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2024/11/06 20:31 |
イェルヒ&ジュリア&リクラゼット19/イェルヒ(フンヅワーラー)
キャスト:イェルヒ
場所:ソフィニア近郊 -遺跡パジオ、内部
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 イェルヒは、古代文字を見つけた。
 が、しかし、そこからは、古代文字独特の輝きがない。
 これで、三つ目だ。

「……地図があったって、意味が無いじゃないか……!!」

 古代文字の魔力。
 それは、記述された時点で、記述された物質に対して発動される。よって、使い手を選ばない。
 その物質的な媒体にて形状による発動がゆえに、変化に弱い。
 文字の一部が擦れて消えたり、傷が付いて切断されたりすると、魔力は失われる。
 期待された割には、「どうでもいい遺跡」と判断された遺跡だ。落胆は、調査に直に反映される。つまりは……粗雑に扱われる。
 地図には、残り2つ、古代文字の在り処が記されている。
 イェルヒは、来た方向を振り返る。地図によると、遺跡の中頃に来ている。

 忌々しそうに、古代文字を見る。
 こんな些細な傷で……阻むと言うのか。
 あの、講師ならば、再生できただろうか?
 と、イェルヒは気づいた。
 ……どこにも、傷などない。
 これは、破損した文字ではない。
 文字自体の魔力は失われてはいない。

 これは、使用された直後の、回復されていない文字だ。

「……ちょっと……待て」

 誰だ?
 あの、多数の罠を仕掛けた、馬鹿か?
 馬鹿な。あのイカレ具合は半端じゃなかったぞ。
 しかし、イェルヒにあるのは「イカレも突っ切れば、運がきまぐれに味方する」という、ルークの前例だけだ。

 急がなければ。
 馬鹿どもが、貴重な古代遺産を破損してしまっては、手遅れだ。
 なんといっても、馬鹿が二組。傷つけられる可能性は二倍になんてものじゃない。
 自然と、早足になる。
 地図によれば、この近くにもう一つあるはずだ。

 ―――が。

「……タチの悪い冗談は……やめてくれ」

 イェルヒは古代文字の前で、崩れるように座り込んだ。
 そこにあったのは、破損した古代文字ではなく。
 使用された直後のもの。
 専門ではないが、どのくらいの時間が経過したのかなどはわからない。が、おそらく数分前から、半日までの間、といったところか。

「誰なんだ……」

 願わくば、馬鹿でないことを祈るばかりである。
 地図を見る。

 ―――残り一つ。

 イェルヒは自覚している。自分は、運が決していいほうではないということを。五分五分ならば、悪い方になる確率が大きいのだ。

 諦める覚悟と、捨てきれない期待を抱き、イェルヒは歩き出す。
 神など信じていないイェルヒは、何かに祈ることをせずに、ただ、歩いた。

 そんな彼に偉大なるかな、神は微笑んだのだ。

「あった……」

 イェルヒ自身、信じていなかった存在が、そこにはあった。
 保存状態、良好。直後の使用形跡、無し。
 柄にも無く、イェルヒは少し浮かれた。
 だから、彼は気づかない。
 経験的な自分の運の悪さを、忘れてしまったのだ。

”五分五分ならば、悪い方になる確率が大きいのだ”

 悪意の神は、微笑んだ。

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2007/02/10 16:50 | Comments(0) | TrackBack() | ●もやしーず

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