忍者ブログ
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


2025/03/10 06:50 |
7.左手に受難/イートン(千鳥)
 
-------------------------------------------------------
PC  ニーツ 八重 イートン  
場所  クーロン東南・迷いの森(仮)
NPC なし
----------------------------------------
 「―――!」
 驚きはお互いに大きかった。
八重とイートンの目は頭上の人物の姿を的確に捉え、ニーツは思わず枝から足を踏み外した。
「君は・・・?」
 高い木の上からきれいに着地したニーツをイートンが不思議そうに見つめた。折角体勢を整えた彼だったが、その身体は直ぐに八重の腕によって地面から浮く。
「ルナシーについて知っているのか!?」
「さぁ」
 真摯の表情の八重にニーツは冷ややかな表情をむける。
「なら何故ここに!」
「俺は片腕の無い男に“化け物”が出たって聞いただけさ」
 はっとしたように口を噤んだ八重は力無く手を離した。
「お前だって人間かどうか分かりはしないがな」
 銀色の髪に色の異なる瞳。その冷めた視線は人間というより、まるで獣のようだ。
「そうかな。とりあえず、形は人間だろう?」
 くすくすと笑ったニーツは意外にあっさり口を開いた。
「俺が知っているのは僅かな事だ。でも,お前達に利益をもたらす事は出来るだろう」
 それは酔狂だった。
人を喰らう、たかがそれだけのことに心を砕いている彼らが面白かったのだ。
「ヒエログリフ以外にもルナシーを抑えることの出来るものがある」
「ニンジンですか?」
「・・・なんだそれは?」
 イートンの答えにニーツが眉を寄せる。
「俺が聞いたのは道具だ。そういう道具があると聞いた」
「道具?それは一体・・・」
 それがやはりニンジンだったら。そう思うせいか八重の表情は浮かなかった。
「まぁまぁ。信じる価値はありますよ。良かったですね、八重さん」
 ぽんと八重の肩を叩く、そしてイートンはずっと言いたかった言葉を続けた。
「ところで、この格好どうにかしたいんですけど・・・」

 ニンジン色に染まったシャツをつまんでがため息をついた。
ニンジンの臭いが鼻につく。着替えたくてたまらなかったのだ。
「あぁ、森の中に泉があったな・・」
「ホントですか!良ければ案内してくれません?」
 思い出したように呟いたニーツの言葉にイートンが飛びつく。
「イートン!」
 八重が声をあげた。まだニーツは信用できない。彼の持つ『色』は鮮やか過ぎる。ニーツを危険だと思うのは本能なのだ。そんな八重に対し、イートンは自信を持て返答した。
「大丈夫ですよ。こんなに可愛いんですし♪」
「「・・・・・・」」
 この能天気な答えに八重は脱力し、ニーツは思わず身を引いた。

 背が高く直立に構えた木々が生い茂る森の、道とも言えぬ獣道を通りながら三人は奥へと入って行った。慣れない道に遅れる二人を気にすること無く、ニーツはずんずん進んだ。自分の残した痕跡を辿って行けば必ず泉まで戻れる。そう踏んで歩いていた彼の足がふいに、止まる。
(・・・おかしい。空間がねじれている?)
 最初はルナシーの影響を受けたのだと思っていた。しかし、少しずつ辿って行く跡がずれて行く気がするのだ。進めば進むほど。
(もうここは・・・先程の森ではないかもしれないな) 
 そう結論付けたニーツの耳に後方から思いがけない声が聴こえた。
「あ。ありましたよ。こっちに泉が」
「――――!?」
 慌てて振り返る。イートンが嬉々として横道に逸れた。
「違う、それは!」
 ニーツが珍しく切羽詰った声をあげる。しかし、それは既に遅かった。
 ――パシャン。
「大丈夫か!?」
 左腕を庇っているイートンに八重が駆け寄った。彼の視線は血で染まった袖の下に注がれている。そこにはウサギが、八重がつけた傷があるのだ。
「大丈夫です、そっちじゃないですから」
 ずっと気にしてたでしょう?八重を見上げて笑みを浮かべるイートンだが、
「あと、今水の中に何か落とさなかったか?」
 次の言葉には苦々しげに呟いた。さすがウサギ・・・・
「その手の甲、見せてみろ」
 八重の後ろから覗いていたニーツがイートンの左手を掴んだ。そこには引っ掻いたような赤い筋が形を成している。
「何かの文字みたいですね」
 僕には読めませんけど・・・。尋ねるイートンにニーツは答えなかった。

 ズズズ・・・。
 静かだった水面に波が立つ。三人は顔をあげた。
金色の髪が大きく広がっている。それが大きく盛り上がり一人の女になった。女神のような美しい、造りモノめいた顔がギギギと音をたててこちらを見る。その口から漏れ出す声も、また偽りのものだった・・・・・。
PR

2007/02/17 22:42 | Comments(0) | TrackBack() | ○Under The Moon

トラックバック

トラックバックURL:

コメント

コメントを投稿する






Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字 (絵文字)



<<6.月と魔族とウサギ鍋/ニーツ(架月) | HOME | 8.エセ学校の怪談/八重(果南)>>
忍者ブログ[PR]