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2024/05/19 22:00 |
イェルヒ&ジュリア33/イェルヒ(フンヅワーラー)
キャスト:ジュリア  イェルヒ
場所:魔法都市ソフィニア -公園
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 老人が、いた。
 その目は鋭い形を作っており、鼻も鷲のくちばしのように精悍で、眉山の傾斜も険しい。しかし、なによりも、その刻まれた顔面の皺が、彼の人生の厳しさを語っている。
 しかし、老人の切れ長のまぶたに収まっている目には、虚ろな鈍い光が宿っていた。
 老人は、椅子にだらしなく背を預け、空中を眺めていた。
 数ヶ月前、彼の伴侶が、突然神の御許へ召されてからというものの、彼のこの時間が増えた。
 老人の伴侶は、彼とは違い、いつもニコニコ笑っていた。無愛想でしかめっ面の彼に、笑顔で話しかけてくれたことのありがたさが、今になってわかった。
 老人は、仕事で、その厳しさを自分にも他にも求め、成果を得て、評価をされた。そして、そうやって勤勉に働き、長いことかけて貯めた財産で、小さな公園の近くに豪邸とは呼べないものの、立派な一軒家を建てた。昼間には子供達の声が聞こえる場所だ。子供に恵まれなかった彼ら老夫婦には、ささやかな安らぎを与えてくれた。
 しかし、今ではその声も、老人の心には響かなかった。あの安らぎは、ニコニコと笑いながら彼の隣で一緒に聞いてくれる者がいなければ、届かないものだったのだと、老人はぼんやりと気づいた。
 それを思って、ふいに、涙が出るか、と彼は覚悟した。だが、涙は出てこなかった。それがまた悲しかった。
 彼の肌のように枯れ果てた目に、大きな食器棚が映った。その中には、2人暮らしには似つかわしくないほど、大量の皿がつんである。
 彼の伴侶は、いつも、誰に対してでも笑顔だった。近所づきあいも広く、よく、いろんな人をこの家に招待して、彼女の趣味の料理の作品を披露していた。時には異国の料理も作るほど、彼女の好奇心とチャレンジ精神は旺盛だった。それらが、いつもあの大量の皿に載せられ、テーブルにところ狭しと並べられ、大勢の人々が談笑しながら食していた。
 時折、その時間は無口で人付き合いが苦手な老人にとっては苦痛な時間であったが、今思えば、あの時が一番幸せだった時間なのかもしれない、と老人は大量の皿を眺めてそう思った。
 なぜならば、あの時の彼の伴侶の笑顔は、本当に楽しそうだったからだ。

「あなたは駄目ですよ。そりゃぁ、おいしいとか、まずいとか言ってくれるいいアドバイザーですけどね。
 だって、あなた、何を食べても同じしかめっ面なんですもの」

 老人の伴侶は、そう言っては、困ったように、だけども本当におかしそうにコロコロと少女のように笑った。

 神は残酷だ。
 そりゃぁ彼女のような素晴らしい人を、自分の近くに置いておきたい気持ちは分かる。彼女といれば、わずかな事柄でさえも喜びを感じられ、幸せを心に灯してくれる。
 だが、神は、我々人間の時間の、神の存在に比べれは一瞬の時間さえも、削ってまで奪ったのだ。
 神に慈悲というものがあれば、あんなあっけない死を与えなくてもいいではないか。せめて、別れを告げる時間くらい……。

 彼は椅子から、のろのろと立ち上がった。そして、食器棚から皿を取り出した。
 客人はもう来ない。来たとしても、老人には料理を振舞うことができない。そして、なにより、彼女がいない。
 ならば、この皿は不要だ。

 皿を両手でつかみ、頭の上に高く掲げる。
 床に叩きつけようとした瞬間、窓から赤い光が差し込んだ。

 そういえば、と老人はそこで初めて気づいた。
 外が騒がしい。なにかの嬌声が聞こえる。子供の声ではない、大人の声だ。
 笑い声も聞こえる。狂ったような、しかし本当に楽しそうな、子供のような笑い方だ。
 老人は窓を覗いた。公園には多くの人が集まって騒いでいた。そしてその中心には、なにやらキャンプファイヤーをして、料理を作っている様子だった。
 老人は、皿を落とした。高く上げられていた手はすでに下ろされていたので、皿は割れることなく、ごわんごわんと間抜けな音を出しながら、縁で円を描いてのん気に回った。
 そこで、老人は、気づいた。
 彼は、涙を流していたのだった。

 枯れた身体から熱い一滴が、床に落ちて滲んだ。

 キャンプファイヤーで作られている料理は、よく彼の伴侶が作ってくれた、メニューだった。






 宙を舞い、跳ね踊る金色の米。
 熱々に炊かれた米が、溶き卵によって全体を均一に包まれ、米がふやかされる間も無く、瞬時に熱によってコーティングされた米だけが出せる色鮮やかで輝きさえ放っている色合い。
 その米の踊る様は、一つ一つが独立して自由を唄ってるかのようだった。これが、主義主張理想などの概念を遥かに超えた、誇りある真の自由だと。
 それは、もはやそれだけで食の芸術品だといえる代物だった。
 長年料理をするもの特有の、分厚い皮に覆われた指先から、白くきらめく塩が大胆にも鍋の大海へ撒かれる。その動作に不安など無い。まるで何かの舞のように優雅であった。
 次に、機敏に小刻みにたんたんたん、と手首のスナップをきかせ、胡椒が振り撒かれる。胡椒の刺激的な香りが、一気に食欲を増進させる。
 ふいに、チャーシューが肉汁を振りまきながら青空へと跳んだ。
 そこに、すぐさま炎をまとった包丁が一閃するかしないかの軌跡が見えた途端、程よく煮込まれたチャーシューは小さくサイコロ状にカットされ、太陽の光を一身に浴びて喜びの音と香りを立てながら金色の米の海原に泳ぎ出す。
 一見、わずかにでも触れてしまえば煮汁があふれ出そうなそのチャーシューは、実は肉が固くならない程度のギリギリの境界を見極めてのラインで、断面が焼かれており、その旨みのこめられた汁を、肉を構成している一つ一つの隙間に閉じ込めている。
 チャーシューを投入してから、炒められる時間はほんのわずかだ。熱しすぎてせっかくの絶妙な肉のタイミングを崩してはいけない。すぐに白ネギのみじん切りが入れられる。ネギの独特な香りがまだ散っておらず、それは刻みたてだということがすぐにわかる。
 白ネギは高温の鉄なべの中ですぐさま、香ばしい匂い発する。そして白ネギは飴色に変わり、その香ばしい匂いに、野菜が熱せられたときにしか出ない甘みが加えられる。その小さい破片にぎっしりと自然な甘みを含んだものは、綺麗に放物線を描き、再び鍋へ戻り、また放物線を描き、再び鍋へ戻る繰り返しの中で笑っていた。
 鼻腔をくすぐるそのなんともいえない香りは米へと移っていき、一体化する。そう、まさにここは豊穣の海。
 その香りが引き出され、そして散ってしまわない、絶頂の瞬間を見極める。男の顔に、なんともいえないほどうれしそうな笑みが浮かんだ。
 と、じょわわわわ、と鉄鍋が音を立てる。白い煙が舞い上がると、そこにいた誰もが全員思わず唾液が零れそうになり、ごくりと喉を鳴らしてそれを押さえる。
 醤油だ。あえて鍋肌に醤油を撒き、適度な”おこげ”のこうばしい香りを作る。米と食材には直接触れさせず、あくまで香りのみを加えるが目的であることが分かる。そう、男は、味はシンプルに、食材の本来の味と、そして塩のみで勝負するつもりだった。見てのとおり、具材もチャーシューと白ネギだけという超シンプルな構成である。このシンプルさだからこそ、料理人としての腕がはっきりとわかる。こんな恐ろしいメニューだからこそ、一品目にもってきた。
 醤油をいれたあと、鍋を2回だけ振り、その香りが飛ばないうちに、男はいくつかの皿に盛る。あえて形を整えず、パラパラな食感を楽しませるため、無造作に置かれていく。
 金のチャーハンは無造作に盛られているというのに、より、その美しさを増していた。
 そう、飾る必要など無い。これは、最高のチャーハンなのだから。
 すべて盛り終わると、男は2枚の皿を両手に持って、一つを炎の包丁を握る男に手渡した。
 そして、二人は、互いを牽制するように目を合わせながら、レンゲで黄金色に輝くチャーハンすくい、その美しさをためらうことなく口にし、ゆっくりと咀嚼する。
 両者はニヤリと不敵に笑った。

「……なかなかやるな。この火の加減の見極め、そして鍋を振るリズム、鍋と炎との距離。すべてが計算してあったというのか……」

「何を言う……。そっちも、絶妙な炎の調節だけでも驚いたというのに、チャーシューを焼きながら刻む具合を、鍋で炒めることを考慮していたとはな……。
 やはり、只者ではない」

 二人は、陰のある含み笑いをする。しかし、目の前のライバルの存在を喜んでいることは、生き生きと輝いている瞳から伺える。
 一方は包丁を握り、もう一方は鉄鍋を構える。そして、炎が二人を包むと、次のチャーハンが作られ始めた。
 海老が、ニンジンが、豚肉が、たまねぎが、青ネギが……無数の食材が、彼らと、煌めく米達を取り巻いた。



 そんな二人を遠巻きにして、イェルヒとジュリアは茫然と眺めていた。そんなに時間は経っていない。彼らのチャーハンの調理時間は、2分ほどのものだった。
 どこから持ってきたのか、いつの間にか揃いの皿が用意され、警邏も含め、周囲にいた人々が彼らの死闘の産物を、のん気に口にしていた。よくよく見ると、騒ぎのきっかけも何も知らない野次馬が次々と集まってきて、チャーハンを食しているのがわかる。中には、涙しながら食べている老人の男性まで見かけることができた。
 いつの間にか、「チャーハンを配る人」と自ら位置づけた人(いつでもどんなときでも、こういう人は必ずどこからか出てくるものである)が、イェルヒとジュリアに皿を差し出してきた。
 断る気力も無く、イェルヒとジュリアはそれを、うぅ、などと無意味な呻きを弱々しくあげながら受け取る。チャーハン配りの人は、そんな二人の様子を気にせず、次の人へと配りに戻った。
 おいしそうな匂いを湯気と共に立ち上らせるチャーハンを持ったまま、とある疑問がイェルヒの口からついてでた。

「……これは何がどうなったら勝敗がつくんだ」

「知らん」

 そう言うと、ジュリアは、ため息をついて、チャーハンをパクリと口にした。
 それを横目で見て、イェルヒも口にする。
 少し前まで、走ったり叫んだり頭を使ったりしたので、こんな良い匂いのするものを目の前にしてそれを拒否することなど、少ししにくいコトではあった。
 チャーハンはうまかった。ただ、普段から菜食生活をしているイェルヒは少し、油が多いなと思った。
 チャーハンを咀嚼しながら、次々と空中から食材が生み出される様を見て、イェルヒはぼんやり考えた。
 この、食品を無尽蔵に作り出すにしろ、取り出すにしろ、これは簡単な魔法ではない。しかし、チャーハン魔王は疲労することなく、次々と繰り出す。
 そういえば、彼は、どうやってあの遺跡から外に出たのだろう。脱出の文字は1つのみだったというのに。
 機会があれば聞いてみようか、と一瞬思ったが、「チャーハン魔法で脱出したから」などという答えを聞きたくなかったので、その質問は永遠に心の中に封印した。
 食べ終わると、今度は別の人がやってきて、「片付けましょうか?」と聞いてきたので空になった皿を渡した。ジュリアも同様に皿を渡す。

「さて。俺は学院に戻る。そして寝る。そして忘れる」

「私もすぐにでも旅立つ準備をする」

 一呼吸分の間を置き、同時に公園の出口へと向かう。次々と作られる多種のチャーハンを口にして楽しんでいる周囲の人々をすり抜け、公園の外に出る。
 そして、互いに別れの言葉も告げずにそれぞれの方向へ向かおうとした途端。
 空から、上品にスカートの裾をひらめかせながら、赤い鮮やかなドレスがスタンと舞い降りた。
 二人の体が、その鼻をつく匂いに硬直する。

「アラ。さっきも会いましたわね。ごきげんよう」

 紅生姜夫人こと、ベニ夫人である。 今度は先ほどとは違い、ピンク色のパラソルを持っている。だけども先ほどと同様に、紅生姜をバリバリと食べている。パラソルを持ちながら、器用に。

「そういえば、そちらのお嬢さん。先ほどの扉の先には、夫はいなかったですわよ?」

 あの鉄の固い扉を開けれたのか……と戦慄を覚えながら、教えを習ったことのあるリクラゼットがベニ夫人の夫でないことに、イェルヒは少しだけほっとした。
 ベニ夫人は、少女のように、ためらい無くまっすぐとジュリアの目を見つめる。責めるようでもなく、ただ純粋に疑問をぶつけるように。
 ジュリアは、そんな視線から逃げるように、決して目を合わせようとはしなかった。
 ベニ夫人の注目を最小限で食い止めようとするように、ぽつぽつとジュリアは、言葉を搾り出した。

「……チャーハン、魔王は、今……あっちで死闘を繰り広げて……チャーハンを」

「そうですの」 

 そう言って、ベニ夫人は、紅生姜を一掴みして、バリバリと小気味良い音を立てて食べる。

「じゃ、私は用事があるので……」

 そう言って、ジュリアは何気なさを装いながら歩き出そうとしたが、ベニ夫人は彼女の肩を掴んだ。赤い汁が付着した手で。

「今度はあなたにもついてきていただくことにしましたわ」

「なっ……」

 ベニ夫人の力は見かけによらず強く、ジュリアは引きずられて公園へと連れて行かれる。それはそうだ。力押しであの扉を開けれたのだからこんなことは造作も無いだろう。

「だ、だいたいどうやってここに来たんだ!? 理不尽な存在どもめ!!」

 ジュリアの罵声が聞こえる。それに、ベニ夫人はなんでもないように律儀に答えた。

「紅生姜魔法に決まってるじゃぁないですか」

 聞きたくなかった理論をここで聞くハメになるとは。
 軽く見送って、一息ついたイェルヒは、とりあえず帰って、紅茶の一杯でも飲もうかな、と思って帰路へ踏み出した。
 瞬間、イェルヒは顔面からこけた。
 何が起きたのか。即座に手をついて起き上がろうとすると、何かが足をひっつかんでイェルヒの進行方向とは逆へ引き込む。立てた腕で支えていた体はまたすぐに地面に落ち、イェルヒの顔面が路地にざりざりと摩り下ろされる。

「あだだだだだだだだ!」

 引きずられながらも必死に体を反転させて、仰向けにする。見ると、イェルヒの足に茨が巻きついており、それがイェルヒの体を引きずっていた。
 視点を遠くにやると、呪うような目つきでジュリアがぼそぼそと詠唱している。その瞳に宿るほの暗い炎は雄弁に語っていた。「一人で平穏な日常に戻れると思うなよ」と。
 恐怖にかられ、イェルヒはすぐに打ち消しの対抗魔法を編み出す。
 が、そのとき、地面に転がっていた赤ちゃんの拳ほどの石がイェルヒの尾てい骨を強く打った。

「おごぉぅ!」

 イェルヒの集中が途切れた。あっという間に霧散していく魔法の構成。
 その後も、背中もごりごりとその石はイェルヒの背中を蹂躙するが、その時にはイェルヒは声も出なかった。
 駄目押しに後頭部にそれは強く打ちつけ、イェルヒの頭の中は真っ白になった。
 わずかに残っていた魔法の式が完全に散った。



 イェルヒの飛んだ意識が再び戻った時、一番に目に入ったのは青空だった。
 すべてが終わっていることを望んだが、すぐに聞こえた叫び声がそれを砕く。

「あなた……!!」

 ……残念ながら、意識を失っていたのはほんの数秒だったらしい。顔面と、尾てい骨と、背中と、後頭部と……あとその他もろもろが痛む。頭の中身も朦朧としている。
 いつの間にか涙が出ていた。気絶をしている間にも涙は出てくるのだと、イェルヒは初めて知った。

「ベニー……、一体なんで君がここにいるんだい……!?」

 紅生姜夫人の夫の正体――クラークの声がする。

「あ、あなた……。それより、なんでアタクシの兄と……!?」

 思わぬ言葉にイェルヒは上半身だけ、少し起こす。
 そこには、チャーハン魔王を見つめるベニ夫人とクラーク。そして、冷ややかにベニ夫人を見返すチャーハン魔王。そして虚ろな目をしたジュリアがいた。
 そしてイェルヒのいる場所といえば……その両者の真ん中のワーストスポットだ。

「ベニー。久しぶりだな」

「お兄様……」

 紅生姜夫人は憂いを含んだ複雑そうな表情でチャーハン魔王を見つめる。
 対称的にチャーハン魔王はリクラゼットに見せた笑みからは想像のつかない、冷笑をベニ夫人に浴びせている。

「お前が家を飛び出して何年になるかな……」

「そ、そんなこと、お兄様には関係ないですわ!」

 怯える少女のように、ベニ夫人はクラークの腕にしがみつき、後ろに隠れる。

「そうか……家を飛び出し、お前が選んだのはその男というわけか……」

 冷たく固い笑みが緩み、チャーハン魔王の顔に一瞬だけ、寂しげながらも祝福の表情が浮かんだ。
 そして、再びまっすぐと紅生姜夫人とクラークを見つめた目からは、先ほどの嘲りの色は消えていた。

「なるほどな」

「そうよ! この人の……このクラークの情熱は、お兄様には負けませんわ! お兄様にはできなかった、紅生姜に合うチャーハンを、きっと……!!」

「お前はまだそんな夢を……。
 クラークとやらも、教えてやれ。その包丁の力をいとも簡単に解放できたんだ。お前の頭の中にはチャーハンの英知が流れ込んでいるはずだ。分かっているだろう……?」

「な、何をおっしゃりたいの!? お兄様……!? クラークも……」

 紅生姜夫人の問いかける視線から、クラークはつらそうに目をそらす。
 チャーハン魔王は哀れむような目で紅生姜夫人を見やる。

「そうか……私があの時、お前に言ってやれば、お前は家を出なかったかもしれなかったのだな……。
 これは私の業ということか……」

 悲しげに、チャーハン魔王は自嘲した。

「よかろう。あの時は、お前を傷つけまいと言うことができなかったが。言わないままであると、返ってお前を傷つけるということが、よくわかった……。
 よく聞くんだ、ベニー」

 紅生姜夫人は、これから聞く言葉に、恐怖と期待を混じり合わせたような、今にも泣きそうな顔になっていた。

「紅生姜は、薬味なんだ。具材には、なれない」

 チャーハン魔王と、クラークの目に、からかいの色はまったく無いと確信すると、張り詰めた糸が切れたように紅生姜夫人は、わぁぁぁぁぁ、とその場に泣き崩れた。
 ピンクのパラソルが、地面に落ちた。

 一体、こいつらは何がしたいんだ、とようやく意識がはっきりしてきたイェルヒはぼんやりと思った。



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2007/02/10 16:57 | Comments(0) | TrackBack() | ●もやしーず

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