--------------------------------------------------------
PC イートン・ニーツ・八重
場所 ヴェルン湖
NPC ベル=リアン・ユサ一味・市長(ジェームス)・ナスビ
---------------------------------------------------
「お前の手下・・・」
とんっ、と軽く地面を蹴ると、ニーツは真上に大きく飛び上がった。満月にニーツのシルエットが浮かび上がる。ベルもニーツを追うように高く飛び上がると、両手の間に赤い魔力の玉を溜め始めた。バチバチバチッ、と赤い玉がベルの手の中で放電する。
「はあっ!!」
しかしニーツはベルが放った赤い玉を空中で右に交わしてよけた。赤い玉はニーツに当たる代わりに、
どうんっ!!
地面に当たり、手下に使っていたユサの仲間の一人の体を吹っ飛ばした。
「はははっ、またはずれちゃったぁ」
ベルが軽い笑い声を立てる。
「お前・・・」
「何?ニーツ、何で怒ってるのさ」
何の罪悪感もなさそうな顔できょとん、と尋ねるベルにニーツはますます腹が立った。
「僕の仲間をふっ飛ばしちゃったから?でも何で怒るのさ?」
「それもあるがな。もっと根本的なことだ」
ベルに吹っ飛ばされた仲間は、…頭と右手がないままの姿でゆっくりと、立ち上がった。その体から、血を滴らせることなく。ニーツは氷のような視線をベルに向け、ゆっくりと言った。
「お前はユサたちを<ゾンビ>にしたな。それともやったのはお前の兄か?」
「そんなのどっちでもいいじゃん」
ベルはけろりとして言う。
「それにこっちのほうが<生身>より使いやすいよ?」
「・・・」
無言でニーツは紫色の閃光をベルに放った。どうしようもない怒りが、ニーツの体を支配していく。そして次なる攻撃のために魔力を両手に溜め、ベルに向かっていくとき、ちらりとニーツは思った。
(こんな状況は、とてもじゃないが、イートンには見せられたもんじゃない)
仲があまりよくなかったとはいえ、ユサたちはかつてイートンの仲間だったのだ。今やゾンビと化した、仲間のこの姿を見れば、きっとイートンは悲しむだろう。イートンを慰めてやる義理はないが、それでも、イートンの悲しむ顔はあまり見たくないものだった。
きゅっと唇を噛むと、ニーツはベルに手の中の閃光を放った。
「いいかげんにしろ!八重!」
どおんという破裂音とともにナスビはウサギを突き飛ばした。
「ガウウウッ!!」
めきめきっと周りの木をへし折り、ウサギは大きく吹っ飛ぶ。
「邪魔すんじゃねぇ!!この赤目野郎!」
ジェームスが喉の奥でうううっと唸りながら、ナスビを睨みつける。
「お前もオレに喰われてぇかよぉ」
「喰われる?」
ウサギをふっ飛ばした後、ナスビはくるりとジェームスに向き直った。
「この我輩が、オマエに?」
そう言って、嘲笑した目つきでジェームスを見つめた。その目は完全にジェ
ームスを小ばかにしてあざ笑っている。
「完全なる姿のこの我輩が、レン様の失敗作にも及ばぬ、オマエに喰われるだと?」
ナスビはふ・・と笑い、その赤い瞳でジェームスを見据えた。
「ちゃんちゃら可笑しいわ」
「ざけやがってぇ!この赤目野郎がァ!!」
ナスビの態度に、怒り狂った狂犬が矢のような速さでナスビに突っ込んでくる。しかし、ナスビの悠々とした笑みは崩れることはなかった。
風のように走る狂犬が噛み付くより早く、ナスビは体をひゅうっと横にそらすと拳を狂犬のみぞおちに当てた。
「がふっ・・・」
狂犬が血を吐いて、地面にどうと倒れる。ナスビはそれを冷ややかに見やると、今度はくるりと向き直って先ほどから蠢く草むらを見つめた。
「グルルルルゥ・・・」
草むらの中から赤い瞳が光る。
「市長より何より、厄介なのはオマエだよ、八重」
そう言いながら、ゆっくりとナスビは手をウサギの方向にかざした。
「オマエも市長との戦いでだいぶやられただろうから、動きが鈍くなっているだろう」
かざしたナスビの手の中に、だんだんと金色の光が溜まってくる。
「一発で仕留めてやるぞ、八重」
がさがさっと動く草むらに、イートンは戦慄を覚えた。
(ついに来たか・・・!)
ごくりとイートンは生唾を飲んだ。この方角の先にあるのはB地点。つまり、この先からやってるくのはターゲットの市長か、それとも<ウサギ>化した八重のどちらかだった。ゲートの準備は整っている。しかし、ウサギと狂犬に遭遇することを考えると、イートンは身も凍るような思いだった。
(ああ、一体どっちがここから出てくるんだろう・・・)
魔法陣の中で、イートンは息を呑んで草むらを見つめた。
しかし、草むらから出てきたのは、
「ナスビちゃん!!」
イートンは喜びの声を上げた。ナスビは疲れた顔で笑みを返す。
「ふ・・・、全く、今回は手こずったぞ」
ナスビは一方の肩に、気絶したジェームスを背負っていた。そして空いたもう一方の手には、
「キュ・・・」
「目くらましを当ててから、オマエがいうようににんじんを食わせてやった」
そう言って、ナスビは弱小化したウサギを見つめた。
「なんか、こう・・・、ずいぶんとかわいくなるものだな。キュ、しかいわないぞ、ほれ」
空いた手でウサギのほっぺたをつねると、ウサギは「キュ~っ」と悲鳴を上げた。
(ああ・・・)
思わずイートンの口からため息が漏れた。
(なんか、こう、純粋にかわいいって思える生き物に会ってみたい・・・)
これから危険な状況が待っているにもかかわらず、ナスビとウサギを見て、思わず脱力するイートンだった。
PR
PC イートン・ニーツ・八重
場所 ヴェルン湖
NPC ベル=リアン・ユサ一味・市長(ジェームス)・ナスビ
---------------------------------------------------
「お前の手下・・・」
とんっ、と軽く地面を蹴ると、ニーツは真上に大きく飛び上がった。満月にニーツのシルエットが浮かび上がる。ベルもニーツを追うように高く飛び上がると、両手の間に赤い魔力の玉を溜め始めた。バチバチバチッ、と赤い玉がベルの手の中で放電する。
「はあっ!!」
しかしニーツはベルが放った赤い玉を空中で右に交わしてよけた。赤い玉はニーツに当たる代わりに、
どうんっ!!
地面に当たり、手下に使っていたユサの仲間の一人の体を吹っ飛ばした。
「はははっ、またはずれちゃったぁ」
ベルが軽い笑い声を立てる。
「お前・・・」
「何?ニーツ、何で怒ってるのさ」
何の罪悪感もなさそうな顔できょとん、と尋ねるベルにニーツはますます腹が立った。
「僕の仲間をふっ飛ばしちゃったから?でも何で怒るのさ?」
「それもあるがな。もっと根本的なことだ」
ベルに吹っ飛ばされた仲間は、…頭と右手がないままの姿でゆっくりと、立ち上がった。その体から、血を滴らせることなく。ニーツは氷のような視線をベルに向け、ゆっくりと言った。
「お前はユサたちを<ゾンビ>にしたな。それともやったのはお前の兄か?」
「そんなのどっちでもいいじゃん」
ベルはけろりとして言う。
「それにこっちのほうが<生身>より使いやすいよ?」
「・・・」
無言でニーツは紫色の閃光をベルに放った。どうしようもない怒りが、ニーツの体を支配していく。そして次なる攻撃のために魔力を両手に溜め、ベルに向かっていくとき、ちらりとニーツは思った。
(こんな状況は、とてもじゃないが、イートンには見せられたもんじゃない)
仲があまりよくなかったとはいえ、ユサたちはかつてイートンの仲間だったのだ。今やゾンビと化した、仲間のこの姿を見れば、きっとイートンは悲しむだろう。イートンを慰めてやる義理はないが、それでも、イートンの悲しむ顔はあまり見たくないものだった。
きゅっと唇を噛むと、ニーツはベルに手の中の閃光を放った。
「いいかげんにしろ!八重!」
どおんという破裂音とともにナスビはウサギを突き飛ばした。
「ガウウウッ!!」
めきめきっと周りの木をへし折り、ウサギは大きく吹っ飛ぶ。
「邪魔すんじゃねぇ!!この赤目野郎!」
ジェームスが喉の奥でうううっと唸りながら、ナスビを睨みつける。
「お前もオレに喰われてぇかよぉ」
「喰われる?」
ウサギをふっ飛ばした後、ナスビはくるりとジェームスに向き直った。
「この我輩が、オマエに?」
そう言って、嘲笑した目つきでジェームスを見つめた。その目は完全にジェ
ームスを小ばかにしてあざ笑っている。
「完全なる姿のこの我輩が、レン様の失敗作にも及ばぬ、オマエに喰われるだと?」
ナスビはふ・・と笑い、その赤い瞳でジェームスを見据えた。
「ちゃんちゃら可笑しいわ」
「ざけやがってぇ!この赤目野郎がァ!!」
ナスビの態度に、怒り狂った狂犬が矢のような速さでナスビに突っ込んでくる。しかし、ナスビの悠々とした笑みは崩れることはなかった。
風のように走る狂犬が噛み付くより早く、ナスビは体をひゅうっと横にそらすと拳を狂犬のみぞおちに当てた。
「がふっ・・・」
狂犬が血を吐いて、地面にどうと倒れる。ナスビはそれを冷ややかに見やると、今度はくるりと向き直って先ほどから蠢く草むらを見つめた。
「グルルルルゥ・・・」
草むらの中から赤い瞳が光る。
「市長より何より、厄介なのはオマエだよ、八重」
そう言いながら、ゆっくりとナスビは手をウサギの方向にかざした。
「オマエも市長との戦いでだいぶやられただろうから、動きが鈍くなっているだろう」
かざしたナスビの手の中に、だんだんと金色の光が溜まってくる。
「一発で仕留めてやるぞ、八重」
がさがさっと動く草むらに、イートンは戦慄を覚えた。
(ついに来たか・・・!)
ごくりとイートンは生唾を飲んだ。この方角の先にあるのはB地点。つまり、この先からやってるくのはターゲットの市長か、それとも<ウサギ>化した八重のどちらかだった。ゲートの準備は整っている。しかし、ウサギと狂犬に遭遇することを考えると、イートンは身も凍るような思いだった。
(ああ、一体どっちがここから出てくるんだろう・・・)
魔法陣の中で、イートンは息を呑んで草むらを見つめた。
しかし、草むらから出てきたのは、
「ナスビちゃん!!」
イートンは喜びの声を上げた。ナスビは疲れた顔で笑みを返す。
「ふ・・・、全く、今回は手こずったぞ」
ナスビは一方の肩に、気絶したジェームスを背負っていた。そして空いたもう一方の手には、
「キュ・・・」
「目くらましを当ててから、オマエがいうようににんじんを食わせてやった」
そう言って、ナスビは弱小化したウサギを見つめた。
「なんか、こう・・・、ずいぶんとかわいくなるものだな。キュ、しかいわないぞ、ほれ」
空いた手でウサギのほっぺたをつねると、ウサギは「キュ~っ」と悲鳴を上げた。
(ああ・・・)
思わずイートンの口からため息が漏れた。
(なんか、こう、純粋にかわいいって思える生き物に会ってみたい・・・)
これから危険な状況が待っているにもかかわらず、ナスビとウサギを見て、思わず脱力するイートンだった。
トラックバック
トラックバックURL: