キャスト:リクラゼット
場所:ソフィニア近郊 -遺跡パジオ、内部、最下層
----------------------------------------------------------------
ふわり、ふわりと落ちていく。
漆黒の闇に墜ちると共に紡がれる自己改革の言葉。
すとん。
不確かな地面の感覚を感じると共に足元に記述展開していた魔術公式を解いた。
羽根ペンから生まれた光の文字がまるで夢のようにするりするりと解けていく。
後に残るは巨大な魔導書が落ちたドサリ、という音だけ。
そのフロアには本当に微かな光のみが存在していた。
「……ッ」
着地した時の身体への衝撃に眉を潜める。
一般人にとってはただの衝撃でしかないソレは、極端に貧弱になったリクラゼットにとっては鋭い痛みに他ならなかった。
幸い、捻挫には至ってはいない。
自らが落ちてきた方向――上を振り向くとそこは既に暗闇に包まれていた。
どうやらあそこにあった古代文字は一方通行のようである。
非常用か、雑な工事だったのか。
……それとも、この遺跡を封印するためか。
真実は分からない、分かることはただ一つ。
この遺跡から脱出するためには他の作動する「開放」の古代文字、もしくは何処かにあるかもしれない出口を探さなければならない。
後者は、かなりの確立で埋められているだろうが。
ともかく、ぼーっと突っ立っていてもしょうがない。
そう思い、リクラゼットは魔導書を押しながら微かな闇の中をすすむ。
ぐぁらり、ぐぁらり、魔導書に備え付けられたキャスターが不気味な音をたてる。
反響で戻ってきた音は、まるで獣のうなり声だ。
何故だろう、その反響音がリクラゼットを焦らせる。
――時間は無限にあるとは限らないの。
もしかしたら次の瞬間に、自分という存在の時間が終わってしまうこともありうるのである。
そう、それはあの、気だるくも、腐りつつも、心底愛しいあの時期のように。
それはまるで幻想のような思い出。
鬱々としつつも教師として、日向の下で未来を見ていたころ。
気の合う教え子。
古代文字。
記述。
被験者。
記録。
暴走。
呪い。
思い。
酷い。
ゴツッ。
手で押していた魔導書が何かにぶつかって固い音を発する。
どうやら考え事をしているうちにボーっとしてしまったらしい。
太ももに鈍い痛み。打撲まではいかなかったが魔導書にぶつかり内出血を起こしている。
「む。」
応急処置のためかがもうとしたその時、線のような光が魔導書とリクラゼットの上を走る。
目を上げた先にはわずかに開いた扉。
その隙間から漏れる光はひっそりとしていてどこかよそよそしい。
どうやら魔導書がぶつかったのは扉のようだ。
リクラゼットは中の様子を見ようと扉に近づく。
そこにあるのは――。
場所:ソフィニア近郊 -遺跡パジオ、内部、最下層
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ふわり、ふわりと落ちていく。
漆黒の闇に墜ちると共に紡がれる自己改革の言葉。
すとん。
不確かな地面の感覚を感じると共に足元に記述展開していた魔術公式を解いた。
羽根ペンから生まれた光の文字がまるで夢のようにするりするりと解けていく。
後に残るは巨大な魔導書が落ちたドサリ、という音だけ。
そのフロアには本当に微かな光のみが存在していた。
「……ッ」
着地した時の身体への衝撃に眉を潜める。
一般人にとってはただの衝撃でしかないソレは、極端に貧弱になったリクラゼットにとっては鋭い痛みに他ならなかった。
幸い、捻挫には至ってはいない。
自らが落ちてきた方向――上を振り向くとそこは既に暗闇に包まれていた。
どうやらあそこにあった古代文字は一方通行のようである。
非常用か、雑な工事だったのか。
……それとも、この遺跡を封印するためか。
真実は分からない、分かることはただ一つ。
この遺跡から脱出するためには他の作動する「開放」の古代文字、もしくは何処かにあるかもしれない出口を探さなければならない。
後者は、かなりの確立で埋められているだろうが。
ともかく、ぼーっと突っ立っていてもしょうがない。
そう思い、リクラゼットは魔導書を押しながら微かな闇の中をすすむ。
ぐぁらり、ぐぁらり、魔導書に備え付けられたキャスターが不気味な音をたてる。
反響で戻ってきた音は、まるで獣のうなり声だ。
何故だろう、その反響音がリクラゼットを焦らせる。
――時間は無限にあるとは限らないの。
もしかしたら次の瞬間に、自分という存在の時間が終わってしまうこともありうるのである。
そう、それはあの、気だるくも、腐りつつも、心底愛しいあの時期のように。
それはまるで幻想のような思い出。
鬱々としつつも教師として、日向の下で未来を見ていたころ。
気の合う教え子。
古代文字。
記述。
被験者。
記録。
暴走。
呪い。
思い。
酷い。
ゴツッ。
手で押していた魔導書が何かにぶつかって固い音を発する。
どうやら考え事をしているうちにボーっとしてしまったらしい。
太ももに鈍い痛み。打撲まではいかなかったが魔導書にぶつかり内出血を起こしている。
「む。」
応急処置のためかがもうとしたその時、線のような光が魔導書とリクラゼットの上を走る。
目を上げた先にはわずかに開いた扉。
その隙間から漏れる光はひっそりとしていてどこかよそよそしい。
どうやら魔導書がぶつかったのは扉のようだ。
リクラゼットは中の様子を見ようと扉に近づく。
そこにあるのは――。
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