とも聞こえる音を出して石畳の上にどっと倒れる。
「・・・だから言ったじゃないですか。貴方はもう死んでいる、と」
リングが冷たい瞳で、倒れた相手を見つめる。・・・と、それは一瞬で。
「すっ、すみません・・・っ、痛かったですよねっ!!」
次の瞬間、リングはケンの前に屈みこみ、ケンを介抱する。
「すみませんっ・・・!これが戦いじゃなければ、私・・・っ・・」
半ば涙目でそう言いながら、リングはケンの額にぬれタオルを当てたりして、
かいがいしくケンを介抱する。自らが今倒した相手なのに、である。その態度
の違いに、周りで見ていた人間は唖然とする。ちなみに、ケンだけが特別な扱
いなワケではなく、さっき倒したジンのときもリングは同じような行動をとっ
ていた。つまり、これで二度目なワケだ。
「・・・リングって変なヤツだな。強いんだか、弱いんだか」
「・・・本当ね」
すでに回復したリンダとバッティがそう言い交わす。
すると、ニヤニヤしながらリングの背後に誰かが近づいた。
「・・・何ですか」
リングは振り返り、不信な表情でその者を見つめる。その視線の先には、気
味が悪いほどの笑みを浮かべながらリングを見下ろす、ラオウがいた。
「さすがだな、リング。さすが<海竜族>なだけはある。君の方からはほとん
ど攻撃せずに二人に勝ったな」
「なぜ今更、私の種族を持ち出すんです?」
その言葉に、リングはきっとした表情でラオウを見つめた。ラオウが魔物だと
いうことにリングは未だ気づいてはいない。しかし、何故だか、今のラオウの
言葉にリングは本能的に「悪意」のようなものを感じ取ったのだ。竜族である
が故の勘というものだろうか。
「何故だって?」
そんなリングに、ラオウは余裕の笑みを見せる。
「君の<身体>が欲しいからだ。リング」
そう言うと、ラオウの身体は突然、むくむくと大きくなり始めた。同時に、
着ていた服がビリビリッと裂け、裂けたところから黒いもしゃもしゃとした毛
が生え始める。頭には角が生え、目が横長に大きくなり赤みを帯びる。
「な・・・っ!!!」
バッティやリンダが驚いて見つめる中、ラオウの身体は巨大な「魔物」と化し
ていた。
「ファッハッハッハッ、驚いただろう?私の正体は魔族・・・」
「・・・魔族ラオ・コーンですね。ランクで言えば中級に属します」
「ぐっ・・・」
自分のセリフをリングに先に言われたラオウことラオ・コーンは、言葉に詰ま
った。
「・・・っ、キサマっ!人のセリフをとるんじゃないっ!!」
「すみませんっ!私、地上はそういうルールだとは知らなくて・・・。私、以
前<地上の魔族達>という本で見たことがあったものですから、つい・・・」
敵の魔族にぺこぺこと謝るリング。つくづくなさけないヤツである。
「・・・まあいい、今頃は、娘のユリアがキサマの仲間の精気を吸い尽くした
頃だろう」
その言葉に、とたんにリングの顔がさあっと青ざめる。
「・・・っギゼーさんとジュヴィアさんに何かなさったのですか!」
「ふふっ、君は知らないだろうが、私たちの種族の好物は<人間の精気>で
ね。・・・今頃、君のお仲間はミイラになってるだろうよ」
「なっ・・・!」
リングの顔が今度は土気色になった。ギゼーの笑顔が、ジュヴィアの静かな横
顔が、リングの脳裏に浮かぶ。二人とも、簡単にやられる人物ではないことは
解っているとはいえ、大切な二人が、今、生命の危機にさらされているなん
て・・・。
「そんな・・・、そんな、ラオ・コーンさん!本当に、そんな酷い事を!」
目に涙を溜めて、リングはラオ・コーンを見つめる。
「ふっ・・・、敵にさんづけられたのは初めてだが・・・、とにかく、今まで
の戦いで、君に<水属性>があることが解った。水属性は、確か<地属性>に
弱いはずだな。そして幸運にも、私の使う魔法は・・・」
言うと、ラオ・コーンは地面に拳を叩きつけた。叩きつけた拳の先から、土柱
がほとばしる。それをリングはとっさに水でガードしたが、
「がぁ・・・っ・・!!」
土柱の攻撃をもろに受けて、リングの肩にざっくりとした切り傷ができた。そ
れを見たラオ・コーンがにやりと笑う。
「ごらんのとおり、地属性だ、君の使う水に強い、な」
「くっ・・・」
リングは唇をかんだ。地属性の魔法に自分が弱いのは事実だ。
(どうしましょう・・・!このままでは、私に勝ち目は・・・!!)
考えている間にも、ラオ・コーンは土柱を撃ってくる。隙がないので、間の長
い「聖書」は、使えない。使っている間に土柱が自分を直撃する。リングは必
死に攻撃をかわすことしか出来なかった。
「何故ですか!ラオ・コーンさん!」
ラオ・コーンの攻撃をかわしながら、リングが叫んだ。
「何故、私の身体を狙うのです!」
「・・・これでも私は<商人>なものでね。君も知っての通り、竜族は高値で
売れる。いわゆる、<レアアイテム>だな。竜族は<金より高い>と言われる
ぐらいのな」
ラオ・コーンはそう言って笑みを浮かべる。・・・その言葉が、あまりの忌ま
わしさに、竜族の中で禁忌とされていることを知っての言葉だ。その言葉でリ
ングの怒りに火がついた。
「竜族に向かって、その言葉を、使わないでくださいっ!!!」
「ふははっ!キサマもすぐに金に換えてやる、リング!」
「誰が貴方などに!!!」
リングがそう言った瞬間、
「あっ!!!」
土柱に一瞬リングは足を取られた。すかさず、土柱がリングを襲う!
そのときだった、
ガッという物音が聞こえ、リングがはっと目を開けると、ジンとケンの二人が
自分の目の前に跪いていた。二人の腹には深い切り傷が、痛々しいほどについ
ている。
「ジンさん!ケンさん!!」
「ふっ、怪我はないみたいだな、リング」
ジンが血を吐きながら、こんな状況でさえキザっぽく言う。
「あんな魔物に君をやらせたりしないさ・・・」
傷をかばい、跪くケン。そんな二人を見て、忌々しそうにラオ・コーンが叫
ぶ。
「ちっ、邪魔しやがって!今度はキサマらも一緒に!」
そのとき、ラオ・コーンの上空にリンダとバッティが浮かぶ。
「風よ!切り裂け!!」
「炎よ!我の手に!!」
二人を見つけたリングの目が点になった。
「駄目です!二人とも!!」
しかし、二人の魔法はラオ・コーンの強靭な肉体にあっけなく跳ね返され、逆
に、ラオ・コーンは二人の腕をつかむと、地面に思いっきり叩きつける。
「がふっ!!」
「あうっ!!」
「リンダさん!バッティさん!!」
リングが泣きそうになって叫ぶ。
(そんな・・・っ、皆さん、私をかばってこんな目に・・・!!)
ラオ・コーンはその様子をめ見て、忌々しさをあらわにして言う。
「どいつもこいつもふざけやがって・・・。こうなったら、ここにいるヤツら
全員殺してやる!・・・まずはキサマだ、<レアアイテム>!」
ブチッ
その時、リングの中で何かが切れた。リングは、すっと立ち上がる。髪と瞳
が・・・、青に変化する。瞳は怒りですうっと細くなり、ラオ・コーンを冷た
く見つめる。
「この・・・、忌々しい、下種が・・・!」
吐き捨てるようにリングは言う。
「貴様の姿を見るのも、不愉快だ。・・・死ね、下等魔族」
その姿に、リングを取り巻く状況が変わっていないにもかかわらず、ラオ・コ
ーンは戦慄を覚えた。何より、リングの口調と態度が180度違う。ラオ・コ
ーンは何故か、直感した。・・・自分はコイツに、勝てない。
息を切らしてかけつけたギゼーとジュヴィアが見たものは、全身に血を浴び
てたたずむリングと、その横にある<肉塊>だった。
「・・・リングちゃん?」
「あ・・・、ジュヴィアさん・・・、ギゼーさん・・・」
二人を視界に捕らえたリングは無理して笑みを作った。色も性格も元に戻って
いる。
「あの・・・、すみません・・・、この方が魔物で、私を襲ってきたもので、
つい、倒してしまいました・・・、二人とも無事だったのですね。よかったで
す・・・」
倒された魔物は、もはや原形をとどめていなかった。
(リングちゃん・・・、いったいどういう倒し方をしたんだ・・・?)
なにより、こんな倒し方は普段のリングからは想像出来ないほど残酷だ。二人
の脳裏に疑問の感情が、残った。
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