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2024/05/17 03:15 |
1.ウクレレレレのレ?・<帽子屋→断崖>/イカレ帽子屋(Caku)
PC@イカレ帽子屋
NPC@ 知人男性・仲間(三月兎・壊れたら元に戻らない者)
場所@ とある部屋の一室 → コモンウェルズ


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その手紙の最初の一行は、まったくもって不吉極まりないハジマリであった。

『吸血鬼が吸血鬼を呼び寄せた』

目を走らせると、幾つかの国家の紋章と代表者のサイン。
最後に当てつけるように一言。

「<速やかに調査・原因究明されたり>……こちらの事情などお構いなしです
か」

「事が動いたのは三十年振りだからな、この機会…逃すわけにはいかないだろ
う」

とある国家でも、高官の位置にある知人は指を組んで沈黙した。
『イカレ帽子屋』はシルクハットを目深く被っており、その表情はうかがい知
れない。
彼にだって、人間的な知人の幾人かはいる。両手で数えるぐらいしかいないの
であるが。
彼に手紙を持ってきたのは、そんな彼の友人の中でも良識的な部類に入る男性
あった。

「正直、お前の今の相棒…アダム君といったか?彼に依頼したかったのだが」

「諸事情で今別件を抱えていましてね、それに少々彼には向かない依頼です
ね」

最高級の紙で出来たソレを適当にあしらい、机の上に放り投げる。
一瞬、高官の警護官数名が頬を凍らせて引き攣ったが、すぐに見かけだけは冷
静を保つ。

「向く者など限られているよ、こればかりは」

「ではなおさらですよ、アダム・ザインは人間です。
そして、相手は謎の吸血鬼や鳳凰信仰を隠れ蓑にした化け物、人ではありませ
ん。
人には身分相応というものがある」

今年で47歳となる知人は、少しだけ笑った。
喪服色の友が、いつになく相手を考えて発言しているのだから。

「だが、調べただけでも事は二十数件…おそらく掘り下げていけばもっと増え
るだろう。
これ以上犠牲者を出すわけにもいかん。内部で何をやっているかさえ見当つか
んのでは」

「見当は、ついているのでしょう?」

この文面のハジマリを見るに、おそらく皆薄々は感づいているはずだ。
例え何が起こっているかはわからずとも、被害者は二度と戻ってこないという
事だけは。
だから、こんなにも仰々しい威嚇文章で警告している。
この依頼を断りでもしたら、お前やお前の仲間がどうなるんだろうな と。

「うちは情報屋や仲介、錬金といったサポートの集団ですよ?
…どうしてこうも、肉体系の依頼ばかり来るんでしょうねぇ………」

珍しく嘆かわしいとばかりに、彼は首を振った。

「まあ、今回はな。
お前に少しでも情というものがあるなら、この友の願いを聞き届けてくれるだ
ろう?」

「それは金貨の量で判断しましょうか、友情に見合う価値を用意して頂ける
と?」

友は、少しだけ破顔した。

「魅力的な物言いだな」

「大体の友情は金貨で成り立つと、もっぱらの人の噂ですから」


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剣色にも似た鋭い銀髪の青年は、満面の笑みで<ソレ>を掲げた。

「どう?これは結構自信あるよー」

滑らかな皮の表紙。
名刺二つ分程度の黒い皮、二つ折りを開くと金色の文章が光る。
なにか難解な文字文を見せびらかすように、彼は『イカレ帽子屋』に振り返
る。

「偽造パスにしては、見栄えも良いですね」

「でしょ?こう見えても、僕錬金術師だし。国の発行してる通行書ぐらい偽造
は完璧だよ」

肩に青い鳥を乗せたエルフの青年が浮かれ口調で自慢している。
それを胡散臭い笑顔で適度に流しつつ、鞄に旅に必要なものを詰め込んでい
く。
同じく胡散臭く見つめるのは、窓枠に寄りかかった美少女。なぜかウサ耳。

「通行書が完璧でも、持ってる奴が超胡散臭い」

「まあ、それは僕の力をもってしても不可能だからねぇ。
神様に作られた人間を作りかえるってのは錬金術の禁忌だし、ねえハッタ
ー?」

「それは遠回しに私が社会不適合者と言いたいのですか?」

銀髪の青年は、笑顔で手をひらひらと振った。
見た目は十台半ばだが、エルフという事と錬金術の腕前からして結構な年齢か
もしれない。

「いや、社会不敵合者みたいな?」

三日月に裂けた微笑を浮かべて、彼はエルフの青年から偽造通行書を受け取っ
た。
飴色にまで使い込まれた美しい鞄を閉め、ソファーにかけていた杖を手に取
る。
その杖を見て、美少女は嫌そぉな顔をした。
その杖には、細剣が仕込まれていている。見た目も中身も一級品だ。
『イカレ帽子屋』は、少女の顔に気がついて面白そうに微笑む。この仕込み
杖、それを製作したのは若干12歳にして天才の名を欲しいままにしていた当
時の少女だ。

「似合いますか?」

「超最悪」

かつてコンビを組んでいた二人とは思えない険悪さ。
室内の気温が下がるような雰囲気だが、二人もそしてエルフの青年ですら気に
してない。
第三者がこの空間にいれば、窒息死しそうだ。

「断崖の世界、コモンウェルズねぇ……僕も言ったこと無いけど、すっごい閉
鎖的なんだって?」

「大体、そういう依頼が一番厄介なのよ。
国が絡むとろくなことないのに…まあ、アタシは顔を見るだけで嫌な奴がしば
らく消えるからいいけど」

二人の会話を背にして、扉に歩み寄る。
帽子掛けにかけてあるのは、いつものシルクハット。
目深く被る前に、彼はそのあざとい青い瞳を動かして、仲間に留守を頼んだ。

「では、留守中は気をつけて」

「うん、『イカレ帽子屋』も気をつけて」

「相手が気をつけたほうがいいと思うけど」

それぞれの挨拶は、扉の閉まる音と三日月色の微笑みで終了した。


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鳳凰信仰国、コモンウェルズ。
『イカレ帽子屋』は神を認めてはいるが信じてはいない。
この起伏の激しい大地、変わりやすい山の天候、厳しい生活を余儀なくされる
山の中。
宗教を軸としなければ、人は乗り越えていけなかっただろう。

神に縋ることに、どこか空しいと知っていても。
人は支えを求めるものだ。神という大きすぎる支えならば、何百もの人を支え
られるのだろう。
現実世界が支えられることは、ないと知っていても。


「ここが、かの有名なコモンウェルズですか」

強く吹き付ける風は、山間を駆け下りていく。
茶色の町並みは、岸壁をくり貫いて作られた山地独特の景観だ。
民族衣装の強い服装の人々、幹が太く背が低い針葉の街路樹、そして風の音と
天に近い空の青。

コモンウェルズ。
それは閉じられた断崖の国、空に近い箱庭の世界。

「初めまして、切り立つ岸壁の国よ。そして悔いるがいい、贄の祭壇よ」


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2007/02/11 22:59 | Comments(0) | TrackBack() | ●イカレウクレレレレレノレ

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