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2024/05/19 04:48 |
イェルヒ&ジュリア8/ジュリア(小林悠輝)
キャスト:ジュリア
場所:ソフィニア
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「くだらなくなんかないぞ! 壮大な浪漫が詰まってるんだから!」

 何故か態度を一変させて今にも掴みかかってきそうな勢いで叫ぶ男に気圧されたというわけではないが、唾が飛んできそうだったので、ジュリアは半歩、後ろに退いた。

「使い方によっては国だって手に入れられる必殺アイテムだ!」

 それは無理だろう。
 言っても聞いてくれそうになかったので黙っておく。

 往来で堂々と馬鹿馬鹿しいことから物騒なことまで絶叫できる男の度胸と情熱――というか考えのなさというか思い込みというか――にはただただ感心するばかりだ。

「……違うな、寒心だ」

「何が?」

 どうでもいい呟きはしっかりと聞き取られた。
 ジュリアは肩を竦めて歩き出す。男は「だから待とうってば」などといいながら手首を掴んできた。

 悲鳴でも上げてみようか。今は官憲がピリピリしているようだから、ちょっとした不審者も問答無用で連れて行ってくれるかも知れない。

 とはいえ、わざわざそんなものに関わって夜間外出を咎められても気分が悪い。他にもたくさん出歩いている人はいるのだから。そして、多少のことならば問題なく対処できるつもりでいるから平気でここにいるわけなのだから。

 どんな格好のいいことを言ったって、クールを決めこんだって、少しくらいの驕りがなければ、ハンターなんてやっていけない。持論に過ぎないが。

「っていうか、なんでついてくるの」

「野良犬に噛まれたと思って」

「野良犬以下!」

 思わず声を荒げてしまってから、ジュリアは顔をしかめる。クールを気取るつもりなど毛頭ないとはいえ、他人に対して感情を露にするのはあまり好まない。

「ひどいなぁ」

 傷ついた、といわんばかりに男は肩をすくめる。大仰というよりも滑稽なその仕草を横目にしながらジュリアは決心した。くだらないかも知れないが、踏みとどまるための儀式といっていいくらいに重要なことを。

 ――即ち。絶対に、名前だけは訊いてやらない。

「そいえばオレってばクラークっていう」

 撃沈。しかも悪意がなさそうだから始末が悪い。
 なんとなく泣きたい気分になりかけながら、ジュリアは「そう」とだけ頷いた。

「仲良くなったところでレッツ遺跡」

「地図はっ?!」

 一方的に名乗っただけで仲良くなったと称すのはもちろん問題外だと思うが、それよりも大きなツッコミどころがある。少なくとも三つくらい思いつける。
 でも、反射的に叫び返したのはそれだけだった。

 男はここが往来であるということを忘れたように――あるいは最初から気づいていなかったように、ばっと両手を広げて、顔を輝かせて言った。

「盗んだからには、あいつもあの恐ろしい魔剣を狙っているに違いない!
 待ち伏せて捕まえればいいじゃないかーあ」

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2007/02/10 16:43 | Comments(0) | TrackBack() | ●もやしーず

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