PC:イカレ帽子屋、ウピエル
NPC:衛兵A、衛兵B、衛兵C、衛兵D
場所:断崖の国コモンウェルズ 宿屋~"病院"
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「コモンウェルズ、子供だけが焼死する謎の連続人体発火事件。
百年単位で数十件が頻発に起こり、そして外部調査の者達がことごとくこの国から事件を解決せずに忽然と……消え去っていることは、ご存知ですか?」
その言葉を皮切りに帽子屋によって語られた事件の真相は、ウピエルがいままで目にしてきたどんな事件よりも人間の執念の恐ろしさを感じさせた。
この国の王族は、ある意味どんな人間よりも人間らしく、そしてどんな化け物よりも化け物だ。
「んで、こんだけの情報をまさか無償で提供してくれるほどのお人よしじゃないよな?」
内心のイライラを誤魔化すかのようにウピエルは口を開いた。その目は相変わらずどこまでも挑発的に帽子屋を見ている。最も、帽子屋がそれを気にする様子はなかったが。
「実は私、情報収集がメインでしてね。戦力が欲しいんですよ」
カジノでディーラーをするだけに帽子屋のポーカーフェイスは堂に入っていて、そこから真意を読み取る事はできない。ウピエルはしばらく黙考し、決断をくだした。
逃げるという選択肢はないし、そもそも逃げるつもりもない。
「いーだろう。その話、乗った……ただし、一応裏は取らせてもらうけどな」
ウピエルの返事に、初めて帽子屋の顔に疑問の色が浮かぶ。
「裏を取る……?何をなさるおつもりですか」
訝しげに問う帽子屋にウピエルは思いっきり唇の端を吊り上げて見せた。
「忍び込むのさ。件の"病院"とやらにな」
◆☆★◇†☆◆◇★
夜の闇が濃くなるのを待って、彼らはある街の一角に移動した。
二人の目的地たる"病院"は所謂病気や怪我をした人を治療する場所とは少し違い、先ほどから馬車で緊急運送されている患者だけを収容する、専用の隔離病棟のような場所だ。
そして、先ほど宿屋で帽子屋が語った内容が真実であるのならば、ここはまさに執念が生んだ魔窟ともいえるべき場所でもある。
馬車が通れるような広い道の終着、岩壁に黒々と開けられている大きな洞窟のような入り口は、辺りに灯された松明の揺れる光源で見るとまるで化け物でも棲んでいそうな雰囲気を醸し出していた。
警備の兵が二人、入り口の両脇に待機している。もっとも、時間帯が時間帯なので時々船を漕いでしまっているのだが。
「それで、どうやって忍び込むんですか?」
大仰な仕草で"病院"の入り口を指差す帽子屋に、吸血鬼は人差し指をビシっと立てて見せた。
「案1、殴り倒して忍び込む」
冗談めかして言ってはいるが、ウピエルの目は笑っていない。
別に一切合財が力ずくである必要はないが、邪魔モノは手段を選ばず排除して進む。ウピエルはそういう思考を取る事が多かった。そして、この場合最も手軽なのは物理的に排除する事。信者を金で買収できるとは思えない。
「案2はなんですか?」
問う帽子屋の目の前に、ビッと二本目の指――中指が立つ。
「蹴り倒して忍び込む」
「倒す以外の選択肢はないんですか」
「ふむ……じゃあ物理的な衝撃でおねんねしてもらってから忍び込む、とかどうだ?」
速攻でダメ出しをする帽子屋に、ウピエルは少し考え、三つ目の案を出した。今度は先ほどとは違い、表情に苦笑の色が混ざっている。
「……言い方を変えただけではないですか」
大げさに嘆息し、首を横にふる。やれやれという声が聞こえてきそうな仕草を帽子屋は取った。
「じゃあどうしろってんだよ?」
手早く済ませる方法があるのに、何故わざわざ面倒な方法を模索しなければならないのか。さらに、ここで時間を無駄にする理由がウピエルには思い当たらなかった。自然と目つきは悪くなり、口調は荒くなっていく。
「貴方の"能力"を使えば問題なく通り抜けられるでしょう?」
「あー、残念ながらソイツは無理だ。俺様への対策でそうしたのか元々そういう仕様なのかはしらネェが、ここの国は岩ん中に精霊を飼ってやがってな。言うなれば今はソイツの腹ん中にいるみてぇなモンなのさ。そういう場所じゃあ使えねぇのさ、俺様の能力はな」
帽子屋の意見を聞いて、ウピエルは大きく嘆息した。巻き起こった少々の不安――もしかしてこの即席の相棒は関係無い人間は傷つけるなとかいいだす人間ではないだろうな――を打ち消して、その提案が無意味である事を説明する。
ならば、と帽子屋が口を開きかけた所で"病院"の奥から二人ほど武装した衛兵が出てきて、入り口を護っていた衛兵になにやら耳打ちをする。そして、四人でウピエルと帽子屋が隠れている方へと一直線に歩き始めた。
「……どうやらその壁の中の精霊とやらが監視の役目を果たしてるようですね」
相変わらず帽子屋は落ち着き払っており、特にあわてている様子はない。
「こうなったらもう文句はいわせネェぞ。強行突破あるのみ、だ」
忌々しそうにいいながらも、その表情は何処までも愉しそうに笑みを浮かべていた。
NPC:衛兵A、衛兵B、衛兵C、衛兵D
場所:断崖の国コモンウェルズ 宿屋~"病院"
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「コモンウェルズ、子供だけが焼死する謎の連続人体発火事件。
百年単位で数十件が頻発に起こり、そして外部調査の者達がことごとくこの国から事件を解決せずに忽然と……消え去っていることは、ご存知ですか?」
その言葉を皮切りに帽子屋によって語られた事件の真相は、ウピエルがいままで目にしてきたどんな事件よりも人間の執念の恐ろしさを感じさせた。
この国の王族は、ある意味どんな人間よりも人間らしく、そしてどんな化け物よりも化け物だ。
「んで、こんだけの情報をまさか無償で提供してくれるほどのお人よしじゃないよな?」
内心のイライラを誤魔化すかのようにウピエルは口を開いた。その目は相変わらずどこまでも挑発的に帽子屋を見ている。最も、帽子屋がそれを気にする様子はなかったが。
「実は私、情報収集がメインでしてね。戦力が欲しいんですよ」
カジノでディーラーをするだけに帽子屋のポーカーフェイスは堂に入っていて、そこから真意を読み取る事はできない。ウピエルはしばらく黙考し、決断をくだした。
逃げるという選択肢はないし、そもそも逃げるつもりもない。
「いーだろう。その話、乗った……ただし、一応裏は取らせてもらうけどな」
ウピエルの返事に、初めて帽子屋の顔に疑問の色が浮かぶ。
「裏を取る……?何をなさるおつもりですか」
訝しげに問う帽子屋にウピエルは思いっきり唇の端を吊り上げて見せた。
「忍び込むのさ。件の"病院"とやらにな」
◆☆★◇†☆◆◇★
夜の闇が濃くなるのを待って、彼らはある街の一角に移動した。
二人の目的地たる"病院"は所謂病気や怪我をした人を治療する場所とは少し違い、先ほどから馬車で緊急運送されている患者だけを収容する、専用の隔離病棟のような場所だ。
そして、先ほど宿屋で帽子屋が語った内容が真実であるのならば、ここはまさに執念が生んだ魔窟ともいえるべき場所でもある。
馬車が通れるような広い道の終着、岩壁に黒々と開けられている大きな洞窟のような入り口は、辺りに灯された松明の揺れる光源で見るとまるで化け物でも棲んでいそうな雰囲気を醸し出していた。
警備の兵が二人、入り口の両脇に待機している。もっとも、時間帯が時間帯なので時々船を漕いでしまっているのだが。
「それで、どうやって忍び込むんですか?」
大仰な仕草で"病院"の入り口を指差す帽子屋に、吸血鬼は人差し指をビシっと立てて見せた。
「案1、殴り倒して忍び込む」
冗談めかして言ってはいるが、ウピエルの目は笑っていない。
別に一切合財が力ずくである必要はないが、邪魔モノは手段を選ばず排除して進む。ウピエルはそういう思考を取る事が多かった。そして、この場合最も手軽なのは物理的に排除する事。信者を金で買収できるとは思えない。
「案2はなんですか?」
問う帽子屋の目の前に、ビッと二本目の指――中指が立つ。
「蹴り倒して忍び込む」
「倒す以外の選択肢はないんですか」
「ふむ……じゃあ物理的な衝撃でおねんねしてもらってから忍び込む、とかどうだ?」
速攻でダメ出しをする帽子屋に、ウピエルは少し考え、三つ目の案を出した。今度は先ほどとは違い、表情に苦笑の色が混ざっている。
「……言い方を変えただけではないですか」
大げさに嘆息し、首を横にふる。やれやれという声が聞こえてきそうな仕草を帽子屋は取った。
「じゃあどうしろってんだよ?」
手早く済ませる方法があるのに、何故わざわざ面倒な方法を模索しなければならないのか。さらに、ここで時間を無駄にする理由がウピエルには思い当たらなかった。自然と目つきは悪くなり、口調は荒くなっていく。
「貴方の"能力"を使えば問題なく通り抜けられるでしょう?」
「あー、残念ながらソイツは無理だ。俺様への対策でそうしたのか元々そういう仕様なのかはしらネェが、ここの国は岩ん中に精霊を飼ってやがってな。言うなれば今はソイツの腹ん中にいるみてぇなモンなのさ。そういう場所じゃあ使えねぇのさ、俺様の能力はな」
帽子屋の意見を聞いて、ウピエルは大きく嘆息した。巻き起こった少々の不安――もしかしてこの即席の相棒は関係無い人間は傷つけるなとかいいだす人間ではないだろうな――を打ち消して、その提案が無意味である事を説明する。
ならば、と帽子屋が口を開きかけた所で"病院"の奥から二人ほど武装した衛兵が出てきて、入り口を護っていた衛兵になにやら耳打ちをする。そして、四人でウピエルと帽子屋が隠れている方へと一直線に歩き始めた。
「……どうやらその壁の中の精霊とやらが監視の役目を果たしてるようですね」
相変わらず帽子屋は落ち着き払っており、特にあわてている様子はない。
「こうなったらもう文句はいわせネェぞ。強行突破あるのみ、だ」
忌々しそうにいいながらも、その表情は何処までも愉しそうに笑みを浮かべていた。
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