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2025/03/10 06:59 |
23.<少年>リング/リング(果南)
◆――――――――――――――――――――――――――――
PC ギゼー ジュヴィア リング  場所 ソフィニア 天界格闘場
NPC ラオウ ケン ユリア ジン バッティ リンダ

-にんぎょひめは 十五さいの たんじょう日が くると、
           うみの 上に 出ることが ゆるされて いました-


「えっと、次は私の番ですね・・・」
 身体から静かに怒りオーラを発しているジュヴィアをちらっとみて、リング
がいそいそと場内に進み出た。
 リングには、ジュヴィアの態度が急に変わった理由が解らなかった。ジュヴ
ィアが苦しんでいるときも、ただただおろおろとして見ている事しかできなか
った。そんな自分がとても、情けなくて悔しい。・・・私はもっと、誰かに頼
られるような存在になりたいのに。
(何故でしょう。何故、ジュヴィアさん、急にあんな・・・)
 考える度、ジュヴィアのことが不安で、心配になってくる。しかし、今は目
の前に次の対戦相手、ジンがいる。戦うことは好きではないが、今は戦わなけ
ればならない。
(仕方ありません。ジュヴィアさんのことは後で考えましょう)
 リングは一つ深呼吸をすると、戦うことに精神を集中させた。
「相手をさせていただきます、リングです。宜しくお願いします」
 そう言って、リングはぴしっと礼をする。礼儀正しく接することが、相手に
対する最低限のマナーだと、幾度も教えられてきた結果だ。
 すると、
「ああっ・・」
 突然、ジンが自分の額を押さえてよろけた。
「あのっ!どうなさいました?」
 驚いたリングがジンの傍に駆け寄ると、
「美しい・・・」
 突然、そう言ってリングの手を握るジン。
「ええ?」
「ああ、運命というのは残酷なものだ・・・。リング・・・、こんなに美しい
君と戦わなければならないなんて・・・。駄目だ、僕には出来ない!君と戦う
なんて!でも、僕は友人を裏切るわけにはいけない・・・。ああ、なんて残酷
な運命なんだ・・・」
「???」
 リングは訳がわからない、という顔でジンを見つめている。どうやら、リン
グはこの手の話はかなりうといようだ。しかし、ジンの言葉が、妙に芝居がか
かっていて訳がわからないというのも原因だろう。
「なあ、アイツ、アレで一応・・・、告白、してるんだよな?」
 不審そうな顔で、ギゼーが隣にいるジュヴィアに尋ねる。ジュヴィアは不機
嫌を未だ引きずっているため、冷たく答えた。
「さあ・・・、あんな男の心理なんて、解りたくもありません」
 ジュヴィアとギゼーが会話している間も、リングはリングなりに今の状況を
考えていた。ジンが何を言いたいのかはよくわからないが、とりあえず、ジン
がここまで何かに困っているのを放ってはおけない。
「えと・・・、つまり、私が今の姿のままでは、戦うのに不都合だとおっしゃ
りたいのですか?」
 おずおずとリングは尋ねた。
「ああ、そうだ、君のその姿はもはや罪・・・」
「あいつ・・・」
 ギゼーがその言葉を聞いてため息をついた。
「言ってることが、メチャクチャだな・・・。っていうか、馬鹿・・・」
「・・・私もそう思います。本当に、馬鹿な奴・・・」
 珍しく意気投合するジュヴィアとギゼーだった。
「そうなんですか?解りました」
 しかし、リングは何故か、その言葉に納得したように頷いた。
「そうですよね。本にも書いてありました。普通、地上の男は女に乱暴をはた
らかないものだと。やはりここはフェアに、<男同士>で、戦うべきですよ
ね」
 その言葉に今度はジンが不思議そうな顔をした。
「えっ・・・?<男同士>って、一体・・・?」
「解りました、少し待っててください」
 言うと、リングはすっと目を閉じ、胸に手を重ねた。とたんにリングの身体
から、まばゆい金色の光が飛び出す。
「!!!」
 その場にいた人々は息をのんだ。光の中で、リングの肩幅が広くなり、胸が
なくなり、顔つきが変わっていく。
「さあ、これで大丈夫ですよ?」
 身体を取り巻く光が消え、そう言った声は、少し低音がかかっていた。リン
グの身体は、・・・男のそれに変わっていたのだ。
 黒目黒髪の、眼鏡の似合う、知的なイメージは変わらないが、顔つきは、い
わゆる、「医者になったらかっこいい」タイプに変わっていた。唖然としてい
る全員の視線をよそに、リングはにっこりと微笑む。
「これで、フェアに戦えますね、ジンさん」
「ちょっ、ちょっと待て!リングちゃん!」
 ギゼーが観客席から呼び止めた。
「リングちゃん!君、まさか・・・男だったのか!?それとも、男に変身する
ことが出来るのか?」
「残念ながら、どちらもハズレです」
 自分の方に振り向いたリングの印象があまりに違うので、思わずギゼーはど
きっとする。
「知らなかったですか?竜族は一般的に、二十歳まで性別が存在しないんで
す。ですから、私はいわゆる<男>でも<女>でもないんですね。だから、変
身する際、私は男にも女にもなれるんです。でも、私は女の姿のほうが好きで
すから、いつもは女の姿で通してるんです」
 言うとリングはあらためて、ジンのほうに向き合った。
「さあ、準備は整いました。戦いましょう」
 ジンは唖然としていたが、それもつかの間、
「ふ・・・ふふっ・・・騙してたんだね、君は私を・・・」
 引きつった笑みをリングに向ける。
「え?」
「君は私の・・・、純粋な恋心を踏みにじって・・・、精神的ダメージを与え
たつもりか・・・、しかし、私はそんなことに負けたりはしない・・・」
 ジンは不敵ににやりと笑うと言った。
「そうだ、これで対等に戦うことが出来る・・・。君には・・・、感謝する
よ・・・。これでもう、恋心に惑わされることもないのだからな」
「???」
 自分はジンと対等に戦うために変身したのに、ジンは何故か、あまり喜んで
はいないことを、リングは不思議に思った。しかも、何か勘違いをしているよ
うだ。
(まあ、いいでしょう、戦うことが目的なのですから。誤解は後から解けばよ
いことですし)
 そう勝手に思い、リングはファイティングポーズをとった。
「では、用意はいいですか。戦いましょう」


 その言葉と同時に、リングがあらかじめ戦闘用に用意してあった、樽いっぱ
いの水が樽からざばあっと飛び出し、ベールのようにリングを包み込む。
「ふん、そんなこけおどし、私には通用しない!」
 そう言うと、猛烈な勢いで、ジンがリングに向かってくる。
「はああああっっ!!!」
 そして、強烈なパンチを繰り出してきた。しかし、リング、両腕でそれをし
っかりとガードする。
「!?」
その時に、ジンは気づいた。
自分の拳と、リングの腕の間に水の「膜」が出来ている。膜というより、その
厚い幅、鉄のような硬さから言えばむしろ「壁」だった。それが、リングの守
備を硬くし、ダメージを大幅に減らしている。
「くそっ!!!」
ジンはパンチを連打するが、リングの操る水の「壁」のせいで思うようにダメ
ージが与えられない。しかもその水は、リングの身体の傍を絶対に離れない。
そのすばやい動きにぴったりとついてくるのだ。
「くそっ!!!」
パンチを繰り出しながらジンは叫んだ。
「くそっ!!ナメやがって!!!」


「ギゼーさん」
ふと、振り向くと、ギゼーの背後にいつの間にかユリアが立っていた。優しい
笑みを浮かべ、ギゼーを見つめている。
「おっ、おう、何だ?」
「ギゼーさん、実は、少しお話があるのです。私と一緒に来ていただけないで
しょうか?」
 そのユリアを、ジュヴィアが冷たい目で見つめた。その視線に気づいたユリ
アが尋ねる。 
「・・・何でしょう?」 
「・・・いえ、別に。気にしないでください」
そう言って、ジュヴィアはユリアから目をそらした、しかし、内心は、ざわざ
わとした、不吉な予感を感じていた。
(何か・・・、起こりそうな気がする・・・。ユリアという女に近づいたら、
何か・・・)
しかし、そんな確証もないことを口に出して、ギゼーを引き止めるなどという
ことはジュヴィアには出来ない。
「じゃあ、ジュヴィアちゃん、俺、ちょっと行ってくるな。リングちゃんの応
援、頼むぜっ!」
そう言って、ギゼーはユリアとともに行ってしまった。ジュヴィアはそんな二
人の後ろ姿をじっと見つめた。
(私の予感が・・・、当たらなければいいのですが・・・)
 ジュヴィアがそう思って後ろ姿を見つめていたとき、ユリアは内心、ギゼー
を横目で見ながら、ほくそえんでいた。
(これで、カモがまた一人、増えたわね・・・)
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2007/02/14 22:54 | Comments(0) | TrackBack() | ●ギゼー&リング

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