◆――――――――――――――――――――――――――――
PC:ギゼー ジュヴィア リング
NPC:ラオウ ユリア ケン ジン バッティ リンダ
場所:天界格闘場
----------------------†----------------------
ごめんなさい。貴方のことを殺さずにはいられない。
「よしっ!先ずはカル~ク緒戦勝利ッ!」
ギゼーの明るい声が閑古鳥鳴く闘技場に響いた。立派な建物はたったの8人の
人物しか収容していないが、これも贅沢のうちなのだろうか。何時の間にか審
判席に座ったラオウがずるずると気絶したリンダを連行していく。
「……愚かな人…」
ジュヴィアが眉間に皺を寄せたまま瞳を閉じてため息を吐いた。何だかさっき
までの自分の憤りは奇麗に収束してしまいそうだった。
その男が名乗りを上げるまでは。
「ラオウ様!」
一瞬、心臓が大きく跳ね上がった。
――銀の髪。
立ち上がって片手を天に向けていたその男は、銀の長い髪を風に靡かせながら
不適に笑っていた。整った顔立ちの、その男。
――るしうす
忌まわしい記憶が彼女の思考を支配する。
――あめのよる
そう、雨の夜、私はあの塔で
――まのがき
「いやぁ…ッ!」
幽かな慟哭に喉を衝かれ、ジュヴィアは全身から激情が溢れ出してくるのを感
じていた。頭の中にあるのはただ一つ、あの夜の記憶。
尋常でないジュヴィアの様子にギゼーとリングは慌てて駆け寄った。
「ジュヴィアさん!?どうなさったんです!?」
肩を掴んでリングが呼びかけるが、目は虚ろなままだ。何が起きたのか――二
人には解らなかった。ただ、ジュヴィアにとって耐え難い何かが、突然彼女を
襲ったとしか思えなかった。
「ジュヴィアちゃん!聞こえるか?どうした?」
――まさか、あいつら。
ギゼーはキッとケン達のほうを睨んだ。何かの小細工でジュヴィアを戦えなく
させたのか?十二分に有り得た。巨大な斧を背負うジュヴィアは普通の少女に
は見えない。主要な戦力と見なされ封じられてしまった可能性は高い。
「何てことしやがる!」
ギゼーが声を張り上げたが、ジンというその銀髪の美青年は気にも留めずに
ラオウに語り掛けた。
「ラオウ様、正直なところこの試合は余りにも結果が見えすぎています。解り
きったことを証明するのに無駄な時間を費やすのは愚かの極みです。私は、
可及的速やかにこの試合を終わらせるべく、第二回戦を……」
そこで言葉を区切り、ギゼー達の方を見やりながら再びニヤリと笑った。
「第二回戦を、私とあの小さな娘とで開催するという案を提言させていただく」
小さな娘、と言われ、リングが驚愕の表情を浮かべる。何かに脅えている今の
ジュヴィアを試合に出せと言うのか!?
その思いはギゼーも同じだったらしく、彼は再び声を張り上げた。
「てめえら!彼女が今戦えないのを知ってて言ってやがるな!」
だが、その言葉にジンは心外だ、と言う風に肩を竦めてみせた。
「ご挨拶だな。我々は只、最も早く勝負をつけるべくお互いに主力をぶつけよ
う、と提案したまでのこと。その少女は君たちにとって主力となるのだろう?」
「何でお前らがそんなこと知ってるんだよ!」
ジンは人差し指を振って見せた。
「解らないかな?解らない方が幸せかもしれないね」
そう言うと、小馬鹿にしたように肩を竦める。
――こいつ…!
再び声を張り上げようとしたギゼーを押しとどめる声があった。
「ギゼーさん、何も言わないで下さい」
静かなその声は――
「ジュヴィア(さん)(ちゃん)!」
ギゼーとリングの声が同時に彼女の名を呼んだ。ジュヴィアはゆっくりと立ち上
がると、ジンを睨む。
「二回戦は貴方と私の対戦には絶対になりません」
憎しみさえ感じられる声で、ジュヴィアは堂々と言った。くるりとラオウの方
に向き直る。
「ラオウさん、貴方が組み合わせを決められるのなら、二回戦はあの少年と私に
なさって下さい」
「何を馬鹿なことを…」
異論を唱えようとするケンを、ジュヴィアはあの紫色の瞳でじっと見据えた。
「先ほどはあのリンダと言う少女が願いを聞き入れて貰いました。私たちだけが
その権利がないのは不平等です。力と力のぶつかり合いにはなりません」
それに…と一度口をつぐんでから、ジュヴィアは続ける。
「あの男と私がぶつかれば間違いなくあの男は死にます」
「死にッ…!」
「私は絶対に殺します。万に一つも狂いなく、確実に」
紫色の瞳が、ラオウへと移る。
「…良いだろう。こちらとしてもジン君のような優れた青年を失うのは存外だか
らな。それに、力のぶつけ合いが目的であって殺しが出るのは本意ではない」
「ラオウ様!?このような戯言をお聞きになるので…」
「黙りなさい」
ジュヴィアは場内へと足を踏み入れながら、背中の斧を振り下ろした。再びケン
を見据える。
「無駄な時間は取りたくありません」
あの瞳で見つめられ、ケンが言葉を失うのがギゼー達にも窺えた。しばらくし
て、おずおずとバッティが出てくる。
「お願いしま…」
ずん、と音がした。
お願いしますとバッティが言い終わる前に、ジュヴィアは斧の柄で彼の鳩尾を突
いていた。気を失ったバッティが地面へと倒れこむ。
その間、何秒もあっただろうか。
暫くの静寂の後に、リングが口を開いた。
「…ジュヴィアさん…本気で怒ってます…怒ってると言うより…憎んでいます…」
ジュヴィアはバッティを捨て置いてギゼー達の方へ戻ってくる。
「次はリングさんです…」
そのまま、ジンの方を鋭く睨んだのを二人は見ていた。
PC:ギゼー ジュヴィア リング
NPC:ラオウ ユリア ケン ジン バッティ リンダ
場所:天界格闘場
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ごめんなさい。貴方のことを殺さずにはいられない。
「よしっ!先ずはカル~ク緒戦勝利ッ!」
ギゼーの明るい声が閑古鳥鳴く闘技場に響いた。立派な建物はたったの8人の
人物しか収容していないが、これも贅沢のうちなのだろうか。何時の間にか審
判席に座ったラオウがずるずると気絶したリンダを連行していく。
「……愚かな人…」
ジュヴィアが眉間に皺を寄せたまま瞳を閉じてため息を吐いた。何だかさっき
までの自分の憤りは奇麗に収束してしまいそうだった。
その男が名乗りを上げるまでは。
「ラオウ様!」
一瞬、心臓が大きく跳ね上がった。
――銀の髪。
立ち上がって片手を天に向けていたその男は、銀の長い髪を風に靡かせながら
不適に笑っていた。整った顔立ちの、その男。
――るしうす
忌まわしい記憶が彼女の思考を支配する。
――あめのよる
そう、雨の夜、私はあの塔で
――まのがき
「いやぁ…ッ!」
幽かな慟哭に喉を衝かれ、ジュヴィアは全身から激情が溢れ出してくるのを感
じていた。頭の中にあるのはただ一つ、あの夜の記憶。
尋常でないジュヴィアの様子にギゼーとリングは慌てて駆け寄った。
「ジュヴィアさん!?どうなさったんです!?」
肩を掴んでリングが呼びかけるが、目は虚ろなままだ。何が起きたのか――二
人には解らなかった。ただ、ジュヴィアにとって耐え難い何かが、突然彼女を
襲ったとしか思えなかった。
「ジュヴィアちゃん!聞こえるか?どうした?」
――まさか、あいつら。
ギゼーはキッとケン達のほうを睨んだ。何かの小細工でジュヴィアを戦えなく
させたのか?十二分に有り得た。巨大な斧を背負うジュヴィアは普通の少女に
は見えない。主要な戦力と見なされ封じられてしまった可能性は高い。
「何てことしやがる!」
ギゼーが声を張り上げたが、ジンというその銀髪の美青年は気にも留めずに
ラオウに語り掛けた。
「ラオウ様、正直なところこの試合は余りにも結果が見えすぎています。解り
きったことを証明するのに無駄な時間を費やすのは愚かの極みです。私は、
可及的速やかにこの試合を終わらせるべく、第二回戦を……」
そこで言葉を区切り、ギゼー達の方を見やりながら再びニヤリと笑った。
「第二回戦を、私とあの小さな娘とで開催するという案を提言させていただく」
小さな娘、と言われ、リングが驚愕の表情を浮かべる。何かに脅えている今の
ジュヴィアを試合に出せと言うのか!?
その思いはギゼーも同じだったらしく、彼は再び声を張り上げた。
「てめえら!彼女が今戦えないのを知ってて言ってやがるな!」
だが、その言葉にジンは心外だ、と言う風に肩を竦めてみせた。
「ご挨拶だな。我々は只、最も早く勝負をつけるべくお互いに主力をぶつけよ
う、と提案したまでのこと。その少女は君たちにとって主力となるのだろう?」
「何でお前らがそんなこと知ってるんだよ!」
ジンは人差し指を振って見せた。
「解らないかな?解らない方が幸せかもしれないね」
そう言うと、小馬鹿にしたように肩を竦める。
――こいつ…!
再び声を張り上げようとしたギゼーを押しとどめる声があった。
「ギゼーさん、何も言わないで下さい」
静かなその声は――
「ジュヴィア(さん)(ちゃん)!」
ギゼーとリングの声が同時に彼女の名を呼んだ。ジュヴィアはゆっくりと立ち上
がると、ジンを睨む。
「二回戦は貴方と私の対戦には絶対になりません」
憎しみさえ感じられる声で、ジュヴィアは堂々と言った。くるりとラオウの方
に向き直る。
「ラオウさん、貴方が組み合わせを決められるのなら、二回戦はあの少年と私に
なさって下さい」
「何を馬鹿なことを…」
異論を唱えようとするケンを、ジュヴィアはあの紫色の瞳でじっと見据えた。
「先ほどはあのリンダと言う少女が願いを聞き入れて貰いました。私たちだけが
その権利がないのは不平等です。力と力のぶつかり合いにはなりません」
それに…と一度口をつぐんでから、ジュヴィアは続ける。
「あの男と私がぶつかれば間違いなくあの男は死にます」
「死にッ…!」
「私は絶対に殺します。万に一つも狂いなく、確実に」
紫色の瞳が、ラオウへと移る。
「…良いだろう。こちらとしてもジン君のような優れた青年を失うのは存外だか
らな。それに、力のぶつけ合いが目的であって殺しが出るのは本意ではない」
「ラオウ様!?このような戯言をお聞きになるので…」
「黙りなさい」
ジュヴィアは場内へと足を踏み入れながら、背中の斧を振り下ろした。再びケン
を見据える。
「無駄な時間は取りたくありません」
あの瞳で見つめられ、ケンが言葉を失うのがギゼー達にも窺えた。しばらくし
て、おずおずとバッティが出てくる。
「お願いしま…」
ずん、と音がした。
お願いしますとバッティが言い終わる前に、ジュヴィアは斧の柄で彼の鳩尾を突
いていた。気を失ったバッティが地面へと倒れこむ。
その間、何秒もあっただろうか。
暫くの静寂の後に、リングが口を開いた。
「…ジュヴィアさん…本気で怒ってます…怒ってると言うより…憎んでいます…」
ジュヴィアはバッティを捨て置いてギゼー達の方へ戻ってくる。
「次はリングさんです…」
そのまま、ジンの方を鋭く睨んだのを二人は見ていた。
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